小規模宅地・住宅取得資金の特例(法令出版)
2010.09.30

22年改正で大きく変わった税制としてまず真っ先に挙げられるのが
小規模宅地特例ではないでしょうか。
分かりにくい改正であるため、22年4月1日以降の相続案件では、
注意して取り組む必要がありますよね。
そこでご紹介したいのが、この本です。

塩野入文雄・竹内陽一編「―平成22年度改正 相続税・贈与税―
小規模宅地・住宅取得資金の特例・定期金の権利評価・非上場株納税猶予」
(法令出版2010年9月刊)

青空税理士法人(旧緑川・蓮見税理士法人)の塩野入税理士と、実務研究の
一般社団法人FIC代表社員の竹内税理士が編集する渾身の1冊だ。

22年改正では、特例適用要件が厳格に適用されることになり、
・その他の小規模宅地等の廃止(事業・居住継続要件の必須化)
・一棟の建物の敷地に関して、居住用部分のみに適用
(貸付け割合に応じた按分計算が必要)
・特例対象者のみへの適用(特例非対象者への適用禁止)
・複数の居住用宅地等がある場合でも1つのみに適用
等が主な改正点として挙げられるところです。

本書では、図解を駆使しながら、改正点を踏まえたQ&Aを中心に、
その適用基準の明確化を図ろうとする意図がはっきりしています。

小規模宅地特例の事例を40例ほど掲げているほか、
住宅取得資金の贈与特例13例、定期金評価3例、
非上場株式等の納税猶予6例と62もの例を掲げ、
非常に読みやすい構成であるところも、日頃の実務が忙しい
税理士にとってはありがたい構成です。

22年改正における小規模宅地特例は要件が細かいですから、
早め早めの対応が必要になるかもしれません。

我が事務所でも小規模宅地の特例が悩ましい案件が出ていますのでね。


単体財務諸表に関する検討会議
2010.09.29

昨日28日、企業会計基準委員会(ASBJ)を運営する財団である
財務会計基準機構から、「単体財務諸表に関する検討会議の設置について」
が公表された。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/press_release/overseas
/pressrelease_20100928.jsp;jsessionid=E758C7CF08092F7C46D2143F1A4B48A1

「現在、我が国では、会計基準のコンバージェンスを進めていますが、
単体財務諸表については、連結先行のアプローチを採用することが
企業会計審議会の意見書に記載されているものの、具体的にどのように
進めていくかが議論となって」いることを「踏まえ、単体財務諸表の
コンバージェンスを当面どのように取り扱うべきかについて、
ハイレベルな意見を聴取するために」検討会を設置するという。

萩原敏孝財務会計基準機構理事長(コマツ相談役、経済同友会副代表幹事)
を議長とし、増田宏一日本公認会計士協会前会長を副議長とする予定で、
山崎彰三日本公認会計士協会会長や、副社長クラスの新進気鋭の財界人を
委員とし、金融庁、法務省、経産省をオブザーバーに議論されるという。

会計基準のコンバージェンスの問題だけであれば、会計サイドのみの
議論における連結だけでの対応は可能であろうと思いますが、アドプション
となれば、話は別で、早期の具体的な議論を期待していただけに、
喜ばしいニュースです。

特に法務省がオブザーバー参加するという話は実に嬉しいですね。
アドプションでIFRSが「公正妥当な会計処理の基準」として
取り扱われることになるとすると、連単分離がされておらず、大小区分も
されていない商法や法人税法は解釈を変更しなければならないからです。

会社法431条及び商法19条が「会計は一般に公正妥当と認められる
企業会計の慣行に従うものとする」と規定する以上、IFRSアドプション
により、中小企業もIFRSに従わなければならなくなる危険性が極めて
高いのが現状なんですね。そうすると、法人税法22条4項が規定する
公正処理基準にも多大な影響を与えることになるでしょうね。
だからこそ、法務省が参加することの意味は大きいと言えるんです。
できれば国税庁にもオブザーバー参加して欲しいのですがね。


PE課税、帰属主義に転換? 税調国際課税小委員会
2010.09.28

国際課税に対する考え方が大きく変わるかもしれません。
27日に開催された税制調査会国際課税小委員会の第3回会合では、
財務省からの説明に続いて、特別委員である増井良啓東京大学教授、
青山慶二筑波大学教授の両名によるプレゼンが行われた。
http://www.cao.go.jp/zei-cho/senmon/senkoku3kai.html

前の2回が国際連帯税に特化した議論を展開したのですが、
今回の第3回は、国際課税のあり方について言及し、今年7月に
OECDが公表した「恒久的施設への帰属利益の算定に関する報告書」
(AOA)では、恒久的施設(PE)に対する課税について、
帰属主義を採ったことに言及したという。

つまり、従来はPEはグローバル企業全体の中の1拠点として
取り扱われていたものが、PEを1つの独立企業体であるかのような
取扱いをするというんですね。

そうすると、従来はどこで(つまり日本で)稼得された所得であるかが
問題だったところが、今度は誰が(つまりPEが)稼得した所得かが
問題となるので、日本支店が稼得した所得に対する課税権をもつことになる。

増井特別委員資料としてジュリスト1387号(2009年10月15日号)に
掲載された「日本における国際租税法」という論文が使用されています。
税制は各国ばらばらで、調和化の方向性が全く進んでいない現実を示し、
「このような中で税制の国際的調和を語ることに実益があるとすれば、
それは、国家が課税能力を維持するために「有害な租税競争(harmful
tax competition)」を規律するという文脈においてではないか」(98ページ)
との問題提起をされていますが、「各主権国家が自律的に課税する中で、
課税管轄権の競合や空白をどのように調整するか」(増井資料1、1ページ)
についてのOECDの取組みの流れが変わってきたことは、わが国の
対応にも大きな影響を与えることになろう。

