新税調、閣議決定。初会合は10月8日。
2009.09.30

新しい政府税調の設置が29日閣議決定され、29日14時47分
YOMIURI ONLINE記事によると、財務省閣僚主導と見られた陣容は、
会長には藤井財務相、会長代行には菅直人国家戦略相と原口一博総務相が
就任することに決まった。
当初会長代行といわれていた峰崎直樹財務副大臣は実務的な論議を受け持つ
企画委員会主査に、主査代行は渡辺周総務副大臣が担当する。
また、初会合は10月8日。
各省庁からの要望は10月15日までの提出を求める。
週2回のペースで税制改革論議を進めるという。

与党税調が廃止され、政府税調に一本化されるため、平成16年度税制改正
における土地建物等の譲渡損失廃止のときのような不透明な政策決定は
排除されることになるが、税の専門家ではない閣僚の皆様が、どこまで
具体的な税制改革論議ができるのか、非常に注目しているところだ。
これまでの政府税調の陣容を見ても税の専門家ではない委員が多かったのは
事実であるが、官僚主導で提案の内容自体がすでに法案にしたときのことを
考えての提案が多かったのではないかと思われる。
しかし、新税調は、政治主導による税制改革を推進するだけに、法案になった
ときのことまで考えていかないと、改革案が画餅と化す危険性を孕む。
そういう意味では、企画委員会主査を担当する峰崎財務副大臣の手腕に
大きな期待をよせたいところだ。

複数年度予算の編成も答申されるであろうし、年末へ向け、税制改革論議の
方向性がどうなるのか、注目して見ていきたい。


自民党新総裁に谷垣元財務相を選出
2009.09.29

昨日28日、自民党の新総裁に谷垣元財務相が選出された。
党員投票率が低く、盛り上がりに欠けた総裁選でしたが、党員による
地方票の過半数を制しての当選は、自民党支持者が党内勢力を結集した
総力戦を期待したと見れよう。

谷垣氏は党制改革として影の内閣を組織するとともに政権構想会議を
設置するという。これは非常にいいことだと思う。
これまでの自民党は、いわば密室政治、料亭政治といわれるところが、
国民の目から政治不信を招いたとも考えられるだけに、
密室を政権構想会議という表の場に出してくることが正論であろう。

改革を推進する民主党と対峙していく論客が古い名前ばかりでは
国民の目から自民党が変わったとは写らない。
新しい自民党をアピールし、世代交代のチャンスを増やすためにも、
影の内閣は若手中心の登用が求められよう。
それも野党であるだけに、従来のように官僚から大量の情報を入手する
ことは難しくなることが予想できるだけに、登用する各議員の専門分野での
登用が求められる。
これまでの自民党が育てたオールラウンダーは意味がない。
長妻厚労相のようなスペシャリストを育てないと、情報が遮断された中で
民主党政権と対等に対峙できる人材が豊富であることを示せないであろう。

今日発表になるであろう人事に注目したいところだ。


事務所が入居するマンションの管理組合の監事に就任
2009.09.28

事務所が入居するマンションの管理組合で監事に就任することになりました。
私の実家もあるマンションで、父が20年前まで約9年半管理組合理事長を
務めていましたし、母も子供会の初代会長でしたので、私が関わることは
どうやら既成事実だったみたいですね。
友達のお母さんからは「大政奉還」という話さえされました・・・

築34年になる老朽化が進み始めたマンションだけに、10年後には
マンション自体の建替計画を立案する必要も出てくるでしょう。
比較的修繕積立金が積まれているマンションで、敷地面積も広いだけに、
建替えが可能なんですね。
理事の若返りという意味もありますが(今回退任された副理事長は
父の親友で、同い年でした。)、建替計画の含みもあるようですので、
亡き父がやってきたことを参考に、頑張りたいと思います。

しかし、いざ中に関わってみると、外から見ているだけでは分からない
様々な問題が山積しているようですね。
業務においても弁護士や司法書士等、他の士業様との連携をさせて頂いて
おりますので、税の専門家として、また法律家として私が分かる範囲の貢献を
させて頂き、理事会の案件においても私のネットワークが解決の糸口に
なれば嬉しいですね。

前回の大規模修繕が父の生前の最期の大仕事でしたから、それを引き継げる
のは最高の親孝行かもしれませんね。


G20金融サミット、日本は内需主導型へ転換迫られる
2009.09.26

従来から行われていた先進諸国サミット(G8)に中国等の新興国を加えた
20カ国による金融サミット(G20)が閉幕し、今後の世界経済問題は
恒常化されるG20で議論されることになった。

26日11時26分asahi.com記事によると、
今回のG20では、アメリカの過剰消費や住宅投資に支えられた「世界経済の
不均衡」(グローバル・インバランス)への対応が焦点となった。
声明では、「強固で持続可能かつ均衡のとれた成長」を掲げ、アメリカを指す
「大幅な赤字国」は輸出産業の強化や民間貯蓄の支援、財政再建の実行を、
中国や日本を指す「大幅な黒字国」は国内成長の強化や金融市場のゆがみの
削減を誓約することで合意した、と盛り込んだ。
という。

G20での鳩山首相の発言にも注目したのだが、国連での環境政策のような
注目すべき発言は特になかったのではないか。
むしろ、世界経済がまだまだ予断を許されない状況であるとの共通認識の下、
内需拡大を世界各国から要求されたことが問題となろう。
世界経済の動向からすれば当然の要求であり、日米貿易摩擦が問題視された
1960年代から要求され続けてきたことだけに、いまだに外需依存の
経済体質のわが国経済の構造をドラスティックに転換していく必要を
G20で世界の共通認識にされてしまったと思う。

疲弊しきったわが国経済の建て直しのために、小泉政権下の外需主導による
景気回復とは異なる、鳩山流内需主導経済政策をどのように打ち出すのか。
マニフェストからは読み切れない部分だけに、これから打ち出される
経済政策に注目していきたいですね。
そのキーになるのが環境政策になるんでしょうね。


OECD金融危機に関する報告書
2009.09.25

OECDは23日、金融危機に関する報告書を発表した。
23日22時24分YOMIURI ONLINE記事によると、わが国を教訓に、
不良債権処理と金融機関の資本増強が急務であることを警告している。

経済協力開発機構(OECD)は23日発表した金融危機に関する報告書で、
不良債権処理の遅れが景気低迷の長期化を招いた日本の「失われた10年」
を教訓に不良資産処理と金融機関の資本増強を急ぐよう各国に求めた。
報告書は、「不良資産処理とは直接関係ない取り組みが日本では失敗した」と明記。
複雑な証券化商品への時価会計の適用を一時的に凍結する会計ルールの変更が
各国の金融機関の不良資産の実態を隠し、処理が大きく進んでいないと指摘した。
失業率上昇などで融資の焦げ付きが増えている現状を指摘し、不良資産を
切り離して金融機関の損失拡大を防ぐ構想を推進すべきだと強調した。

成長のないところに業績の向上などあり得ず、衰退するのが当然です。
高度成長の時代ならいざ知らず、低成長の時代は成長を志向してはじめて
現状維持が可能になるのです。
時価会計には客観性がないので、これを監査する会計士の実力の向上と
人員の確保が、その導入に必要なインフラと言えるでしょう。

わが国経済は自国の利権に縛られることはもはや許されず、グローバル化した
経済に対応した形でインフラ整備をする必要に迫られていると言えるでしょう。
インフラ整備ができない段階での時価会計解禁には問題は多いものの、
時価情報が与えるインパクトはもはやグローバル化されてしまったと言え、
上場企業へのIFRSの全面導入を前提としたインフラ整備が不可欠です。

我々税理士にとっても対岸の火事と傍観していられない時代は目の前だ。


新政府税調10月スタートに思うコト
2009.09.24

シルバーウィークによる休みボケから脱しつつありますが・・・
さて、休み中も政治は大きく動いていました。
21日20時KYODO NEWS記事によれば、藤井財務相を会長に、
峰崎副大臣を副会長とする新政府税調が10月にスタートするという。
各省庁からも政務官1人が参加する見通しで、与党税調は廃止される。

民主党きっての税の専門家2名が直轄する形で、各省庁の意見を集約する
政務官の参加を得て、政治主導による税調が動き出す。
与党税調がなくなることで、税制改革の一元化が図られることは評価したい。
ただ、政治家は目先にとらわれすぎる傾向にあるだけに、中長期的な税制の
展望をドラスティックに展開できるかには若干の危惧が残る。
そこで、民間委員に税の専門家を従来のような税制の専門家ばかりではなく、
より積極的に税法の専門家の登用を期待したい。

新政権は全てを政治主導で実行しようというのだから、法の不備による
抜け穴を防ぐためにも、法の専門家の存在が不可欠になろう。
従来の税調のような構成(委員19名中、税制専門家6名、税法専門家ゼロ、
特別委員18名中、税制専門家2名、税法専門家3名、専門委員11名中、
税制専門家9名、税法専門家2名)では、危険極まりないのである。

