政府税調「平成21年度の税制改正に関する答申」
2008.11.29

「平成21年度の税制改正に関する答申」を、政府税調は28日公表した。

読んでみると実に薄っぺらいないようで、今年の税調の開催状況を
見ても分かるとおり、昨年の答申であれだけ大上段に大改革を
唱えていながら、何にもやっていない。

これにはあきれ返るばかりである。

メンバーを見れば仕方がないかもしれませんがね。財政学者は委員に
名前を連ねているものの、いざ法案にする場合の問題点を指摘できる
税法学者は特別委員に中里先生と水野先生がいるのみでしかない。
これでは、本格的な大改正の議論が出来るはずがなかろう。
どういう意図でメンバーを選んでいるのか、気が知れないところだ。

そういう意味では、今年の税制改正は、目玉は何もなしになるでしょう。
先行して、民法にまで手をつけた相続税の抜本的改正
(特に課税方式の変更)は先送りにされることになった。

これは大問題である。

昨年の答申において、

事業承継税制については、雇用確保や経済活力の維持の観点から
一層の配慮が必要との意見がある一方で、事業用資産を持たない者との
課税の公平性や親族間の相続(世襲)による事業承継を支援することの
必要性の観点から十分な吟味が必要であるといった指摘もあり、
相続税制の全体の見直しの中でさらに検討を進めることが必要である

としていたことを思い出す必要がある。

事業承継税制は、相続税の見直しの大きな目玉の1つだったんです。
それも、課税方式の変更を前提とした改正内容でもあるのです。
先行して10月1日から施行されている経営承継法や来年3月1日から
施行される遺留分に関する民法の特例についても、相続税が遺産税から
遺産取得税に変更されることを前提として整合性が取れるように
改正したのですね。

さらには、

昨年の答申を経て、本年1月に閣議決定された
「平成20年度税制改正の要綱」においては、
(1)平成21年度改正において「取引相場のない株式等に
係る相続税の納税猶予制度」を創設すること、
(2)この新しい事業承継税制の制度化にあわせて、相続税の課税方式
をいわゆる遺産取得課税方式に改めることを検討すること、
(3)その際、格差の固定化の防止、老後扶養の社会化への対処等
相続税を巡る今日的課題を踏まえ、相続税の総合的見直しを検討すること
(平成21年度答申6ページ)

とされていたことを今年の答申も確認している。
しかし、今年度の答申は、

課税方式の見直しについては、課税の公平性や相続のあり方に関する
国民の考え方とも関連する重要な問題であることから、
幅広い国民の合意を得ながら議論を進める必要がある。
ただし、いずれの方式によるにせよ、新しい事業承継税制が制度化
される場合には、課税の公平性に十分配慮して、国民の理解を得る
ことのできる仕組とすべきである。
また、相続税の負担水準のあり方については、相続税の資産再分配機能の
回復を求めた昨年の答申の考え方に沿って、今後、基礎控除や税率構造等を
見直し、さらに議論を深めることが重要である。
(平成21年度答申6-7ページ)

つまり、事業承継税制も相続税の課税方式の変更も
期限を明記しない先送りである。

この先送りという結果が、税調が相続税を含む資産課税の専門家
(水野先生も中里先生も所得課税の専門家です)をメンバーに加えて、
本当に実質的な議論をしてきた上での結果であれば、納得できよう。

しかし、現実は、昨年の答申が出された平成19年11月20日以降、
税調が開催されたのは、平成20年7月22日まで8ヶ月間開催されず、
3ヶ月以上開いた11月14日以降、18日、21日の計4回の企画会合が
開かれただけで、昨日の総会による平成21年度改正答申の公表であった。

途中、一切、議論がなされないまま、具体的な改正になったときに
どういう問題が法律上に起きてくるかを、学問上一切考えないでいい
財政学者ばかりの中で、100年に一度の大改正が出来るはずないであろう。

香西税制調査会会長の責任は実に思い。
香西氏の無責任運営のために、政府による税制改正論議が
ストップしてしまったとも言えるからである。

少なくとも、相続税の大改正、事業承継税制の80%納税猶予制度
の創設は先送りということになろう。

私は事業承継税制については、依頼を受けて、「経理WOMAN」11月号に
Q&A方式で原稿を執筆したが、読者にとっては、実施されない
80%納税猶予を書いた大嘘つき野郎になるんでしょうね。

経済財政諮問会議に実質審議の場が移っているのだとすれば、
政府税調のあり方も見直す時期に来ているのかもしれませんね。


ニセ税理士行為により逮捕者
2008.11.28

無資格で税理士業務をしたとして、警視庁公安部は27日、
税理士法違反の疑いで、朝鮮総連傘下の在日本朝鮮東京都新宿商工会の
元副会長、徐英男容疑者を逮捕し、在日本朝鮮商工連合会などを家宅捜索した。
徐容疑者は、容疑を否認し、「税務処理の手伝いをしただけだ」と
供述しているという。(時事通信2008年11月27日11:30記事)

公安部によると、徐容疑者は副会長時代の06年3月、税理士資格がないのに、
同商工会会員の飲食店主が税務署に出す確定申告書を作成した疑いがある。
飲食店主はこの申告内容に関して国税当局から脱税容疑で告発され、
07年に罰金刑を受けた。その際、徐容疑者も国税当局から任意で
事情を聞かれたという。
同商工会は、会員が税務書類を作成したり、申告したりする際に助言するほか、
起業や財務管理などの経理業務、経営などについての相談に応じている。
(asahi.com 2008年11月27日11:20記事)


状況からすると、組織ぐるみでニセ税理士行為が行われていたようですが、
本人たちにニセ税理士行為であるという意識があったかどうかは疑問ですね。
実際に、青色申告会を始めとする税務関連支援団体の活動を鑑みるに、
税理士が関与せずに税務指導まで行っている実態があるように思われる。

わが地元、葛飾に関しては、税理士会との関係が良好で、
青色申告会における会員への確定申告相談会には、税理士会から必ず
税理士を派遣して、その指導監督の下に、税務支援が行われており、
税理士法違反の疑いは限りなく少なくなっている。
この点には、諸先輩方のご努力の賜物であると感謝するところです。

しかし、他の地域には、税理士会と関係諸団体との関係が上手くいかず、
相互協力体制がまったくできていないところもあると聞いています。

この点について、税理士法2条は、以下のように規定される。

(税理士の業務)
第二条  税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、
関税、法定外普通税、法定外目的税その他の政令で定めるものを除く。)
に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一  税務代理(税務官公署に対する租税に関する法令若しくは行政
不服審査法の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立てにつき、
又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署
に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行することをいう。)
二  税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、
請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、
かつ、税務官公署に提出する書類で財務省令で定めるものを作成することをいう。)
三  税務相談(税務官公署に対する申告等、第一号に規定する主張
若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に
関する事項について相談に応ずることをいう。)
2  税理士は、前項に規定する業務のほか、税理士の名称を用いて、
他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の
記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。ただし、
他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項
については、この限りでない。
3  前二項の規定は、税理士が他の税理士又は税理士法人の補助者
としてこれらの項の業務に従事することを妨げない。

また、この趣旨については、税理士法基本通達2-1に規定されている。

(税理士業務)
2-1 税理士法第2条に規定する「税理士業務」とは、同条第1項各号に
掲げる事務を行うことを業とする場合の当該事務をいうものとする。
この場合において、「業とする」とは、同項各号に掲げる事務を反復
継続して行い、又は反復継続して行う意思をもって行うことをいい、
必ずしも有償であることを要しないものとし、国税又は地方税に関する
行政事務に従事する者がその事務を遂行するために必要な限度において
これらの事務を行う場合には、これに該当しないものとする。

つまり、税理士法は、税務代理、税務申告書の作成、税務相談について、
有償無償を問わず、税理士による無償独占を定めており、昭和55年の
税理士法改正において、このことが確認されています。

したがって、昭和55年改正前は、無償独占が確立されていなかったため、
従来から税務相談を行っていた団体においては、改正後は、税理士の
指導監督の下でなければ、税務相談が出来ないことになっっています。
しかし、現実には、ごく最近まで税務署も、こういった税理士法違反行為
については、黙認していたようですし、今回のケースでも、警察が
動いたのは珍しいな、という感じがします。

今回は脱税事件に絡んでのことではありますが、一生勉強し続けなければ
プロフェッショナルのレベルが維持しにくくなっている現状では、
規制強化(正常化というべきですが)をせざるを得ないでしょう。

税理士業界の繁忙期に入る直前の現時点で、今回の逮捕劇。
業界の正常化の役に立てなければならないですね。


田中義剛の足し算経営革命
2008.11.27

これから起業したい方に是非読んで頂きたい本を紹介します。
もちろん、経営者の皆様にも、イノベーションを考えて頂く上で
是非一読をオススメしたい本です。

田中義剛「田中義剛の足し算経営革命」(ソニー・マガジンズ新書)

今年の6月に出た本なので、もう既に読んだよという方も多いかと思います。
タレントで大ヒット商品生キャラメルを擁する花畑牧場のオーナーである
田中義剛氏が書いた本です。

僕は、当初、タレント本の1つとしてしか見ていなかったので、
発売された時には手に取りませんでしたが、
ある方に勧められて読んでみました。

これがイイんですね。
ビジネス書としての本質を兼ね備えているばかりか、
タレントビジネスとしてしか見ていなかった田中氏のビジネスの本質が
本物であることに気付かされました。

本書40ページ以下ではこのように書かれている。

いくらいい商品を作っても、売る場所がなければ作った意味がない。
だからといって、どこでもいいから売る場所を見つけろ、といっている
わけではない。どこで売るか、それを考えるのことも、重要な戦略の
ひとつだ。(略)
ところが、最初はうまくいかなかった。当時、当然のことながら
生キャラメルを知っている人なんてほとんどいなかった。だから空港側は、
「一日90個もそろえておけば十分だろう」と判断した。これは悔しかった。
だけど、そのわずか90個さえ完売しなかったのも事実。これはなんと
してでも、認知度を上げるしかない。
そこで、俺が芸能界にいる強みを有効利用することにした。2007年5月に
「ソロモン流」という番組で、生キャラメルを追ったドキュメントを
放送してもらった。これをきっかけに、勢いがついた。(略)
このメディアの利用は、田中義剛が芸能人だからこそできたことだと
思うかもしれない。そこは否定するつもりはない。ただ、大事なのは、
メディアに取り上げてもらえるようないい商品を作るということではないか。
いくら俺が芸能人だからといって、取り上げるに値しない商品なら
誰も見向きはしないだろう。万が一、運よく取り上げてもらったところで、
淘汰されていく。

まさにその通りです。
いい商品を作っても、知ってもらえなければ、売れない。
知ってもらっても、いい商品でなければ、売れないんです。

この点について、田中氏のビジネスの特長になっている利益率の高さにも
繋がるコメントが66ページにある。

ミートホープやギョーザ事件の教訓もあって、消費者は今、食の安全性を
とても気にする。だから、生産者の顔が見えることに価値を見出してくれる
だろうし、だからこそ、ウチのような中規模な牧場にもチャンスが見えてくる。
普通の豚なら900円のところを、花畑牧場のホエー豚ということで1200円で
売っても、差額の300円は安心料に変わる。安心料だったら、300円払おうと
いう気になるだろう?

安心料という考え方は牧場のあり方にも反映されている。
101ページ以下ではこのように書いている。

花畑牧場に来てもらえればよくわかると思うけれど、花畑牧場は、
すべての商品の製造工程を見学できる。生キャラメルを作っている様子も、
カチョカヴァロを縛っている様子も、窓ガラス越しに全部見える。
隠さないのは、見ていて気持ちがいい。
「誠実に作っています」という説得力にもつながる。
これは、ニュージーランドのガーデニングファームを見て回ったときに
いちばん強く感じたことだった。工場には仕切りがなく、風通しがいい感じ。
あけっぴろげなぐらい、観光客に全部見せている。
「なぜこんなにオープンなんだ?」
俺が現地の経営者たちに尋ねると、彼らはこう答えた。
「これが当たり前。見せられないものを作ってどうするんだ?」
もっともな話だ。
観光客の目が、製造者による不正や不祥事の抑止力にもなる。

また、利益率にこだわる田中氏の経営姿勢は、食の安全に行き着く。
115ページ以下にこんな記述がある。

ここまで読んだ人は、「田中義剛はなんてがめついやつだ!」と思った
かもしれない。
だが、俺が利益率にこだわる理由は、何も儲けるためだけではない。一定の
利益率をキープすることは、不測の事態に備えるため、いわばリスクヘッジだ。
これをきちんとしておけば、何かあったときも、売価を上げずに済むかも
しれないのだ。
先日、トウモロコシをはじめとする輸入穀物の高騰で、家畜のエサ代が30%
上がった。その30%は農家の経営を圧迫した。飼料メーカーにも農政にも
農協にも、負担を肩代わりしようなどという発想はない。しわ寄せは、
かなりの部分が末端の農家たちに行ってしまった。でも、いつまでも
そんな状況に耐えられるはずがない。結局、メーカーがその負担を売価に
反映させたのは、ご存知のとおりだ。
飼料の値上げに頭を悩ませたのは、花畑牧場も同じ。けれど、値上げを
避けることができた。
なぜか。
利益率があるからだ。
花畑牧場の商品価格には、何かあっても(多少のことなら、だけれど)
吸収できるぐらいの利益率があらかじめ設定されている。だから、値上げを
せずに済んだ。
さて、その利益率だが、20%確保が理想だ。しかし、これはあくまでも
理想で、絶対条件は15%といったところ。
食品を扱っていると、原材料の突然の高騰や異物の混入、廃棄など、いつ
何が起こるかわからない。だから、せめて15%の利益率が確保できなければ、
花畑牧場のような中小企業は怖くてビジネスができない。
(略)
もし、利益率を低く設定していたら、「もったいないから使っちゃえ」と
思ってしまうかもしれない。「足し算」ではなく「引き算」の考え方で
価格を設定していると、何かあったときは吸収できない。
「利益率が低い、だからこれ以上廃棄率が上がると赤字になる・・・。ならば
使い回せばいい」
船場吉兆もミートホープも赤福も、そんな悪魔のささやきに負けた結果の
事件なんじゃないかと思う。
でも、そこで不正をしたら、その時点ですべてが終わってしまう。

