M&Aと事業承継の違いは?
それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説

M&Aと事業承継の違いは?  それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説
公開日:
2020/10/01
 
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア

後継者問題を抱える企業はM&Aと事業承継の違いを把握したうえで、どちらを選ぶか慎重に検討することが大切です。自社に合った方法を選ぶことで、後継者問題が解決するだけではなく、企業の経営状況が改善したり、事業が発展したりする可能性があります。この記事では、M&Aと事業承継の違いを踏まえ、それぞれの特徴やメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。

事業承継とは何か

事業承継とは、現在の経営者から後継者へ事業を引き継ぐ行為です。引き継ぐ相手に関係なく、「事業承継」と呼ばれています。事業承継では、基本的に経営権のほか、不動産や技術、取引先、人材など、全ての資産を引継ぎます。

事業承継と事業譲渡の違い

事業承継が事業を従業員や親族へ引き継ぐのに対し、事業譲渡は会社の事業を第三者に譲渡することを指します。第三者には、個人と法人のどちらも含まれます。例えば、美容室を新たに開業したい場合、美容室事業を譲受すれば、建物や機材、ノウハウ、人材などを得ることが可能なため、事業譲渡には一定のニーズがあります。譲渡した側は、企業価値に基づいて算出された対価(現金)を受け取れるため、退任後の生活費にあてたり、新事業に投入したりできます。

 

事業譲渡では、会社そのものを譲渡するケースと事業の一部のみ譲渡するケースがあり、後者では、経営者が変わらないため、後継者問題は解決しません。いずれの場合であっても、後継者問題を解決するには、自分の代わりに経営者になる後継者を見つける必要があります。

事業承継の種類

事業承継には、さまざまな種類があります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、1つずつ詳しく確認しておきましょう。

上場

上場と言えば、東証一部上場、東証二部上場といった言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。上場は、IPO(株式公開)のことです。自社の株式を市場に公開することで、第三者が売買できるようにします。この状態をいわゆる「上場した」と言うのです。

 

自社株の評価額が高いのに上場していない場合は、自社株を売れません。その状態で事業承継すると、後継者が資金繰りに苦労したり、節税対策が難しくなったりします。そこで、IPOを実行することで、自社株を売却できるようになり、納税に充てる資金を捻出できるのです。また、自社株の売却で得た利益は、自分の役員退職金に充てたり、退職する従業員に感謝の気持ちを込めて十分な退職金を支給したりできます。

 

また、自社株の売却によって、手元に多くの資金を残せることで、経費の支払いに対応しやすくなります。後継者候補としても、多くの資金がある方が安心して会社を引き継げるでしょう。会社の状況に問題があり、資金が枯渇している状況では、後継者に事業承継を拒否される恐れがあります。

 

スムーズに事業承継するためにも、IPOを視野に入れることが大切です。ただし、IPOはどの企業でも実施できるわけではありません。証券取引所が定める複数の条件を満たすべく、内部統制構築や専門家への依頼など、さまざまな準備が必要です。また、IPOを実施した企業には、有価証券報告書や決算書の提示が義務づけられます。

後継者への承継(親族承継 or 社内承継)

自分の子どもや妻、親族に事業承継する「親族内承継」と、従業員へ事業承継する「親族外承継」があります。親族内承継は、経営者の関係者が事業を引き継ぐため、従業員や取引先から理解を得やすいことがメリットです。

 

しかし、親族に必ずしも経営者に相応しい人物がいるとは限りません。親族だからという理由だけで後継者に選ぶと、事業承継後に従業員や取引先に迷惑がかかる可能性もあります。そのため、後継者に相応しいかどうか慎重に見極めることが大切です。

 

親族外承継では、社内や取引先から信頼が厚い従業員に承継することで、スムーズな事業継続が可能になるでしょう。経営者に相応しい人物かどうか見極めるとともに、近くで経営のノウハウを学ばせることが大切です。また、後継者をめぐって派閥争いが起きている場合、事業承継後に対抗していた派閥の役員や従業員が退職する可能性があります。