水野、中里、吉村、藤谷といった東大金子門下に限らず、他の門下からも
広く人材を登用することにより、実効性ある大きな改革を示して頂きたい。
また、税理士委員も上月委員しか選ばれておらず、議事録を見てもなかなか
発言しにくい状況のようですから、実務家委員の登用も期待したいですね。


オリンピック招致の切り札はキャプテン翼!?
2009.09.21

2016年オリンピック開催地に立候補している東京都ですが、世論の
盛り上がりがイマイチなことや、IOC総会に皇太子殿下のご参加が
困難であることなど、不利な条件が明らかになってきている。
そこで、キャプテン翼やスラムダンク、ドラゴンボールなどが招致の
切り札にと検討されているという。(18日9時43分nikkansports.com記事)

総辞職した麻生前首相であれば喜んでいたであろうアニメネタですが、
まんざらでもなさそうな気がしますね。
世界のスーパースターの中には翼君に憧れてサッカーを始めた選手もいると
聞きますし、何よりも世界中で放送されていますから、世界へのアピール
として有効だと思いますね。

皇太子殿下のご参加が困難であることは非常に残念ですが、皇室関係者
(例えば、日本サッカー協会名誉総裁の高円宮妃久子様はどうでしょう)
の参加を賜れると、国民を上げての支援であるアピールができると思います。
また、鳩山首相にもご参加頂きたいところですが、川端文科相が参加される
ことも検討すべきではないでしょうか。
現職がムリなら、元総理でもいいと思います。
とにかく、国を上げてのオリンピック招致というアピールができるかが
勝負だと思います。

東京である必要があるかの議論もあるでしょうが、オリンピック招致に
手を上げた以上、ぜひとも招致に成功しようじゃありませんか。


天皇杯サッカー開幕
2009.09.20

昨日から開幕した天皇杯サッカーですが、今年はJ1、J2とも2回戦から
参戦することもあって、胸を借りることができる地域代表チームの善戦が
期待できる面白い大会になる期待がある。

私が1回戦で注目したいのは、今日試合があるこの2つのカード

東海大学(神奈川代表)vs.順天堂大学(千葉代表)
於:神奈川県 大和スポーツセンター競技場 13時キックオフ

アルテリーヴォ和歌山(和歌山代表)vs.佐賀東高校(佐賀代表)
於:和歌山県 紀三井寺公園陸上競技場 13時キックオフ

最初のカードは大学の名門校同士の対戦でリーグ戦でも対戦するチームの
意地のぶつかり合いによる好ゲームが期待できるカードです。
勝った方は次戦神戸でJ1ヴィッセル神戸戦です。

後のカードはU18が在籍する高校生チームが社会人相手にどこまで
通用するかということと、もしコレで勝てば、10月10日13時から
佐賀県総合運動場陸上競技場にてJ2サガン鳥栖との対戦となることです。
もし佐賀東が勝つと、サガンにとってはものすごいプレッシャーでしょうね。
まさかプロが地元の高校生に負けるわけにはいかないですからね。

天皇杯で輝いて注目される選手も出てくる可能性もあり、楽しみな大会です。


ザ・メソッド(あさ出版2009)
2009.09.19

今日は25日までアマゾンキャンペーン中の本を紹介したいと思います。

広瀬元義「ザ・メソッド」(あさ出版2009年7月)

一昨日、広瀬氏の講演を聞いたときに、この本を手に取りましたが、
我々税理士が見落としがちな経営者への示唆が満載されています。

本書はアンリ・ジャール氏の講演を本にまとめたという構成ですので、
読みやすく、各章ごとのまとめノートが頭の整理に役立ちます。

本書は、広瀬氏のノウハウである8つのメソッドを公開するもので、
1 きちんとした会社哲学を持つ
2 愛と奉仕のチームを作る
3 お客様の気持ちをぐっとつかんで放さない
4 小さな成果もレバレッジを使って大きくする
5 固定ファンにあらためて買ってもらう
6 あなたのリーダー力をワンランクアップさせる
7 キャッシュの本質を理解する
8 数字はシンプルに理解しねばちっこく確認する
という8つの経営の極意を解説しています。

税理士が陥りやすいのは、経営の大局を理解するための数字ではなくて、
その数字の細部に目が言ってしまうことですよね。
しかし、経営者にとっては、数字の細かい意味はどうでも良くて、
その数字が全体に与える意味が大切なんですよね。


お酒を造りたければ1度未満じゃなきゃダメ
2009.09.18

酒税が高いから自分で作っちゃおう!っていうのは犯罪です。
お酒を造るためには製造免許が必要なんです。
酒税法は、アルコール分1%以上の飲料を酒類と規定していますので、
ご自分で作りたい場合にはアルコール度数1度未満の酒をお作り下さい。

さて、酒類免許には、製造免許と販売免許があります。
免許の取得はどちらも税務署に申請して問題がなければ許可されますが、
これを維持するのが、思いのほか大変なハードルなんです。

例えば、ビールであれば、年間60kl以上作り続けなければなりません。
つまり、350ml缶であれば、17万本強作り続けなければいけないんです。
このハードルを3年間越えられなければ、免許取消です。
これでもハードルが下がったんですよ。
平成6年の改正がきっかけで地ビールブームが起きたわけです。

販売免許の方は、経営基盤が薄弱な場合も許可がでないことがあります。
最高裁平成4年12月15日判決(租税判例百選第4版で確認できます)
がこのケースですね。

宮沢賢治も「税務署長の冒険」でお酒の密造のお話を書いているんですね。
昔からお酒の密造が多かったという証拠ですね。


焼酎れんと720mlボトルの酒税は180円
2009.09.17

ビールの酒税が高い一方で、ウィスキーやブランデーは1980年代の外圧
の結果、焼酎なみに低くなっています。

焼酎やウィスキーは蒸留酒類で、焼酎はkl当たり20万円(アルコール
度数20度を超えると1度当たり1万円加算)、ウィスキー、ブランデー、
スピリッツはkl当たり37万円(アルコール度数37度を超えると
1度当たり1万円加算)の酒税が加算されます。
一見すると焼酎20万円、ウィスキー37万円ですが、アルコール度数当たり
1万円に換算できますので、アルコール度数が強いものでは同じ酒税額です。

私の両親は奄美大島出身で、黒糖焼酎が名産です。
私の父が大好きだったのは、浜千鳥の詩原酒(38度)。
私はれんと(25度)が一番好きですね。

れんとの720mlボトルで酒税は180円。
だいたい1週間くらいで呑みますので、1日当たりの酒税は25~30円。
毎日缶ビールを1本飲んでいれば77円払わなければならないのと
比べると大分安いですね。
(第3のビールが28円ですから同じくらいですね)

ただ、民主党はアルコール度数による酒税平準化を考えているので、
ビールは大幅減税ですが、焼酎、ウィスキー等は倍増するかも・・・


租税訴訟学会シンポジウム本日開催
2009.09.16

本日13時より私も理事として参加している租税訴訟学会が主催する
シンポジウムが東京税理士会館にて開催されます。

テーマは「租税法規の不利益遡及立法に関する提言に向けて」。
基調講演を
論点整理の視点から、藤曲武美税理士(理事)、
憲法の視点から、戸松秀典学習院大学法科大学院教授、
ドイツ法の視点から、首藤重幸早稲田大学大学院教授の各氏にお願いし、
パネルディスカッションでは、
牛嶋勉弁護士(理事)をコーディネーターに、基調講演の3氏に加え、
弓削忠史九州共立大学教授(理事)、山田二郎弁護士(会長)、
志賀櫻弁護士(理事)、船橋俊司弁護士(理事)、朝倉洋子税理士(理事)の
計9氏が丁々発止の議論を展開する予定です。

平成16年度税制改正において、政府税調の税制改正大綱が公表された後、
突然降って涌いたように、与党税調から出てきて、年末まであと2週間も
ない時期に提示され、法律制定前の年明け1月1日から適用された
「土地建物等の譲渡損失の損益通算の廃止」を巡り、現在最高裁で係争中の
事件がきっかけになって活発に議論されるようになった「税制改正の遡及効」
について、このシンポジウムの結果を提言としてまとめ、係争中の事件
(弁護人はパネルにも参加される山田会長です)の側面支援を考えています。

この事件については、私も今年の5月に税法学561号で論文を発表させて
頂きましたが、法の大原則であるはずの遡及効の原則禁止が無視され、
朝日新聞、読売新聞、毎日新聞の各紙には与党税調大綱の要旨にさえ
書かれていなかった「1月1日に遡って適用する」という注書きによって
国民にとって不利益な改正が遡及適用されたというとんでもない話である。