田中氏は、ベンチャーを志すものに対してこう言っている。(128ページ以下)

ドラマを感じさせるような手作りの現場がないと、メディアには登場できない。
逆説的に言えば、ベンチャーを志す者は、メディアが取り上げたくなるような
ことをやれ、ということだ。
洋服でもいいし食品でもいい、ジャンルはなんでもいいけれど、メディアが
興味を示すようなことをやらなければ勇名にはならない。
当然、メディアに出ることにはリスクもある。
メディアを使えば、たった1回の不正が、10倍、100倍になって返ってくる。
メディアに叩かれる側になったら再起不能だ。

そういう意味では、田中氏のビジネスは、メディアを戦略的に使いながら、
安全でおいしい食品を提供することで成功してきたといえよう。

今年の私のゼミ合宿は札幌でしたので、新千歳空港で、花畑牧場の豚丼を食べ、
生キャラメルをお土産に買ってきました。確かに美味い。

芸能人として長年生き延びてきた男の人生を賭けたビジネスの夢は
膨らむばかりなのかもしれない。
そして、彼の母校である酪農学園大学からは、彼の後を追うアグリビジネスが
出てくることだろう。

本物しか生き残れない時代に、成功するためのヒントが隠されていた本であった。


満期養老保険金と既に給与として課税された保険料
2008.11.26

昨日、東京税理士会の有志でやっている判例研究会で
朝倉洋子先生がこのテーマで発表されました。

非常に変わった事件なので、裁決の射程距離は殆どないのかも
しれませんが、気になる事件だったので、紹介します。

平成20年6月6日非公開裁決(TAINSコードF0-1-310)

事案の概要は次の通り

満期保険金に係る一時所得の計算上、法人が給与として経理処理した
保険料は、受取人が負担した保険料と認められ、収入を得るために
支出した金額に該当するが、それ以外の保険料は、受取人自らが
負担したものとは認められないから、収入を得るために支出した
金額には含まれない。

国税不服審判所は、次のように判断している。

1 本件は、A医療法人の理事長である請求人が、A法人が支払った
満期保険金に係る支払保険料は、一時所得の収入を得るために支出
した金額に該当するとして、一時所得の金額の計算上、当該保険料を
控除して確定申告をしたところ、原処分庁が、支払保険料は、
請求人が支出した保険料とは認められないとして、更正処分等を
行ったのに対し、請求人が同処分等の違法を理由としてその全部の
取消しを求めた事案である。

2 所得税法34条2項に規定する「収入を得るために支出した金額」
について、「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を
生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」としているのは、
一時所得に係る収入に関連して、あるいは収入があったことに起因して
所得者が負担したようなものは収入を得るために支出した金額とする
ものであると解されるところ、このことは、個人を納税義務者とし、
当該個人の収入から支出を差し引いた純所得に課税するという
所得税の本旨からすれば、条理上当然であると認められる。

3 所得税法施行令183条4項においては、所得者自らが負担したと
認められる保険料等に限って「収入を得るために支出した金額」に
算入することとしている。

4 所得税基本通達34-4は、一時金の支払を受ける者(所得者)
以外の者が保険契約者として保険料等を負担した場合も、当該所得者
である使用人が実質的にその保険料等相当額を負担しているときには、
当該保険料等は当該所得者の収入を得るために支出した金額と認める
という趣旨で定められたものと解されている。

5 以上のことから、所得税法34条2項に規定する「収入を得る
ために支出した金額」とは、所得者である請求人自らが負担した金額
(実質的に負担した金額を含む)に限られると解するのが相当である。

6 A法人は、支払保険料のうち、その2分の1の金額を「保険料」
(以下「法人経理保険料」という)として経理処理し、その残額を
請求人に対する「役員報酬」として経理処理していることが認められる。

7 本件支払保険料については、A法人が保険契約者として生命保険会社
に支払っているところ、その経理については、法人経理保険料以外の
保険料は、請求人に対する給与として処理されており、請求人が
負担したと認められるから、この法人経理保険料以外の保険料は、
所得税法34条2項に規定する「収入を得るために支出した金額」に
該当するが、法人経理保険料は「保険料」として処理されており、
請求人自らが負担したものとは認められず「収入を得るために支出した
金額」に算入することはできない。


つまり、2分の1は会社の経費として処理しているから、個人の必要経費に
ならないが、2分の1は会社が給与として処理しているから、給与でもらって
個人で保険料を支払ったと認めますよ、という趣旨である。

これが国税不服審判所の裁決として出たということは、
このスキームを使っての節税策(租税回避という感が強いですね)が
使えるような気がしないでもない。

しかし、本当にそれでいいのだろうか。

朝倉先生も発表の中で保険の税務が整理しきれないと言われていましたが、
私も同感です。
この事件も、保険については外資の進出により新しい保険商品がどんどん
開発されているにもかかわらず、課税側は旧態依然のままで、未整理の
法律と通達のみで対応しようとしているところに問題があろう。

本件は、法人税基本通達9-3-4の不備をついたものである。

法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む)
を被保険者とする養老保険(被保険者の死亡又は生存を保険事故とする
生命保険をいい、傷害特約等の特約が付されているものを含むが、9-3-6に
定める定期付養老保険を含まない)に加入してその保険料(令第135条の
規定の適用があるものを除く)を支払った場合には、その支払った
保険料の額(傷害特約等の特約に係る保険料の額を除く)については、
次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次により取り扱うものとする。

(1) 死亡保険金(被保険者が死亡した場合に支払われる保険金をいう)
及び生存保険金(被保険者が保険期間の満了の日その他一定の時期に
生存している場合に支払われる保険金をいう)の受取人が当該法人
である場合
 その支払った保険料の額は、保険事故の発生又は保険契約の解除
若しくは失効により当該保険契約が終了する時までは資産に計上する
ものとする。

(2) 死亡保険金及び生存保険金の受取人が被保険者又はその遺族である
場合
 その支払った保険料の額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。

(3) 死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が
当該法人である場合
 その支払った保険料の額のうち、その2分の1に相当する金額は(1)
により資産に計上し、残額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。
ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む)
のみを被保険者としている場合には、当該残額は、当該役員又は使用人
に対する給与とする。

と規定されるところ、本件は(3)の逆のケースである。
本件通達は例示であるとされるが、本法にも通達にないケースであれば、
文理解釈が出来ない以上、反対解釈や類推解釈をせざるを得ない。
その結果、租税回避と言いたいような節税スキームが考案されかねない
事態を引き起こすのである。

私は本件については、裁決に批判的である。
なぜなら、死亡保険金の受取は会社で、生存保険金の受取は生存者
である理事長というスキームは、理事長へのボーナスではないか、
という疑いを持つからであり、理事長の法人に対する背任行為では
ないかと疑うからである。

つまり、法人格否認の法理を使えるケースになりかねないと考える。
私はクライアントにこんなリスキーな商品を提供できません。

節税を図ることを標榜していながらなんだ、と言われそうですが、
申告時点で税金が安くなっても、後から税務調査で指摘されて修正
するのでは、加算税や延滞税の無駄払いではありませんか。
結果として適正な節税を行わなければ意味がないと思います。

確かに節税策というのはリスクが伴うのは事実ですが、
リスク回避を考えるのも専門家としての責任ではないでしょうか。
リスク商品を提供する場合には、その効果だけではなく、
そのリスクをきちんと説明して、ご理解して頂いた上で、
クライアントの皆様にご選択して頂くのがあるべき姿でしょう。

自己責任の時代ですから、本質をしっかり見極めたいですね。


オバマ次期米大統領の経済対策に期待感
2008.11.25

オバマ次期米大統領は、24日、地元シカゴで記者会見し、
大規模な経済対策を講じる方針を示した上で、
来年1月に発足する新政権の経済閣僚を発表した。

財務長官には、クリントン政権で国際金融担当の財務次官を務めた
ティモシー・ガイドナー、ニューヨーク連邦準備銀行総裁、
経済担当の大統領補佐官兼国家経済会議議長に、クリントン政権で
財務長官を務めたローレンス・サマーズ、ハーバード大学前学長、
大統領経済諮問委員会委員長にクリスティーナ・ローマー、
カルフォルニア大学バークレー校教授を起用することが明らかになった。

陣容を見て明らかなように、オバマ政権における経済政策の基本線は、
クリントン政権の経済政策に近いものになろう。
市場経済中心ではなく、積極財政による景気浮揚策と企業救済策を
どう打ってくるのか、注目されるところである。

ガイトナー氏は、証券大手ベア・スターンズなどの大型金融機関の
救済や破たん処理を指揮してきた人物で、ポールソン財務長官も
「ガイトナー氏に対しては最高の敬意を抱いている。彼の判断力と
想像力は、米金融システムの保護と強化のためにわれわれが講じてきた
対策を考案、実施するうえで不可欠だった」と声明を出している。

サマーズ元財務長官の手腕は財務長官時代にも証明済みであり、
ローマー教授は、日経ビジネスオンラインでも、サブプライムローン
問題の状況など、米FRBの施策を基本的に評価する内容で、記事に
権威を与えた者として紹介される等、当代きっての経済学者である。

オバマ次期大統領は、このような経済閣僚でこの難局に取り組む訳です。

オバマ次期大統領は、記者会見で、
来年これまで見てきたものよりも大幅な財政赤字が見込まれると指摘。
すでに大幅な赤字を抱え追加景気対策を行えば、それらの財源を
どうやって手当てすればいいのか、米国の納税者は当然のことながら
懸念していると述べ、まず経済を回復軌道に戻すことに焦点を当てる
必要があると強調した。(ロイター25日10:05記事)

オバマ政権の経済運営に期待感をもたれているところである。


会計課長団達也が行く!(日経BP社)
2008.11.24

今日は、会計が果たす経営のための役割について分かりやすく
小説仕立てにした林總の「会計課長団達也が行く!」
(日経BP社2008)を紹介します。
本書は、日経ビジネスオンラインで連載していたもののうち、
第1部をまとめて本にしたものです。
現在第2部が日経ビジネスオンライン上で連載中です。

林氏は、「餃子屋と高級フレンチではどちらが儲かるのか」
の著者として著名な方です。
会計に関する小説仕立ての作品は、山田真哉氏の女子大生会計士
萌ちゃんシリーズが有名です。萌ちゃんのシリーズのRPG
「もえビジ」が角川書店から19日に発売されています。
まだ手に入れていないので、読んだらここで紹介するつもりです。

さて、話は団達也に戻します。

団は「経営に使えない管理会計は意味を持たない。」(7ページ)
という指導教授宇佐美の薫陶を受けています。
「経験の裏づけのない知識は鋭利な刃物と同じ」(8ページ)であり、
「コンサルタントとなる必須条件は、血反吐を吐くほどの実務経験を
積み、極限まで勉強すること」(10ページ)だから、その実務経験を
積むために、指導教授の友人が創業したメーカーの建て直しのために、
そのメーカーに経理課長として赴任したのである。

ところが、いざメーカーに赴任してみると、数々の不正行為が
見えてくるのである。しかし、それはほんの序の口にしか過ぎなかった。
団は、信頼する女性職員とともに、監査を担当する公認会計士にも
気付かれなかったような不正を暴き、会社の正常化の道を作っていく・・・

本書を読んで頂ければ、林氏が本書や餃子屋・・・などで何を伝えようと
しているのか、良く分かると思います。
宇佐美のセリフに「有能な経営者は、会計を経営戦略の柱と位置づけている」
(321ページ)というものがありますが、これこそ、林氏が言いたいこと
であろう。というよりも、この本を紹介する私の本心でもあります。

ここまでも会計書を何冊か紹介してきましたが、
ようやくズバリの本が出てきました。

ご興味がおありでしたら、本書だけではなく、日経ビジネスオンラインで
連載中の第2部「熱血!会計物語~経理部長 団達也が行く~」を
読んでみて下さい。

会計というのは、ドラスティックに社会を浮き彫りにする道具なんですよ。


人生は勉強より「世渡り力」だ!(青春新書)
2008.11.23

今日は、特にこれから社会に出て行く学生たちに読んでもらいたい
本を紹介します。

岡野雅行「人生は勉強より「世渡り力」だ!」(青春新書2008)です。

痛くない注射針を作った世界一の職人、岡野工業(株)社長の岡野氏が
書いた本、書いたというよりも、岡野氏が話したことを口述筆記した
ような本なので、非常に読みやすいですね。

まずタイトルが刺激的ですね。世渡り力ですからね。
ただ、この世渡り力という言葉に岡野氏の思いがある気がします。
本書18ページには、こう書いています。
「世渡り力ってのは、こすっからく生きていく、安っぽい手練手管なんかじゃ
ないぞ。人間の機敏を知り、義理人情をわきまえ、人さまにかわいがられて、
引き上げてもらいながら、自分を最大限に活かしていく“総合力”なんだよ。」

国士舘大学の私の授業では、授業の前半は税の世界とは関係のない話、
特にこの時期は就職活動に向けて学生へのメッセージを送ることが
多いのですが、本書58ページのある営業マンの話は、いいですね。
「仕事で頭を使わないヤツは伸びないよ。ただ真面目なだけじゃダメなんだ。」

まさにそうですね。中小企業経営にも直結するのですが、大企業であれば、
そのネームバリューと信用でそれなりの仕事ができると思います。
しかし、中小企業は違います。いくらいいものを作っても、
それがニーズのあるところに届かなければ売れないんですね。
ネームバリューはそのための近道ではありますが、それがないから
頭を使って、どうやって表に出すか、どうやって知ってもらうかを
考えなければならないわけです。

