量刑

2008.01.17

今回の更新、非常に微妙な事項を取り扱ってみます。
私自身の考えが中々まとまらない中、つい先日勉強した事項でも少し書いてみます。
きっかけはここ最近行っている法務講座において、刑法を勉強したことです。


講師の方はかなり著名な教授だったのですが、その話の内容の中に所謂厳罰化の
傾向が著しいという点について、非常に大きな懸念を示されていました。
ここ最近でいえば、最も有名な事例と考えられる福岡の飲酒運転のアレがあります。
私の知る範囲において、あの量刑が妥当という意見はほぼ皆無であり、何故より
重い量刑の規定が適用されないのか、というものばかりです。
私自身も、あの状況であの量刑が適用されないのには不自然さを感じます。

が、教授の論調では、そもそも危険運転致死の量刑自体が重過ぎるという点に
ついて、半ば意図的に隠ぺいされているという感じでした。
人を意思をもって殺すのと酒酔い運転で殺すのがよりどちらが悪いのか、
確かにもたらされた結果が同じだとしても、運転側の方が悪いかのような量刑の
規定はおかしいのではないか、という程度のニュアンスです。


所謂司法家と呼ばれる人たちと、一般人と呼ばれる人との間において最も
認識にズレがあるのは、おそらく「過程と結果、どちらに重きをおくか」という
点にあるのかな…などと非常に強く感じました。
前者は過程を重視する、それ故に事件の計画性や意思が問題となる。
「人を殺そうと思った」という点こそが重要。
後者は結果を重視する、それ故に手段がどうあれ結果が問題となる。
「人を殺そうとしていなくても、結果的に殺しているのだから殺人」という論理。

現在の刑務所や少年院という仕組みに掛かっているコストはかなりのものです。
既に満杯に近い、というような話は聞かれたことがあるかと思います。
教授曰く、厳罰化をどんどん進めてどんどんその場所に送り込み、自分達と
堀の向こうとは違う世界なんだと線引きをしていくことは、既に限界を迎えている
のではないだろうか、一度でも過ちを犯したものは二度と立ち上がれないような
世界が本当に良いのだろうか、大切なのは再起を促せるような仕組みこそなの
ではないか、社会的な制裁を受けるという点を無視し、刑法における量刑を
重くすることを続けるのが本当に正しいのか。
遺族の処罰感情こそ大切だ、として、ではどこまで重ければ納得できるのか。


私自身、いやきっと多くの一般人(一般人というカテゴライズ自体が、既に
この論議からの逃げを示していますけど)の感覚とは相容れないものが
あるかと思います。
既存の司法家と呼ばれる人たちの感覚こそがおかしいのであって、やはり
被害者の立場からすれば現在のあらゆる量刑に不当な軽さがあるのでは
ないか、という考えが浮かぶのが普通ではないでしょうか。
所謂「わが身に置き換えて」考えれば、被害者の処罰感情こそを重視したい
という感情は、非常にわかりやすいものです。

しかし、それだけで社会構造的に良いのか、という指摘に対して明確な
回答を出来るほど、私自身確たる答えがあるわけでもなく。


厳罰化、というものはやはり世界中で進行しやすい傾向のようです。
人は誰かが処罰されることで何か納得をする部分があるのかもしれません。
政治家もその点は心得ており、世間の声をくみ上げる体裁を整えた上で
厳罰化法案等を成立させ、人気を獲得していくのだとか。

そして私自身気になっていること。
経済構造の問題等において、あれだけ反目しあうことが多い既存マスコミと
ネットの世界が、こと厳罰化については同じ方向を向いている、ということ。

非常に自分勝手ではあるのですが、何故もう少し厳罰化に対する反論の
ような意見が表層に出てこないのか。
…実はこの間のような事件があると、専門家からは既存マスコミに対して
厳罰化傾向を問題視する意見も出るらしいのですが、世間は納得しないと
言われてボツにされることもとても多いらしいです。
「人はみたいものだけを真実と考える」という格言があります。
もし量刑ということに関し、誰かにとって都合の良い考え方のみが流布し、
知らずにそちらの方向に向かされているのなら、それはやはり非常に
恐ろしいことなのでしょう。

とは言っても、私自身の厳罰化傾向に賛成する気持ちがなくなったわけでも
なく、本当に難しい問題だな…という所で、オチもなく終わらせてみます。
裁判員制度なんてものが始まりそうな昨今、全ての国民が考えてみる
べき大切なことなのかもしれません。
きっと誰かの意見を鵜呑みにできれば楽なんでしょうけど、そこまで気楽な
ものでもないんですよね…。


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