もしこれが許されるのであれば、クライアントに注意喚起をしなかった
税理士は、クライアントに対する道義的責任は免れないものであろう。
法律案でもない段階での議論は租税法律主義の範疇に入るはずもないが、
クライアントに専門家としてアドバイスを怠った結果として、
クライアントに無用な損害を与えることはプロフェッショナルとしての
税理士がやってはならないことである。
しかし、朝日、読売、毎日でさえ書かない記事をアドバイスできるのか。

今日のシンポジウムは一家言ある先生方の議論が楽しみですね。


ビールの酒税は350ml缶77円
2009.09.15

酒税はお酒の種類に応じて酒税額が決まり、ビールは発泡性酒類です。
ビールと同じ酒類としては発泡酒、第三のビールなどが当たりますが、
発泡性酒類の中でもビールは非常に高い税金が設定されています。

ビールkl当たり22万円。350ml缶1本当たりに直すと77円。
なぜ高いのかというと、酒税法上では、舶来品の高級品だったからです。
発泡酒の場合は、色々と条件があって、
麦芽25%~50%のものは、kl当たり178125円。(1缶当たり62円)。
その他のものがkl当たり134250円。(1缶当たり47円)。
第三のビールは、kl当たり8万円。(1缶当たり28円)。

今では庶民の酒のビールの酒税が下がらないので、メーカーが開発努力した
結果、低い税率の酒でビールの風味を楽しめる酒が出来上がったんですね。

ビールは安売りしないなあと感じている方も多いと思いますが、
安売りしないのではなくて、安売りできないんですね。
例えばビールを105円で販売したとしたら、77円を酒税として払い、
5円を消費税として払いますので、23円しか手元に残らないのに、
仕入れ値は変わりませんから、赤字にしかならないんですね。
第3のビールなら、酒税が28円、消費税が5円ですから、72円残ります。
それなら、仕入代金や、給料を払っても、販売店にお金が残るんです。
だから安く売れるんですね。


目隠しはずしの税金講座
2009.09.13

今日は税金のことを誰にでも分かりやすく説明してくれる本を紹介します。

渋谷真帆・大沢育郎「大人のたしなみ「目隠しはずし」の税金講座」
(PHP研究所2009年6月)

キャリア&マネーコンサルタントの渋谷氏と税理士の大沢先生の共著で、
イラストを多用した、税金本には珍しく非常に読みやすい本です。

本書の目的として、冒頭で渋谷氏はこう書いている。
「税金ってなんだか難しそう・・・・・・」。
いえいえそれではお役所や政治家の思うつぼ。
この本ではイラストを多用したり、会話形式にすることで「難しいことを
分かりやすく、分かりやすいことを面白く、かつ身近に感じられる」ように
心がけましたのでどうかご安心ください。
いつに時代も最強の試算は自分自身の能力と可能性です。
この本が「目隠しをしたまま」状態から脱出したい!と思われる皆さまの
一助となれば幸いです。(本書1ページ)

また、共著者の大沢税理士はこう記す。
「今まではそれでよかったのだと思います。
戦後まれにみる経済復興、いざなぎ景気、高度成長、年功序列・終身雇用・・・、
税金なんて知らなくても経済がうまくまわっていて、またその恩恵も国民へ
配分されていました。
しかし、時代は変わりました。
今や恩恵ではなくて、負担を配分する時代へと変化しようとしています。
(中略)
そして、「完全な」会社や専門家任せはやめ、自分で突っ込みを入れられる
くらいの下地をつくっていただく参考書的な役割が、本書の狙いとするところ
でもあります。
この本を手にとっていただくことは、その脱却のための第一歩となることと
わたしは信じています。」(本書2-3ページ)

まさにその通りですね。
私もこういうコンセプトで何か書こうと考えていましたが、先を越されました。
税金を知らないせいでムダな税金を支払っている方が多いのが現実ですから。
「法は不知を許さず」
法律の世界では、知らないあなたが悪いんですね。
それなりの報酬を払わなければ教えてくれない専門家に聞く前に、
税金の世界の常識くらいは頭に入れておいた方が得なんですよ。


ITS鹿児島合宿
2009.09.12

9月5~7日にかけて、私の実務界での恩師である大森健鹿児島大学教授を
囲むITS租税総合研究所のメンバーで鹿児島研修合宿に行ってきました。

羽田からのフライトで鹿児島到着後は大森先生の案内で鹿児島大学へ。
大森研究室で鹿児島大学や学生・院生の話をお伺いし、大森ゼミの学生の
レベルの高さには驚かされました。
学部の4年生とは思えない卒論中間発表資料と卒論への取り組み方に、
近年の我が国士舘西野研究室の現状を憂わずにはいられませんでしたね。
また、判例の話になったときの大森先生からの問いかけは厳しくも温かく、
指導を受けていた時代を懐かしく感じました。
私が大森事務所にいたのは1年にも満たなかったですが、温かいご指導の
お陰で実務家としてやっていけることに感謝しています。
また、大学教授へ転身されながら、東京の事務所を維持されており、
その奮闘振りは、私の人生の羅針盤でもあります。

夜の懇親会では、大森先生行きつけのお店で鹿児島料理や芋焼酎を堪能し、
仕事のことを含め、多くの刺激を受けてきました。
最高だったのは、黒豚のしゃぶしゃぶ。
東京にも支店を出している「いちにいさん」で食べたしゃぶしゃぶは、
そばつゆで食べるもので、肉の甘みが感じられて素晴らしかったですねえ。

さて、今回一緒に行ったメンバーは大森先生の薫陶を受けた者だけでしたが、
ITSのメンバーには、大森先生を知らない方も徐々に増えてきましたね。
大森先生が鹿児島に赴任されて約5年。
私が先生の後任として青山IGC学院の講師を引き受けてからそれだけ時間が
経っているわけで、ITSの新メンバーは大森先生を知らないんですね。
元々はIGCで大森先生に教わった私の1年下の代の同窓会として始まった
集まりが、飲み会だけでは意味ないね、ということで大森事務所の会議室を
借りて研修を始めたのがITS結成のきっかけなのですが、メンバーが
一緒に勉強したいという友人を連れてきて仲間の輪が拡がりました。

私も結成当時から加わり、一緒に切磋琢磨してきた仲間です。
これからの激動の時代も、有意義な情報交換と友情を大切に頑張っていきたいですね。


アコードが本格始動
2009.09.11

アコードの国税通則法検討委員会が、本日18時より開催されます。
大蔵財務協会のご協力で会議室を使わせて頂いております。
委員会は基本的には研究顧問の皆様が委員として検討を加えることと
されていますが、会員の皆様方にもご参加できるようにしております。
ただ、事前登録制とさせて頂いておりますので、HPよりお問合せ下さい。
http://www.at-i.info/

国税通則法検討委員会は今日が第1回目。
今年は加算税制度を検討させて頂く予定です。
私の専門分野ではないのですが、それなりに考えていることはありますね。
酒井所長からも、発言を求めるかもしれませんから・・・と。
一番のペーペーですが、頑張ります。

また、加算税制度に関する検討ということでは、
10月25日(日)10時30分~13時
11月8日(日)10時30分~13時
の2回に渡って、基礎セミナーを、スター会議室飯田橋で開催します。
認定研修とは異なり、有料研修ですので、各回一般1万円会員5千円の
資料代を頂戴するとともに、先着50名様限定の完全事前登録制となります。

更に、週明けの14日には東京税理士会館にて、「税務調査」をテーマに
酒井所長が講演をなさいます。
ただ、東京税理士界の研修コーナーに掲載された問い合わせ先の電話番号が
間違っていたようで、大変失礼を致しました。
連絡先は私の事務所になっておりますので、よろしくお願い申し上げます。
03-5660-5287です。
こちらは東京税理士会の認定研修になり、一般1000円アコード会員無料で、
当日受付も可能です。

10月の判例解析講座についても問合せが入り始め、8月のシンポジウムよりも
手応えを感じております。
研究者と実務家、国税当局の橋渡しとしての役割を果し得る研究会を
作り上げていけるよう、皆様方のご協力を頂戴したいと存じます。
よろしくお願い申し上げます。


複数年度予算実現できるか
2009.09.10

国や地方自治体の予算執行の原則が民主党政権で大きく変わりそうだ。
10日8時34分KYODONEWSによると、民主党は、国家戦略局で
従来の単年度予算から複数年度予算を組むことを検討するというのだ。

予算執行において余剰金が出た場合、翌年度予算ないし翌々年度予算で
その分を削られることを恐れて、与えられた予算を使い切ろうとすることは
民間企業でも往々に見られますが、役所はムリにでも予算を使いきろう
とするあまり、ムダな公共事業が行われてしまう傾向が強いようだ。
しかし、単年度予算のために、継続性が重視されるべき長期プロジェクトの
予算が急に削られてしまうこともありがちだったようだ。
その結果、完成しなければ意味がなくなってしまうような事業がムダと
見られるケースもあるようですし、発注を見越して準備をしていた民間企業
とのトラブルになるケースも見受けられる。
複数年度予算が実現すれば、長期プロジェクト予算の執行が可能になり、
上記のようなケースはかなり減ることが当然に予想されよう。

