義父を懸命に介護した長男の妻
その苦労に報いる相続の制度改正がありました

義父を懸命に介護した長男の妻  その苦労に報いる相続の制度改正がありました
公開日:
2019/10/09
 
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「寄与分」という言葉を聞いたことがあると思います。相続の際、被相続人(亡くなった人)のために尽くした人が遺産を多くもらえる制度なのですが、約40年ぶりの民法(相続法)改正で、制度に画期的な変更が加えられ、2019年7月1日以降に発生した相続について適用されています。恩恵を受けるのは、例えば「被相続人を介護した長男の妻」です。どのような改正なのか、詳しく解説します。

ところで寄与分とは?

本論の前に、寄与分について、ごく簡単におさらいしておきましょう。民法は、「被相続人の事業に関する労務の提供」「財産上の給付」「被相続人の療養看護」などによって、「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与」をした相続人に対して、それを認めています。

 

例えば、給料をもらわずに家業を手伝っていた、被相続人の借金を肩代わりした、息子や娘が仕事を辞めて親を介護した、といったケースです。金額は相続人の話し合い、それで決着がつかなければ家庭裁判所の調停、さらには裁判で決定されることになります。

 

もちろん、生前に被相続人をサポートしていたら、どんな場合にも認められるわけではありません。「特別な寄与」とは、「通常期待される程度を超える貢献」を指すとされ、例えば、入院中の親を毎日見舞ったとか、同居して生活費を負担していた、といった行為は、「特別なこと」とは認められない可能性が高いとみなくてはなりません。

相続人以外は、どんなに尽くしても寄与分ゼロだった

さて、高齢化が進み、在宅介護も増えています。その際、要介護者の面倒を日常的にみている親族といえば、多くの場合、「長男の妻」でしょう。重労働で、自分の生活をある程度犠牲にしなくてはならない介護。その苦労を考えれば、義父や義母亡くなったとき、相続でそれなりの代償を受け取れてもいいように感じられますが、これまでは、寄与分は認められませんでした。

 

説明したように、寄与分が認められるのは相続人です。相続人(この場合は長男)の配偶者(その妻)は、相続人ではありませんから、どんなに被相続人に貢献しようとも、はじめからそれを受け取る資格がなかったわけです。

 

こうした場合、救済の手立てとしては、相続人である長男が代わって寄与分を主張し、受け取ることが考えられます。ただし、その長男が先に亡くなってからも、妻が義理の親の介護を続けていたら、どうなるか? 法的には、相続の際に彼女が介護の「対価」を受け取る方法がなくなってしまうのです。

 

献身的に被相続人を介護した人間がまったく報われず、一方で家に寄り付きもしなかった他の兄弟たちが法定相続分(※1)の遺産を受け取るというのは、あまりに理不尽ではないのか――。実際に介護の件数が急増する中で、そうした問題が強く意識されたことが、今回の法改正の背景にあります。

 

※法定相続分
民法に定められた、被相続人の遺言書がなかった場合の各相続人の遺産の取り分。

「特別寄与料」が新設された

どう変わったのか、みていきましょう。法改正により、無償で介護(療養看護)などの労務を提供した場合、相続人ではない親族も、相続発生後(被相続人が死亡した後)に相続人に対して「特別寄与料」という金銭を請求できることになりました。この場合に対象となる親族とは、具体的には「長男の妻」のような、被相続人からみて「子の配偶者」のほか、相続人ではない兄弟姉妹(※2)、甥、姪などです。法的な婚姻関係を結んでいない内縁の妻やその連れ子は、今回は対象外とされました。

 

特別寄与料の金額は、寄与分と同じく当事者間の協議で決め、まとまらなければ家庭裁判所に調停を申し立てることができます。ただし、原則として相続開始から6ヵ月以内という申し立ての期限がありますから、注意してください。

 

では、実際にどれくらいの金銭をもらうことができるのか? これについては、その介護を民間に頼んだ場合にかかる費用が、1つの目安になるようです。ただ、現実の「相場」は、今後事例が積み重なっていく、はっきり言えば裁判になってその判例が多く示されるようになってから、明確になってくるのではないでしょうか。

 

1つ重要なことは、話し合いにせよ裁判所に行くにせよ、寄与料の請求には、基本的に「無償でこれだけの労務を提供しました」という証明が必要になるということです。介護日誌をつけ、交通費や様々な実費負担の領収書はきちんと残しておきましょう。

 

なお、今回の改正の効果が及ぶのは、被相続人の介護についてで、寄与分として認められている事業への労務の提供や財産の給付に関しては、対象外となっています。

 

※2被相続人の子どもや孫(相続の第1順位)、あるいは親(第2順位)が存命していれば、兄弟姉妹(第3順位)は、相続人にはなれない。

「介護の対価」を遺言書に記すのがベスト

相続人ではない親族に特別寄与料が認められたのは、画期的なこと。ただし、新たな制度ができたからといって、介護をした人が100%報われるとは限らないのも事実。例えば、「無償で労務を提供した」ことが十分証明できなかった、というような状況もあり得るからです。

 

そもそも「みんなより余分にもらいたい」という寄与分の主張は、争いを生みやすいものです。相続人以外が絡む特別寄与料の場合は、さらに「認める・認めない」「金額が多い・少ない」などの諍いが多発するかもしれません。

 

ならば、どうしたらいいのか? その点で、介護を受ける人の行動の持つ意味は、大きいと言えるでしょう。相続では、遺言書を使えば相続人でない人に遺産を分けることが可能です。介護を受けている、あるいは将来世話になるのならば、感謝の気持ちも込めて、「長男の嫁」への財産分与を記した遺言書を作成すべきではないでしょうか。そうした話を長男が親にすることも、大切だと思います。

まとめ

19年7月以降に発生した相続においては、相続人以外の親族の「特別寄与料」が認められることになりました。対象になる場合には、制度の活用を考えましょう。ただ、争いを防ぎ、貢献した人が確実に遺産を受け取るためには、被相続人の遺言書が最良の手立てになるはずです。

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