わが国経済のグローバル化とともに、わが国への外資の進出が一般化した
現在では、帰属主義への転換は、わが国の課税権の拡大に寄与する
可能性も高いだけに、その動向を注視する必要がありそうです。


国際連帯税導入へ具体的検討か?税調国際課税小委員会
2010.09.22

民主党政権は平成23年改正で国際連帯税の導入に踏み切るのだろうか?
21日に開催された税制調査会専門家委員会第2回国際課税小委員会では、
財務省が国際連帯税について説明した後、上村雄彦横浜市立大学准教授が
「日本発国際連帯税の実現に向けて―航空券連帯税と通貨取引税の可能性―」、
小川英治一橋大学教授が「国際連帯税としての通貨取引課税」、山内弘隆
一橋大学教授が「航空券連帯税について」をそれぞれ講演された。
http://www.cao.go.jp/zei-cho/senmon/senkoku2kai.html

平成22年度税制改正大綱では、「国際金融危機、貧困問題、環境問題など、
地球環境の問題への対策の一つとして、国際連帯税に注目が集まっています。
金融危機対策の財源確保や投機の抑制を目的として、国際金融取引等に
課税する手法、途上国の開発支援の財源確保などのために、国境を超える
輸送に課税する手法など、様々な手法が議論されています。すでに
フランスやチリ、韓国などが航空券連帯税を導入するなど、国際的な
広がりを見せています。我が国でも、地球環境の問題解決のために
国際連帯税の検討を早急に進めます。」と明記されていましたが、
前回の会議で金子宏先生が同趣旨に基づく講演をされ、今回の議論は
より具体化してきたというところでしょうか。

上村准教授資料によれば、「革新的開発資金メカニズムに関するパリ会議」
が2006年に開催され、フランス、ブラジル、韓国など13カ国が
航空券連帯税を実施することを表明し、イギリス、スペイン、ドイツ、など
38カ国が「革新的開発資金に関するリーディング・グループ」を設立した。

フランスでは、国内線エコノミーで1ユーロ、同ビジネス以上で10ユーロ、
国際線エコノミーで4ユーロ、同ビジネス以上で40ユーロの航空券連帯税が
課されている。ビジネスクラスやファーストクラスに乗れる豊かな人たち
から徴税し、「エイズ、マラリア、結核という3大感染症の薬を安定的に
購入し、治療へのアクセスを高める資金」として課される税金ななんです。

小川教授資料は、環境省「平成20年度地球環境税等研究会報告書」に
おける通貨取引課税の論点整理を紹介し、山内教授資料は、国際連帯税と
国際人道税との対比、航空産業の国際競争力の観点からの検討等により、
日本への導入可能性を検討している。
民主党マニフェストで唐突に出てきた印象が強かった国際連帯税の
導入論議が具体的に始まったものと評価していいのではないでしょうか。


年金二重課税問題、最高裁で逆転勝訴!(6、江崎先生インタビュー記事)
2010.09.21

日本税理士会連合会の機関紙「税理士界」の9月15日号に、年金型生命保険
二重課税事件で補佐人を務められた、長崎の江崎鶴男税理士へのインタビュー
記事が掲載された。この記事で注目したいのは、次のくだりだ。

――いま納税者の救済という話がありましたが、江崎会員ご自身のお考えを
お聞かせ下さい。
江崎 今回の事件では納税者の責任はゼロだと思います。不当に税金という
形で財産権の侵害を受けていた。このことを忘れてはいけないと思います。
私が思っているのは、責任の割合は国が6割、保険会社が2割、税理士が
2割です。その割合に応じて、どう責任を果たして、不当に侵害された
納税者の財産権を回復するか。3者協力して10割の返還をして、初めて
民主主義国家なのだと思います。今回の事件は、不当な税金という形で
財産権の侵害をしている、私は一番それが言いたいです。
――税理士の2割の責任というのは...。
江崎 誤った解釈に疑いを持たず、国に言われるがままやってきたということです。
――保険会社の2割というのは...。
江崎 源泉徴収をしていますが、これは雑所得に該当すると思って源泉
しているんです。保険会社はこの判決が出るまで過去何十年も。
(税理士界1272号(H22.9.15)11ページ6-7段より抜粋)

江崎先生のこの発言は、我々税理士にとって重いですね。
「誤った解釈に疑いを持た」なかったから責任があるというのですから。
しかし、最高裁も同じような見解を示しているんですよね。
最高裁平成16年7月20日判決、いわゆる平和事件最高裁判決ですが、
「本件各解説書は、その体裁等からすれば、税務に携わる者において
その記述に税務当局の見解が反映されていると受け取られても仕方がない
面がある。しかしながら、その内容は、(略)本件規定の適用が肯定される
本件貸付けとは事案を異にするというべきである。そして、当時の
裁判例等に照らせば、被上告人の顧問税理士等の税務担当者においても、
本件貸付けに本件規定が適用される可能性があることを疑ってしかるべき」
と判示しているんですよ。

詳しくは、税法学554号に掲載した私の論文をお読み頂きたいのですが、
税理士は計算屋ではなく、納税者のために法解釈を行う法律家としての
役割が増大しているんですね。
それだけに江崎先生の「税理士にも2割の責任」との言葉は重い・・・。


菅改造内閣、地方分権と環境に重点か?
2010.09.18

菅改造内閣が17日夕方発足した。改造内閣の人選をみると、
地方分権と環境問題に本気で取り組むのだな、ということが見えてくる。

経産相として初入閣した大畠章宏氏は、次の内閣で金融担当相や党商工委員会
筆頭理事等を歴任してきた方ですが、自身で「地球エネルギー・環境・経済
研究会」を立ち上げる等、環境問題に精通した元エンジニア。
留任した福山哲郎官房副長官も環境通として知られ、やはり初入閣の松本龍
環境相とともに、環境政策による経済成長を主導することになるのだろう。