ムダの削減により財源を確保するとする民主党としては、生命線を確保する
ためにも、単年度予算の欠点を補う複数年度予算は必要であろう。

このニュースに関連して、8日1時33分asahi.com記事によると、
杉並区が、2011年度に区債の償還が終わるのを機に、返済原資に充てていた
原資を積み立て、この基金を元に10年後の特別区民税の減税を企図している
という。
このアイデアは、今年の1月に報告された杉並区減税自治体構想研究会報告書
に基づくもので、非常に興味深いシミュレーションです。
http://www2.city.suginami.tokyo.jp/library/file/H21genzeijichitai_houkokusyo.pdf
10年後と言わずすぐにでも減税して欲しいとの声も多いでしょうが、
減税効果が薄く、実感が涌きにくいのも事実でしょう。

目先のことだけではなく、将来のわが国のありようを考えて頂くためにも
単年度予算から複数年度予算への変更は、期待したい政策ですね。


民主党政権誕生による税制改正のゆくえ(6)
2009.09.07

今日は、昨日検討した消費税に関連して、
「個別間接税改革の推進」
「酒税・タバコ税」
「自動車関連諸税の整理、道路特別財源の一般財源化、地球温暖化対策税」
について検討します。

酒税に関して、8月31日にテレビ東京系ワールドビジネスサテライトに
出させて頂きました。

まずは、民主党政策集INDEX2009の文章を確認しよう。

「個別間接税改革の推進」
単一の経済行為に消費税と2本立ての課税を行うことになる個別間接税は
速やかに整理し、間接税は消費税に一本化すべきです。
一方で、税によって社会に益をもたらす特定の品目の普及や使用を促進
したり、社会的コストを生じる特定の品目の普及や使用を抑制したり、
あるいはその社会的コストの一部の負担を求めたりすることは、
適当であると考えます。
このような観点に立って、残存する嗜好品やエネルギーに係わる個別間接税は
「グッド減税・バッド課税」の考え方に基づいた課税体系に改めます。

「酒税・たばこ税」
酒税・たばこ税は国民の健康確保を目的とする税に改めるべきであり、
その際には国民に分かりやすい仕組みにすることが必要です。
その観点から、酒税については、特に清酒・焼酎などの現行の税負担に
配慮しつつ、基本的に致酔性に着目してアルコール度数に比例した税制
とすることを検討します。
たばこ税については財源確保の目的で規定されている現行の「たばこ事業法」
を廃止して、健康増進目的の法律を新たに創設します。
「たばこ規制枠組み条約」の締約国として、かねてから国際約束として
求められている喫煙率を下げるための価格政策の一環として税を位置付けます。
具体的には現行の「1本あたりいくら」といった課税方法ではなく、
より健康への影響を考えた基準で、国民が納得できるような課税方法を
検討します。
その際には日本たばこ産業株式会社(JT)に対するさまざまな事業規制や
政府保有株式のあり方、葉たばこ農家への対応を同時に行います。

「自動車関連諸税の整理、道路特定財源の一般財源化、地球温暖化対策税」
わが国の自動車関係諸税は、あまりに複雑で、一部が二重課税となっている
等、自動車ユーザーに過重な負担を強いており、抜本的な整理が必要です。
整理にあたっては、間接税の基本的な考え方に基づいて二重課税の排除等を
行います。
同時に、自動車の資産性や温暖化ガスの排出、交通事故、騒音などの
社会的なコストに着目し、負担を求めることとします。
以上のような考え方から、自動車関係諸税について以下のように整理します。
自動車取得税は消費税との二重課税回避の観点から廃止します。
自動車重量税および自動車税は、保有税(地方税)に一本化し、その税収を
自動車から生じる社会的負担に広く対応する地方の一般財源とします。
ガソリン等の燃料課税は、一般財源の「地球温暖化対策税(仮称)」として
一本化します。
なお、上記の改革を実現する第一歩として、暫定税率は地方分を含めて
すべて廃止します。
国直轄事業に対する地方自治体の負担金制度を廃止して、暫定税率廃止後に
おいても、地方における道路整備事業は従来水準を維持できるようにします。


民主党案の間接税に対する考え方は、基本的には個別間接税を廃止し、
消費税に一本化することのようですね。
ただ、税によって社会に益をもたらしうる税目や社会的コストを生じる
特定品目の普及や使用を抑制する効果がある税目(酒税・タバコ税・
自動車関連諸税・産業廃棄物税等)を残存し、社会に益をもたらしうる
税目を減税し、社会的コストを生じる税目については、消費税移行による
減税ではなく、温存することで高い負担をお願いする、という考え方ですね。

個別間接税は複雑になりがちで、利権を生みやすい構造にあっただけに、
税制の簡素化・透明化を標榜する民主党案の方向性に合致する。

特に、自動車関連諸税において4月攻防を見せた暫定税率の廃止については、
そもそも何ゆえに暫定でありながら、暫定のまま長年やってきたのか。
自民党道路族が暫定財率を維持したかったのであれば、何ゆえに本法に
組み込まないままできたのか。
明日検討する租税特別措置法も同様で、特別措置が何ゆえに本法化されずに
温存されてきたのか。
こういった問題が税制を必要以上に複雑にしてきたのだ。
判りやすくするためにも、必要不可欠なもの以外は原則に戻すべきでしょう。

自動車関連諸税については、自動車税および重量税は分割する意味がすでに
失われており、自動車保有税に一本化する民主党案は納得だ。
また、ガソリン等の燃料税も、化石燃料の燃焼によるCO2対策が求められる
現在において、ヨーロッパ諸国に足並みを揃え、「地球温暖化対策税」として
一本化するという方針は非常に好ましいところだ。

心配なのは、地方において特に必要とされるインフラ整備としての
道路建設がストップしてしまうことだろう。
これまでは自動車関連諸税は道路特定財源として原則として道路建設等にしか
使われなかったが、一般財源化するとなると、公共事業の優先順位として、
将来の発展のためのインフラ整備は後回しになろう。
東国原宮崎県知事らが危惧していたのもその点であろう。
特に宮崎は北に高速が繋がっていないため、例えば延岡の農産物を福岡に
運ぶのに、距離の短い(環境負荷の少ない)大分ルートではなく、
高速を使って、鹿児島、熊本を経由していく方が早いという。
スピードが求められる現在の世界市場で圧倒的なインフラ不備がありながら、
目の前に必要な公共事業があれば、当然にインフラ整備は後回しだ。
この点については、地方の首長たちの声を民主党政権がどう拾い上げるのか、
注目して見ていきたい。

酒税については、酒の種類で税率が変わる現行制度から、アルコール度数に
応じた課税に変わると、非常に判りやすくなる。
世界的にも高い税率だったビールは半減以下(試算では55%DOWN)、
発泡酒も若干下がりますが、あとは増税。
焼酎は従来から20度を越えると1度あたりで1万円税率が上がるため、
現行制度に近いものだが、試算では、酒税は1度あたり2万円になるので、
焼酎は倍、日本酒では倍から2.5倍程度になるようです。
ワールドビジネスサテライトでは、試算した税率2万円を出していません
でしたが、ビール等以外の方はがっかりな改正になりそうですね。
ただ、ビール需要が大幅に上がれば、ビールメーカーは儲かりますから、
酒税が減ったとしても、法人税でカバーできるのではないかと思います。
心配は増税の影響を受ける日本酒や焼酎の中小メーカーの命運ですね。
税のフラット化の功罪がまともに出てしまうかもしれません。

タバコ税に関しては、喫煙率を下げるための価格政策の一環とするという
民主党案を鑑みると、強烈な増税になる可能性は高いですね。
スモーカーはますます肩身が狭くなってしまいますね。
ただ、私は、スモーカーのマナーの悪さにも原因があると考えています。
私の両手は、学生時代にタバコの火を3度ほど受けています。
すれ違い際に火が当たっているんですね。
未だに携帯灰皿を持っている方は少数派ですし、KYな方々と言われても
自業自得ではないでしょうか。
逆に、スモーカーの側からも、吸える場所を作る運動があってしかるべきだと
思いますが、これまでの喫煙所の状況から考えれば、スモーカー以外からの
支持は広がらないでしょうね。


民主党政権誕生による税制改正のゆくえ(5)
2009.09.06

今日は、選挙前に鳩山代表の「4年間上げない」発言でも話題になった
消費税について検討したい。
民主党と連立を組むことが予想されている国民新党亀井静香新代表は
「消費税アップなんか論外だ。民主党も理解している」と発言しており、
総選挙後に政治不信が払拭された段階での増税を示唆した鳩山氏の
対応について注目されるところでもある。
早速、民主党政策集INDEX2009の文章を確認しよう。

