「先憂後楽」 (笵仲淹)
字面からは、先に苦労しておけば後で楽しいことがあるよなんて蟻とキリギリス
の寓話みたいに捉えられるかも知れませんが少し違います。原意は、優れた為政
者は世人に先駆けて心配し、世人に後れて楽しむものだというものです。
この言葉は為政者に限らず経営者、夫、妻、全ての責任ある立場の人に必要と
されるものと思えます。老人には安心を、若者には希望を、というのが我々が等し
く求めてきた社会ですが、年金問題、派遣切りを見ても我々の社会が思わぬ方向
に行こうとしていように感じます。政治批判は拙稿の趣旨ではありませんが、天下
りに汲々とするお役人にこのような精神が残されているようには見えません。
割に合わないこと、得にならないことは一切しないという時代精神は一見合理的
ですが、社会全体としては何の役にも立っていません。誰も気付かないところで割
に合わないことを黙々とこなしている人々によってしか社会は成り立たない気がし
ます。大方の公務員は高い能力と、使命感とまでは言わないにしても誠意を尽くし
て仕事をしていることも知って頂きたいと思います。
私の身の回りでも派遣切りに遭った若者を目にすることが増えています。彼らの
社会に裏切られたという気持ちは、社会にとっては取り返しのつかない損失であっ
たように思われます。派遣とは雇用と使用の分離と言われますが、それは取りも
直さず労働の商品化、必要な時に調達し不要になればゴミ箱へという制度です。
いざなぎ以来の景気で一部企業が空前の利益を計上し、新地の飲み屋は派遣
業者の貸し切りであったと風の噂で聞いています(私は知りませんでしたが)。しか
し、若い人たちに希望を与えられないような企業こそがゴミ箱へ直行すべきであっ
たのだと思います。
社会には若い人たちを育てる責任がありましたし、若い人たちにも自らを鍛え成
長させて明るい未来を切り開いて頂きたいと切に願います。


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