学生の就職活動も似たようなところがありますね。
特に急な不況で求人が突然減っただけに、3年生は泡食った状態です。
国士舘はOBの人脈を含め、ただでさえ遅れているわけだから、
まともに勝負したって、自分を売り込めないんですね。
それが6大学との就職率の差となって現れている気がします。

本書83ページでは、メザシの土光さんのエピソードが紹介されています。
「昭和50年代後半だったと思うけど、NHKが、80歳を過ぎてもなお、
行革に執念を燃やす土光さんの特集をやったことがある。そのとき放映された、
家での夕食風景がその呼び名の由来なんだよ。
夕食の膳に並んでいたのは、メザシに菜っ葉、味噌汁に玄米飯だった。
視聴者に与えたインパクトは大きかったと思うね。贅沢三昧をしてたって
不思議はない、それが当然だと皆が思っている、日本の財界を引っ張る
立場の人が、家ではそこまで質素な食事をしている。皆、
「あんなに偉くなっても、庶民感覚を忘れない土光さんは、たいしたもんだ!」
と拍手を送ったんだよ。」
「庶民でも夕食のおかずとしちゃお粗末だなって感じる、メザシの効果は
絶大だったんだよ。もっと、タネあかしをしようか?土光さんは確かに
メザシが好きだったようだけど、俺、土光家にメザシをおさめてた魚屋と
知り合って、聞いたんだ。
あのメザシ、一匹400円だ。30年も前だから、当時の400円といやあ、
けっこうな値段だよ。一山いくらのメザシとはわけが違ってたんだな。
もちろん、世間に値段を教える必要なんかないし、メザシの効果をめいっぱい
活用すりゃいいんだよ。それで、「メザシの土光さん」なら、行革の
リーダーにふさわしいというイメージが定着したら、最高の演出ってもんよ。」

まるでどこかの国の宰相に聞かせてあげたいような書きぶりですが、
土光さんのエピソードは自分の魅せ方を考えさせられますね。


NHK「トップランナー」の言葉(知的生きかた文庫)
2008.11.22

今日は、チャンスをつかみたい方にオススメしたい本を紹介します。

「NHK「トップランナー」の言葉」
(NHK「トップランナー」制作班編、知的生きかた文庫2008)です。

NHKの人気番組「トップランナー」から28人のメッセージを
ピックアップして本としてまとめたもので、
第1章 チャンスはいつもすぐそばにある!
第2章 夢中になれること、ありますか?
第3章 きっかけは自分で作れる!
第4章 「このままじゃダメだ」と思ったとき
第5章 仕事が楽しければ、人生はもっと楽しい!
第6章 自分にしかできないものって?
の6章構成になっています。

巻頭に取り上げられているリリー・フランキー氏の
「どんな仕事でも「得意です!」と答えて、受けてから勉強する」

これって、ただのはったりではないんですね。
私もよく使いますが、これほど怖い言葉はないんです。
もし出来なければ、一切の信用を失いますからね。
言ったこっちは死んでもやりきらなければいけないんです。
リリー・フランキー氏は、本書15ページでこう言っています。
「どんな仕事でも「得意です」と答えて、受けてから勉強するように
していました。新しいことをやろうとしているときはすごく
一生懸命だし、どんどんうまくなっていくから楽しかったんです。」と。

この点については、第2章で取り上げられている久石譲氏は、
「1回でもつまらない仕事をしちゃえば、そこで終わりですね」
と言われています(本書71ページ)。だから一生勉強するのだそうです。
プロフェッショナルの仕事はそういうものかもしれませんね。

また、「やりたいと思ったら、そうなるんだって思いこむのが第1歩」
(本書85ページ)と言うのは周防正行監督。「たとえば映画監督を
目指している人は、「自分は映画監督になるんだ、なれるんだ。」と
信じないと。そうしないと、何にもなれないもんですよ」と。

思いを口に出すことで、退路を断つことにもなりますが、
本当にそうなりたいのであれば、思いを形にするために
どんどん口に出すべきなんでしょうね。

私の場合はどうですかね。2つの方向性がありますが、
「お客様のためになくてはならない税理士事務所を作る」
「右山先生や山本先生のような堂々と意見を言える実務研究者になる」
という2つの夢を持っています。

頑張るぞ!


日本税務会計学会第44回年次大会
2008.11.21

昨日(20日)は、東京税理士会が協賛する日本税務会計学会の
第44回年次大会でしたので、東京税理士会館に行っていました。
私は出席率の良くない運営委員で、申し訳ないのですが・・・

今年のテーマは来るべき相続税の大改正に向けての今回の改正で
1.新たな事業承継を検証する
ー事業承継制度の有効な活用法ー
2.遺産取得課税方式の検証
ー相続税の課税方式の見直しに伴う主な法制的・実務的論点を中心にー
というテーマのパネルディスカッションが開催されました。

私にとっては、事業承継税制は、7月の段階で銀行で講演し、
9月末締切りで原稿を書いたテーマですから、非常に関心が強いところでした。
また、相続税の課税方式の変更については、相続時精算課税が導入された
当時から、国際的な潮流から考えても、いつかは遺産税方式から
遺産取得税方式に変更されるだろうなと考えていましたので、
いよいよか、という思いです。

私も講演で話していたことですが、新しい事業承継税制は、
80%納税猶予を適用するためのハードルが高すぎて、
実効性については非常に疑問です。
相続税の課税方式が変わることを前提としているところもありますので、
相続税の改正の本丸が出揃わないと、厳しいかもしれません。

しかし、そのためにも、安易な事業承継対策ではなく、
長期的視点に立って、誰に事業を引き継がせ、引き継がない相続人には
どの財産を引き継がせるのか、そのタイミングはいつを想定するのかを
含めて、しっかりプランニングをしていかなければ、結果として、
将来に禍根を残すことになりかねません。

今年の年次大会のテーマは、そういう意味でもタイムリーであり、
税理士業務に直結する大問題であると思われます。

私は、「理論武装は納税者のために!」
をキャッチコピーとして掲げていますが、
本来、こんなことを言うのは、プロフェッショナルのサービス業には
ありえないはずなんですよね。
昨日の年次大会の参加者は東京税理士会の所属税理士の中でも、
勉強する意識の高い方が多いはずです。
それでも、ディスカッションの内容がレジュメのどこに書いてあるのか、
探せずに往生している方が多く、パネラーがいちいち何ページと途中から
言い出しました。
この状況と言うのは、講演の内容を理解していない方が多いセミナーに
多い状況ですよね。少なくとも、学者さんが多い学会ではあり得ない状況です。

僕が当たり前のことをキャッチコピーとして使っているのは、
この状況のためです。プロフェッショナルのレベルを維持するだけではなく、
プロフェッショナルとして、向上心を持つのが当然ではないでしょうか。

内容の面白さの反面、業界の嫌な一面を見た大会でした。


収益計上の時期(弁護士報酬事件高裁判決)
2008.11.20

昨日は、弁護士報酬の収入計上時期についての地裁判決を紹介しました。
地裁では、納税者が完全敗訴してしまいました。
高裁ではどうだったのでしょうか。
今日は、東京高裁平成20年10月30日判決(TAINSコードZ888-1376)
を紹介し、収入計上時期について検討したいと思います。

1.高裁における控訴人の主張
権利確定主義は、形式的、発生主義的に理解されてはならず、担税力を
認め得る程度に所得が実現されたかどうかを具体的に検討する必要がある。
特に本件で問題となっているのは、ほとんどが多重債務者の事案であり、
上記の観点から具体的、かつ、慎重に検討されるべきである。上記のような
観点から所得税法の関係規定を解釈適用しなければ、憲法84条、29条
違反となる。

2.高裁の判断
当裁判所も、控訴人の請求はいずれも理由がないからこれを棄却するものと
判断する。その理由は、次のように補正し、当審における控訴人の主張に
対する判断を付加するほかは、原判決の理由説示と同一であるから、
これを引用する。
(1)弁護士報酬についても、報酬支払請求権が確定的に発生した時期を
基準として収入すべき金額を計上して所得を算定すべきであり、報酬支払
請求権が確定的に発生した時期については、弁護士と依頼者との間で締結
される委任契約において定められた弁護士報酬支払時期その他の支払に
関する合意に基づいて判断すべきである。

(2)A弁護士会報酬規定は、A弁護士会の会員の報酬に関する標準を
示すことを目的とし(1条)、次のとおり定めていることが認められる。
すなわち、A弁護士会報酬規定は、会員がその職務に関して受ける
弁護士報酬及び実費等の標準はこの会規の定めるところによることとし
(2条)、弁護士報酬の支払時期について、着手金は、事件等の依頼を
受けたときに、報酬金は、事件等の処理が終了したときに、その他の
弁護士報酬は、この会規に特に定めのあるときはその規定に従い、特に
定めのないときは、依頼者との協議により定められたときに、それぞれ
支払を受けることとし(4条)、弁護士は、各依頼者に対し、弁護士報酬を
請求することができる(6条1項)と明示した上で、弁護士は、依頼者に
対し、あらかじめ弁護士報酬等について十分に説明しなければならない
こととし(7条1項)、弁護士は、事件等を受任したときは、委任契約書
を作成するよう努めなければならないこととし(同条2項)、委任契約書
には、事件等の表示、受任の範囲、弁護士報酬等の額及び支払時期その他
の特約事項を記載することとし(同条3項)、依頼者が経済的資力に乏しい
とき又は特別の事情があるときは、弁護士は、A弁護士会報酬規定4条及び
第2章ないし第7章の規定にかかわらず、弁護士報酬の支払時期を変更し
又はこれを減額若しくは免除することができることとしている(8条1項)。
したがって、A弁護士会の会員である弁護士は、依頼者が経済的資力に
乏しい場合又は特別の事情がある場合に弁護士報酬の支払時期をA弁護士会
報酬規定の上記の定めと異なる時期に変更する必要があると判断したときは、
弁護士と依頼者との間で委任契約を締結し、弁護士報酬の支払に関する
合意をするに当たり、弁護士報酬の支払時期について明示した上で上記の
合意をし、その内容を委任契約書に明記しておくことが相当である。
このことにより、弁護士が依頼者に対する説明義務を十分に果たすことに
なるほか、権利確定主義により収入を計上して所得を算定すべき法制の
下で適正な税務申告を行う上でも必要、かつ、相当な措置を執ることに
なるというべきである。

(3)A弁護士会の会員である弁護士は、依頼者が経済的資力に乏しい
場合又は特別の事情がある場合に弁護士報酬の支払時期をA弁護士会報酬
規定の上記定めと異なる時期に変更する必要があると判断したときは、
弁護士と依頼者との間で委任契約を締結し、弁護士報酬の支払に関する
合意をするに当たり、弁護士報酬の支払時期について明示した上で上記の
合意をし、その内容を委任契約書に明記しておくことが相当である。
しかるに、控訴人と依頼者との間で交わされていた委任契約書には、
弁護士報酬の支払時期について上記の趣旨に沿った特約をした旨の記載は
なく、そのような特約がされたことを認めるに足る的確な証拠はない。

(4)控訴人は、前記1の主張を骨子として本件に関して詳論するが、
これらの点に関する認定、判断は、前記引用に係る原判決(前記補正部分
を含む)が説示するとおりであり、控訴人の上記主張はいずれも採用する
ことができない。控訴人の違憲の主張はその前提を欠くものである。


以上のような判断から、高裁でも納税者全面敗訴となりましたが、
本件は最高裁へ上告中である。上告が受理されるか注目したい。

さて、本件は、弁護士の報酬に関する収入計上時期を争う事例であるが、
同様のケースは、税理士等、専門職業である他士業でも起こりうる。
我々税理士であれば、相続税案件における成功報酬のケースなどである。

私の個人的見解は、本件は契約書にはっきりA弁護士会報酬規定に従う
と明記している以上、逆転は難しいであろうと思います。
しかし、契約書に報酬の計算方法を明記せず、後日精算を謳っていたら
どうであろうか。依頼者との交渉に失敗し、後日法的手段に訴えて回収する
ことは困難になる可能性がありますが、この場合には、確定できる金額が
ない以上、調査に基づく課税処分をしようにも、税務署にとっても収入金額
を確定できないであろう。

権利確定主義は、地裁判決が一で判示しているように、最高裁昭和49年
判決と最高裁昭和56年判決により、年度帰属の原則として定着している。
原告は、年度帰属の基準として例外として取り扱われている管理支配基準が
適用される事例であると主張しているように思われる。

金子宏教授によれば(所得の年度帰属「所得概念の研究」所収)、
(1)横領や窃盗による不当な利得も、課税の対象となる所得を構成すると
解すべきであるが、それらは無効な利得であり、被害者に返還しなければ
ならないものであるから、それらの利得が利得者の管理支配の下に入った
場合に、所得として実現したと解すべき。
(2)契約が成立しその履行がなされ、または継続的役務提供契約に基づいて
役務の提供がなされている場合において、その対価について争いが生じた
場合には、その争いが和解なり確定判決なりを通じて最終的に決着したときに
権利が確定すると解すべき。
(3)農地の譲渡について知事の許可が必要な場合には、権利確定主義を
適用すれば、知事の許可がなされるまでは所得の実現はあり得ないが、
知事の許可に先立ち引渡と代金の授受が完了し、譲渡人が自らそれを所得と
して申告しているような場合には、管理支配基準を適用。
といわれている。

契約書の文面を無視して管理支配基準を適用することには、法的安定性の
見地から賛成できませんし、管理支配基準を全面に出すことは、納税者の
恣意を認めることにもなりかねないので、課税の公平の見地からも疑問です。

権利確定主義における収入計上時期の判定については、法人税法では、
22条2項を巡る数多くの判例が出てきています。22条2項以外の事実
認定が争われる事例も多いですが、その中から、明確な基準が明示されて
くるかもしれませんね。


収益の計上時期(弁護士報酬事件地裁判決)
2008.11.19

弁護士報酬の収入すべき時期について争われた
東京地裁平成20年1月31日判決(TAINSコードZ888-1306)
東京高裁平成20年10月30日判決(TAINSコードZ888-1376)
を検討したいと思います。