「消費税改革の推進」
消費税に対する国民の信頼を得るために、その税収を決して財政赤字の
穴埋めには使わないということを約束した上で、国民に確実に還元する
ことになる社会保障以外に充てないことを法律上も会計上も明確にします。
具体的には、現行の税率5%を維持し、税収全額相当分を年金財源に充当します。
将来的には、すべての国民に対して一定程度の年金を保障する「最低保障年金」
や国民皆保険を担保する「医療費」など、最低限のセーフティネットを
確実に提供するための財源とします。
税率については、社会保障目的税化やその使途である基礎的社会保障制度の
抜本的な改革が検討の前提となります。
その上で、引き上げ幅や使途を明らかにして国民の審判を受け、具体化します。
インボイス制度(仕入税額控除の際に税額を明示した請求書等の保存を
求める制度)を早急に導入することにより、消費者の負担した消費税が
適正に国庫に納税されるようにします。
逆進性対策のため、将来的には「給付付き消費税額控除」を導入します。
これは、家計調査などの客観的な統計に基づき、年間の基礎的な消費支出に
かかる消費税相当額を一律に税額控除し、控除しきれない部分については
給付をするものです。
これにより消費税の公平性を維持し、かつ税率をできるだけ低く抑えながら、
最低限の生活にかかる消費税については実質的に免除することができるようになります。

民主党の消費税改革の特長は、消費税の完全年金財源化と、所得税にも
導入予定の給付付き消費税額控除の導入であろう。
消費税増税の必要性を繰り返した麻生首相・与謝野財務相及び財務省と
異なり、少なくとも現行の5%を維持したまま、消費税収は全て年金財源
として用いることを提言し、基礎的社会保障制度の抜本的な改革の検討の
中で、消費税の増税が本当に必要であれば、増税額を示した上で「国民の
審判を受ける」と明言しているところは非常に評価したい。
私見では消費税の早期増税が必要ではないのかと考えているが、その
増税額については、国からデータが示されていないため、何とも言えませんが
(経済財政諮問会議で公表されている資料では私には試算できませんでした)、
経済財政諮問会議に示された財務省の試算によれば、消費税率は10%に
止まらないわけで、本当にそこまで必要なのかな、という疑問がありますね。

ただ、世界的には消費税率5%というのは非常に低く、世界標準の20%台
への増税も考えられるところではあります。しかし、そうなるときには、
消費税率は複数税率(つまり、生活必需品は低税率、奢侈品は高税率)に
するべきでしょう。
世界的に見ても、単一税率は珍しいんですね。
諸外国の消費税は、生活必需品は低税率になるように組まれているんです。
(何が必需品で何が奢侈品かの線引きが難しいんですけどね・・・
例えば、政府流通米は低税率で魚沼コシヒカリは高税率ということも・・・)

簡素化・透明化という民主党案の基本方針からすると、複数税率の導入は
逆行しているのですが、もし増税するということであれば、生活必需品への
大増税を避けるためにも、必要な措置であろう。

民主党案では、所得税に導入するという給付付き税額控除を消費税にも
導入して、低消費者に対しての対応としたい旨を明記していますが、
日本ではできるんですかね?
日本の消費税法は、納税者は事業者であって消費者ではないんですが・・・
それとも、給付対象を歳入庁で計算して、給付する形をとるのでしょうか?
所得税では全員が確定申告をするという形に変えるとすれば十分実現可能な
給付付き税額控除ですが、消費税に関しては、消費者による申告は事実上
不可能でしょうから、どう制度設計するのか、注目したいところですね。

また、益税対策としてインボイス方式の完全導入を考えているようですが、
これも現実的とは言いがたいところです。
商法が要求する帳簿要件は、帳簿があればいいわけですし、所得税や法人税
においても、簡易帳簿があれば青色申告が可能であるにもかかわらず、
消費税だけは、請求書や領収書が必要になるという矛盾を判っていないから
消費税法の母法とも言うべきフランス法の常識を使いたがるんですね。
フランスは商法に厳格な帳簿規定があるから消費税法にインボイス方式が
あって当然なんですが、日本は、明治20年代の民法典論争と同様、
商法においても強烈な反対運動が起きており、その中には、帳簿を
つけなければいけないということは人を雇わなければいけないか、
というものさえあったんですね。
(ちなみに、私は、国士舘法学38号(2006)に掲載した「青色申告の帳簿要件」
と題した論文で、消費税法上の帳簿要件が厳格すぎる点を考えると、帳簿要件
による青色申告制度はすでに特典としての意味を持っていない旨、批判した。)

確かにインボイス制度が導入できれば、不正行為による課税逃れは難しく、
税務調査も簡略されることになるから、税務行政の簡素化もできるんですが、
その反面、日本ではそのためのインフラ整備が、特に中小企業では全くと
言っていいほどできていないというのが現状でしょう。
これは、記帳代行を収入源としている税理士が多いことからも容易に想像
できるが、インボイス制度に対応した領収書の作成が前提になるだけに、
日本中のお店が、レジスターを変えなければならなくなるでしょうね。
前段階での仮払消費税が見えなければ、インボイスの意味がなく、
税務行政の簡素化にはまったく役に立ちませんから。

そういう意味では、消費税を4年先以降に全面的に改正するためにも、
より深い検討が必要なんですよね。
ということは、鳩山代表の発言の真意は、4年間上げないではなくて、
議論が尽くされていない段階での消費税増税には応じられない、という
ところにあったのかもしれませんね。
だからこそ、選挙後に、連合に対して4年先以降の消費税増税の可能性を
示唆したのかもしれない。


民主党政権誕生による税制改正のゆくえ(4)
2009.09.05

今日は、昨日に引き続き、所得税について検討したいと思います。
昨日検討し切れなかった所得税改正のテーマから
「住宅ローン減税等」
「金融所得課税改革の推進」
の2点について検討します。

まずは、住宅ローン減税等について、INDEX2009の文章を確認しよう。

「住宅ローン減税等」
住宅ローン減税については、いたずらに最大控除可能額を拡大する
のではなく、バリアフリー化や省エネなどの社会ニーズの高い分野に
対して重点的な負担軽減策を講じます。
また、自らの資金で住宅を新改築・購入した場合でも、住宅ローン減税と
同程度の負担軽減を受けることができる制度(投資減税)を創設し、
団塊世代などの建て替えやリフォームのニーズに応えます。
生損保など民間保険会社の保険料控除については、社会保障制度を
補完する遺族・医療・介護・老後(年金)といった保険商品に対応した、
新しい保険料控除制度を創設した上で、所得控除限度額を所得税において
15万円程度に引き上げます。


住宅ローン減税に関しては、平成21年度改正において控除額が拡充された
ところであるが、民主党案では、平成21年度改正においてなされたような
住宅ローン減税一般について控除額を拡充する方向ではなく、同じく
平成21年度改正において創設された長期優良住宅等の税額控除のような
政策目的として有用な重点項目に対する控除とするべきだとしており、
平成22年度改正において、住宅ローン減税の削減の反面、長期優良住宅等の
税額控除の拡充がなされることが予想される。
(長期優良住宅等の税額控除に関しては、税務弘報09年8月号に論文を
寄稿しています。7月5日の記事を参照して下さい。)

しょっちゅう改正され、確認しないとミスしかねない住宅ローン控除ですが、
民主党案を考えると、平成21年度改正の内容は1年ないし2年でまた
変わってしまいそうです。
それも一般化ではなく、特定のものに対する控除への変更。
後で詳細に検討しますが、税制の簡素化・透明化を進めようとする民主党の
基本姿勢からすると、逆行しているように感じますね。
むしろ、住宅ローン控除をもっと単純化した方が、他の改正との方向性が
近いと思うのですがね。
長期優良住宅等の認定基準を明確にし、もっと利便性を高めてくれると、
長期優良住宅等(いわゆる100年住宅)の建設が広がり、エコな家作りが
進むように思います。
ただし、8月29日記事で指摘したように、マンション建設では、イマイチ
進展していないようですが・・・

また、借入金がない自己資金での住宅建設や増改築についても負担軽減を
図る投資減税を導入するようです。
これは、自民党案にもありましたので、早期に実現すると思われます。
老年者の持つ余剰資金を独立した持ち家を考えている子ども・孫に生前贈与
する選択肢がより活発に行われることが期待されるだけではなく、相続税に
おいても、相続時精算課税制度を選択されるケースが増えることが予想される。

相続税においては、かつては市役所等から死亡情報を確認し、相続税のお尋ね
を送付することによって、税務署も相続税発生案件の確認をしていた時代も
あったようですが、個人情報保護法により、税務署が死亡情報を知る手段が
大幅に減っている状況では、相続時精算課税を選択して頂くことは、
一定規模の財産を保有している方を確認する手段として有効であろう。