目玉人事とも言える片山善博総務相は、自治省出身の元鳥取県知事。
知事時代は浅野元宮城県知事、増田元岩手県知事・元総務相らとともに
改革派として鳴らした地方自治・地方分権のスペシャリストですね。
国家戦略相を兼任する玄葉光一郎党政調会長も、次の内閣総務相や
党分権調査会会長を歴任した地方分権論者で、留任した瀧野欣彌
官房副長官は前職が総務省事務次官。地方分権が進展するだけではなく、
道州制の導入が検討されるのか、注目したいところです。

私が注目したいのは、経済財政政策担当大臣の海江田万里元党政調会長。
野末陳平氏を師事し、野末氏が1983年に新自由クラブを離党して結党した
「税金党」から立候補(落選)したのが政治家としてのキャリアスタート
という民主党きっての経済通の経済評論家です。
正直なところ、経済政策に精通する閣僚が少ない菅政権にあって、有効な
経済政策を見出す希望の光と見ています。留任した古川元久官房副長官が
鳩山政権時に菅さんの下で国家戦略室長を務めていた税制通ですから、
留任した野田佳彦財務相、自見庄三郎郵政改革・金融担当相らとともに、
デフレ脱却のための有効な経済政策が早期に出されることを、そして、
早期にその効果が出ることを期待したいところです。

海江田さんが小泉政権時の竹中大臣のような存在(当時のような存在ですよ)
になれるのか、期待したいところですね。


税務大学校公開講座11・15-17
2010.09.17

税務大学校が今年も11月に公開講座を開講することになりました。
http://www.nta.go.jp/ntc/koukai/index.htm
11月15日(月)~17日(水)の3日間で、各日
13:45~15:10と15:25~16:50の2講座を行うとのこと。
講座の担当者と講義名は次の通りだ。

15日前半、岩崎政明横浜国立大学教授
「日本の財政状況と税制改革の将来―みんなで支える日本のあり方―」
15日後半、酒井克彦国士舘大学教授「申告納税制度における記帳や
帳簿書類等の保存の意義―青色申告制度と加算税制度が意味するもの―」
16日前半、船見雅志税務大学校教授
「相続税・贈与税の課税の現状―少子高齢化社会と相続時精算課税―」
16日後半、鈴木芳行税務大学校研究調査員「昭和の酒税史(お酒は配給から
自由販売へ)―宮沢賢治「税務署長の冒険」の時代へタイムスリップ―」
17日前半、居波邦泰税務大学校教育官
「最近の税制改正による国際課税制度の変化―外国子会社配当益金
不算入制度導入後におけるタックスヘイブン税制の見直し等―」
17日後半、奥田芳彦税務大学校教授
「社会を支える会社の寄付金―寄付金税制について考える―」

レベル的には鈴木氏(16日後半)、奥田氏(17日後半)の2講座が初級、
岩崎教授(15日前半)、酒井教授(15日後半)、船見氏(16日前半)の
3講座が中級、居波氏(17日前半)の1講座が上級ということだそうです。

11月1日が締切日ですが、満席の場合にはその前に締め切られます。
ご興味のおありの方は、税務大学校HPよりアクセスして下さい。
ちなみに昨年の公開講座では玉国文敏中央大学教授と酒井教授が行い、
その講演録は税大ジャーナル13号に掲載されています。
税大のHPで探してみて下さい。

税務署の活動は、税の徴収の最前線、というイメージが強いですが、
課税の公平を実現するために、様々な啓蒙活動を行っています。
このような公開講座もその一環なのですが、いかんせん税大は遠い。
有楽町線和光市駅か西武池袋線大泉学園駅からバスに揺られて10~15分。
周りにはほとんど何にもないので、国のお金で職員研修をするのには
最適かもしれませんがね...


自動車関連税制に関する研究会報告書
2010.09.16

総務省の自動車関係税制に関する研究会が10日に開催され、研究会が
取りまとめた報告書が公開された。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/jidousha/index.html

研究会のメンバーは、税制調査会専門家委員会から委員長の神野直彦東大
名誉教授(財政学)と井出英策慶大准教授(財政学)が兼任し、財政学の
小西砂千夫関学大教授、税法の佐藤英明神戸大教授、環境法から民法系の
大塚直早大教授、行政法系の渡井理佳子慶大教授、勢一智子西南学院大教授、
行政法の塩入みほも駒大准教授、行政学の辻琢也一橋大教授が、官僚から
目黒克昭氏(東京都主税局)、勝原雄一氏(北九州市財政局)、民間からは
行政機関等で広報アドバイザーを務める田中里沙氏が選任されている。

内閣改造で変更もうわさされる原口大臣からの諮問により、研究会では
平成22年度税制改正では導入が見送られた車体課税の是否を含め、
今後の税制調査会の議論に資するよう、持続可能な低炭素社会をつくる
ことを目指すための検討が行われてきた。

今回公表された報告書のポイントは2点。
<保有段階における自動車への課税>
CO2排出削減に資する「環境自動車税」(地方税)を創設すべき
・自動車税と自動車重量税を一本化し、「環境自動車税」を創設すること
により、自動車関連諸税の簡素化を実現
・「環境自動車税」は個別財産税であるとともに、「公平の原則」に適う
環境損傷負担金的性格を有するものとして整理
・「環境自動車税」は地方税とすべき
<取得段階における自動車への課税>
CO2排出削減のための様々な地球温暖化対策の取組がなされる中、保有段階
及び取得段階でバランスのとれた課税を行うべく、取得段階の課税としての
自動車取得税は、少なくとも当面は維持すべき

鳩山ドクトリン(2020年までに1990年比で温室効果ガス25%削減)が
我が国の国際公約になってしまっている以上、エコカー減税どころではない
化石燃料燃焼に対する規制を急ぐ必要があろうが、総務省の研究会ですから
地方税財源を検討する上で、自動車税等の検討に終始している。
税制調査会では炭素税の導入を見据えて、抜本的な環境対策税制の構築が
望まれるところであろう。


PRE(Public Real Estate)戦略研究会
2010.09.15

円高リスクに対し消極的対応が懸念されていた菅首相の民主党代表続投が
決まり、より一層の円高に振れたところ、今回の対応が思いのほか
素早い対応を取ったことは、株価にも大いに好転反応を与えたようですね。
これからの政権運営においても、迅速な緊急対策が期待できるかも・・・!?