今日は、東京地裁を紹介します。

1.事案の概要
本件は、法律事務所を経営する弁護士である原告が、原告の事業所得に
係る弁護士報酬の額について、着手金、報酬金の収入時期について、
着手金の収入時期を人的役務の終了の時期に、報酬金の収入時期を
事件の処理が終了した後の合意の時期に、それぞれ計上していたところ、
税務署長は、委任契約時に着手金請求権が確定し、事件の処理が終了し
報酬金を請求したときに報酬金請求権が確定するとして、所得税及び
消費税について更正処分並びに過少申告加算税賦課決定処分を行った
ことから、処分の取消を求めて提訴されたものである。

2.東京地裁の判断
一.収入金額の計上時期
所得税法36条1項は、現実の収入がなくても、その収入の原因たる
権利が確定的に発生した場合には、その時点で所得の実現があったもの
として、同権利発生の時期に属する年度の課税を計算するという建前
(いわゆる権利確定主義)を採用しているものと解される。これは
所得税が、経済的な利得を対象とするものであるから、実現された
収支によってもたらされる所得について課税するのが基本原則であり、
ただ、その課税に当たって常に現金収入の時まで課税できないとした
のでは、納税者の恣意を許し、課税の公平を期し難いので、徴税政策上の
技術的見地から、収入すべき権利の確定したときをとらえて課税する
こととしたものであり(最高裁昭和49年3月8日判決)、ここにいう
収入の原因となる権利が確定する時期はそれぞれの権利の特質を考慮
して決定されるべきである(最高裁昭和53年2月24日判決)。

二.着手金について
(1)被告は、原告の所属するA弁護士会の報酬規定によれば、着手金は
事件等の依頼を受けたとき支払を受けるものとされており、原告も、
依頼者との間で締結する民事事件又は刑事事件等の処理に関する委任契約
において、同旨の合意をしている。原告は、受任契約に基づき、受任契約
締結時において、依頼者に対して当該委任契約において定められた着手金
の全額を請求する権利を確定的に取得する、と主張する。
また、被告は、着手金が人的役務の提供の過程において発生するもの
ではなく、事件等の依頼を受けたときに支払を受ける性質の金員として
支払われるものであるから、たとえ分割払特約が付されたとしても、
それは単にその支払方法を定めたものにすぎず、委任契約締結時に既に
権利が確定しているというべきであるとも主張する。

(2)弁護士報酬のうち、着手金とは、事件等の性質上、委任事務処理の
結果に成功不成功があるものについて、その結果のいかんにかかわらず
受任時に受けるべき委任事務処理の対価をいうこと、及び、着手金は、
事件等の依頼を受けたときに支払を受けるものであることが認められる。
着手金は、ほかの種類の弁護士報酬と異なり、事件等のいかんにかかわらず、
委任事務処理が開始される前に支払を受けるものであり、その金額も受任時
に確定されることによれば、弁護士が依頼者から事件等を受任した時点で
収入の原因となる権利が確定するとみるのが自然である。

(3)これに対し、原告は、着手金は、事件の受任時に依頼者から
支払われるが、その性質は、委任事務処理の対価、すなわち、弁護士
としての人的役務の提供の対価であるから、着手金請求権は、事件等の
処理という人的役務の提供が完了するまで確定しないとして、着手金が
現実に支払われた時点で、収入として計上する慣習があり、また、
権利確定主義の解釈としても、着手金が現実に支払われた時点で収入
として計上するべきである旨主張する。

(4)本件全証拠によっても、このような会計処理が原告のみに
とどまらず弁護士全般によって行われている形跡はうかがわれない。
着手金について分割払の定めがあったとしても、それは単に着手金の
支払方法を定めたものにすぎず、受任時に支払われる金員であるという
着手金の本質を変更するものではなく、着手金に係る権利の確定時期を
左右するものではないというべきである。

三.概算実費について
原告は、破産免責申立事件等において、受任時に概算実費の支払を
受けているところ、これは、通常の郵券、交通費、送料等に充てることが
想定される金員で、事件終了後清算を予定されていないものであることが
認められる。
原告は、これについても、着手金と同様に、現実の支払があった時点で
収入として計上すべきである旨主張するが、同金員の支払が委任契約に
おいて確定するというべきであるから、受任時に収入として計上し、
また、同時点で資産の上とがあったと解するのが相当である。

四.報酬金について
(1)被告は、報酬金について、原告が受任契約上、依頼者との間で、
依頼者は事件が終了した時に、A弁護士会報酬規定に基づいて原告が
依頼者に請求する金額を報酬金として支払う旨の合意をしていることから、
受任義務に基づき、当該事件の処理が終了した後、原告が同報酬規定に
基づいて依頼者に報酬金を請求した時に、権利確定主義に照らして、
その金額は、当該請求の日の属する年分の収入金額に算入されるべきである
旨主張する。

(2)弁護士の報酬のうち、報酬金は事件等の性質上、委任事務処理の
結果に成功不成功があるものについて、その成功の程度に応じて受ける
委任事務処理の対価をいい、事件等の処理が終了したときに、それぞれ
支払を受けるものとされており、その額は、委任事務処理により確保した
経済的利益の額をそれぞれ基準として算定することが原則とされている
ことが認められる。
このことによれば、報酬金請求権は、委任事務処理が終了し、原告が依頼者
に対し報酬金を請求した時に、権利として確定するというべきである。

(3)原告は、報酬金は、成功結果が得られない限り取得できない報酬
であり、通常の場合、事件を着手する段階では確定しておらず、しかも、
多くの場合には「A弁護士会規定に基づく額」等の抽象的な定めしかなく、
事件が終了したからといって直ちに金額が自動的に確定するものではない
ため、事件完結時において、弁護士と依頼者との間で、事件の難易、
経済的利益、労力の程度、依頼者との関係等を踏まえ、成功結果の評価を
巡り報酬内容を確定するための協議が必要であり、報酬金額に関する合意
が成立しない限り、報酬金債権が確定したといえない旨主張する。

(4)しかし、証拠によれば、当時、各単位弁護士会において報酬規定
を定め、その中で、報酬金の原則的な算定方法を定めており、原告と
依頼者との契約で同規程を引用していたことが認められる。
報酬金は委任事務処理の成功の程度に応じて、同事務処理により確保した
経済的利益の額を基準として算定されるものであり、受任時にあらかじめ
具体的な金額を定めることが性質上困難であることを併せ考慮すると、
受任契約に報酬金額として具体的な金額を明示していなかったとしても、
当事者間には報酬金額を上記算定方法に従って決められた相当額にする
旨の合意があるというべきであり、したがって、報酬金請求権の内容は、
委任事務処理が終了し、弁護士が依頼者に対し報酬金を請求した時点で
確定されたものと考えられる。


交渉の前に交渉に勝てる状況を作る
2008.11.18

「交渉の前に交渉に勝てる状況を作る」
昨日出席した高収益トップ3%倶楽部のセミナーで
講師の井上さんがおっしゃっていた言葉です。
井上さんは、CBSソニー時代に多くのアーティストを
マネジメントしてきた方で、癖の強いアーティストであっても
信頼される人間関係とそのプロジェクトに対する理解を
得られる関係を交渉までに作り上げていれば、
どんな交渉でも勝てる、ということをおっしゃっていました。

あらゆるビジネスの場で応用できることだと思いますね。
私のような税理士という仕事は、クライアントとの信頼関係を
築けなければ、いい仕事ができません。クライアントが
私を信頼して何でも話して頂かなければ、様々なニーズに
気付けなかったり、事前対策が必要な節税策を採れなかったり
しますので、クライアントにとって必要なサービスの提供が
困難になる場合もあります。

きちんとした信頼関係に基づいた関係を構築できている税理士は
お客様目線で様々な提案ができるのですね。

私どもも出来るだけ強い信頼関係を築かせて頂きたいと考えております。
いい仕事をするためだけではなく、クライアントが安心して税務を
依頼できる環境を作るためにも、信頼関係が大切だと考えるからです。

私どもの事務所では、セカンドオピニオンで依頼されるクライアントも
いらっしゃいます。すでに税理士に依頼している会社様が、
今の先生との信頼関係を崩してまで他の税理士に相談するのは、
非常に難しいと思いますし、また、崩して頂きたくないのです。
これまで事業をやってこられた社長様と顧問税理士の関係において、
他に漏らされたくない情報であったり、オフレコの情報であったり、
色々な関係を築いていられるはずです。
それは社長様の事業の歴史でもあるはずです。

私どもは、ちょっと違った視点からの意見を聞きたい、
うちの先生は相続税対策や事業承継対策をやってくれない、
といった、参考意見や依頼していない分野について、
セカンドオピニオンをやらせて頂いております。
(顧問契約と異なり、相談料を頂いておりますが・・・)

私ども税理士は、クライアントとともに共存共栄を目指しています。
皆様とともに、関係各位の皆様との信頼関係をしっかり構築して、
一緒に成長していきましょう。


役員分掌変更と退職の事実
2008.11.17

先週末14日6時からの日本税法学会関東部会(於専修大学)において、
役員分掌変更と退職の事実というテーマで学会発表をしてきました。

内容的には、6月18日に東京税理士会館で行われました
第21回租税訴訟学会研究会での発表と同じです。
その時のレジュメにその後に発表されたり、私が確認した参考文献の
一覧と、上場企業の執行役に就任したために支給された
打切り支給退職金の事件(事例3として紹介した学校法人理事長が
高校校長を退職したことによる退職金の事件と同じ裁判所・同じ日付の
大阪地裁平成20年2月29日判決、TAINSコードZ888-1330)の判決要旨を
発表資料として用意させて頂きました。

事件の詳細については、すでにここで書いていますので、
過去の記事をご参照下さい。

分掌変更に伴う退職金の支給については、法人税基本通達9-2-32が
基準とされていることは間違いありませんが、この通達の規定は
形式的に当てはめるだけでは、税務調査に基づいて否認されます。

9-2-32によれば、
(1)常勤役員が非常勤役員になったこと
(2)取締役が監査役になったこと
(3)分掌変更の後におけるその役員の給与が激減(おおむね50%以上の
減少)したこと
という3つの要件が例示されています。

多くの税理士はこの通達に従って、通達の要件に該当するように
クライアントを指導されていることと思います。

しかし、最高裁平成19年3月13日判決(TAINSコードZ888-1249)を始めとして、
多くの事例では、実質的に見て退職の事実がないとして、
支給された退職金の退職所得性を否認し、役員賞与とされています。

最高裁平成19年3月13日判決をよく読んでみると、形式的には、
完璧に通達の要件を満たしています。
しかし、退任したはずの前社長が従前どおり対外的に中心として経営活動に
従事していますし、主要な取引先が、形式的に社長が交代した2年半後も
前社長のことを社長であると誤認していたこと等、社長の交代は名目的な
ものに過ぎないような実態が、事実認定により明白となっていることから
「退職の事実がない」として否認されているのである。

分掌変更による退職金の退職所得性が容認されている平成18年11月28日裁決
(TAINSコードF0-2-277)の場合には、退任した社長に実権がないことが
事実認定から明白である。2つの大阪地裁平成20年2月29日判決(理事長事件
TAINSコードZ888-1319、打切り支給事件TAINSコードZ888-1330)は、他の従業員と
同様の基準において支給されている退職金を受け取っており、労働契約上も
契約が異なる雇用となっていることが重視されたのであろう。
(労働契約上の点の示唆は、脇谷弁護士の指摘により気付きました。
今後の研究の糧にさせて頂きます。ありがとうございました。)

事実認定により「退職の事実」が認定されていることを鑑みると、
我々税理士は、通達の文言を形式的に当てはめるのではなく、
その趣旨に基づいて、実質的に検討する必要があろう。
この点は、月刊税務事例に掲載させて頂いた論文でも引用させて頂きましたが、
山本守之先生が以下のようにおっしゃっている通りである。
「法人税基本通達9-2-23(当時、現9-2-32:カッコ内筆者)の(1)、(2)、(3)
は実質的な退職を判定するための通達上の要件を示しているものにすぎず、
退職の事実はあくまでも実質により判定すべきである。また、同通達の
(1)から(3)は通達が示した例示にすぎず、役員としての地位の激変は実質的に
判定すべきであり、通達に頼って税務の解釈をすることは危険である。
通達を適用する場合には、適用上の背景を無視してはならない。」
(山本守之「役員の実質的退職の判定と通達の役割」月刊税務事例39巻1号)

最高裁平成16年7月20日判決(平和事件最高裁判決、TAINSコードZ888-0862)は、
「税理士は専門家としての責任において、解説書の記述を判例等を考慮した
上で検討しなければならないことを要求していると考えられ、その上、
自己の判断の根拠とリスクについて、依頼者に対する説明責任さえ負っている
ことを、我々税理士は肝に銘じなければならない」
(拙稿「税理士の専門家責任」税法学554号)のである。

我々税理士はプロフェッショナルの独占事業者として国家からお墨付きが
与えられている意味をよくよく考える必要があろう。


自治会法人の設立
2008.11.16

今日、事務所のあるマンションの自治会法人の設立関係で
説明会に参加してきました。

父が生前、自治会長や管理組合理事長をやっていたという関係もあって、
役員ではないんですが、関係者として関わっております。

いわゆる地縁団体については、会長名義で不動産登記がなされ、
銀行の通帳が作成されることが一般的です。
しかし、名義人である会長が変わると、名義変更が必要になったり、
金融機関のペイオフの問題が生じた場合に、名寄せによって
同一人物に対して上限1000万円までしか保護されませんが、
個人の預金と団体の預金が合計されて計算されてしまったり、
ご不幸にも在任中にお亡くなりになると、
事情を知らない相続人と団体とで所有権の問題が生じたり、
税務署が相続財産と誤認したりと、相続上の問題が生じることもあります。

