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相続人のはずなのにその資格を奪われることがあるって本当?

相続人のはずなのにその資格を奪われることがあるって本当?

2019年10月16日

父親が亡くなった場合、遺産は妻と子どもがいれば、それぞれ1/2ずつ分ける――。この法定相続分の「公式」は、誰でも知っているでしょう。これは、民法に定められた権利。ところが、場合によってはそれが剥奪されてしまうことがあります。法律上、否応なしに資格を失う「相続欠格」と、被相続人(亡くなった人)の意思で遺産を相続できなくする「推定相続人の廃除」があるのですが、それぞれどんな制度なのでしょうか? わかりやすく解説します。

ところで、相続人は誰?

最初に、民法が定める「法定相続人」についておさらいしておきましょう。相続人には第1順位~第3順位まで「順番」があって、前の順位の相続人がいる場合には、後の順位の人は相続人にはなれません。

被相続人に配偶者がいれば、その人は常に相続人で、プラス第1順位が被相続人の子ども、第2順位が親(直系尊属)、第3順位が兄弟姉妹。これが法定相続人です。なお、被相続人より子どもが先に亡くなっていたらその子ども(被相続人の孫)、兄弟姉妹で亡くなった人がいたらその子ども(同じく甥、姪)などが、本来の相続人に代わってその資格を得る「代襲相続」という仕組みがあります。

遺産分割については、それぞれの順位で配偶者とその他の相続人の遺産の取り分=法定相続分が決められているのですが、被相続人の遺言書があるときには、その意思が優先されます。ただし、その場合でも、相続人には最低限受け取れる取り分=遺留分が認められていて、例えば妻と2人の子どもの相続では、子どもには〈法定相続分〉1/2×〈人数割〉1/2の半分=1/6を受け取る権利があるのです。原則として、これを侵すことはできません。

さて、以上のように相続人について定める民法ですが、同時に「相続人の資格停止」についても明文化しています。その対象になった人は、いま説明した遺留分も含めて1円たりとも遺産を受け取ることができません。どんな定めなのか、具体的にみていきましょう。

相続人の「問題行動」により、資格はく奪=相続欠格

まず、被相続人の死によって相続人になるであろう推定相続人及び相続人に「重大な非行」があった場合。発覚すれば、無条件で“レッドカード”を突き付けられることになります。どんな行為がそれに当たるのか、民法は次の5点を「相続欠格事由」に挙げています。

  • ①故意に被相続人、自分以外の相続人を死亡させ、または死亡させようとして刑に処せられた者
  • ②被相続人が殺害されたことを知りながら、告訴、告発をしなかった者
  • ③詐欺や強迫により、被相続人が相続に関する遺言を作成・撤回・取り消し・変更することを妨げた者
  • ④詐欺や強迫により、被相続人が相続に関する遺言を作成・撤回・取り消し・変更させた者
  • ⑤相続に関する被相続人の遺言書について偽造・変造・破棄・隠匿した者

①、②は当然として、③は自分に不利な遺言書の作成などをさせなかった場合、④は逆に自分に有利な遺言書を作らせたり、そういう内容に書き換えさせたりした場合、ということになります。

⑤も含めて、「他の相続人にはバレないだろう」と軽い気持ちで犯した「罪」でも、見つかれば、裁判所の判決などが不要な「一発退場」。その代償は、とても大きなものになります。

「あいつにだけは、遺産を渡したくない」=推定相続人の廃除

一方、遺産を渡す側の人が、「相続させたくない人間」の資格を剥奪する行為も、民法は認めています。例えば、父親が「他人に迷惑をかけ続け、金をせびることしかしなかった次男には、ビタ一文渡したくない」と考えて、そういう内容の遺言書を残したとしても、次男にはさきほどの「遺留分の壁」があります。それも不条理だろうということで、一定の要件を満たした場合には、そうした被相続人の意思を尊重できる制度が設けられているわけです。

もちろん、単に「性格が気にくわない」といった理由ではNG。この「推定相続人の廃除」が認められるのは、推定相続人に以下のような事由がある場合とされています。

  • ①被相続人に対し虐待をした場合
  • ②被相続人に対し重大な侮辱をした場合
  • ③その他の著しい非行があった場合

③は、例えばギャンブルなどで被相続人に多額の借金を負わせた、浪費や異性問題、反社会的勢力への加入などの親不孝行為があった、配偶者に愛人と同棲するなどの不貞行為があった、財産目当てで婚姻関係を結んだ――といった状況が想定できるでしょう。

ちなみに、この「推定相続人の廃除」の対象となるのは、配偶者と子ども、直系尊属、つまり第2順位までの推定相続人です。なぜ兄弟姉妹が対象外なのかというと、そもそも彼らには遺留分が認められていないから。特定の人物に遺産が渡らない内容の遺言書を残せば、それで事足りるというわけです。言い方を変えると、兄弟姉妹に渡したくない人間がいる場合には、そういう内容の遺言書を用意すべきです。

「相続欠格」が無条件の資格剥奪なのに対し、こちらは家庭裁判所に廃除の請求(申し立て)を行う必要があります。申し立てを受けた家裁は、調停の審判によって、廃除の可否を決定します。

この申し立ては、生前だけでなく、遺言書によってすることも可能。ただし、その場合でも、相続開始後に遺言執行者(※)が家裁に廃除請求を行うことになります。

さて、一度権利を剥奪されたら、二度と相続人には戻れないのでしょうか? 答えは、「相続欠格の場合は戻れない」、「廃除ならば復帰の可能性はある」です。廃除を撤回するためには、家裁に取り消しを請求する、遺言書にその内容をしたためる、という2つの方法があります。ただし、手続きウンヌンの前に、被相続人になる人に過去の「悪行」を完全に許してもらうことが大前提であることは、言うまでもありません。

※遺言執行者
財産目録の作成、相続財産の管理、遺言の執行に必要な一切の手続きを行う。相続人の1人がなったり、弁護士や司法書士など専門家に依頼したりすることができる。

まとめ

相続人の権利は、法で守られています。ただし、自分が有利になるように無理やり遺言書の中身を歪めたり、遺産を譲る側の人に非行の限りを尽くしたりすれば、その資格を奪われることもあるのです。逆に被相続人には、特定の人に財産を渡さないようにする手立てが用意されています。不明な点は、相続に詳しい税理士に相談を。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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