それはさておき、菅さんが代表選の間に売っていた手の1つとして、
国有財産の有効活用のための第1回「PRE戦略検討会」が7日に財務省で
開催されています。
PRE戦略とは、Public Real Estate つまり、公共建築資産に対する
有効活用のための戦略であり、今年6月に策定された「新成長戦略における
国有財産の有効活用について」に基づいて、活用されている公共施設を
より有効に活用し、または売却をすることが検討されることになる。
「新成長戦略」における学校や病院施設の耐震化はまさに好例でしょう。

第1回は、財務省理財局から、
・庁舎・宿舎については各年度の予算とその執行が中心(維持・管理
コストの把握・分析、中長期的な更新投資計画の策定が行われていない)
・国有財産全体としてコストパフォーマンスを高めるための取組み
(保全状況の監査や庁舎・宿舎の効率的使用等)を進める余地
・有効活用のための土地・スペースの洗い出しが今後も重要
(社会福祉施設への活用、売却収入のみならず貸付収入にシフト)
という課題に対して、
・行政サービス向上のため、各省庁に対して、より適した不動産を提供
(民間における事業関係収益の最大化に相当)
・行政コスト削減のため、保有・借受けの選択等を通し、より安価な
不動産を確保(民間における事業関係費用の最小化に相当)
・政策ニーズに直接対応するため、未利用地・空きスペースを活用
(民間における非事業用不動産の処分益の最大化に相当)
という3つの視点から「PRE戦略」を策定する必要性が提起された。

また、外部者に対するヒアリングについては、一橋大学の山内弘隆教授、
首都大学東京の山本康友教授に加え、みずほ信託銀行が参加した。
私が興味を引いたのは山本教授の資料です。ビルの劣化対応等について
検討されており、マンションの管理組合で監事を務める身としては
他人事ではない話です。管理組合も36期を迎えると、大規模修繕に
備えて修繕積立金をどう運用するのか頭が痛いところですからね。
耐震化とともに産業廃棄物対策を含めて環境負荷を極小化する修繕対応が
これからの時代には求められるわけですが、コストがかかりますからね。
東京都が所有する公共施設も半数以上が築30年を超えている状況では、
公共施設を有効活用するには、大規模修繕が前提になる可能性が高い。
この厳しい財政状況で、どのように活路を見出していくのか、研究会の
進展に注目したいところですね。


新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策
2010.09.14

民主党代表選は菅さんの圧勝でしたね。代表選での支持が消去法ではない
ことを政権運営の中で示して頂きたいものです。

ところで、菅さんは現職の首相として、代表選の間も効果の程度には疑問符が
付くものの、打てる手を打ち続けていたんですね。10日に閣議決定された
「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」はまさにその1手。

「デフレ脱却が当面の目標」としつつ、円高や海外経済の減速等が、
我が国経済の景気回復への大きな下振れリスクとなっている点を踏まえ、
「経済が自律的回復には至っていない中で円高等による景気下振れリスクが
強まっていることに対しては、まずはスピードを重視して緊急的に対応し、
その影響を最小限に食い止める」ために、「即効性があり、需要・雇用
創出効果が高い施策を厳選して実施する」という。そのために、「まずは
新卒者等「雇用」の緊急対応、そして「投資」、「消費」、「地域の防災対策」、
「規制・制度改革」を合わせた5つを柱と位置づけ」ている。

次の段階として、今後の景気・雇用動向を踏まえて、「補正予算の編成等、
機動的・弾力的に対応」しつつ、新成長戦略実現会議や雇用戦略対話等を
通じて、各プロジェクトを加速・推進するという。また、「「日本を元気にする
規制・制度改革100」を迅速に実施するとともに、更なる課題に取り組み、
規制・制度改革を加速するという。

最後の3段階目として、平成23年度からは新成長戦略を本格実施し、
また、「「雇用」を基軸とした経済成長を推進する観点から」、「1健康・
環境分野等をはじめとする雇用の創出のほか、2正規雇用化、3育児支援、
4障がい者雇用などの視点を踏まえ、例えば、雇用の増加に応じ、企業の
税負担を軽減する措置を講ずるなど、有効な税制措置の具体化を図る」という。

第1段階の緊急的な対応で掲げられた具体策は、基盤づくりを中心とする
規制改革・産業構造の転換を必要とする政策であり、民主党らしさが
よく出ている政策ですが、その政策効果に即効性を期待しづらいという
感じがしますね。10年後、20年後の日本を考える上で、この改革をして
良かったと感じると思えるが、基盤づくりをしている余裕があるだろうか、
と危惧せざるを得ないところです。

人材の産業間シフトを実現するにも、雇用側のニーズと労働者のニーズの
ミスマッチが埋まらなければ、雇用創出効果は半減しますからね。

教壇に立っていて学生から感じることは、工夫できない学生が多いこと。
負け組になるべくしてなっているとしか思えない学生が多いのが現実。
「雇用」政策を前面に出すのならば、答えがない世界へのアプローチを
教育できるような教育改革が必要だと、感じざるを得ませんね。

知識量ではなく、考える力を育てることが必要だと思うのですがね。
それこそが社会が求める人材だと思うのですがね。


実務に役立つ租税基本判例120選
2010.09.12

日頃、忙しく税務に勤しんでいる税理士の多くは、法律をしっかり学んだ
経験がないために、判例をどのように実務に活かせばよいのか分からず
困惑されている方も多いかと思います。
そういう税理士にご紹介したいのがこの本。