こうした問題に対処するために、平成3年に地方自治法が改正され、
地縁団体が法人格を取得できるようになったわけです。

地縁団体が法人格を得るためには、自治体による認可が必要になりますが、
そのためには、次の4つの要件を満たさなければなりません。
1 地縁による団体の存する区域の住民相互の連絡、環境の整備、
集会施設の維持管理等良好な地域社会の維持及び形成に資する
地域的な共同活動を行うことを目的とし、現にその活動を行っていると
認められること。
2 地縁による団体の区域が、住民にとって客観的に明らかなものとして
定められていること。この区域は、当該地縁による団体が相当の期間に
わたって存続している区域の現況によらなければならないこと。
3 地縁による団体の区域に住所を有するすべての個人は、構成員と
なれる旨が規約に定められていること及びその相当数の者が現に
構成員となっていること。
4 規約を定めていること。この規約には、(1)目的、(2)名称、
(3)区域、(4)事務所の所在地、(5)構成員の資格に関する事項、
(6)代表者に関する事項、(7)会議に関する事項、(8)資産に
関する事項が定められていなければならないこと。

要件を満たした場合に、保有財産の目録など、必要書類を整備して
法人設立の認可を申請するわけです。
その手続きについては、一般の法人設立とよく似ています。

事務所のあるマンションでは、自治会と管理組合とで増築部分として
自治会館を所有していますが、その所有按分を巡って疑義があり、
私が管理組合からの委託を受けて、その内容を確認するために、
過去の資料等を確認させて頂いて、内容を明確にさせて頂きました。

その内容は、守秘義務の関係からここで書くわけには行きませんが、
自治会長様以下役員の皆様には、この公正証書に書かれていることと、
実際の現況とが異なることを明確にして、区役所と交渉して頂くことに
なります。私もマンションの区分所有者として、マンション住民や
区分所有者の共有財産を安全に保全して頂く必要がありますから、
できるだけのことをさせて頂くつもりでおります。

共有財産を目減りさせることがなく(必要以上の出費がなく)、
自治会の総会で既に決議されている自治会法人の設立に向けて、
頑張っていきましょう。


新・事業承継税制のことが30分で分かるQ&A
2008.11.14

月刊経理WOMAN11月号に、
「新・事業承継税制」のことが30分で分かるQ&A
という原稿を書きました。

新しい事業承継税制については、今年の10月から新制度が適用
されますが、具体的な税制の内容については、まだ政府税調からも
与党税調からも正式発表されておりませんので、税調の見解の
早期開示が求められるところです。
ただ、今年の10月に遡って適用されることは、平成20年改正で
決まっていますので、早期の政治決着が待たれますね。
ここでも判例紹介をしておりますが、遡及適用に関する福岡高裁、
東京地裁、千葉地裁の判決では、遡及適用合憲の結論が出ています。
私は租税法律主義が求めるもののうち、予測可能性の確保の観点
から不利益遡及適用については否定的な考えを持っておりますが、
有利適用については、第三者保護の必要性が低いことから、
有利適用であれば許されると解しています。
新事業承継税制も納税者にとって有利適用ですので、
積極的に活用していきたいものです。

ところで、事業承継税制については、
現行の10%減額から80%の納税猶予に変更されることから、
減税効果が非常に大きく、我々の業界では非常に注目されています。
しかし、未だに業界を対象としたセミナーばかりで、
納税者に直接、情報発信されているケースが少ないと思います。
私は4ヶ月前の7月半ばに、このテーマで東京東信用金庫金町支店で
セミナーを開催させて頂きました。情報が明確になった時点で
第2弾のセミナーが出来れば、と考えているところです。

ただ、減税効果が大きい反面、事業承継者には非常にリスキーな
制度になっているように感じています。
その最大の問題が「納税猶予」問題です。
相続税の20%しか払わなくて良いとなれば、事業継承者にとって
ありがたい制度かもしれません。しかし、そのための要件が、
現在公表されている資料から推察する限り、非常にハードルが高いのです。

まず5年間の事業継続要件です。
事業承継後5年間は、承継者が会社の代表者であり続けなければならず、
雇用も80%を維持しなければならないことになっています。
多くの中小企業は、年齢構成がいびつで、現社長と同年代の従業員が
多いところが多いのではないでしょうか。しかし、80%の納税猶予を
受けるためには、承継後5年間、従業員数の80%の雇用を維持
しなければならないため、やめる方の代わりを探してこないと、
猶予適用除外として、納付義務がそのタイミングで発生することになります。
また、株式保有要件には年数要件がなく、最悪の読み方をすると、
死ぬまで猶予対象株式を保有し続ける必要が出てくるかもしれません。

経理WOMANにはこのように書きました。
「従業員数の多い中堅企業はともかく、家族経営の零細企業にとって、
雇用の8割維持は非常に困難な条件です。たとえば、両親と子供2名、
従業員1名の5名で経営している場合、相続が発生して4名になっても
8割の維持はできています。しかし、その5年以内に再度相続が
発生して3名になった場合、雇用が75%になり、納税猶予の適用から
除外されます。」(92ページ)

ただ、リスクばかりではありません。
相続発生時に大きな問題となる事業用財産の散逸を防止することが
可能になったのです。つまり、民法の遺留分に対する特例措置として、
生前贈与株式を遺留分の対象から除外したのです。
したがって、事業用財産を法人所有とし、株式を生前に移転させておけば、
法的には事業用財産は完全に事業承継者のものとなるわけです。
相続時に財産の取り合いから兄弟ケンカが始まることも多く、
そのために、事業の継続が困難になるケースも多かっただけに、
遺留分の対象から除外されるこの改正の効果は大きいですね。
ただ、民法の特例については、10月ではなく、来年
(1月とも4月とも言われていますが)からの適用になります。
時期が異なりますので、注意して下さい。


地方法人特別税(税務弘報12月号)
2008.11.13

税務弘報12月号に、「地方法人特別税の創設」という原稿を書きました。

我々税理士は地方税を得意としている方は少ないと思います。
私はその数少ない一人でありたいと思っています。
平成13年に連結納税時代における法人事業税の在り方(国士舘法研論集2号)、
平成14年に固定資産税評価額における適正な時価(資産評価政策学5巻2号)、
平成15年に連結納税制度における質問検査権(国士舘法研論集4号)
ー子会社を担当する地方税職員と税理士の守秘義務を中心にしてー
と3本の地方税関係の論文を発表しています。

話を戻しましょう。

福田政権下における地方税改革として行われた地方法人特別税の創設は、
近い将来来るべき、抜本的な地方税大改革の前に行われた暫定措置に過ぎません。
しかし、その方向性は、地方税財源が都市部に集中することがないよう、
財源の地域的偏在性の是正のために行われたものであり、
近い将来実施されるはずの地方税改革と同じ方向を向いたものである。

つまり、地域的な偏在性の大きい地方法人二税のうち、
法人事業税の税率を引き下げ、その分を地方法人特別税・地方法人特別譲与税
として、法人事業税分の財源を、地域的偏在が少ないように配分する制度である。

地方税改革の方向性として、地方消費税の拡充が求められ、
今回の地方法人特別税も制度設計としては、地方消費税と類似した設計に
なっているように思いますので、地方独自の視点からの税務調査が
ほとんど不可能になる点も含め、地方自治の観点からは疑問があります。

平成13年、15年に発表した前掲論文でも指摘した点ですが、
地方法人特別税はあくまで国税であり、地方法人特別譲与税は、国税として
徴収した地方法人特別税を地方に譲与するための制度であることから、
地方交付税と何も変わることがないため、「税額に各都道府県が疑問を持った
としても、各都道府県は自県にのみ課税権及び徴収権を有するに過ぎないため、
(略)質問検査権を行使しがたい」(前掲13年論文96ページ)であろう。

私は、地方独自の視点からの独自課税の推進こそ、地方自治のあるべき姿であり、
国税に乗っかって、交付税を当てにするのは筋違いだろうと考えています。
もちろん、現状では、地方税職員の調査能力の問題もあるでしょう。
私が税理士補佐人として訴訟参加した東京高裁平成20年7月10日判決
(TAINSコードZ999-8202)においても、調査の現場にほとんどでたことのない
調査担当者のずさんな調査を鵜呑みにして税額3億円を超える処分がなされ、
その結果、東京高裁は納税者勝訴の判決を下していることを考えても、
東京都でさえ、調査能力に疑問がある状況とはいえ、交付税で行ったり、
地方消費税や地方法人特別税の場合には、地方税職員に調査検眼が一切
与えられていない。「地方自治体の租税職員には調査能力がないから
法的にも調査権限を与えないとしていいものであろうか。」(前掲15年論文
85ページ)地方自治の観点から、地方税については、地方税職員にも
調査権限を与えるのがスジであろう。

来るべき地方税大改革の折には地方自治が達成できるようなシステムが
構築されることを願ってやまない。


第7ブロック支部連絡協議会
2008.11.12

昨日(11日)2時から、東京税理士会館にて、
平成20年度の第7ブロック支部連絡協議会が開催されました。
わが葛飾支部が当番支部でしたが、
足達支部長以下、執行部の皆様方の大変なご尽力もあり、
第7ブロックの他支部からのご協力の下、成功できたものと思います。

今回の議題の1つに、東京会制度部の問題がありましたので、
制度対策委員会の委員として参加させて頂きました。

今回の連絡協議会は、「東京会と語る」をテーマに
綱紀部、業務侵害観察部、税務支援対策部、制度部の
それぞれの所掌領域について、東京会の見解をお伺いし、
我々からの質問(事前に各支部を通じてアンケートをお願い致しました)
にお答えして頂きました。

詳細にまでは書けませんが、
ニセ税理士行為(税理士以外に税務代理業務は禁止されています)や、
広告の自由化によって顕在化してきた税理士ではないものが
税務相談行為を行うことの違法性に対しての、東京会の取組みが
ある程度明確になりましたね。
また、同様に、税理士が他の税理士の営業妨害になりかねないような行為
に対しても、どこまでという線引きは難しいけれども、ニュアンスとして
この辺かなあ、というのは分かりましたね。
税務支援については、最近の国税当局のアウトソーシングの影響もあって、
非常に熱心な質疑がありました。

私の所掌でもある制度部については、非常に多岐に渡って、事前の
質問を出してあったのですが、非常に明確でまとまった回答を頂きました。
特に試験制度改革については、全ての人が1科目以上の合格を必要とする
という改革の方向性は、我々の業界の質の向上には不可欠かもしれません。
免除組の私が言うのもなんですが、試験免除で税理士になられた方には
継続的な研究をされていないために、プロフェッショナルのレベルを
維持できていない方も多く見受けられますので、
過酷な試験を突破してきたことを要件とすることには賛成ですね。

我々税理士がプロフェッショナルの国家資格者として
共存共栄していくことを強く望むところです。


ジェイ・エイブラハム来日
2008.11.11

11月13日(木)~15日(土)、ヒルトン成田クラウンホールにて、
世界的なマーケティングコンサルタントのジェイ・エイブラハムによる
戦略的ビジネス構築セミナーが開催されます。

私は先日の体験セミナーに参加しましたが、
14日6時から専修大学で開催される日本税法学会関東部会において
発表する予定が入っているため、残念ながら参加できません。

ジェイ・エイブラハムの初来日であり、またご高齢のため、
今度いつ来日されるか見当がつかないため、誠に残念です。

約70万円のセミナー参加費は投資額としては安くはない金額ですが、
同時通訳がついて、日本語訳のテキストがついてですから、
高くはないかもしれませんね。

先日の体験セミナーでは、シンガポールでのジェイのセミナーに
参加された方が講師として講演され、ジェイの考えの一端を垣間見ましたが、
なるほど、世界No1といわれるだけのことはあるかな、
と思いましたね。マーケティングに触れたことのない方にとっては、
世界観が変わるかもしれませんね。

お時間がおありの方は、明後日からですが、ご検討してはいかがですか?

ちなみに、今日は、第7ブロック支部連絡協議会のため、
東京税理士会館に一日つめています。
私が所属する制度対策委員会の所掌範囲が議題の1つのため、
気が抜けませんね。


修士論文中間発表会
2008.11.10

8日(土)、9時から18時半まで、昼食休憩と3回のトイレ休憩(10分)
を挟んで、9時間半の長丁場で、今年も、国士舘大学大学院法学研究科の
修士論文中間発表会が開催されました。

わが西野研究室12名を含む2年生20名が、中間発表会に臨みました。
今年は例年になく遅い時期の開催で、通常は10月の3~4週目なのですが、
余りにも進度が遅いこともあって、開催が遅くなりました。

西野先生から聞かされていた状況ほどはヤバイ状態ではありませんでしたが、
今年の2年生には最後の最後で体力勝負が出来るタイプが少ないだけに、
遅すぎる状況には心配が残りますね。

特に、この時期の中間発表であっても、結局何が言いたいの?
という院生もおり、これから相当ネジを巻いていく必要がありそうですね。

ただ、中間発表会の状態で今年の卒業を諦めさせる院生がいなかったのは
まだ救いですけどね。

修士論文である以上、調べたことをまとめただけのレポートでは
卒業させるわけにはいきませんね。
へんなものを免除申請で使われたら、国士舘はその程度しか指導しないのか
と国税庁や税理士審査会に誤解を与えかねないですからね。
院生一人の問題では済まされないのですね。
その後に続く後輩たち全員が迷惑するからです。

幸いにして、これまで若干ひどいケースもなくはないですが、
それなりのレベルは確保できてきたと思っています。
先生が倒れたときも、私を含めたOBやドクターがフォローしてきたつもりです。

今年も無事に12名が2年で修了できることを願っています。
そして、税理士会で研修が出来るものが数名は出てきて欲しいと期待しています。

みんな、頑張れ!