財産を保有している方からすれば余計なことかもしれないが、財産を保有しない
一般庶民からすれば、相続税の課税漏れは不公平税制に繋がるだけに、
投資減税の裏の効果には期待を寄せているのではないだろうか。

また、生命保険料控除は、従来、一般の生保で5万円、年金型で5万円の
合計10万円の控除を上限とし、損害保険料控除は、平成18年改正で、
一般の損保は控除対象から外れ、地震保険料控除に組み替えられています。
民主党案では、損保控除については、文章から読み取ることはできませんが、
生保控除については、社会保障制度に対応する形で合計15万円を上限
とするよう改正されるようです。


次に、金融所得課税についてINDEX2009の文章を確認する。

「金融所得課税改革の推進」
本来すべての所得を合算して課税する「総合課税」が望ましいものの、
金融資産の流動性等にかんがみ、当分の間は金融所得については分離課税と
した上で、損益通算の範囲を拡大することとします。
証券税制の軽減税率については、経済金融情勢等にかんがみ当面維持します。


民主党の所得税改革の基本線は、所得分類による分離課税を廃し、全てを
合算する総合課税が望ましいと明言しているが、金融資産に関しては、
分離課税を維持するものの、損益通算(他の種類の所得と赤字の相殺を
できるようにする)の範囲を拡大する方針だという。

現在最高裁で係争中の、土地建物等の譲渡損失の損益通算の問題にも
大きな影響を与えるかもしれませんね。
(2日にアップした(1)にもこの問題は取り上げました。)
また、株式やゴルフ会員権の譲渡損失についても、損益通算が復活する
可能性があるのでしょう。

民主党案が損益通算の拡充をするのは、分離課税を温存する反面の対応策
でしかないと考えられるため、恒久的に損益通算拡充を検討している
わけではないことには留意する必要はあろうが、なけなしの資金をつぎ込んだ
資産の譲渡損失の損益通算が使えれば、少しは救われる気になるかもしれない。
しかし、塩漬けにされていた資産の損切りによる節税効果は、高額納税者
ほど大きなものとなるだけでなく、損切りの売却の悪影響として、資産価格の
さらなる低下も予想され、地価の下落が景気への悪影響を与えなければ
よいのだが、と危惧する面もあろう。

証券税制の軽減税率についても、税制の簡素化・透明化という意味では、
廃止すべきであろうが、株価低迷の折に増税を行うことは、景気への
悪影響になる可能性もあり、早急な廃止は見送られた。

そういう意味では、今日紹介した2点については、理想論に走りがちな
民主党の他の政策との齟齬が出かねないけれども、現実的な対応として
策定されたものが多いように感じるところですね。


民主党政権誕生による税制改正のゆくえ(3)
2009.09.04

今日と明日の2回を使い、所得税改革について検討したいと思います。
今日は、税額控除に関する項目から、
「所得税改革の推進」
「年金課税の見直し」
「給付つき税額控除制度の導入」
の3項目について検討します。

まずは、民主党政策集INDEX2009に記載されている文章を確認しましょう。

「所得税改革の推進」
相対的に高所得者に有利な所得控除を整理し、税額控除、手当、給付付き
税額控除への切り替えを行い、下への格差拡大を食い止めます。
所得控除は、結果として高所得者に有利な制度となっています。
例えば、扶養控除(一般)は子育て支援の機能を有していますが、
同じ38万円の所得控除を適用した場合、高所得者が10万円を超える
減税になるのに対して、低所得者では2万円の減税にもなりません。
一方、所得の高低に関係なく税額から一定額を差し引く税額控除や所得控除
から手当への切り替えは中・低所得者に有利な政策です。
給付付き税額控除は、税額控除の額より税額が低い場合、控除しきれなかった
額の一定割合を給付するものであり、税額控除と手当の両方の性格を
併せ持つ制度です。
これらの政策を適切に組み合わせることにより、下への格差拡大を食い止めます。
人的控除については、「控除から手当へ」転換を進めます。
子育てを社会全体で支える観点から、「配偶者控除」「扶養控除(一般。
高校生・大学生等を対象とする特定扶養控除、老人扶養控除は含まない。)」は
「子ども手当」へ転換します。
また、その際は、年金生活者の負担増とならないよう、年金課税の見直しも行います。
給与所得控除については、特定支出控除を使いやすい形にするとともに、
現在青天井となっている適用所得の上限を設ける等の見直しを行います。

「年金課税の見直し」
「公的年金等控除」「老年者控除」は、平成16年度改正以前の状態に戻します。
「公的年金等控除」について、65歳以上の方の最低保障額を120万円から
140万円に引き上げるとともに、50万円を所得控除する「老年者控除」を
復活させます。
ただし、適用には所得制限を設けます。
本措置により、配偶者控除を整理した場合でも、年金生活者の負担増にはなりません。

「給付付き税額控除制度の導入」
相対的に高所得者に有利な所得控除を整理し、必要な人に確実に支援が
できる給付付き税額控除制度を導入します。
生活保護などの社会保障制度の見直しと合わせて、(1)基礎控除に替わり
「低所得者に対する生活支援を行う給付付き税額控除」(2)消費税の逆進性
緩和対策として、基礎的な消費支出にかかる消費税相当額を一律に税額控除し、
控除しきれない部分については給付をする「給付付き消費税額控除」
(3)就労への動機付けのため、就労時間の伸びに合わせて「給付付き税額控除」
の額を増額させ、就労による収入以上に実収入が大きく伸びる形で
「就労を促進する給付付き税額控除」――のいずれかの目的若しくは
その組み合わせの形で導入することを検討します。
ただし、不正還付・不正受給を防ぐためにも所得の正確な把握が必要であり、
納税と社会保障給付に共通の番号制度の導入が前提となります。
なお、税額控除額全額を控除するだけの税額がなく、給付を受けることになる
場合は、その給付額はまずは年金や医療等の社会保険料負担分と相殺する
ことを検討します。


民主党案における所得税改革の最大の目玉は「給付付き税額控除の導入」であろう。
ただ、これは民主党独自の主張ではなく、従来から経済財政諮問会議でも
検討され、自民党税調大綱にも近い将来の導入が謳われていたものである。

現行の税額控除は、税額がゼロになるまでしか控除が受けられないために、
税額控除上限額よりも税額が少ない場合には、控除額が減額されることになる。
ところが、導入が検討される給付付き税額控除は、税額がマイナスになっても
税額控除が受けられるため、税額控除の結果として、中間納付や源泉徴収済みの
税額がなくても、還付税額が生じるというものです。
(詳しくは5月19日の記事と、そこで紹介した森信茂樹「給付付き税額控除」
(中央経済社2008)を参照して下さい。)

ただ、政府税調スタディーグループ報告(詳しくは8月30日記事を参照)
にもあるように、諸外国では不正還付や不正受給に対処するために、
様々な施策がなされており、その管理のためにも昨日紹介した納税者番号制度
の導入が不可避である。

給付付き税額控除は庶民に優しい目玉となる改革であるが、逆に、
庶民にとっては負担増になる可能性が高い改革もある。
扶養控除や配偶者控除といったいわゆる人的控除の廃止である。
8月31日放送のワールドビジネスサテライトでは日本総研の方にインタビュー
されていましたが、むしろこっちで出たかったですね。
あの話では甘いんです。
民主党から公表されているデータでは、子どものいない65歳未満の専業主婦
がいる世帯では、税負担が増えるけれども、中学卒業までの子どもがいる
すべての世帯で、手取り収入が増えるとしていますが、高校生以上の場合は
どうなんですかね。
特定扶養控除(16歳以上23歳未満の子どもが対象)は扶養控除が倍に
なっていますから、月額2万6千円の子ども手当の支給がなくなるだけ
ではなく、一人につき年間63万円の所得控除がなくなるのですから、
最低税率の5%の方(所得195万円以下)で31500円、10%(330万円以下)
なら、6万3千円の税負担増になろう。

また、単身世帯、こどものいない共働き世帯に影響はないと指摘しているが、
扶養控除とともに配偶者控除も廃止されるので、年間給与額103万円未満で
パートをしている方にとっては、配偶者控除38万円がなくなるので、
だんなさんの税金が、5%で19500円、10%で3万8千円増えることになる。

パートをしている奥様がいても共働き世帯といわないということだろうか。
そういう意味では、子どものいない方に対しては非常に厳しい税制になるといえよう。
産めよ増やせよとでも言いたいのだろうか。
出産時助成金の拡充とあわせ、子どもを作らないと不利になりますよと
言われているような気がするんですよね。

逆に、高齢者には手厚いのが民主党案の特長で、最低保障年金制度の導入により、
全ての方が7万円以上の年金を受け取れるようにすることとされています。
税制でも、平成16年度改正によって廃止された「老年者控除」の復活や、
同改正で大幅に減額された「公的年金等控除」を元の水準に戻すだけではなく、
65歳以上の方の控除額を120万円から140万円に引き上げること等、
高齢者に優しい制度が拡充されています。