林仲宣『実務に役立つ租税基本判例120選』税務経理協会2010年9月刊

まだ出たばかりの本書は、判例要旨と解説を1つの事件につき、
見開き2ページにまとめてあるので、非常に見易いのが特徴です。

判例を本当に活かすためには、判決文自体を第1審から読み、第1審で
明らかになる事実関係を把握した上で、なぜ裁判所がこの判決としたのか
を考えて頂くのが良いのですが、手軽に確認するためには、本書のような
要旨と解説だけのもので確認した上で、中身に入る方がいいでしょう。

国税庁には部内秘の判例集があるようですから、裁判所の解釈を手軽に
確認できることは、実務家にとって非常にありがたいところです。

平成16年7月20日判決、いわゆる平和事件(本書56ページ)では、
国税当局勤務者が執筆した「各解説書は、その体裁からすれば、税務に携わる
者においてその記述に税務当局の見解が反映されていると受け取られても
仕方がない面がある。しかしながら、(略)不合理、不自然な経済的活動として
本件規定の適用が肯定される本件貸付けとは事案を異にするというべきである。
そして、当時の裁判例等に照らせば、納税者の税務担当者においても、
本件貸付けに本件規定が適用される可能性があることを疑ってしかるべき
であったということができる。」と判示して、いわゆる解説書に課税せずの
記載があった無利息貸付を否認している。しかも、判例等を検討すれば、
解説書の記載事案と内容が違うことは分かるはずだと言うのである。

つまり、最高裁は、事例集や解説書を根拠にした税務判断を否定し、
法解釈の基準として判例を検討しなければ専門家責任は免れないものと
判断したんですよ。
だからこそ、コンパクトにまとまっている本書にありがたみが出るんです。
税理士会のデータベースであるTAINSもそうです。
コンプライアンスが重視される時代だからこそ、判例を学ぶことが
求められるんですね。


第8回勇気ある経営大賞
2010.09.11

東京商工会議所は9日、革新的あるいは創造的な技術・技能やアイデア、
経営手法等により、独自性のある製品・サービスを生み出している企業を
表彰する「第8回 勇気ある経営大賞」の受賞企業を公表した。

今年の大賞受賞企業はアルケア(株)と日本理化学工業(株)の2社。
アルケア(株)は墨田区の医療・福祉・健康器具の開発製造メーカーで、
皮膚保護機能を持つ人工肛門装具を初めて国産したことで受賞された。
日本理化学工業(株)は川崎市のチョーク等の文具事務用品メーカーで、
74名いる従業員のうち3/4が知的障害者でありながら、
「非営利ではなくビジネスとして事業を成り立たせ、チョーク分野の
トップメーカーとなっていることを高く評価」されたようですね。

日本理化学工業については、TVや本で紹介されることも多いので、
ご存知の方もいらっしゃるでしょうね。
こういう時代だからこそ、弱い者により厳しいわけですが、創意工夫により
ボランティアではなくビジネスとして成功している点は素晴らしいですね。
社会貢献を考えようとすると、ボランティアになりがちなのですが、
ボランティアになってしまうから長期では続かないケースもありがちで、
ちゃんと利益を得ながらビジネスを成り立たせないと、結果として
資金的に社会貢献が続けられなくなりますからねえ。

優秀賞の5社、特別賞の3社も特徴のある製品を開発しており、
まだまだモノづくりの国なんだなあと実感しますね。

アイデアを絞り、創意工夫することは誰でもできることですが、
これを続けることは実に難しいんですよね。
私は学生に「考えろ!」と言い続けていますが、マニュアル頼りでは
アイデアは枯渇し、創意工夫ができなくなってしまう。
常に考えていると、ある日突然、閃く瞬間があるんですね。
ただ、「カイゼン」の文化がないところには、その閃きの花が開かない。
表彰された会社は、みな各々の創意工夫が企業の永続に生きている。
人がやっていることを真似るだけではなく、オンリーンワン企業を
目指すには、考えること。そして変わる勇気を持つこと。

変わる勇気がなければ、せっかくのチャンスも通り過ぎてしまいますね。


ついにペイオフ実施へ、日本振興銀行経営破たんで
2010.09.10

今日、9月10日は、金融行政における歴史的な記念日となった。
日本振興銀行の経営破たんで、史上初のペイオフが実施されたのだ。

自見庄三郎金融・郵政改革担当大臣(国民新党)は、記者会見で、
預金者一人当たり元本1000万円までとその利息の合計額について、
預金保険制度によって保護され、週明け後早期に払い戻しできよう
準備を進めている旨を公表した。

会社が経営破たんに陥れば、破産管財人が召集した債権者集会で
破たん会社の財産整理の結果、払い戻せる債権額が決定されますが、
多くの場合、わずか数%の払い戻しになるようです。

日本振興銀行の場合は、異常に高利な預金利息で預金を集める一方、
貸金業者から買い取った債権の回収が巧くいかない上に、甘い与信管理
による貸倒案件の増加が経営破たんの原因だとされていますから、
回収可能な残余財産を期待できないでしょうね。
「預金者一人当たり元本1000万円を超える部分とその利息については、
同行の財産の状況に応じ、民事再生手続の下で作成される再生計画に従って
弁済が行われることとなるが、預金者の利便性を確保する観点から、
預金保険制度の概算払制度により、預金保険機構が早期に概算払率に基づく
払戻しを行う予定である」とされていますので、金融機関の破たんでは、
預金者は債権者とは異なる扱いをされているんですね。
少なくとも、預金額元本1000万円は保護されるし、これを超えた分にも
保険により概算で払戻しを受けることになるというのだから。

また、日本振興銀脳に対してパイオフを実行できたのは、同行が
決済用預金や普通預金のような決済機能を持たないし、普通の金融機関
とは異なる形態であったので、「今般の同行の破たんは、我が国金融
システムの安定性に影響を与えることはないと考え」られるからでしょう。