 

事業承継は、役員と一部の従業員の間だけで進めて、派閥争いを未然に防ぐことが重要です。

M&A

M&A(Mergers and Acquisitions)は、合併と買収の意味を持つ言葉で、吸収合併や新設合併、株式譲渡、事業譲渡、株式交換などを指します。一般的に、後継者問題を解決するときに選ばれるのは株式譲渡です。自社株を後継者に譲渡することで経営権も譲渡し、経営者を交代する方法です。

 

M&Aは、自社を譲受する企業がいなければ実行できません。自社を買収することでメリットがある企業と出会い、条件交渉を経てお互いにM&Aの意向を固める必要があります。また、M&Aの実施によって経営者が交代すると、従業員が不満を感じて退職するケースがあるため、十分に注意が必要です。

 

従業員に理解を得られるように、会社の主要人物と話し合っておいたり、従業員の待遇改善をM&Aの条件にしたりしましょう。

事業承継を成功させるために必要なこと

事業承継を成功させるために、次のポイントを押さえましょう。

余裕をもって準備を進める

事業承継を成功させるには、後継者の育成や取引先への伝達などが必要です。後継者候補は、日々の業務を遂行しつつ経営のノウハウを学ばなければなりません。そのため、10年以上前から後継者になることを想定した関係性の構築を目指すことが大切です。

 

また、取引先から理解を得るために、あらかじめ後継者候補と一緒に挨拶に行く伺う必要があります。

企業価値を高める意識を持つ

企業価値は、株価に直接影響します。企業価値を高める意識を持って経営を続けることで、IPOを選択したときに多くの資金を手元に残せるようになるでしょう。また、企業価値が高まれば、買い手候補が見つかりやすくなるため、M&Aによる後継者問題の解決も目指せます。

 

企業価値を高めるには、コンサルタントによるアドバイスや社内の状況把握、問題改善などが欠かせません。自分だけでは企業価値を高めることが難しい場合は、専門家に早めに相談しましょう。

信頼できる専門家に依頼する

M&Aを選択するときは、仲介会社やM&Aアドバイザーに相談することが大切です。自社の特性や将来性、事業内容などを踏まえて、自社の買収を希望する企業を見つけてくれます。ただし、業者によって実力と信頼性が異なるため、慎重に選ぶ必要があります。

 

自社と同じ業種で実績がある専門家に相談しましょう。また、M&Aの話が進むと、弁護士や税理士、公認会計士などによるサポートも必要になります。

税制について

事業承継の際には、税制についても確認しておきましょう。

法人版

法人版事業承継税制は、非上場会社の後継者が一定の要件を満たしている場合に贈与税と相続税の納税が猶予される制度です。また、後継者が死亡した場合は、贈与税と相続税の納付が免除されます。利用するためには「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づく認定を受ける必要があります。詳しくは、各都道府県の担当課に問い合わせましょう。

個人版

個人版事業承継税制は、青色申告に係る事業の後継者が円滑化法の認定を受けた場合において、事業用資産に係る贈与税と相続税が一定の要件を満たした場合に限り納税が猶予される制度です。法人版事業承継税制と同じく、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づく認定を受ける必要があります。各都道府県の担当課に問い合わせましょう。

まとめ

M&Aと事業承継は、どちらも後継者問題を解決する方法です。親族内承継が難しい場合は、親族外承継やM&Aを検討しましょう。M&Aに成功すれば、従業員がより良い条件で働けるようになったり、企業の知名度が上がったりする可能性があります。まずは、信頼できる専門家に相談することが大切です。

加藤良大
M&Aに関する実績は200本以上。M&Aの基本情報から仲介会社・アドバイザーの選び方まで、様々な記事を執筆。難しい言葉を使わず、現場の実情まで踏まえた正確かつわかりやすい記事が好評。
人事・労務や法律、不動産、医療など専門的な分野を幅広く執筆している。累計実績14,000本以上、ライター歴7年。
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア
全国の税理士をご紹介しています
税理士紹介ビスカス