一番お金がかかる高校生、大学生のお子さんがいる世代に厳しい税負担を求める
改正案については、どうにも納得できないところですね。
野党に転じた自公から厳しい批判に晒されたときに、どう対応するのか、
注目して見ていきたいところです。


民主党政権誕生による税制改正のゆくえ(2)
2009.09.03

民主党政策集INDEX2009に基づいて民主党政権になったら税制が
どのように変わるのかを検討しているシリーズの2回目は、
「税・社会保障共通の番号の導入」
「納税者権利憲章の制定と更正期間制限の見直し」
の2点について検討したいと思います。
まず、それぞれについて民主党政策集INDEX2009に記載されている
文章を見ておこう。

「税・社会保障共通の番号の導入」
厳しい財政状況の中で国民生活の安定、社会の活力維持を実現するためには、
真に支援の必要な人を政府が的確に把握し、その人に合った必要な支援を
適時・適切に提供すると同時に、不要あるいは過度な社会保障の給付を
回避することが求められます。
このために不可欠となる、納税と社会保障給付に共通の番号を導入します。

「納税者権利憲章の制定と更正期間制限の見直し」
国民の納税者としての意識を高め、より強固な民主主義を構築していくための
第一歩として、確定申告を原則とし、給与所得者については年末調整も
選択できるという制度を導入します。
また、これを実現するにあたって、納税者の権利を明確にするために
「納税者権利憲章」を制定します。
納税者の権利を守るための具体的な改革として、納税額の更正等の期間制限が
課税庁からの更正と納税者からの修正で異なる点について見直していきます。
特に課税庁の増額更正(事後的な納税額の増額)の期間制限が5年であるのに
対して、納税者からの更正の請求(事後的な納税額の減額)の期間制限が
1年であることは納税者の理解を得られにくく、早急に見直しが必要です。


まず、「税・社会保障共通の番号の導入」については、自民党案も同様に
納税者番号制度の導入の必要性を繰り返し主張してきただけに、
導入されることは間違いあるまい。
また、現在の政府税調の最後の公表見解になるかもしれないスタディー
グループ報告(海外税制報告)においても、4つの柱のうちの1つとして
取り上げられており、具体的な工程表の作成段階にきているのかもしれません。
(SG報告については、8月30日の記事を参照して下さい。)

しかし、納税者番号制度には、つねにプライバシー保護の問題があり、
社民党、共産党は異論を唱えてきたところですね。
また、公務員の守秘義務との関係から、納税者番号と社会保障番号を
連動することには賛成ですが、住民基本台帳番号との連動には反対です。

徴税の効率を高め、また、消えた年金のような役人の責任逃れの結果が
招いた事態を防ぐためにも、納税者番号制度は必要なものであると思う。
年金改革の項で記載されている「社会保険庁廃止と歳入庁創設」により、
国税庁と社会保険庁の機能が統合されるため、納税者番号と社会保険番号は
連動させなければ意味がないんですね。
そもそも歳入庁創設によって、「①税と保険料を一体的に徴収し、未納・未加入
をなくす②所得の把握を確実に行うために、税と社会保障制度共通の番号制度
を導入する③国税庁のもつノウハウを活用して適正な徴収と記録管理を実現する」
ことが検討されているところだ。


さて、次は「納税者権利憲章の制定と更正期間制限の見直し」の問題である。
これは、「納税者権利憲章」の問題と「更正期間」の問題とに分けて検討すべき
問題です。

「納税者権利憲章」の問題については、これまでも税の民主化を求める
グループを中心に建設的な議論が従来からなされてきました。
実際に、諸外国には「納税者権利憲章」が制定されている先進国が多く、
わが国の税制が遅れていると考えられても仕方がない状況でした。

詳しい先行研究として以下の本を紹介します。
石村耕治「先進諸国の納税者権利憲章-わが国税務行政手続の課題 (第2版)」
(中央経済社1996)
最新の研究というわけではありませんが、不公平税制の打破を目指していた
研究者や実務家の思いが伝わってくる名著です。
ご興味がある方は、ぜひご一読下さい。

また、国民の納税者意識の高揚を企図する手段として、国民皆申告制の
導入を考えているようだ。
現在は、給与所得者に対しては源泉徴収制度が用いられているため、
給与所得者の所得税は、会社が給与支払時に天引きすることになるから、
税引き後の給与しか受け取っていないんですね。
税額の計算も会社が年末調整で計算して、終わってしまいます。
給与所得者の意識は、給与総額から税金を払っているという意識はなく、
手取り額で考えがちで、自分が納税者であることさえ忘れがちです。
しかし、確定申告による納税を原則とすると、確定申告時に自分の懐から
税金を払うので、嫌でも税に対する厳しい目が育つでしょう。

なぜこれまで自民党政権が納税者憲章を制定せず、世界的には珍しいものに
なっている源泉徴収制度を維持してきたのか。
国民に納税者意識を忘れさせ、重税感を拭い去るためにあったと思います。

現実的には、今の確定申告のやり方(全員が1-12月の所得を2/16~3/15の
間に申告をするやり方)であれば、税務署の機能はパンクするでしょう。
しかし、会社の決算のように決算期を決めることにより(私見としては、
誕生月の月末を決算日として、誕生月の2ヵ月後を申告期限とすることを
提案したい)、確定申告時期に個人の確定申告が集中することがないように
することで、税務署がパンクすることを回避できるのではないだろうか。


さらに、「更正期限」の問題もある。
かねてから、税理士会から改正要望を上げ続けていた論点である。
課税庁側の更正処分(税額の変更手続)は5年間可能なのに、納税者側から
納税額の減額を求める場合には、国税通則法23条に基づいた「更正の請求」
しかできず、その期限が法定申告期限からわずかに1年しかできないという
バランスを欠いているとしかいえないような状況でしたので、この改正は、
早急にお願いしたいところだ。

そもそも「更正の請求」というのは、納税者が税務署長に「私の税額が
払いすぎになっているので直して下さい」というお願いの文書である。
つまり、納税者は、払いすぎた税金を返してもらうには、税務署長に処分を
お願いしなければならないのだ。
法的には不当利得になっているにも関わらず、取りすぎた税金は納税者から
「返して欲しい」とお願いする書面を提出して、税務署長がそのための
行政処分を実行しなければ返さない、という制度になっているのだ。

せめて、更正処分のお願いではなく、一般の還付請求にできないものだろうか。

また、法定申告期限内1年という期間制限のため、申告期限が土日である
場合に、税理士がミスをしやすいのだ。
つまり、申告書の提出期限は、申告期限到来日が税務署の休業日に当たる場合、
休み明けの日が申告期限、税金の納付期限となることになっている一方で、
更正の請求の場合には、休み明けの日は法定申告期限後である以上、
休み前に更正の請求をしていなければアウトなんです。

実務的には嘆願書ベースで税務署長様のお慈悲に縋って更正処分をして
頂いておりますが、闘う税理士を標榜する私にとって実に屈辱的です。

税務調査で確認していくのが3年分であることが多いのですから、
せめて3年内、できれば税務署と同じ期間にして頂きたいが、それよりも
「法定」申告期限「内」ではなく、申告書と同様に、休み明けの日が
請求期限になるよう改正して頂きたいところですね。


民主党政権誕生による税制改正のゆくえ(1)
2009.09.02

民主党の歴史的大勝を受け、16日には鳩山新政権が誕生するようですね。
鳩山新政権の政策がどのようなものになるのか、具体的には不透明な
部分が多いように感じます。
そこで、総選挙前に発表された「民主党政策集 INDEX2009」に基づいて、
鳩山新政権でどのように政策転換がなされるのか、税制分野に関して
今日から集中して健闘していきたいと思います。

このことに関連して、8月31日(月)には、テレビ東京系の報道番組
ワールドビジネスサテライトで酒税の改正についてインタビューを受け、
出演させて頂きました。
森本アナウンサーの取材を受けましたが、画面で見るよりも綺麗な方でしたね。

それはさておき、早速本題に入ります。

民主党政策集INDEX2009は、50ページにも及ぶ膨大な政策集で、
大項目として21項目挙げられています。
税制は、11項目目に当たり、29項目に及ぶ小項目に細分化されます。
小項目を掲げると以下のようになる。

・ 税制改正過程の抜本改革
・ 税・社会保障共通の番号の導入
・ 納税者権利憲章の制定と更正期間制限の見直し
・ 国税不服審判のあり方の見直し
・ 所得税改革の推進
・ 年金課税の見直し
・ 住宅ローン減税等
・ 給付付き税額控除制度の導入
・ 金融所得課税改革の推進
・ 消費税改革の推進
・ 法人税改革の推進
・ 租税特別措置透明化法の制定
・ 中小企業支援税制
・ 特定非営利活動法人支援税制等の拡充
・ 相続税・贈与税改革の推進
・ 国際連帯税の検討
・ 個別間接税改革の推進
・ 酒税・たばこ税
・ 自動車関連諸税の整理、道路特定財源の一般財源化、地球温暖化対策税
・ 徴税の適正化

