あるべき金融税制考
2007.09.21
このニュースを先にお読み頂いた上で。
更なる補足として、今朝方の日経金融新聞の記事において
「配当に対する軽減税率10%の恒久化を柱とする」という記載があります。
利子・配当及び株式等の譲渡を巡る税制については、長く論争が続いています。
格差社会問題視論者は「配当及び株式等譲渡の軽減税率は格差を助長、
裕福層に対する優遇措置であり、直ちに撤廃すべし」と主張します。
金融・証券業界関係者は「貯蓄から投資への流れを促進する為には、軽減税率は
臨時措置ではなく恒久化すべきだ」と主張します。
この議論に、私なりの理屈をつけてみたいと思います。
立場としてはFP(もうすぐ登録完了)の卵として、そして税理士として租税公平主義
(課税は平等にされなければならない)を重視しながらの考察です。
まず、リスクとリターンの関係の整理を。
リスクとは「変動の大きさ」をいいますので、世によく言われるローリスクハイリターン
という状況はあり得ません。
ローリスクならば変動幅が少ないのですから、リターンが大きいわけはないのです。
もしローリスクに見えるなら、それは何かのリスクを見逃しているに過ぎません。
この理屈からすると、利子がローリスクローリターン、配当がミドルリスクミドルリターン
だということがわかります。
利子の元となる預金は原則元本保証、配当の元となる株式等は元本割れが
あり得るためです。
この理屈においては、配当を選択した投資家は、元本割れを覚悟した上での
選択ですから、利子を選んだ投資家に対して特に優遇をする必要性は感じられない
ように思われます。(資産が減ったとしても、それは自己責任だから)
ミドルリスクだということを認識出来ないのであれば、投資家として失格です。
更に、租税公平主義の観点からも補足します。
租税公平主義は担税力(税金を払う力)に応じた課税を求めています。
そこで問題になるのは、利子と配当の担税力に差があるかどうかです。
利子と配当は共に不労所得、お金から生み出されたお金です。
どちらの担税力にも差があるようには思えません。
配当のみを優遇する理由は、余り見当たらないのではないでしょうか。
では、実際の利回り計算を比較してみるとどうでしょうか。
定期預金の利率を0.40%、配当利回りを1.6%としてみます。
元本割れを覚悟した上で4倍の利回り、皆様はどのように感じますでしょうか?
私個人としては、割に合わないと思います。
仮に投資元本が1億円あれば金額の差は120万円にのぼりますが、世の
投資家が皆そんなに投資しているわけがありません。
精々元本を500万円として、金額の差は6万円。
安くはないかもしれませんが、生活の足しにはならないでしょう。
少なくとも、税制が優遇されている程度のアドバンテージがなければ、利子から
配当に切り替えようとは思いません。
政策的な見地からすれば、優遇は仕方ないような気がします。
利子と配当のみの比較は以上にして、ここに譲渡を絡めてみます。
現在では、株式等の譲渡による所得についても、申告分離課税による
軽減税率が適用されています。
さて、最初に見たニュースの一文を見ると「株式や投資信託の保有促進の
ための税制措置実現」と書かれています。
この文面からは、短期的な売買を繰り返すのではなく、所謂長期投資の促進
を図る意図が見えます。
譲渡の軽減税率は、保有を続ける限りにおいては恩恵を被りません。
但し、譲渡による所得や損失は、利子や配当に比べて非常に多額です。
この優遇措置は、非常に大きな効能を持っているといえます。
この規定は、証券業界の活性化について大きな役割を担っています。
但し、租税公平主義の見地からすると、この軽減税率はやや疑わしく思えます。
確かに譲渡益が一時的な所得であることを考えると、担税力は経常所得に
比べて劣るかもしれませんが、不労所得であることに変わりはありません。
更に、繰り返しになりますが投資商品の選択は自己責任が原則です。
ハイリスクハイリターンを選んだ結果は、各人が甘受すべきです。
そこで私の結論を。
金融・証券制度の発展を図りつつ、租税公平主義を考慮した上で、次の
二案を考えてみました。
1.長期投資家の育成を最重要視する場合
利子:原則 配当:軽減 譲渡:原則
2.金融・証券の活性化を最重要視する場合
利子:原則 配当:原則 譲渡:軽減
どちらか一つを選択した上で、各種所得の損益について通算制度を導入。
株式等の保有及び譲渡により生じた損失が利子から控除できれば、
預金から株式・投信等に移行する利点も見つかります。
非常に荒っぽい理屈ですが、簡単にまとめてみました。
私程度の手駒では、「今はこれが精一杯…」。
今後もあるべき金融税制については、政治や税制の動向を含め、注視して
いきたいと思っています。