美容整形の手術費は必要経費になる?経費になるケースについて解説 | MONEYIZM
 

美容整形の手術費は必要経費になる?経費になるケースについて解説

「プチ整形」「日帰り手術」といったように「美容整形」も今ではかなり身近な存在となりました。そのなかでもモデル業やタレント業、接客業などに従事する方が事業として「美容整形」行うケースがあります。今回は「美容整形」の費用を必要経費とすることの是非について解説します。

近年増加する「美容整形」

施術を受ける方が増加している理由

「美容整形」といえば、大がかりな整形手術で何日も入院が必要というイメージがあります。

最近では「プチ整形」のように、注射や簡単な施術で目や唇の整形を行えるものがあり、日帰りすることもできるようになりました。

 

また、美容に対する意識が向上していることもあり、顔以外にも痩身エステや制汗ケアなど全身のケアを受ける方が増えているのも最近のトレンドです。

 

男女問わず美は永遠のテーマではありますが、特に若年層にその傾向が強いようです。

インスタグラムやブログなど自分自身を外部に発信するツールを利用する方が増え、美容に対する意識に拍車がかかっていることも一因であると考えられます。

職業としての「美容整形」

美容整形はプライベートに限ったことではありません。モデルやタレントなど、美を職業としている方にとっては場合により必要不可欠なことであるといえます。自分自身を外部に発信していく機会の多い職種であれば、ご自身の体が収益を生み出す資本となりますので、より収益をあげるために美容整形を受けることは、ある意味当然のことでしょう。

 

プロダクション事務所に所属し、雇用契約を結んでいれば収益は給与所得となります。つまり、その他の所得がなければ確定申告は不要です。

 

しかし、プロダクション事務所に所属せずフリーランスで活動している方や、事務所に所属しマネージメント契約を結んで活動している場合、収益は事業所得あるいは雑所得となります。

 

事業所得や雑所得の計算方法は次のようになります。

事業所得(あるいは雑所得) = 収 益 - 必要経費

 

ここで問題となるのが、必要経費として計上する範囲です。

 

確定申告では、個人が支出した費用を「仕事」と「プライベート」に区分し、「仕事」に該当する部分だけを必要経費として計上しなければなりません。仕事上必要とはいえ、モデルやタレントの方が受けた「美容整形」は仕事だけではなくプライベートも兼ねているといえます。

 

「仕事」と「プライベート」の線引きが難しい「美容整形」にかかる費用は必要経費に該当するのでしょうか?

「美容整形」の手術費が経費となるケース

「美容整形」を経費とするためのポイント

事業所得や雑所得を計算するにあたって必要経費とすることができるのは、収益を得るために「直接」要した部分だけです。税法ではこの「直接」という部分が重要になります。

 

例えば、プライベートで支出した食費、洋服、水道光熱費といった生活費は、収益を得るため直接要した費用とはいえません。飲食店で使った食事代・飲食代も、取引先の接待目的であれば必要経費ですが、自分や家族だけで行ったのであれば収益を得るために直接要した支出とはいえません。

 

この考え方は、モデルやタレントの方が支出した費用についても同様に当てはまります。

モデル料や出演料といった収益を得るために直接要した費用だけが必要経費となります。

 

「美容整形」はご自身の身体に直接かける費用であり、美を資本として収益を得ているわけですから、一見、無条件で必要経費になりそうなイメージがあります。

 

しかし、税法ではもう一つ「仕事」と「プライベート」を明確に区分することが求められます。

 

直接要した費用であっても、支出の一部にプライベートな部分が入っているとした場合事業との明確な区分根拠を提示できない限り、必要経費とすることはできません。

 

美容整形の費用を必要経費とするためには「外見を生業としていること」「支出を事業とプライベートに区分できること」の2つがポイントとなります。

必要経費にすることができる職種にはどのようなものがあるか

では「美容整形」を必要経費とすることができるケースを職種別に見ていきましょう。

 

1.モデル業やタレント業
整形やエステ、エクササイズなど、モデルやタレントの方が美を維持するために支出する経費があります。
税法において明確な判断基準はありませんが、たとえ外観を美しくみせることが必須の職業であっても、「仕事」と「プライベート」を明確に区分できない支出は必要経費として認められない可能性が高いでしょう。
なお、かつらやウィッグのように取り外しが可能で仕事と区分することができるもの、あるいは仕事でしか着用しない特別な衣裳などであれば必要経費とすることが可能です。

例外として考えられるのが、美容モデルの方が費用を支出したケースです。美容モデルの場合、美容整形の施術前と施術後を比較することを仕事とし収益を得ていますので、必要経費とすることができるでしょう。

 

2.美容整形クリニックを営む個人事業者
美容整形のクリニックを経営する個人事業者が費用を負担した場合も、必要経費として認められる可能性が高いでしょう。

顧客を獲得するために、自社が施術した美容整形のビフォーアフターをHPや雑誌などで外部に発信するケースがあります。その際、美容モデルに対して行った施術費を自社で負担した場合、広告宣伝のために支出した費用として広告宣伝費で必要経費計上することが可能です。

 

3.飲食店等の接客業
ホストやホステスなど、飲食店に勤務している方は一般的には個人事業者として認識されますが、接客業ですから他の業種と比較して美容に多くの支出をしているケースが考えられます。

飲食店等の接客業についてもモデルやタレント同様、「仕事」と「プライベート」を区分することが難しい職種です。したがって美容整形にかかる費用を必要経費とすることはできません。

なお、仕事とプライベートを明確に区分できる特別なスーツやドレス、ウィッグなどは必要経費とすることができます。

確定申告する際の注意点

事業と事業外を区分する必要がある

ここまで解説してきたとおり、「美容整形」を必要経費にすることができるケースはかなり限定的になります。また、必要経費にすることができる場合であっても、事業と事業外を明確に区分できなければ税務調査で指摘されることも十分考えられます。

 

例えば、美容タレントであっても必要経費とすることができるのは、広告宣伝に利用された部分だけです。明確に区分することは難しいですが、全身美容で顔の施術だけが紹介されたようなケースであれば、支出した総額から事業部分(顔の施術費用)を按分計算で求め、一部だけ必要経費とすることも考えなければなりません。

請求書や領収書等の資料は必ず用意する

美容整形にかかる支出に限らず、事業所得あるいは雑所得の必要経費として計上するためには、支出の内容を立証することが必要です。

 

美容整形であれば、施術の日付、施術を受けたクリニック、施術内容や支出した金額が記載された請求書等の証拠資料を用意しておく必要があります。施術内容がHPや雑誌等で紹介されているのであれば、紹介された内容を一緒に保存しておくのがよいでしょう。

 

また、施術費用を現金で支払った場合には、支出した金額を証明できるように領収書をもらい保存しておく必要があります。

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まとめ

職業上、止むを得ず行うものであっても、「美容整形」にかかる支出を必要経費とするにはかなりハードルが高いといえます。必要経費とする場合には、税務調査で否認されないよう理由や証拠資料の準備をしっかりしておくことが大切です。

奥谷佳子
Webライター/ライター
フリーランスとして様々な記事を執筆する傍ら、経理代行業なども行う。 自身のリアルな経験を活かし、税務ライターとして活動の場を広げ、実務で役立つ生きた税法の解説に努めている。 取材を通じて経営者や個人事業主と関わることも多く、経理や税務ほか、SNSを使った情報発信の悩みにも応えている。
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