電話による税務相談(東京高裁H19.2.27)
2008.11.08

電話による税務相談において担当職員が納税者に対して行った
回答と異なる内容の課税処分がなされた場合において、
当該回答は税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を
表示したものではなく、また、納税者自身にも慎重さに欠ける
ところがあり、当該回答に対する納税者の信頼は保護されないから、
当該課税処分は課税上の信義則に違反しないとされた
東京高裁平成19年2月27日判決(訟務月報54巻3号791頁)を紹介します。
TAINSで検索をかけたのですが、11月6日現在では見つけられませんでした。

本件は、千葉地裁平成17年12月13日判決、
東京高裁平成19年2月27日判決を経て、
最高裁に上告したが、平成19年6月26日、
上告棄却、不受理決定として納税者敗訴が確定している。


本件は、原告が租税特別措置法(平成13年改正前)41条の5の適用を
受けることができるものとして、平成11年に生じた居住用財産の
譲渡損失の金額の繰越控除を行って平成14年分の所得税の確定申告を
したところ、被告市川税務署長が、確定申告書に買換資産に係る
住宅借入金等の残高証明書が添付されていないため同条を適用する
ことはできないとして更正処分をしたことから、原告が、
被告市川税務署長に対して、上記確定申告は、事前に税務相談室に相談し、
本件繰越控除につき同条の適用がある旨の回答を得て、これを信頼して
行ったものであるから、本件処分は課税上の信義則に違反すると主張して、
その取消しを求めるとともに、被告国に対して、税務相談室による
誤った回答により、仮に本件繰越控除が認められた場合には還付を
受けることができたはずの源泉所得税の一部及び本件処分により納付
した所得税差引納付額に相当する額等の損害を受けたと主張して、
国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めたものである。

本件では、原告は、東京国税局税務相談室川崎北分室に電話相談している。

1 事実の概要
(1)控訴人は、昭和62年12月24日ころ、A市所在のマンションの1室
(本件譲渡資産)を1億5144万円余で取得し、平成元年1月9日ころ、
これを九重のように供した。
(2)控訴人は、平成11年1月20日ころ、B市所在のマンションの1室
(本件買換資産)を7686万円で取得し、同日ころ、これを居住の用に
供し、その取得代金の一部5000万円(本件借入金)を借り入れた。
(3)控訴人は、平成11年7月8日ころ、本件譲渡資産を8060万円で譲渡した。
(4)控訴人は、平成11年分の所得税の確定申告の際、住所地を管轄する
緑税務署長に対し、上記譲渡について措置法41条の5を適用し、翌年以降
繰り越される居住用財産の譲渡損失に係る純損失の金額を4460万円余と
記載した確定申告書を提出した。
(5)控訴人は、平成14年7月、新しい勤務先への通勤時間を短縮するため、
本件買換資産からの転居を考え、C市所在の本件マンションの購入を検討した。
(6)控訴人は、平成14年9月12日、税務相談室に電話し、「現在、
租税特別措置法に基づく居住用住宅買換えの譲渡損失の繰越控除を受けて
3年目に当たるが、平成14年中に借入金残高を一括返済しても繰越控除を
受けられるか。」と相談した。これに対し、税務相談室の担当職員は、
「繰越控除の適用を新たに受けるには新住居の住宅ローンの存在が
要件だが、繰越控除の継続についてはローンの存在は要件とはなって
いないので、完済しても損失の繰越控除を継続して受けることができる」
と回答した。
(7)控訴人は、平成14年9月13日、電話で本件マンションの値下げ交渉
をし、同月20日に、現金一括であれば7500万円とする旨の回答を受けた
ので、同日付で購入の申し込みをし、同年10月3日、売買契約を締結した。
(8)控訴人は、平成14年10月31日、本件借入金の繰上げ一括返済を申請し、
同年11月15日、本件借入金を一括返済し、平成15年1月17日、本件マンションの
取得資金の一部5000万円を借り入れた。

2.裁判所の判断
一般に、税務相談は、税務署側で具体的な調査を行うこともなく、
相談者の申立てに基づき、その範囲内で、行政サービスとして納税申告
をする際の参考とするために一応の判断を示すものであって、仮に、
その相談が課税に関わる個別具体的なものであったとしても、その助言
どおりの納税申告をした場合には、その申告内容を是認することまでを
何ら意味するものではなく、最終的にいかなる納税申告をすべきかは、
納税義務者の判断と責任に任されていることを考慮すれば、税務相談に
おける回答ないし助言は、税務署長等の権限のある者の公式の表明と
解されるような特段の事情がない限り、信頼の基礎となる公的見解と
いうには不十分であるというべきである。
殊に、電話による税務相談は、不特定多数の者から、資料の提示を
受けることなくその申術する事実関係を前提として、納税申告につき
手続上の問題のみならず、課税要件の存否など実体上の問題についてまで、
口頭で相談され、短時間のうちに回答することを求められるものであり、
これらの判断資料や時間等の制約があることを考慮すると、その回答には
自ずと正確性に限界があることはやむを得ないものというべきであるから、
相談した者は、回答を1つの参考意見として受け止めるべきであるとする
のが相当であり、回答を絶対的なものとして信頼すべき特別な事情が
ない限り、その信頼は保護されないというべきである。


以上のような判示で納税者の主張をいずれも退けたのである。

本件のインパクトを我々税理士は重く受け止めなければならない。
おそらく本件は、近年の税務当局の税理士からの質問に対する対応の
方向性を決めてしまった判例の1つであろう。
横浜から市川に転居した納税者がなぜ川崎北税務署の税務相談室に
相談したのであろうか。
それも市川のほうが通勤に便利ということからの転居の方である。
考えられるのは、原告の顧問税理士が川崎の方だからであろう。

私が実務家として心掛けていることは、クライアントにリスクを
負わせないことである。そのために、本件のような、疑義がある
ケースでは、資料を用意して、所轄税務署に指導を仰ぐようにしている。
現在では、事前にアポを取って持参しないと、指導さえして頂けないが、
所轄で、全ての資料をお見せしての「指導」であれば、
公的見解をゲットできるからである。忙しい等の理由で電話相談を
なさる方が多かったのは事実であるが、サービスの一環として
情報提供しているにすぎない相談室への電話相談はあくまで参考意見
というのが、裁判所の見解である。

平和事件最高裁判決でも、当該事例を判決等に照らして検討しなければ
責任を免れない旨、判示されているではないか。
我々税理士はプロフェッショナルたる実力を維持し続けなければならないのである。


中小企業の資金調達セミナー
2008.11.07

昨日、東京税理士共同組合の組合員研修で、
「中小企業の新・資金調達入門ー注目される担保・保証に頼らない融資ー」
に参加してきました。

研修の講師は、朝日信用金庫で長年、融資業務等を経験された
中小企業診断士の久保田博三氏です。

研修の内容としては、
前半が、金融行政の変化とその影響から来る金融機関の融資内容の変化
について講演され、
後半が、知的財産権担保融資制度やABL、ノンリコースローン、CLO等、
従来の不動産担保や社長の個人保証に代わる新たな金融商品を用いた
金融機関の取り組みの紹介でした。

金融庁の「その他中小企業金融の円滑化に向けた取組み」や、
中川大臣の発言にもありますように、
金融庁は、ここのところの急激な経済情勢に対応して、
貸し渋りや貸し剥しが起きないよう、種々の政策を打ち出しています。

ABLやCLO等はその一環であり、
また、一部の金融機関では、会計参与が関与していない会社に対する
新規融資を行わないという姿勢も見られるという。
会計参与の問題については、従来の税法基準に従った会計処理では、
任意適用である規定が多いために、形式的には利益が出ているように
見えても、会計原則や中小会社の会計に関する指針に照らすと、
不適切な場合が多いため、金融機関にリスク負担が大きいため、
会計原則や指針に従った処理であることを会計参与によって承認された
決算書に基づく融資を新規融資の基準とする金融機関が出てきている。

しかし、金融機関の職員のレベルの低下には著しいものがあり、
会計処理を指針に従ったものにすることの意味を勉強していない
融資担当者が多すぎることもまた事実である。

研修でも会計参与の問題に若干触れていたが、会計処理の適正化は
金融機関のリスクヘッジに繋がるのであるから、その意味をしっかり
理解していただきたいものである。

現在の融資の現場では、指針への準拠性を問うチェックリストを
税理士が署名押印して提出すると金利が優遇される場合もあるが、
チェックリストがどれだけ適切に機能しているのであろうか。

私はクライアントの依頼によりチェックリストを作成する場合、
準拠していない点については、正直にNOを付している。
ただ、NOを付す場合には、NOである理由をきちんと明記
しなければならないため、手間は甚大である。
しかし、準拠していないことが明らかな場合にもYESと
虚偽の報告をすることは、プロフェッショナルの矜持として出来ません。

現在、あるクライアントに対して、今期から指針に従った会計的に正当な
会計処理に戻すことを提案していますが、金融機関がOKして
頂けないのであれば、今年も税法基準に従って、黒字決算で申告する予定である。

過去に無理して黒字を作った結果、不良債権や不良在庫として帳簿上
残ってしまっているものを一気に整理して、カルロスゴーン張りの
V字回復を演出したいところなのですが、金融機関がOKしてくれなければ、
絵に描いた餅です。経営計画や再生計画を現実味のあるものとして
作成して、何とか認めて頂けるよう、頑張っています。

昨日の研修で、私は勇気を頂きました。ありがとうございました。


税理士のためのマーケティングマニュアル
2008.11.06

今日は、船井総合研究所の会計事務所担当コンサルタントである
大谷展之・竹内実門、両氏が執筆した
「税理士のためのマーケティングマニュアル」(第一法規2008)
を紹介します。

大谷氏とは先月参加した大同生命のセミナーでの講師でしたので、
名刺交換させて頂きました。竹内氏は今月の大同生命のセミナーの
講師なので、その折にご挨拶させて頂こうと思っています。

本書は、船井総研が行ったコンサルタント事例を元に
マーティングのノウハウを公開したものと言ってもいいでしょう。

近年、会計事務所を取り巻く環境は厳しいものになってきています。
長く続く不況の影響から、顧問先企業の倒産や廃業に伴い、
顧問先の減少や顧問料の低下が求められ、
会計事務所の経営を圧迫し始めています。

本書は、マーケティングの手法を用いて、
日本の中小企業の経営を側面から支援している会計事務所の
成功と発展のために、船井総研のもつノウハウを公開したものです。

私の事務所は、昨年まで私1人で走り回っている事務所でした。
私が昨年初頭に体調を崩したために、
お客様にご迷惑をおかけしたこともありました。
今でこそ、体調も戻り、普通にしていますが、
先生1人の事務所がいかにお客様にとってリスキーなことなのか、
自分が体調を崩したことで、思い知らされましたね。
昨年半ばから、かつての受験仲間に事務所に入ってもらい、
事務所の体制を一新して2年越しで事務所の建て直しをしてきました。
じつは、本書に書かれているノウハウのうち、
その大半は、うちの事務所で対応可能なものでしたし、
その多くは実際にやってきましたし、これからもやろうとしています。

しかし、先月の大谷氏のセミナーに出席して、
私の方向性は間違っていないけれども、そのやり方や実践の仕方に
問題があったことが思い知らされました。

おそらく、本書を読まれると、
多くの税理士がショックを受けられると思います。
自分のやり方との違いに愕然とすることでしょう。

それは、この業界の特殊性に理由があるかもしれません。
本書18ページによると、税理士の年齢構成は、
70代が一番多く29.1%、ついで50代が19.3%、60代が18.4%と
50~70代が66.8%と実に2/3にのぼる。80代も5.4%おり、
60代以上でも52.9%と過半数を超えているのである。

私見ですが、税務署に勤務した方が23年間勤務の上、内部の
特別試験に合格すると(昔は無試験という噂も・・・)、
税理士資格が付与されるため、退官された国税OBが
税理士全体の約半分であるためだと思われます。

また、本書24ページによれば、会計事務所のライフサイクルが
すでに斜陽産業の入り口に入りかけているそうです。

景気回復が遅れ、税理士の主要顧客である中小企業が衰退していく
傾向にあり、新規に設立されていくベンチャー企業は、
上場を目指し、税理士よりも公認会計士との契約にシフトしている
現状を鑑みれば、確かにその通りかもしれません。

ただ、それを仕方がないと割り切って、従来型のビジネスモデル
のままで生きていくのであれば、座して死を待つに等しいですね。

特にIT化の進展により、会計ソフトが当たり前になり、
会社で自計化できる環境にある会社が多い現在では、
記帳代行を主たる収入源とする会計事務所が10~20年後には
淘汰されていくのは、火を見るより明らかである。

会計事務所が生き残っていくにはどうすればいいのか。
そこにマーケターである船井総研のノウハウが生かせるのであろう。
200ページに満たない本書の中で、100ページを越える分量を用いて
事例紹介を行っているのは、船井総研のノウハウそのものである。

本書をここで紹介するのには多少のためらいがありましたが、
うちの事務所も頑張って大きくなろうとしていますが、
経営者の皆様にもどういう事務所にお願いすればよいのか、
その目安を知って頂くいい機会であるとも思いましたので、
ここで紹介させて頂くことにしました。

同業の皆様とも共存共栄できるそんな関係を築いていきたいものですね。


会計で会社を強くする(坂本孝司著)
2008.11.05

今日は、TKCで活躍される税理士、坂本孝司先生の著書
「会計で会社を強くする」(TKC出版2008)を紹介します。

坂本先生は、中小企業庁において平成10年に発足された
「中小企業の会計に関する研究会」に専門委員として参加された
中小企業の会計制度のあり方の研究における第一人者です。

本書66ページ以下に研究会の経緯がのっておりますが、

同研究会で、私は「中小企業用の会計基準を策定すべきだ」と
一貫して訴えました。これに対して、他の有力メンバーから
「国際会計基準で世界の会計が統一されようとしている現在、
ダブルスタンダードとなってしまう中小企業用の会計基準なんて
話にならない」「要するに、税理士は国際会計基準が分からない
と言うことか」「あなたの会計事務所は業務レベルが相当
低いんじゃあないの」などと、理不尽な反論を受け続けました。
批判の集中砲火を浴びて、私は身も心もボロボロです。
しかし、「救いの神」もいました。わが国会計学の最高峰、
武田隆二先生が理論的支柱になってくださり、これが決め手と
なって私たちの主張が認められることになったのです。
また、甲南大の河崎照行教授、神戸大の古賀智敏教授も、
孤軍奮闘に近かった私を援護射撃してくださいました。
こうして平成14年6月末、中小企業庁から「中小企業の会計に
冠する研究会」の最終報告書が記者発表されました。
(本書67-69ページ)