ただ、ペイオフが実際に実施されるのは今回が初めてですので、
保護された預金の払い出しが可能になるまで若干時間がかかるのでは
ないでしょうかね。


六代目円楽と税を考える(法令出版)
2010.09.09

今日ご紹介する本は、是非映像化して頂きたいと思います。

「六代目円楽と税を考える―知っておきたい税金の常識―」
三遊亭円楽・小宮山隆 著 法令出版平成22年7月刊

国税庁が提供するテレビの税金番組に長年出演され、芸能界きっての
税制通である6代目円楽師匠と、東京国税局課税第一部訟務官等の重責を
歴任された後、今年から国学院大学教授に就任された、税理士の小宮山隆
先生の対談を一冊の本にまとめたのが本書です。

非常に具体的で分かりやすい説明の本書は、是非ともこのままDVD化
して頂きたいものですね。DVD化することができたら、これを全国の
中学校に配布して、社会科の副読本として読ませたいところです。

国税庁が従来から作成してきた税金啓蒙DVDの完成度が低いとは
言いませんが、時間の制約上、税の本質を考えるまでに至ることは
やはり難しいのではないかと思います。
本書であれば、何本かのシリーズものになってしまうでしょうが、
税について考えるきっかけを作ってくれるでしょう。

その意味で、第2部の「あるべき税制を考える」をお読み頂きたい。
・あるべき税制はどんな姿か
・所得税に頼るべきか
・法人税は重すぎるか
・消費税は期待に応えられるか
の4つの章からなる第2部では、これまでの税制改正がどのような方向性を
持っていて、民主党政権がどのような改革をしようとしているのか、なぜ
今、税制改革が必要なのかを明らかにしています。
国税庁の見解に沿いすぎている感じはしますが・・・。

消費税増税の必要性が叫ばれている昨今、本当に増税が必要なのか、
またそれはなぜなのか。
我々国民は今まで政治家任せで、当事者意識をもたな過ぎていたのでは
ないでしょうか。政権交代をきっかけに、問題意識を高めた方も多いように
思いますから、誰でもが理解できる税制を考えるとともに、「嫌なものは嫌」
ではなく、なぜなのかを考えるべきではないでしょうか。


あなたにも来る怖い相続(フォレスト出版)
2010.09.08

相続を専門とする税理士は多くはないですが、クライアントとその家族を
守ってあげるためには、最低限の相続税の知識だけではなく、民法相続編の
知識も必要ではないでしょうか。
今日は、誰にでも相続対策を必要だということを啓蒙してくれる本をご紹介。

松田茂樹「あなたにも来る怖い相続」(フォレスト出版2010年8月刊)

実話に基づいた7つの物語を通じて、相続税とは関係のない方々を含めた
相続悲喜劇を描いた本書は、相続を「争族」にしないためのヒントが満載だ。

・ニートの相続
・2通の遺言書
・残されたローン
・知らない借金
・余命1カ月
・分配ドロドロ
・譲り合いの精神

この7つの物語はどこにでもある当たり前の風景だけに、「うちは揉めるほど
財産がないから大丈夫」なんて言っている方でも、身の毛がよだつ話だ。
財産がなくて安心というのは相続税の話であって、民法上の相続の話を
踏まえて相続対策を考えている方がどれだけいらっしゃるのだろうか?

正直な話、法学部出身者が圧倒的に少ない税理士業界では、民法相続編まで
キチンと理解して相続対策を考えている税理士がどれだけいらっしゃるのか、
私には疑問です。

なぜか?
相続のタイムリミットが10カ月なんて話が当たり前なのが税理士だから。

相続開始から3か月が相続の意思決定のためのタイムリミットなんですよ。

そういう意味では、あらゆる方に本書を読んで頂き、残された家族の不幸を
できるだけ少なくできるような死に様を考えるきっかけにして欲しいですね。


学会発表、補完的納税義務に遡及立法は許されるのか?
2010.09.07

今週金曜日10日に、専修大学で行われる日本税法学会関東部会で、
「補完的納税義務に遡及立法は許されるか―最高裁平成22年2月16日
判決を題材にして―」と題して、発表させて頂くことになりました。
まだ論文として書き上げておりませんが、論点整理したものを発表して
叩かれたところを練り直したものを論文にして「税法学」に投稿します。
掲載させてくれるといいんですがね。そこが査読誌のつらいところです。

さて、今回の発表は、私が税理士補佐人として、弁護士とともに東京都を
相手に争っている事件を題材にして、不利益遡及立法事件に影響を
与えかねない判決を批判することが最大の目的です。
私利私欲では、これをきっかけに高裁差戻審で有利な判決を引き出したい
という本音もありますが、何よりも、平成13-14年の取引に平成16年改正
により導入された地方税法700条の4の2の趣旨を判決が取り上げる
ことの不合理性を、理論的に批判しなければならないと考えています。

平成16年改正における軽油引取税の改正の主目的は、「脱税を業とする
ブローカー等が介在し、全国的に脱税が行われることが増加しており、
さらに、多数のダミー会社を設立し調査を困難にしたり、滞納処分後も
法人の倒産・設立を繰り返し脱税を続けるケースが多く見られるなど、
事件の悪質化・巧妙化が顕著」になっていることから、「不正軽油撲滅に
向けて都道府県が軽油引取税を賦課徴収しやすいような課税関係の改正を
図るとともに、同税に係る罰則を強化すること」を目的としたものでした。
(川窪俊宏他「平成16年度地方税法改正法案解説」地方税2004年3月号
より引用)

本件の原告は、主犯グループに会社の名義を貸しただけではなく、連絡係
として本件取引に関与していますから、主犯ではないまでも少なくとも
共同従犯であることは間違いないので、この取引が平成16年のものなら、
完全に支払い義務があるところです。しかし、取引時点ではこれを
取り締まる法律がないため、原告が主犯でなければ課税することができません。
それも主犯が原告のみでなければ、本件課税は正当性を失うんですね。

