時はまさにバブル前夜。
東京本社のディーリング・ルームは活況を呈していました。
やはり世界を相手にしている東京です。
地方の営業店に比べたら、本社のスタッフが皆優秀に見えました。
なぜか国立大出の頭の良さそうな人たちが偉そうにしていました・・・。
私立大卒体育会系の私としても多少気後れしたものの、
何より結果が問われ、それこそつまらない学閥などありえない会社
だったので、ここでも必死にトレーダーの仕事に取り組みました。
トレーダーというのは、注文を仲介するのが仕事ですが、
株価というのは、当然日々上がり下がりしますね。
しかも相場観というのは人によって違います。
その銘柄の株価を高いと思う人もいれば、安いと思う人もいる。
その情報を仕入れ、予測しそれを仲介するのが
トレーダーの仕事なのですね。
高いと思う人には売ってもらって、それを安いと思う人に
仲介する。その両者の橋渡しをするとともに会社としての利益も
確保する。
それがうまくいくと「トレーダー冥利」を味わうことができるのです。
あれほどキライだった株も、何となく仲良くしてくれている
ように感じていました。
相場の世界はこんなものか・・・。
仕事がまた面白く思えるときでした。
でも仕事というのは難しいものです。
ここで相場の本当の怖さを知る時がやってきました・・・。
これも古いお話で恐縮ですが、1987年10月19日に起った
有名な事件です・・・。
あの「ブラック・マンデー」と呼ばれた大暴落の日です。
日経平均が一日で3,800円、なんと15%も大暴落しました。
本社の大ディーリング・ルームには、壁面に株価を表示するボードが
あり、上昇すると赤色に、下落すると緑色に変わるのですが、
全面緑色、まさに「オール・グリーン」です。
あのとき携帯カメラがあれば、必ず写真でも撮っていたでしょうけど、
記念を残せなかったのは実に残念です。
でも今思えば、実に貴重な経験でした。
「これが相場の世界か・・・」
全面緑色の株価ボードに立ち尽くしたあの日・・・。
もう20年以上も前のお話なのですが、
あの緑色が今でも脳裏に焼きついてます・・・。