とあるように、中小企業用の会計が大企業用の会計と同じで
あるべきだ、という考え方が、学者さんの間での主流であって、
青色申告の実態(記帳代行が税理士の主たる収入源になっている
実態)を全く把握されていない現実が明らかにされている。
坂本先生は、そのような中、武田先生のバックアップがあった
とはいえ、事実上、孤軍奮闘で実務家の声を理論的に整理して、
主張されてきたのです。

また、本書69-70ページは、以下のようにあります。

同報告書は、「中小企業の会計」のあり方、において、
「判断の枠組み」という表題のもとで、「(2)経営者にとって
理解しやすいものであるとともに、其れに基づいて作成される
計算書類が自社の経営状況の把握に役立つこと」として
帳簿の役割を明記し、さらに「考え方」として、「(2)は、
会計の利用者としての経営者からの視点である。従来は、
計算書類の作成は全面的に外部専門家に任せているという
経営者もみられたが、近年、金融情勢・経営環境が一層厳しく
なる中で、係数分析による自社の経営状況の把握や、計算書類の
裏付けのある事業計画の作成が、経営を進める上で、きわめて
重要になってきている。このため、会計のあり方についても、
大多数の経営者が理解できるものであり、その結果作成される
計算書類が自社の経営状況の把握に役立つものであることが
必要である」と解説しています。
「会計の本質的な目的は、経営者への自己報告にある」と
主張してきた私は、この報告書の記述は画期的なものであると
高く評価しています。


私も坂本先生同様、会計の役割は、経営に役立てることにあると
考えておりますので、この報告書には高い評価をしていたのですが、
日税連や会計士協会の報告が出てきて、また、ダブルスタンダード
に対する批判が強まってきている気がしますね。

それであれば、法的安定性と予測可能性を求める法律と同様、
会計基準も時代や経済情勢に流されないブレのない基準である
ことが絶対条件です。昨今の経済情勢にあわせて、時価凍結を
容認するような基準の設定であれば、ブレがある基準でしかないと
言わざるを得ないし、法律側からすれば、会計が法規範足りえない
理由を与えてしまっているのは、会計側であるとしか言いようがない。

古くは、飯塚先生が「正規の簿記の諸原則」
(森山書店<改訂版が昭和63年>)を書かれたのも、会計帳簿の
法的な証拠能力を明確にすることを求めたものであると考えられ、
また、田中耕太郎博士が「貸借対照表法の論理」(昭和17年に
法学協会雑誌に掲載された論文を昭和19年加筆して公刊)を書かれたのも、
「企業が社会的存在である以上、其れは当然社会生活と無関係で
あり得る筈がない。果たして然らば、一応純会計学的立場に於いて
観念せられた貸借対照表の目的は、社会生活の規整を目的とする
法の世界と没交渉であり得ないのである。」(出版時の序)と
あるように、会計は法の根拠に基づいて、法と同様の規範力を
持つことが期待されているはずである。

それが実態に合わない形で、国際的整合性がとれればそれで良いと
考える方が、実務を知らないものの机上の空論に過ぎないと
感じるのは私だけではあるまい。

さらに、本書96ページには、こうあります。

多くの中小企業を指導してきた私の職業会計人としての経験からすれば、
「決算書の信頼性は、記帳の品質に依存する」「会計は本質的には
経営者のために存在する」との発想はきわめて肌に合う思考であると
ともに、会社を強くするために欠くべからざる経営手法であると
考えています。(略)確かに「会計で会社を強くする」という
メッセージをご理解いただいたとしても、「わが社はすでに会計を
しっかりやっているし、税務署が来ても大丈夫。金融機関からも
高く評価してもらっている」として、その後の思考を省略してしまう
方々が多いことも事実です。

そして、坂本先生は、98ページ以下でご自分が実践されている
25のチェックポイントを公開し、税務監査を伴う会計の役割と
税理士の役割を解説されています。

坂本先生の25のチェックポイントはおそらくTKCグループが
実践している税務監査とほぼ同じ内容であろうと思いますが、
これをすべてにおいて実践できているならば、会計は本当に
会社経営の指標として機能し、金融機関も安心して融資することが
可能でしょうね。
私が感じていることではありますが、残念ながらTKCの会員先生の
ところの全てが本当に実践しているとは思えません。
私はTKCではありませんので、中から見れませんけれど、
これだけのことをやれているのであれば、金融機関の担当者が
稟議書の作成に苦慮している実情は改善されているはずですね。

坂本先生は、TKCの研修等で全国を飛び回っているようですが、
飯塚先生の意思を引き継いで、職業会計人のあるべき姿を追及するために、
日夜、同業者への啓蒙活動に活躍されているのでしょう。

坂本先生の研究は、私が法政大学修士課程時代に追及していたテーマに
非常に近いものであり、商法サイドでも、会計サイドでも、
税法サイドでも、研究されている方が非常に少ない分野です。
本書はTKC色が強すぎるきらいはありますが、
坂本先生の研究が大成されることを願っております。


田母神空幕長解任について
2008.11.04

4日01:14 YOMIURI ONLINE記事によると、

政府見解と異なる論文を投稿して更迭された田母神俊雄・前航空
幕僚長(60)の処遇は、3日夜、定年退職という異例の形で決着した。
田母神氏は3日夜、東京都内で記者会見し、「(論文の内容について)
今でも間違っていない」「日本は決して侵略国家ではない」などと述べ、
持論を撤回しない考えを示した。
37年間にわたり愛用してきた制服ではなく、スーツ姿で会見に臨んだ
田母神氏。冒頭、「退職にあたっての所感」を読み上げたが、防衛省・
自衛隊を混乱させたことに対する謝罪や反省の弁はなかった。
「日本が悪い国だという認識は修正されるべき」などの持論を、終始、
繰り返した田母神氏。「戦後教育による「侵略国家」という呪縛が
国民の自身を喪失させ、自衛隊の士気を低下させている」とし、
現役自衛官に対しても、「自分のことより国家、国民のことを常に
優先した言動を取ってほしい」と神妙な面持ちで語った。
論文が政府見解と異なる点についての質問では、田母神氏は「政府見解に
一言も反論できないとなると北朝鮮と同じだ」と語気を強めた。
論文の懸賞金300万円については受け取るという。民主党が要求の構えを
見せている国会での参考人招致については、「応じるつもりだ」と答えた。
会見は20分余りで終了した。

という。

田母神氏の役職を考えれば、田母神氏の見解に賛否があろうが、
その内容が政府見解と異なる以上、航空自衛隊のトップとして
ふさわしくないのは明らかであり、更迭は当然であろう。
しかし、田母神氏がもし防衛大学校の教授であったらどうであろうか。
おそらく処分すらされないであろう。それは表現の自由が保障される
研究論文として評価されるからである。

いま問題とされている田母神氏の論文は、
第1回「真の近現代史観」懸賞論文において、最優秀藤誠志賞を受賞しており、
以下のサイトから、ダウンロードすることが出来る。
http://www.apa.co.jp/book_report/index.html

賛否はともかく、是非一読をオススメする。

これを読む限り、日本「だけが」侵略国家ではない、というのが
田母神氏の主張であるように思われる。
つまり、帝国主義の時代における日本の中国・朝鮮半島戦略は、
日本の国益のために行った帝国主義政策の一環であるが、
日本は他の列強と異なり、満州や朝鮮半島、台湾を日本と同じように
開発しようとしたのであって、その結果、満州も朝鮮半島も人口増加し、
むしろ治安が良くなったことを立証して、日本が侵略国家というのであれば、
他の列強もそうであろうといっているに過ぎないと思われる。

ただし、自由な発言が許されるのは私人としてだけであって、
航空幕僚長という肩書きを持った公人に許されることではない。
懸賞論文の受賞者の肩書きが国家公務員とだけであれば、まだ許された
かもしれないが、受賞者として航空幕僚長である田母神俊雄であれば、
私人ではない。

これは、税法を扱うものは平成11年に思い知らされたはずである。
平和事件高裁判決(東京高裁平成11年5月31日判決・税資243号127頁)が
下される直前から、突然、国税庁職員の執筆する書籍から肩書きが消され、
文末や書籍のはしがきに、必ず、執筆した職員は国税庁の職員であるが、
その内容は私見である旨が付されるようになっているのである。

なぜか。
平和事件高裁判決は以下のように判示していることから明らかである。
「税務当局の業務ないし編者等の税務当局勤務者の職務と本件各解説書の
内容との密接な関係性をうかがわせるものであるから、税務に携わる者が
その編者等や発行者から判断して、その記載内容が税務当局の見解を
反映したものと認識し、税務当局が個人から法人への無利息貸付けに
所得税を課さない見解を採るものと解することは、無理からぬところである。
そして、Xの顧問税理士等の税務担当者において、税務当局が上記見解を
採るものと解したことをもって、単なる法解釈の不知又は誤解である
ということはできない」
平和事件は高裁で以上のような理由で加算税を課さない正当な理由を
認めていたが、最高裁では、全面的に否定して決着を見ているが、
裁判官には、トップ官僚が書いたものを国民が個人ではなく国の見解だと
誤解しても仕方がないと、考えている者が少なくないことが窺える判決である。

このことを考えれば、田母神氏の見解には、賛否があるとしても、
航空自衛隊のトップでいる間に肩書きを付して、政府見解と異なる
見解を公表したことにより、その職を解任されたことは当然であると思われる。

皆さんは、いかがお考えになりますか?


国士舘大学サッカー部大健闘
2008.11.04

2日の天皇杯サッカー、ニュースで流れたので、
ご覧になられた方も多いでしょう。
私が教えている国士舘大学のサッカー部が、
初戦で、J2徳島ヴォルティスに勝ち、
2日、前回覇者J1鹿島アントラーズをPK戦にまで追い込みました。
GK曽ヶ端に全てを止められ、敗れはしたものの、大健闘だったと思います。
特にこの代でここまでやれたことに
選手だけではなく、指導者や支援をして頂いた関係者の皆様に
敬意を表したいと思います。

思えば4年前の12月、町田市において
サッカー部員らによる少女集団暴行事件が発生し、
その責任を取る形で、サッカー部は無期限の活動停止となり、
当時在籍していた部員の有力選手は、他の大学へ転校していきました。
指導者も変わりました。

今年の4年生は、そんな逆風の中、入学してきた05年入学組です。
彼らは、サッカー部が存続するかも分からない状況で入学した、
サッカーが好きだからという理由だけでサッカーを続けた学生たちです。
彼らが入学した4月からサッカー部は活動の再開が認められましたが、
それ以前のJFLにも加盟していた時代とは違い、
冷たい世間の風にさらされながら、
先輩の引き起こした不祥事の汚名の中、
時には、汚い野次の中でプレーをし、
それでも大好きなサッカーを続けてきた学生たちです。

レギュラーに私の教え子がいるわけではありませんが、
大学院を国士館で修了した者として、
後輩たちの健闘を、非常に嬉しく思っています。
特に2日の試合では、明らかに格上のチームに対して、
気魄で勝っていたと思います。国士舘の精神にある気魄です。

今年は何かと国士舘は話題に事欠きませんが、
特に、不祥事により部の存続が危ぶまれたサッカー部の活躍には
格別の思いがありますね。
柔道の石井君の総合格闘技転向もありましたが、
箱根駅伝の予選会も突破したし、今年の国士舘には目が離せません。


消費税論議、本格化するか?
2008.11.03

麻生首相は、条件付ながら3年後の消費税引き上げを明言しました。

先送り?とも言われているものの、解散・総選挙が近いものとして
動いてきた昨今の政局の中で、
首相のこの発言は非常に勇気がいるものだったと思います。

しかし、消費税に関しては、他の法律との関係も含めて、
問題の多い税制であることは間違いない。

少子高齢化の進展の中で、消費税の重要性が高まっていることは間違いないが、
ヨーロッパで発展した付加価値税(VAT)の流れにあるわが国の消費税法は、
世界のVATと比して特徴的な点も多いが、VATの基礎となる部分を
わが国の実情に合わせて直していないためか、他の法律との整合性に問題がある。

まず、仕入税額控除の本質論であろう。
最高裁平成16年12月16日判決(TAINSコードZ254-9860、判タ1175号135頁)や
最高裁平成16年12月20日判決(TAINSコードZ254-9870、判タ1176号130頁
判時1889号42頁)等で判例・通説は固まりつつあるように思うが、
特に12月20日判決における滝井裁判長の少数意見に耳を傾ける必要があろう。

判例は仕入税額控除の本質を特典説に基づいて、規定どおりに
帳簿及び請求書の保存がなければ仕入税額控除を適用できないとしているが、
滝井裁判長は、売上があればそれに対応した仕入があるはずだと考え、
当然説の立場から、痛烈な少数意見を書いている。

法人税や所得税は、売上に対応した仕入を当然のものとして推計課税の規定がある。
しかし、消費税には、推計課税の規定は存在せず、消費税法30条8項9項に
わが国の商法に規定されない帳簿等の記載要件を掲げ、記載要件を満たさない
場合には、仕入税額控除を認めない、という構成になっているのである。