今日は、一番最初の「税制改正過程の抜本改革」について検討します。
まず、民主党政策集INDEX2009に記載されているものを見てみよう。

税制改正について「公平・透明・納得」という納税者の視点に立った原則の
下で政治主導の政策決定を行うとともに、政策決定の過程も透明化します。
これまでの税制改正議論は、与党税制調査会、政府税制調査会、
経済財政諮問会議によってバラバラに行われてきました。
特に、与党税制調査会は不透明な形で政策決定を行い、既得権益の温床と
なってきました。
与党内の税制調査会は廃止し、財務大臣の下に政治家をメンバーとする
新たな政府税制調査会を設置し、政治家が責任を持って税制改正作業及び
決定を行います。
地方税については、地方6団体、総務大臣、新たな政府税制調査会が
対等の立場で協議を行います。
従来の政府税制調査会は廃止し、代わりに税制の専門家として中長期的視点
から税制のあり方に関して助言を行う専門家委員会を新しい政府税制調査会の
下に置きます。
これら意見集約の過程は公開を原則とします。
国会における審議も充実させるため、衆参両院に税制を中心に社会保険料等も
含めた歳入全般の議論を行う常任委員会として「歳入委員会」を新設します。
衆参両院の次年度税制改正の議論に基づいて、政府は予算の編成を行います。

以上の通りである。

注目されるのは、与党内の税制調査会を廃止して、新たに組織される
新政府税制調査会に一本化するということでしょう。
つまり、政府税調から出される答申が政府の答申になる、ということですね。

従来は、12月の2-3週目に政府税調から税制改正大綱が示され、それから
数日のうちに自民党税調から税制改正大綱が示されるという筋書きであった。
政府税調の答申と自民税調(自公連立政権下では与党税調)の答申に
大差がないときはさほど問題にはならないのですが、平成16年度税制改正
のように与党税調大綱が公表されるまでの2日間で忽然と新たな改正案が
示され、それも国民生活に直結する影響のある増税がなされるケースも
あったわけで、非常に問題になるケースもあったんですね。
(平成16年改正における土地建物等の譲渡損失の損益通算の廃止。
この問題については、税法学561号に論文として寄稿しました。
6月8日の記事を参考にして下さい。)

自民党税調の密室による議論(非公開)では、何が議論されているのか、
全く分からなかったため、こういう問題が起きるのですね。
上記した譲渡損失の損益通算廃止のケースでは、12月15日政府税調では、
何も記されておらず(議事録を確認しても、議論さえ出ていない)、2日後の
12月17日与党税調で突然廃止が謳われ、それも、翌日の新聞各紙では、
日経新聞が唯一損益通算廃止が1月1日から適用になる旨の注意書きまで
記載をするに止まり、朝日・読売・毎日の読者には全く知らされていない
状況は、HP等で税理士が喧伝をしていたとしても、国民に周知徹底
できていたとは到底言えないものでした。
これは、自民税調の議論が密室で行われていたことの弊害そのものであり、
民主党案では、税調における議論を原則として公開としていることは、
非常に評価できるところである。

ただ、与党税調を廃止し、政府税調に一本化するというのであれば、
与野党を問わず、相当数の国会議員を税調のメンバーに加えるべきだと思う。
国家戦略局の下、決められた国の方針に基づいた税制改正論議を、
新税調においては賛否両論を併記させながら、政権担当者が吟味した上で、
閣議決定の上で改正案を取りまとめるのが政治主導ということではないだろうか。
税調で全て決めるとなると、官僚による下工作(官僚による民間人政府委員の
取り込み)も不可能ではないだろう。

従来どおりのあるべき税制を第三者的に検討する税制調査会の役割は、
専門家委員会を設立するという。
この2本立ての税調組織により、毎年の税制改正に対応させるものと
中長期的な視点からの抜本的な改正論議が別々に行われることになる。
税制問題は、毎年の税制改正に追われてしまうと、複雑で場当たり的な
改正になりがちなだけに、それを是正するための別組織の存在は、
政府税調の本来のありようとも言えるのではなかろうか。

その上で、国会に常設するという「歳入委員会」を新設するという。
これこそが、昨日の記事に書いた予算の概算要求の見直しの本丸ではないかと
考えている。
財務省に各省から予算要求するという形から、各省から国会に要求する形に
変えようとしているのではあるまいか。
これは官僚支配から国民に選ばれた議員による政治への転換の象徴になろう。
財務省の抵抗は強烈なものになることが予想される。
本人のHPを見る限り、税制関係のリンクが1つたりとも張られていない
次の内閣中川正春財務大臣で抵抗を乗り越えることができるだろうか?
松野副大臣にも? 日銀出身の大塚副大臣だけなんですよね。
大塚議員も税の専門家とは言い切れませんがね。
民主党は何で彼らをシャドーキャビネットの税財政ポストに据えたんですかね?
専門外じゃないですか。これじゃ可愛そうですよ。
専門分野で活躍して頂きたいですね。

この改革の本丸とも言うべき「歳入委員会」新設をどうやって推進するのか、
鳩山新政権の命運を握る可能性が高い改革だけに注目していきたいところである。


鳩山新政権、概算要求見直しを要求
2009.09.01

8月末締め切りとされていた10年度予算の概算要求について、鳩山
民主党代表は、概算要求の内容を根本的に見直す方針だという。
1日9時14分asahi.com記事はこう報じた。

10年度政府予算の概算要求の一般会計の総額は、09年度当初予算比
約3兆5800億円増の約92兆1300億円と過去最大となった。
ただ、民主党の鳩山代表は「根本的に見直す努力をする必要がある」と
大幅に見直す考えを示した。
概算要求は、各省庁が来年度の必要額を8月末に財務省に提出するもので、
例年、これをもとに年末の予算編成に向けた作業が本格化する。
今年の概算要求は、麻生内閣が定めた基準に基づく。
鳩山代表は31日、記者団に「政権が交代するときに、民主党の目に触れない
形で要求がなされるのは歓迎すべきでない」と話した。
一般歳出の総額は、社会保障費の抑制方針の転換などで同9400億円増の
52兆6700億円に拡大。
地方の税収見通しが厳しいことから、地方交付税交付金も同9695億円増の
17兆5428億円に膨らんだ。
国の借金の元利払いにあたる国債費の要求額は同1兆6721億円増の
21兆9158億円だった。
財務省は、制度的に支出が決まっている義務的経費などに限って査定を進める考え。


予算の概算要求が大幅に見直しになることは霞ヶ関でも想定していた
状況であろう。
麻生内閣の経済戦略と鳩山新政権の方向性がかなり異なるだけに、新政権
発足に合わせて、予算の組み直しがなされる可能性が高かったからだ。
予算策定の基本方針に変更が加えられれば、当然に概算要求額は変わってくる。
分野によっては、鳩山新政権になったことで、予算が大幅に増える項目も
出てくることが容易に想像できるのだ。
逆に、官僚支配の打破を掲げる鳩山新政権だけに、予算の大幅カット、
進行中の事業の停止などを求められる分野については、官僚側の激しい
抵抗も予想されるところだ。

今までの自民党政権が行ってきたような順送り人事や、専門分野ではない
所掌を託される大臣では、官僚に抵抗されてしまえば、行政が停滞し、
ひいては国民のそのしわ寄せがくることになろう。
そうならないためにも、大臣の任命に際して、その専門分野に応じた所掌を
配さなければならないであろう。
私は、今回初当選した中から、大臣や副大臣、政務官を任命しても
いいのではないか、と思う。

そもそも、次の内閣があるにもかかわらず、内閣の人選を新たに行う必要が
あることが問題で、次の内閣の閣僚人事と大幅に異なる人事がなされた
場合には、次の内閣が機能していなかったことの証左になってしまう。
大幅に人選が入れ替わるなら、今回の衆院選で復活してきた元職や新人で
あるべきだろう。
議員でなかったから、次の内閣に選出されていなかった方が入れ替わって
入閣するのであれば、次の内閣が形だけではなかったと理解でき、納得できる。
しかし、そうでないのであれば、何のために次の内閣を組閣していたのか、
その良識に欠ける行動は、理解したくもない。
それでは、自民党が代々続けてきた順送り人事、派閥のバランス人事と
変わらないではないか。

チェンジを国民から求められていながら、変わらないでは、意味がない。

概算要求の見直しもチェンジの一環なのだから、すべてをチェンジする
くらいの気概をもって、新政権には、国民目線のイバラの道を突き進んで
頂きたいものである。