脱税犯に加担するのは本意ではないんですが、そもそもこの原告、脱税犯
として告発されていませんし、裁判でも告発要件に至らなかった、との
担当調査官の証言があるんです。3億円の脱税が告発されない理由は、
原告が100%納税者だと証拠固めができなかったからじゃないんですかね。


税調専門家委員会、国際課税小委員会スタート
2010.09.06

税制調査会は6日、専門家委員会として国際課税小委員会を立ち上げ、
第1回会合では、金子宏先生が基調講演をなされたという。

国際課税小委員会のメンバーには、税調委員から中里実東大教授(税法)、
三木義一青学大教授(税法)、田近栄治一橋大教授(財政学)、辻山栄子
早大教授(会計学)が選出され、特別委員として国際課税を専門とする
青山慶二筑波大教授の他、森信茂樹中大教授、増井良啓東大教授、渕圭吾
学習院大教授という4名の税法学者が選出され、座長には中里先生が
選任されています。

非常に吟味された面白い提言が期待できるメンバーだと思います。
また、複雑な法解釈を是正するためにも、従来の税調とは異なり、
税法学者が6名と過半数が選出されていることも評価されよう。
複雑怪奇な国際課税を一般の税理士が普通に解釈できる状況にできるよう
積極的な議論をお願いしたいところですね。

ところで、第1回の資料では、金子先生の過去に書かれた記事が3点、
税研1998年9月号時流「国際航空運賃と消費税」、
Tax Notes International 1998年12月14日号tax analysts
"Proposal for International Humanitarian Tax - A Consumption Tax on
International Air Travel"
日経新聞2006年8月3日朝刊経済教室「人道支援の税制創設を」
の3点が添付されていました。

日経新聞記事の文章を紹介すると、「消費税率引き上げに合わせて、筆者は
消費税制の消費中立性を高め、また消費税制の中に国際支援の要素をも
持ち込むために、ぜひとも国際人道税を制度化するべきだと考えている。
国際人道税とは、国際航空運賃に定率の消費税をかけ、その税収を適当な
国際機関に転送し、国際機関の手で民族紛争、宗教紛争、部族紛争などで
飢餓に苦しみ、あるいは心身の障害を受けた児童や乳幼児の救援に充てる
という構想である。」と、現行では消費税が課されていない国際航空運賃に
消費税をかけ、その税収を国際支援の財源にしようと提言されているんです。

金子先生によると、フランスでは、国際連帯税という名称で実際に導入
されているとのこと。そういえば、昨夏の民主党マニフェストにも
国際連帯税という文言がありましたね。これは偶然なのでしょうか?


23年税制改正要望出揃う
2010.09.04

税制調査会のHP上に2日、各省庁の税制改正要望が掲載された。
平成23年度の税制改正要望が出揃ったことで、いよいよ本格的な税制改正
論議に入りたいところであるが、民主党代表選が水を差す形になっている。
昨今の円高株安の是正が思うようにいっておらず、税制改正論議を起爆剤に
したいところではないだろうか。

中小企業のサポーターたる税理士にとっては、経済産業省の改正要望が
気になるところだろう。
平成23年度の最大のポイントは、法人実効税率の5%引き下げであろう。
わが国の法人実効税率はアメリカやフランスを比較対象にして考えると
決して高すぎるわけではないのだが、アジアという経済立地を考えると、
あまりにも高すぎると言わざるを得ない。
法人実効税率20%台のアジア諸国、特に中国、韓国が製品品質の向上を
図り続けてきた結果、高付加価値商材以外の商材におけるわが国製品の
価格競争力は失われ、昨今のデフレ傾向も相まって、低付加価値商材を
提供し続けてきた下請け中小企業は壊滅的な打撃を受けてしまっている。

産業構造の変革に伴い、人材の流動性が高まっているのも事実ではあるが、
産業間の人材移動が起きているとは言い難く、慢性的な人材不足の業界と
デフレの影響をまともに受けている業界とに二極化し、格差が拡大して
きているような気もしますね。
それだけに、法人実行税率、中小軽減税率の引き下げは実現を期待したい。

また、経済成長及び雇用確保を実現するための産業競争力の強化として、
日本のアジア拠点化を推進するための税制優遇制度を要望している。
日本企業の海外流出の例として、日産自動車が主力車種であるマーチの
生産拠点を法人税率を10%に引き下げたタイに移転したこと、シャープが
液晶パネル・テレビの設計開発センターを、ハイテク企業への法人税率を
25%から15%に引き下げる中国に設立したこと、スーパーコンピュータの
開発において、富士通が、法人税率17%で投資減税等の支援が充実する
シンガポールの科学技術庁と共同開発に踏み切ったこと、等が挙げられ、
「法人税を含めたビジネスコストが高く、研究開発拠点等の海外流出の動きが
顕在化」してきたとして、法人税減税を軸に研究開発税制の拡充を求めている。

世界経済がグローバル化し、日本が独自性の殻の中に閉じこもることが
許されない時代の波は、税制のグローバル化にもつながっているようだ。


行政救済制度検討チーム、異議申立廃止へ
2010.09.03

行政刷新会議は8月31日、行政救済制度検討チームにおいて、以下の3つの
検討課題についての検討を開始し、第1回会合で配布された資料を公開した。
http://www.cao.go.jp/sasshin/shokuin/gyosei-kyusai/index.html#docu01
・行政不服審査法の改革
・不服申立前置の全面的見直し
・地方における新たな仕組みの検討

