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1円たりとも相続させたくない!「相続廃除」の仕組みを解説します

1円たりとも相続させたくない!「相続廃除」の仕組みを解説します

2021年6月4日

仮に、相続人の中に、どうしても遺産を渡したくない人間がいたとします。遺言書で、その意思を示したとしても、法定相続人には遺産についての最低限の権利=遺留分が認められているため、その人の取り分をゼロにすることは、通常できません。ただし民法は、そうした場合に、裁判所に認められれば、特定の相続人の相続権を奪うことのできる「相続廃除」という制度を設けています。そんな仕組みなのか、わかりやすく解説します。

相続人の権利「遺留分」とは?

例えば、長年に渡って介護を続けてきた妻を差し置いて、愛人に全財産を譲る旨の遺言書を残して夫が亡くなったために、高齢の妻が路頭に迷うというのは、どう考えても理不尽でしょう。そうしたことにならないよう、民法の認めているのが「遺留分」です。

配偶者や子どもの遺留分は、法定相続分の1/2。配偶者と子ども2人が相続人だったとすると、配偶者は遺産の1/2(法定相続分)×1/2=1/4、やはり法定相続分が1/2の子どもは1人当たり1/8が遺留分となり、これだけは遺言書の内容に関わらず、もらう権利があるのです。

では、逆に妻が半分寝たきりの自分の面倒をみないばかりでなく、「早く死ね」とばかりに虐待を繰り返しているような場合、「彼女には、遺留分も渡したくない」という意思を実現しようとしたら、どうすればいいのか? それが、今回のテーマです。

どんな場合に「廃除」できるのか?

「相続廃除」をひとことで言えば、被相続人が特定の推定相続人(相続人になる予定の人)による相続を希望しない場合に、その可否を審査したうえで、遺留分も含めた100%の相続権を剥奪する制度です。審理し、決定するのは家庭裁判所です。つまり、「廃除」になるのは、被相続人(財産を譲る人)か遺言執行者(※これについては後述します)が家裁に申し立てを行い、それが認められた場合、ということになります。

常識的に考えて、今の例のようにひどい虐待を受けたり、経済的に大きな苦労をかけさせられたりした相続人に対して、「遺産は譲らない」という意思が尊重されるのは、正当なことに思えます。一方で、被相続人の気分次第で遺産分割が行えるのでは、そもそも遺留分制度を設けた意味がありません。

言い換えれば、相続廃除の審判においては、遺産を渡さないという「被相続人の意思」と「守られるべき相続人の遺留分」を天秤にかけ、判断が下されます。遺留分という相続人の法的な権利を奪うためには、それ相応の理由が必要になるわけです。

では、その理由とは、どういうものなのでしょうか?
民法892条には、次のように定められています(「廃除原因」と言います)。

  • 1.被相続人に対する虐待または重大な侮辱
  • 2.その他の著しい非行

具体的には、

  • 被相続人を肉体的、精神的に虐待した
  • 被相続人に対して日常的に暴言を吐くなどの侮辱行為をしていた
  • 被相続人の財産を勝手に自分のものにしたり、処分したりした
  • ギャンブルなどで多額の借金をして、その返済を被相続人にさせた
  • 浪費、遊興、犯罪、反社会的団体への加入、異性問題を繰り返すなどの親不孝行為があった
  • 重大犯罪を起こし、有罪判決を受けた
  • 配偶者である相続人が、不貞行為を繰り返した
  • 財産目当ての婚姻関係を結んだ
といったケースが当てはまる、とされています。

ただし、「虐待」や「侮辱行為」、「著しい非行」は、あくまでも主観ではなく、客観的に認められる必要があります。また、その程度や、そこに至る被相続人の責任なども考慮されることになります。繰り返しになりますが、遺留分まで奪うには、「よほどの理由」が必要なのです。

廃除請求の仕方には2通りある

さきほど説明したように、この相続廃除は、被相続人が家庭裁判所に申し立てれば、手続きが開始されます。被相続人本人以外は、排除を求めることができません。

ちなみに排除できる相手は、「遺留分を有する者」とされています。被相続人に子どもがおらず、直系尊属(両親、祖父母など)が亡くなっている場合には、兄弟姉妹が相続人になるのですが、彼らにはそもそも遺留分が認められていません。遺産を渡したくない人がいる場合には、その意思を示した遺言書を残せばいいのです。

相続廃除を求める方法には、次の2つがあります。

  • ①生前廃除
    説明したように、被相続人自らが、家庭裁判所に排除を請求する方法です。
  • ②遺言廃除
    被相続人が、特定の相続人を廃除する内容を記した遺言書を残すことでも、申し立てを行うことができます。相続が開始された後、遺言執行者(※)が、家庭裁判所に廃除を請求することになります。

廃除の請求を受けた家庭裁判所は、審判手続に入ります。審判では、廃除を求める申立人(①被相続人または②遺言執行者)と、廃除が求められた相続人との間で、廃除原因をめぐる主張などが交わされたうえで、裁判官がその可否を判断します。

自動的に相続権を失う「相続欠格」もある

なお、この相続廃除と同じく、法定相続人がその権利を失う制度に、「相続欠格」があります。こちらは、被相続人の申し立てなどを必要としない点が、廃除とは異なります。

例えば、

  • 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
  • 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
  • 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
などは、それらが発覚、確定した時点で、自動的に相続人ではなくなるのです。

※遺言執行者
被相続人の残した遺言書の内容を実現するために、必要な手続きなどを行う人。相続財産を調査し財産目録を作成する、金融機関に対する預貯金の解約手続きを行う、といった権限を持つ。

まとめ

遺産を渡したくない相続人から、遺留分まで奪う「相続廃除」の制度があるのを、知っておきましょう。ただし、それが認められるハードルは、決して低くはありません。意思を確実に実現するためには、相続に詳しい弁護士、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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