これは、消費税法の母法と考えられるフランスVATやドイツVATも
同じ構成であるから、わが国の法実態を考慮せず、
そのまま導入してしまったことが考えられる。

しかし、フランスやドイツには、商法上に明確な帳簿要件があり、
完全なる商業帳簿でないのであれば、ペナルティーを受けるのは当然という
考え方に基づくものである。

わが国でも明治17年にロエスレルが起草した商法草案では、
完全なる商業帳簿を要求していたが、商法典論争において、
商売をやるためには、帳簿をつける人間を雇わなければならないのか、
等の反対意見が強く、明治23年旧商法では、ただ商業帳簿があればよいという
規定に落ち着いたという経緯があった。
また、青色申告制度が導入されたのも、昭和24年のシャウプ勧告において、
まともに帳簿を作成できていない現実が明らかになり、
申告納税制度の発展のため、帳簿を作って、帳簿に基づいて申告するなら、
特典を付けますよ、ということがきっかけになっている。
青色申告制度は、導入から60年が経とうとしている現在でも
帳簿に基づいて申告できる納税者に対する特典のままであり、
多くの税理士も記帳代行(つまり納税者は帳簿をつけていない)で稼いでいる
現状は、未だに帳簿をつけられない納税者が多いことを物語っている。

しかし、会社法432条は「適時に適正な会計帳簿を作成しなければならない」
と規定し、少なくとも法人においては、税理士に記帳代行を頼み、適時に
作成できていない(うちの事務所ではある程度の時間をもらっています)
現状は、会社法違反ということである。

わが国の帳簿規定の理想と現実は、仕入税額控除の前提条件を否定するわけだから、
消費税が厳格な会計帳簿を要求し、それを当然のことであるというのであれば、
簡易帳簿で許される青色申告制度に既に意味はない。
消費税業者に関しては、即刻、青色申告制度の適用要件を厳格化し、
青色申告を特典ではなく、適正な帳簿を作成できない者へのペナルティーにしなければ、
所得税・法人税と消費税との制度設計上、齟齬をきたすことになる。
さもなければ、消費税法30条8項9項は即刻廃止されるべきであろう。
また、滝井裁判長の少数意見を取り込み、
消費税においても推計課税規定を置くべきである。

廃止、推計規定以外のことについては、私は既に国士舘法学第38号(2006年)に
「青色申告制度の帳簿要件」というタイトルで、論文を公表しています。

次に、単一税率の問題である。

消費税反対論者の多くは、経済的弱者に負担を求める逆進的な制度であるとして
批判をされているように思われる。これは、わが国固有の問題で、
わが国の消費税は、他国に類を見ない、殆ど全ての物・サービスに一律に
同率の課税を行う制度として設計されているからである。

例えば、イギリスのように、食料品をはじめとする生活必需品に0%課税する
ということも考えられてしかるべきであろう。
しかし、複数税率を導入する場合に、何が必需品で、何が奢侈品かを
明確に分類する必要があろう。

例えば、コメである。コメは日本人の主食であるが、
全てのコメが必需品とはいえないであろう。
南魚沼産コシヒカリのようなブランド米はどうだろうか。

フランスでは、庶民が飲むワインのほうが、
外国に輸出する水より税率が安い場合もある。

経済財政諮問会議が10月31日の会議で検討した社会保障のために必要な財源は
消費税を8%にする必要があるというものであったが、
国民感情からすれば、生活必需品の税率を引き下げ、
その代わりにその他のものを15~20%にしても納得できるのではないだろうか。

政府には難しい線引きが必要ではあるが、
複数税率の導入を是非とも検討して頂きたい。


年金関係課税事件(5・一括収受公的年金まとめ)
2008.11.02

山形地裁では、納税者の主張が一切受け入れられなかったこの事件は、
仙台高裁、最高裁と控訴、上告されました。

ここでは、高裁、最高裁を紹介しましょう。

まずは、仙台高裁平成19年3月27日判決です。

控訴人は、地裁判決を受けて、高裁において、次のような主張を加えました。

Aは、平成9年10月の時点では、厚生年金保険の被保険者期間が253ヶ月と
算出され、受給に必要な期間である300ヶ月に満たなかったため、
老齢厚生年金の受給要件を満たさなかった。合算対象期間は、退職共済年金と
老齢厚生年金の受給要件を判断するにつき、重複して考慮することは許されない。

これをうけて、高裁は、原審引用判決の上で、次のように判断しました。

平成9年10月の時点におけるAの老齢厚生年金の受給資格につき、保険料納付
済期間が182月、Aの前記合算対象期間が260月となるので、厚生年金保険法
附則14条1項により、Aは、同法42条ただし書に該当せず、平成9年10月の
時点において、同法附則8条3項の要件を充足することとなることは、原判決
説示のとおりである。そして、Aに関して退職共済年金と老齢厚生年金の
受給要件を判断するにつき、合算対象期間を重複して考慮することが出来ない
とする規定はなく、これが許されないと解すべき根拠はない。

控訴人は、本件請求を不作為の違法確認請求であるかのごとき主張をする
けれども、控訴人の請求の趣旨に照らせば、控訴人の請求は更正処分の
取消請求と解されるから、この点に関する控訴人の主張はその前提を欠くもの
であり、控訴人の原判決の判断を批判するその他の主張ともども、原判決の
説示に照らして採用し難い。


つまり、全面敗訴であった。
更に、最高裁は、以下の理由により、棄却された。

民事事件について最高裁判所に上告することが許されるのは、民事訴訟法
312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告理由のうち、
違憲及び理由の不備・食違いをいう点は、その実質が単なる法令違反を
主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当せず、
同項4号又は5号に規定する事由をいう点は、その主張自体から明らかに
上記各号に規定する事由に該当しない。


つまり、最高裁は事実認定を争う場ではなく、あくまで法律解釈を争う
場であるから、高裁までに争われた前提事実に事実誤認があったり、
法律の適用の前提となる事実認定に重要な誤りがある場合を除き、
最高裁では門前払いを食らうことになる。
事実については、地裁・高裁で十分議論したでしょ、というのが
最高裁の立場なのである。
本件についても、高裁では新事実・新証拠が何もでていない。
これで最高裁に上げても、99%棄却でしょうね。


本件では納税者敗訴であるが、本件判決の実務に与える影響は多大なもの
になる危険性を大いに孕んでいる。
昨今の年金不信により、自分の年金に関心が高まっているが、
それにより、自己の年金額に誤りがあることが判明した場合には、
この判決の射程範囲に入ることが予想されるところである。

本来受給されるべき時期の年金収入が過少に申告されていたため、
誤りが判明した時に支給された年金額を、
本来の時期に遡って見直す必要があることを示唆しているからである。

地裁判決で、「法が定める支給期日」(つまり、本来の支給日)
「の属する年分の収入金額として課税所得を計算すべき」
と判示したように、権利確定主義からすれば、本来の時だ、というのである。

また、注意しなければならないのは、
現行では60歳から支給を選択しない限り65歳から支給される年金であるが、
65歳からを選択しても、長崎事件の論理を考慮に入れると、
60歳を過ぎれば支分権は成立するから、
60歳から年金等の雑所得があることになるというのか。

本件の射程範囲を考えたとき、現行年金制度のずさんさが
税金にまで影響を与えかねない事態を引き起こしていると感じてしまう。
何とかしなければならないですね。


年金関係課税事件(4・一括収受公的年金地裁判決)
2008.11.01

支給日が後になった老齢厚生年金の支給の時期が争われた
山形地裁平成18年12月5日判決(TAINSコードZ888-1358)
仙台高裁平成19年3月27日判決(TAINSコードZ888-1359)
最高裁平成19年9月25日判決(TAINSコードZ888-1360)
を紹介しよう。

今日は、山形地裁を紹介する。

1.事案の概要
本件は、いずれも配偶者控除の額が38万円、配偶者特別控除の額が8万円
になるとした原告の平成12年分及び同13年分の所得税の各確定申告につき、
被告が、原告の配偶者の平成12年分及び同13年分の各合計所得金額が
38万円を超えていて配偶者控除の適用を受けることができないとして
本件更正処分をしたところ、原告が本件更正処分の取消を求めた事案である。

2.前提事実
(1)平成10年6月から、A(原告の妻)は、国家公務員共済組合連合会から
退職共済年金を受給しており、平成12年分の年金額は103万9968円であり、
同13年分の年金額は104万円であった。

(2)平成14年10月10日、山形社会保険事務所長は、Aに対し、
Aの老齢厚生年金について社会保険庁長官により裁定が行われた旨の通知し、
平成14年11月15日、老齢厚生年金26万0766円がAに支払われた。
支払われた年金額の内訳は次の通り記載されていた。

9年11月~10年3月 5ヶ月  年金額52000円 支払額21666円
10年4月~11年3月 12ヶ月 年金額52900円 支払額52900円
11年4月~12年3月 12ヶ月 年金額53200円 支払額53200円
12年4月~14年9月 30ヶ月 年金額53200円 支払額133000円

(3)原告は、法定申告期限内に、平成12年分及び平成13年分の確定申告書を
提出した。平成12年分の確定申告書には、Aの合計所得金額が33万9968円、
配偶者控除の額が38万円、配偶者特別控除の額が8万円である旨記載されていた。
平成13年分の確定申告書には、Aの合計所得金額が34万円、配偶者控除の
額が38万円、配偶者特別控除の額が8万円である旨記載されていた。

(4)被告は、平成15年7月18日付で、原告に対し、平成12年分の所得税の
確定申告について、Aの受給した老齢厚生年金のうち平成12年の収入金額と
すべき金額が5万3200円になり、Aの合計所得金額が39万3168円であり、
配偶者控除の適用を受けられず、配偶者特別控除の額が38万円になるとして、
課税所得金額を17万2000円、所得税額を1万3700円とする更正処分を行い、
平成13年分の所得税の確定申告について、前記老齢年金のうち平成13年の
収入金額とすべき金額が5万3200円になり、Aの合計所得金額が39万3200円
であり、配偶者控除の適用を受けられず、配偶者特別控除の額が38万円に
なるとして、課税所得金額を16万7000円、所得税額を1万3300円とする
更正処分を行った。

3.争点
(1)Aが老齢厚生年金の受給資格を得た時期
(2)Aが受領した老齢厚生年金の収入の帰属時期

4.裁判所の判断
(1)争点1について
(ア)Aは、平成9年10月に満60歳となっていたのであるから、平成9年
10月に厚生年金保険法附則8条1号の要件を満たしたといえる。

(イ)Aは、昭和35年7月から昭和36年2月までの期間及び昭和57年8月から
昭和58年2月までの期間の合計13ヶ月間、厚生年金保険法上の被保険者の
資格を取得していたのであるから、平成9年10月の時点において、1年以上の
厚生年金保険法上の被保険者期間を有しており、同法附則8条2号の要件を
満たしたといえる。

(ウ)昭和35年7月から昭和35年2月までの7ヶ月間は、Aが厚生年金保険法
上の被保険者であったのであるから、同法附則14条1項に定める合算対象
期間に算入される。昭和36年3月から昭和57年5月までの間、Aはブラジルに
在住していたのであるから、この期間のうち、昭和36年4月以降の
253ヶ月間は、前記合算対象期間に算入される。昭和57年8月から昭和58年
2月までの6ヶ月間は、Aが厚生年金法上の被保険者であったのであるから、
同法附則14条1項所定の保険料納付済期間に算入される。昭和58年2月から
平成10年3月までの間、Aが国家公務員共済組合の組合員であったので
あるから、この期間のうち、Aが満60歳に達した平成9年10月の前月までの
176ヶ月間は、前記保険料納付済期間に算入される。
よって、Aの前記保険料納付済期間が182月、Aの前記合算対象期間が
260月になるので、厚生年金保険法附則14条1項により、Aは同法42条
ただし書に該当せず、平成9年10月の時点において、同法附則8条3号の
要件を充足することとなる。

(2)争点2について
(ア)所得税法は、現金収入がなくても、その収入の原因となる権利が
確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとして前記権利
確定の時期に属する年分の課税所得を計算するという建前(いわゆる
権利確定主義)を採用しているものと解される。そして、収入の原因となる
権利が確定する時期はそれぞれの権利の特質に考慮して決定されるべきである。

(イ)社会保険庁長官の行う裁定は基本権たる受給権の存在を公権的に
確認する行為であるにすぎず、裁定を受けることによって具体的に
請求できるとされているのも、画一公平な処理により無用な紛争を防止し、
給付の法的確実性を担保するためであって、厚生年金保険法の定める
年金給付に係る受給権は、同法の定める受給要件を満たした時点で
基本権が発生し、その後支給期日が到来することにより、支分権が発生し、
受給権者が裁定の請求さえすればいつでも年金の支給を受けることができる
状態にあるから、その支給期日が到来した時点で年金の支給を受ける
権利が確定したものと解される。
また、法令に定められた支給日をもって当該年金の収入すべき時期と
解すれば、納税者が恣意的に所得の帰属年度を操作する余地を排して
課税の公平を図ることができるのに対し、裁定により一時に支払われる
こととなった老齢厚生年金の収入すべき時期を当該裁定時と解したのでは、
受給権者が裁定の請求を遅らせることによって所得の帰属年度を人為的に
操作する余地が生じるなど、納税者の恣意を許し、課税の公平を
害することとなる。
よって、老齢厚生年金については、厚生年金保険法36条に規定された
支払期日が到来した時にその支給を受ける権利が確定すると解される
のであるから、裁定により前年分以前の老齢厚生年金が一時に支払われる
こととなった場合には、厚生年金保険法36条が定める支払期月の属する
年分の収入金額として課税所得を計算すべきである。

(ウ)Aは、平成9年10月にいわゆる特別支給の老齢厚生年金の受給資格を
取得したことにより、前記年金に係る基本権は同月発生する。
Aが平成14年11月15日に受領した老齢厚生年金26万0766円のうち、
平成12年及び同13年に支払期日の到来した同年金の額がそれぞれ
5万3200円であることから、Aの課税所得を計算する際に同年金
について平成12年及び13年の収入金額とすべき金額はそれぞれ
5万3200円になるというべきである。
Aの課税所得を計算するにあたって、平成12年及び13年分の収入金額
とすべき老齢厚生年金の金額のほか、Aが国家公務員共済組合連合会
から受領していた退職共済年金の金額から、Aの雑所得の収入金額は、
平成12年分が109万3186円、同13年分が109万3200円となる。Aの合計
所得金額は、平成12年分が39万3168円、同13年分が39万3200円となる。
よって、Aは、原告の控除対象配偶者に該当しない。