税法に対する行政手続法の適用除外の範囲が広範であるために、行政手続法の
制定により是正されたはずの不服申立前置制度や行政調査、行政指導等の
手続は、税法では、ほとんど是正されていないのが実情なんですね。
だからこそ、特別法に当たる行政不服審査法の改正や行政手続法の改正が
必要なんです。
民主党政権になって、是正されることが期待されていたわけですが、
ここにきてようやく、その動きが実現の道を歩み始めたと言えますね。

今回の是正の柱は、異議申立を原則廃止し、審査請求に一本化すること。
現行では、課税処分をした税務署に異議申立をした上で、国税不服審判所へ
異議申立をする仕組みになっています。(青色申告の場合には異議申立を
しないことも認められています)しかし、課税処分をした税務署では、
担当者レベルで処分することはできず、必ず署長にまで話を通しますので、
異議申立で処分が覆ることはなかなかないんですね。
その意味では、国税庁の外局扱いの国税不服審判所にいきなり提訴できる
制度に変わることは、納税者の権利保護にとってプラスとなるでしょう。

また、現行より独立性が高く、書面審理ではなく、対審性を高めることが
検討されており、国税庁長官通達には拘束されてきた国税不服審判所長の
権限がより裁判官に近づくことになろう。
さらに、不服申立人適格を拡大することも検討されており、処分を受けた
者以外の者にも拡大されることになると、納税者本人ではなく、税理士が、
クライアントの権利を守るために提訴できる可能性も出てくる。

納税者権利憲章の創設が税調で検討されている状況もあり、納税者の
権利がより擁護できるように制度改正がされることが期待される。
飯塚事件の時代のようなことはありえないだろうが、今でも権力を嵩に着た
方がたまにいらっしゃいますから、税務署と無用の闘いを強いられることも
ありますからねえ。是非とも、改正を実現して頂きたいところですね。


非上場会社の会計基準に関する懇談会報告書(下)
2010.09.02

わが国の中小企業では、「財務諸表の利用者は、(略)ごく少数の株主のほか
地方銀行、信用金庫、信用組合などの金融機関、取引先、税務当局などに
限定される場合が多い。また、中小企業の経営者が自社の財産及び経営状況を
把握するために利用できることが重視される。したがって、企業の将来の
キャッシュ・フローの予測に資するという側面よりも、保守的な会計処理が
指向され、配当制限や課税所得計算など利害調整的な側面がより重視される」。
だからこそ、「会計処理と税務処理がなるべく一致することが重要であり、
確定決算主義を維持すべき」という意見が多く出されるんです。

しかし、強行法である税法基準に従うということは、適正な企業利益を
計算するというIFRSの目的からはかけ離れることになり、中小企業に
IFRSを適用すべきではなく、コンバージェンスさえ否定的になる。
そこで、会社を規模等により分類することが必要になるんですね。
金商法対象会社、金商法適用外の会社法上の大会社、(会計参与設置会社)、
その他の中小企業の3つないし4つに分類することが検討されている。

会社法上の大会社以外の会社について、会社の属性、取引内容の複雑性、
会社規模等により一定の区分を設け、以下の点を考慮した新たな会計指針を
作成するという。
・中小企業の経営者に容易に理解されるものとする
・国際基準の影響を受けないものとする
・法人税法に従った処理に配慮するとともに、会社法431条の「一般に
公正妥当と認められる企業会計の慣行」に該当するよう留意する
・新たに設ける会計指針の作成主体は、中小企業庁の研究会の動向も
踏まえて、今回の報告書公表後、関係者にて検討する。

一方、現行の中小企業に関する会計指針についても、以下の点を考慮して
見直される。
・平易な表現に改める等、企業経営者等にとっても利用しやすいものとする
・会計参与が拠るべきものとして一定の水準を引き続き確保するものとする
・会社法上の大会社以外の会社すべてを新たに設ける会計指針と現在の
中小指針でカバーするため、現在の中小指針を適用する会社群については、
新たに設ける会計指針の適用範囲と整合性のとれるものとする

新たな会計指針の対象がアドプションの妨げにならないよう、法制化を含め、
最初から会社法及び法人税法改正を視野に、検討して頂きたいところですね。


非上場会社の会計基準に関する懇談会報告書(上)
2010.09.01

企業会計基準審議会は8月30日、非上場会社の会計基準に関する懇談会に
おいて検討してきた内容について、「報告書」を公表した。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/establishment/20100830/press_release
/20100830.pdf;jsessionid=6D17623EB8EFDBE08715760E37AEC072

わが国の会計基準にIFRSを導入することについて、コンバージェンス
(収斂)を急いでいるところであるが、2015年にも予定されている
アドプション(日本基準のIFRS化)について、特に中小企業に対する
影響が懸念されているところである。
そこで、「非上場会社においては、資金調達などの事業活動の態様や
財務諸表に対する関係者のニーズが上場会社とは異なっていること」等を
踏まえ、懇談会を設置し、検討してきたのである。

「報告書」で検討されているように、イギリス、韓国は、中小企業が
IFRSを選択することを妨げておらず、選択しない場合には、自国の
中小企業向け基準がそのまま適用できるようになっている。
ドイツは、商法に厳格な会計基準が設定されているところ、中小企業に
ついては、「簡略化した貸借対照表や損益計算書の開示を認める取扱いが
定められ」、「非上場会社の財務諸表にIFRSを適用することは
認められていない」。
フランスもドイツと同様であるが、なお一層踏み込んでいる。
つまり、2009年2月に公表された中小企業版IFRSに対して、
「中小企業にとって複雑であるため、適用することに賛成しない」と
コメントした上で、「その理由として、個別財務諸表には、会計、税、
法規則における一貫性を維持した、簡素で安定的な基準が必要である」
を挙げている。

フランスの見解はわが国の中小企業に対するIFRS対応に参考になろう。

強行法である法人税法が理論的に整合性が取れない会計基準に与える影響が
気がかりであり、IFRSアドプションが、会計と税法の分離につながる
のではないかと危惧している。

中小企業の実態を即した検討については、次に続きます。