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ちょっとだけややこしい「相続税の計算方法」をズバリ解説

ちょっとだけややこしい「相続税の計算方法」をズバリ解説

2019年12月11日

2015年に基礎控除が引き下げられた結果、課税対象者が大幅に増えた相続税。親が死んで相続になったら、いったいいくらの税金を支払うことになるのか、今から心配になっている人も少なくないと思います。ところで、その相続税、どのように計算されるのでしょうか? 個々人がもらう分に直接税額を掛けるのでは?いやいや、対象となる遺産額に税額を掛けた金額を、それぞれの取り分に応じて負担するのだろう。実は、どちらも違います。今回は、少しややこしい相続税の計算方法を解説します。課税額の目安を知る参考に。

基礎控除の範囲なら、相続税はかからない

日本で、相続税を支払っている人はどれくらいいるのでしょうか? 国税庁の発表資料(以下同)によると、2017年の被相続人(亡くなって相続になった人)の数は、約134万人。そのうち相続税の課税対象になったのは、11万2000人、8.3%でした。つまり、相続全体のうちで相続税が発生した「課税割合」は、8%強ということになります。

 

これを「高い」と言うか、「ほとんどの場合はかからない」とみるかは、人それぞれだと思いますが、そもそもなぜ「相続税のかからない人」がいるのかといえば、それは税の「基礎控除」があるからにほかなりません。

基礎控除は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。例えば、相続人が配偶者と子ども2人の計3人だったとすると、上の数式に当てはめて、4800万円が基礎控除額ということになります。遺産の総額がこれ以下だったら、相続税はかかりません。基礎控除額を超えた場合、例えば相続人3人で、遺産が1億円あった時には、1億円から基礎控除額の4800万円を差し引いた5200万円が、課税対象=「課税遺産総額」になるのです。

ところで、2017年の課税割合が約8%と言いましたが、2014年まではずっと4%台(2014年は4.4%)で推移していました。翌2015年から突然上昇(15年は8.0%)したのは、今説明した基礎控除額が、それまでの「5000万円+1000万円×法定相続人の数」から、大幅に引き下げられたため。これにより、「3大都市圏に持ち家のあるような人」が、軒並み課税対象に含まれるようになりました。ちなみに、2017年の相続税の総額は2兆185億円、被相続人1人当たり(相続1件当たり)にすると1807万円でした。

相続税の総額は?

では、実際の税額計算の方法について、「相続人は妻と長男、長女の3人」だった場合を例に取り、順を追ってみていくことにしましょう。

(1)「遺産額」を求める

預貯金や土地・建物などの不動産、有価証券などの財産から、借入金などを差し引きます。生命保険金、死亡退職金には、それぞれについて「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設けられていますから、それを超えた場合には、その分を遺産額に加算します。ここでは1億4800万円と仮定します。

(2)「課税遺産総額」を求める

(1)から「基礎控除額」4800万円を引いた1億円が、課税遺産総額となります。

(3)「相続税の総額」を計算する

ここからが間違いやすいところで、相続税の課税は、例えば所得税のように「自分が受け取った金額に税率を掛ける」というやり方ではありません。まず相続税の総額を計算し、相続人それぞれに割り振るのです。しかも、その相続税の総額も、単純に「(2)に税額を掛けたもの」とはならないのです。

相続税の総額は、(2)をいったん法定相続分で分けたと仮定したうえで、計算します。法定相続分は、「被相続人の遺言書がなかった場合にはこう分ける」という民法の規定で、この例では、妻が1/2、長男、長女はそれぞれ1/4ずつとなります。ですから、相続額は

  • 妻  1億円×1/2=5000万円
  • 長男 1億円×1/4=2500万円
  • 長女 1億円×1/4=2500万円
となります。

次に、それぞれの遺産額を次の「速算表」にあてはめることで、相続税の総額を求めます。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
引用:国税庁 相続税の税率

そうすると、

  • 妻  5000万円×20%(税率)-200万円(控除額)=800万円
  • 長男 2500万円×15%-50万円=325万円
  • 長女 2500万円×15%-50万円=325万円
となり、800万円+325万円+325万円=1450万円が、相続税の総額となるのです。

(4)それぞれの相続人の納税額を計算する

相続を法定相続分に従って行うのであれば、妻は800万円、長男と長女は325万円ずつというのが、それぞれの納税額ということになります。しかし、それとは違う分け方をする場合には、(3)を基にして、実際の相続税額を計算することになります。例えば、遺産の相続割合が、妻50%、長男30%、長女20%だったとすると

  • 妻  1450万円×50%=725万円
  • 長男 1450万円×30%=435万円
  • 長女 1450万円×20%=290万円
ということになるわけです。

なお、配偶者には「遺産額の法定相続分もしくは1億6000万円までのいずれか多い金額対応する額」までの、税額控除の制度があります。受け取った遺産額がこの範囲ならば、納税額はゼロ。超えた場合でも、控除額を差し引いて納税することができるのです。ですから、このケースでは、妻は相続税を納める必要がありません。

さらに仮定の話を付け加えておくと、このケースで妻が1億4800万円すべての遺産を相続すると、「1億6000万円まで」という配偶者控除の範囲に収まりますから、家族は相続税ゼロで相続を終えることができます。ただし、妻が亡くなった二次相続(※)ではどうなるでしょう?

課税遺産総額が9000万円まで目減りした母親の財産を、長男、長女が1/2ずつ相続するとします。それぞれの法定相続分は、9000万円×1/2=4500万円。これを速算表に当てはめると、4500万円×20%-200万円=700万円となります。一次相続では相続税ゼロだったものの、今度は1回で多額の税金が発生することになるわけです。一次、二次相続の遺産分割のバランスを考える必要があるのも、相続税という税金の特徴と言えるでしょう。

まとめ

他の税金に比べて、少し特殊な相続税の計算。でも、答えを求めるのは、そんなに難しいことではありません。ざっくり遺産額を出したうえで、おおよその数字を頭に入れておけば、いざという時に慌てずに済むのではないでしょうか。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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