2021年度からは中小企業も対象!
必要な同一労働同一賃金への対応は?

2021年度からは中小企業も対象!  必要な同一労働同一賃金への対応は?
公開日:
2021/02/12
 
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大企業には2020年度より求められている同一労働同一賃金への対応が、2021年度からは中小企業にも必要となります。具体的にはどのような方法で、対応すれば良いのでしょうか?準備が進んでいない中小事業事業主に向けて、早急に行うべきこと、しておいた方が好ましい準備について解説します。

同一労働同一賃金とは?

定義と必要とされる背景

同じ労働には同じ賃金が支払われるべきであることを、同一労働同一賃金といいます。労働者によって賃金差をつけることは認められない、という考え方に基づく制度です。同一労働同一賃金のもとでは同じ仕事をする労働者は、正社員であっても非正規社員であっても同額の賃金支払が求められます。

 

同一労働同一賃金は働き方改革の一環として推進されています。働き方改革は労働者がそれぞれの事情に応じた、多様な働き方を可能とする社会の実現を目指しています。労働者によって生じる賃金格差は、正社員と非正規社員との間を分け隔てるものとして解消が求められています。

企業に求められている対応は?

2020年4月より企業の同一労働同一賃金への対応が義務化され、1年の猶予期間を経て2021年4月からは中小企業も対象となります。罰則はないものの、正社員と非正規社員のあいだの不適切な待遇差はなくさなければなりません。

 

不適切な待遇差によって訴訟を起こされ、裁判で負ければ損害賠償が発生する恐れがあります。金銭的損失とともに大きなダメージを被ることを避けるためにも、正社員と非正規社員の待遇差は合理的なものにする必要があります。

同一労働同一賃金で必要とされる対応・対策

不合理な待遇差を是正する

同一労働同一賃金のもとでは、雇用形態によって待遇に不合理な差を設けることは認められません。有期雇用やパートタイム、アルバイトのような非正規社員であっても、同じ仕事に対しては正社員と同じ賃金の支払いが求められます。

 

正社員と非正規社員の賃金差は、同一労働同一賃金違反とみなされる可能性があります。慣例的にでもこういった待遇差がある中小企業は、速やかな是正が必要です。

差があることの理由を明らかにする

正社員と非正規社員のあいだに待遇差がある場合でも、それが合理的なものであれば同一労働同一賃金違反にはなりません。確かな意味、正当な理由がある待遇差は不合理な待遇差ではなく、人事上、必要とみなされます。

 

このような待遇差については理由を明らかにしておく必要があります。不合理な待遇差であると指摘を受ける可能性があり、その場合には差が設けられている理由の説明が義務づけられています。納得させる十分な理由が示せなければ、訴訟・裁判といった問題に発展することも考えられます。いつ説明を求められても対応できるよう、準備が必要です。

早急に行うべき対策は?

不合理な待遇差の有無の確認

同一労働同一賃金に対応するためには、まず正社員と非正規社員とのあいだで不適切な待遇差があるかどうかを確認しなければなりません。この確認は正社員と非正規社員の待遇・労働条件を比較して行います。非正規社員に適用する規則や各非正規社員と交わしている雇用契約書の内容について同一労働同一賃金に反する部分がないか、正社員の就業規則の内容と照合します。

 

厚生労働省は同一労働同一賃金への取り組みを行う企業向けに、「パートタイム・有期雇用労働法等対応状況チェックツール」を公開しています。確認する非正規社員と比較する正社員、それぞれについて基本給・賞与・手当や教育訓練・福利厚生等、正社員への転換推進措置といった設問に回答すると、チェックが行われます。改善が必要な項目、改善が望ましい項目、「不合理ではない」と説明できるかの確認が必要な項目、念のため確認が望ましい項目に分類され、判定されます。

 

結果についてのアドバイスも受け取れ、何度でも利用可能です。必要な設問だけ回答してもチェックは受けられ、時間的制約がある場合は基本給・賞与・手当からの利用が薦められています。自社に有用だと判断できる場合には積極的に活用しましょう。

必要に応じた是正・改善

正社員と非正規社員とのあいだに同一労働同一賃金に反するような不合理な待遇差があった場合、速やかな是正・改善が必要です。是正・改善方法には好待遇側の引き下げと悪待遇側の引き上げの2つがありますが、好待遇側の引き下げは好ましくありません。労働者にとっては労働条件が引き下げられることになり、労使間の対立へとつながります。

 

そもそも使用者からの一方的な労働条件引き下げは原則的に認められていません。経営上やむを得ない場合にしか行えず、労働者の合意も不可欠です。そのため正社員と非正規社員のあいだの不適切な待遇差の是正は、非正規社員の待遇引き上げによって行う必要があります。

将来のトラブル回避のためにできることは?

