亡くなった父親に「隠し子」がいた!
相続はどうなる?

亡くなった父親に「隠し子」がいた!  相続はどうなる?
公開日:
2020/04/08
 
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父親が亡くなったら、見ず知らずの女性が「隠し子」を連れて現れた――。家族関係が「複雑化」している今、そんなドラマのような出来事も、想定外とは言えなくなっています。問題になるのは、遺産分割。「愛人」や「隠し子」に、相続は認められるのでしょうか? 遺言書の効力は? 詳しくみていきましょう。

「隠し子」が相続人になるには、条件がある

ある税理士の先生から、次のような相続の事例を聞きました。資産家の高齢男性が亡くなり、相続に。妻はすでに亡くなっていたため、相続人はひとり息子のみ――のはずが、その息子さんのところに、突然、「以前から父親と懇意にしていた」という女性から連絡があり、父親には「隠し子」のいたことが判明したのでした。なおかつ、父親は、その女性の2人の「連れ子」と養子縁組までしていました。

 

男性は、遺言書を残さずに亡くなりました。この場合、「女性(愛人)」、「隠し子」、「養子」に相続権は認められるでしょうか?

 

まず、「愛人」について。それが、長年連れ添ってきた「内縁関係」「事実婚」であっても、原則として相続人にはなれません。反対に、たとえ仲が悪くて別居状態であったとしても、法律上の「配偶者」であれば、自動的に相続人として認められるのです。

 

一方、「養子」は、法律上「実子」と同じ扱い。ですから、当然、相続権を持つことになります。

 

問題は、「隠し子」、法的には「非嫡出子」(婚外子)の扱いです。結論を言えば、非嫡出子も、婚姻関係にある両親から生まれた「嫡出子」と同じく、相続人になることができます。ただし、それには条件があって、父親の「認知」が必要になるのです。母子関係は、母親の出産という事実で証明可能ですが、父子については、そうはいきません。そこで、父親が「この子は、確かに自分の子どもである」と認めて、法的な父子関係を結ぶわけです。これを「任意認知」と言います。認知すれば、その法的効力は出生時まで遡って認められることになります。

 

ただし、成人した子どもを認知する場合には、本人の承諾が必要になります。また、母親が承諾すれば、胎児を認知することも可能です。

 

他方、自分の子であるにもかかわらず、父親が認知を拒むこともあるでしょう。そんな場合には、家庭裁判所に「強制認知」の調停を申し立てることが認められています。さらに、この申し立ては、父親の死後であっても、3年以内なら行うことができます。DNA鑑定などにより父子関係が立証できれば、生前に認知を受けたのと同様の権利が認められることになるのです。

「嫡出子」と「非嫡出子」の法定相続分に差はない

最初の事例に戻ります。「隠し子」は、お父さんが生前に認知していましたから、立派な相続人でした。となると、相続人は、嫡出子の息子さんと、認知された子、養子2人の計4人ということになります。被相続人(亡くなった人)の遺言書はありませんでしたから、遺産は法定相続分に則って分けることになりました。

 

以前の民法では、非嫡出子の法定相続分は、嫡出子の1/2とされていましたが、2013年に最高裁で違憲判決が出たことから、「嫡出子と同等」に改められました。ですから、相続できるのは、それぞれ1/4ずつ。父親の財産を100%受け取れると考えていた息子さんの取り分は、25%まで激減する結果になったわけです。

 

このように、「婚外子の相続人」がいると、嫡出子側にとって不利な相続になります。ちなみに、配偶者(存命)との間に子どもがおらず、すでに両親も他界している男性が死亡した場合、相続人は「配偶者と男性の兄弟姉妹」になります。しかし、そこに「男性が認知していた婚外子」が割り込んできたら、どうなるか? 割り込むどころか、相続人は「配偶者と婚外子」になり、兄弟姉妹には1円の財産も渡らないことになるのです。

子の「認知」は、遺言書でもできる

このように、突然現れる「相続人」は、その存在を知らなかった親族にとって「招かれざる客」ですが、ここで視点を変えて「隠し子がいるお父さん」の立場になってみましょう。自分の子どもである以上、家の子たちと同様にかわいい。しかし、諸般の事情で、今認知することにはためらいがある。財産も多少は残してやりたいのだが、どうしたものか……。

 

そうしたときに有効なのが、遺言書なのです。実は、認知は遺言によって行うこともできます(「遺言認知」と言います)。この遺言認知の場合、効力は遺言者の死亡と同時に発生します。ですから、これがあれば、嫡出子と同様の法定相続人になることができるのです。認知の手続きは、遺言者の死後に遺言執行者(※1)が行うことになりますから、併せて遺言書で「指名」しておくのがいいでしょう(それがない場合には、相続人などが家庭裁判所に選任の申し立てを行うことになります)。

 

もちろん、遺言書には、「財産をこれだけ渡す」と書くこともできます。ちなみに、「愛人」「内縁の妻」にも、遺言書に明記すれば、最低限、他の相続人の遺留分(※2)を侵さない範囲で、財産を渡すことが可能です。

 

相続では、相続人の間のちょっとしたボタンの掛け違いから、「争続」になってしまうことが、珍しくありません。まして、隠し子というあからさまなトラブルのタネを抱えているわけですから、少なくとも被相続人の意思を示す遺言書の作成は、“マスト”と言えるのではないでしょうか。そのうえで、生前に、家族にできる範囲の話をしておくなど、争いを防ぐ手立てを講じるべきでしょう。

 

※1遺言執行者
財産目録の作成、相続財産の管理、遺言の執行に必要な一切の手続きを行う。相続人の1人がなったり、弁護士や司法書士など専門家に依頼したりすることができる。

 

※2遺留分
民法に定められた、相続人が最低限受け取れる遺産。

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まとめ

婚外子は、遺言書で「遺言認知」することができます。ただし、想定外の相続人が加わると、トラブルになりやすいのは、火を見るより明らか。未然に防ぐために、きちんとした遺言書を残す必要があります。不安を感じたら、相続に詳しい税理士などの専門家の力を借りるのも、1つの方法です。

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