就業規則や賃金規則の整備

同一労働同一賃金は正社員と非正規社員とのあいだのすべての待遇差を否定するものではありません。解消が求められるのは不合理な待遇差で、合理的なものは認められます。ただし合理的であるという、しっかりとした根拠・理由付けが求められます。そのために必要なものが就業規則や賃金規則の整備です。

 

同一労働同一賃金違反とみなされるものに、通勤交通費や食事手当が挙げられます。正社員であっても非正規社員であっても負担は同じものに対して、一方だけに支給する手当は不合理な待遇差と判断されます。しかし転勤があるのが正社員だけの場合、転勤手当の支給対象者が正社員だけになるのは当然です。この場合は就業規則や賃金規則に転勤手当の対象者・支給理由を明確にすることで、不合理な待遇差でないことを明示しておくことができます。

賃金など待遇差の縮小

将来において訴訟・裁判のような問題へ発展することを防ぐためには、正社員と非正規社員とのあいだの賃金格差の縮小を目指すことが効果的です。正社員の待遇引き下げは現実的ではないため、非正規社員の待遇改善による格差解消が求められます。政府も働き方改革実現のため非正規社員の待遇改善として様々な支援・施策を行っています。キャリアアップ助成金はその中の1つです。

 

キャリアアップ助成金とは有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者などの企業内でのキャリアアップ促進を目的とした助成金です。雇用保険適用事業所が非正規社員を正社員にしたり、処遇改善の取り組みを行ったりする場合に活用できます。賃金規定等改定コースはすべてまたは一部の非正規社員の基本給について賃金規定等を増額改定し、昇給を行った企業を対象に助成金が支給されます。中小企業に対する助成金額は次の通りです。

 

すべての非正規社員について2%以上増額規定した場合
対象人数/助成金額
1~3人/1事業所あたり95,000円(生産性向上が認められる場合120,000円)
4~6人/1事業所あたり190,000円(生産性向上が認められる場合240,000円)
7~10人/1事業所あたり285,000円(生産性向上が認められる場合360,000円)
11~100人/1人あたり28,500円(生産性向上が認められる場合36,000円)

 

一部の非正規社員について2%以上増額規定した場合
対象人数/助成金額
1~3人/1事業所あたり47,500円(生産性向上が認められる場合60,000円)
4~6人/1事業所あたり95,000円(生産性向上が認められる場合120,000円)
7~10人/1事業所あたり142,500円(生産性向上が認められる場合180,000円)
11~100人/1人あたり14,250円(生産性向上が認められる場合18,000円)

 

3%以上5%未満の増額改定をすべての非正規社員について行った場合は1人あたり14,250円(生産性向上が認められる場合18,000円)、一部の非正規社員について行った場合は7,600円(生産性向上が認められる場合9,600円)が上乗せされます。5%以上の増額改定に対する上乗せ額はすべての非正規社員について行った場合1人あたり23,750円(生産性向上が認められる場合30,000円)、一部の非正規社員について行った場合12,350円(生産性向上が認められる場合15,600円)です。

まとめ

2021年度から中小企業にも同一労働同一賃金への対応が求められます。正社員であるか非正規雇用であるかによる不合理な待遇差は認められず、設けられている場合は是正が必要です。まだ取り組みを開始していない中小事業主は、準備を急ぎましょう。

矢萩あき
複数の企業で給与計算などの業務を担当したことから社会保険や所得税などの仕組みに興味を持ち、結婚後に社会保険労務士資格とファイナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。現在はライターとして専門知識を活かした記事をはじめ、幅広い分野でさまざまな文章作成を行う。
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