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LGBTのカップルが頭に置きたい「相続」のこと

LGBTのカップルが頭に置きたい「相続」のこと

2020年7月7日

日本でも、LGBT(性的マイノリティ)の人たちへの社会的な認知が広がりつつあります。例えば、LGBTのカップルに対し、その関係が婚姻に相当すること認め、自治体が独自の証明書を発行する「同性パートナーシップ証明制度」を導入した自治体は全国で47に上り、人口カバー率は26%に達しています(2020年4月1日現在、「自治体にパートナーシップ制度を求める会」)。ただし、この制度も、残念ながら二人の法的な婚姻関係を担保するものではありません。そのことから生じるさまざまな「不都合」の中でも最たるものが、実は「相続」なのです。どういうことなのか、打つべき手はあるのか、解説します。

相手の「法定相続人」になれない

同性カップルの相続をめぐり、今年3月、次のような地裁の判決がありました。

同居生活を40年以上続け、急死した同性パートナーの火葬への立ち会いを拒否され、財産を相続できなかったのは違法だとして、大阪府の男性(71)が親族に財産引き渡しや700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は27日、請求を棄却した。

引用:同日付「時事ドットコム」

パートナーについて、「単なる居候だと認識していた」というのが、親族の主張。一方、男性は、「生前に財産贈与の合意があった」などとも主張しましたが、裁判所は認めませんでした。記事だけでは正確な事実関係はわかりませんが、仮に40年以上同性カップルとして苦楽を共にしてきた、という男性の言い分が正しいとすれば、これは同性同士の婚姻が認められないゆえの「悲劇」の典型と言えるでしょう。

 

法的な婚姻関係にあれば、一方が亡くなった場合、その配偶者は「法定相続人」となります。この法定相続人には「順位」があって、①被相続人(亡くなった人)の「子ども」→②子どもがいなければ「親」→③それもいなければ「兄弟姉妹」――というふうにスライドしていくのですが、いずれの場合でも配偶者は相続人なのです。

一般的に、被相続人の遺言書がなければ、法定相続人には「法定相続分」(例えば、相続人が「配偶者と子ども」ならば、両者で1/2ずつ)の財産を受け取る権利が認められます。遺言書があった場合でも、「遺留分」といって法定相続分の半分をもらう権利は侵害されません。

しかし、今の日本では、戸籍上の性別が同性の人同士の婚姻は認められていません。同性カップルの一方は、配偶者にも、そして法定相続人にもなることができないわけです。

「遺言書」を作成して遺産を譲る

それでは、同性カップルは、なすすべなく相続を迎えなくてはならないのでしょうか? 実は、相続でパートナーに財産を譲るのに有効な手段が、2つあります。

1つは、遺言書を残すことです。さきほど説明したように、法定相続分に従って遺産分割が行われるのは、「被相続人の遺言書がない場合」です。正式な遺言書に「誰にこれだけの財産を譲る」と書けば、法定相続人以外の人に遺産を渡すことが可能なのです(「遺贈」といいます)。

遺言書には、自分で手書きする「自筆証書遺言書」(手軽に作成できる)、公証役場で公証人に作成・保管してもらう「公正証書遺言書」(安全性が高い)などがあります。7月からは、作成した自筆の遺言書を法務局で保管してくれる制度(手軽さに安全性をプラス)もスタートしました。

付け加えておけば、遺言書に書けるのは、遺産の分け方だけではありません。例えば、
 

  • 遺言執行者(遺言書の内容を実現する人)
  • 祭祀主催者(葬式などについて主導的に決定する人)
  • 未成年後見人(小さな子どもの「親権者」)
  などを指定することもできるのです。もちろん、これらにパートナーを指名しておくことが可能。さきほどの判決の事例で、もし祭祀主催者を残された男性に指定する遺言書があれば、親族に火葬への立ち合いを拒否されるようなことはなかったはずです。

ただし、遺言書を書く場合には、注意すべきこともあります。これもさきほど述べたように、法定相続人には遺留分が認められています。親族との関係にもよりますが、無用な揉めごとを起こさないために、遺産分割のやり方は、初めからそれを念頭に置いたものにしておくのがベターと言えるでしょう。

「養子縁組」という方法もある

2つ目が、婚姻以外の方法で法的な関係を築く「養子縁組」です。二人のうちの年上のほう(これが条件です)が、パートナーを養子にすれば、法律上、実の親子と同じ扱いになります。

「親」が亡くなって相続になった場合には、「子」は、さきほど説明した①(第1順位)の法定相続人です。逆の場合には②になりますが、亡くなった人に子どもがいなければ、法定相続人ということになるわけです。くり返しになりますが、法律上、養子は実子と変わりません。他に被相続人の実の親族の相続人がいても、その権利は同等に認められます。

このように、法的に親子となることは、次のような経済的なデメリットを回避する上でも、効果があります。

相続税が問題になることも

遺言書で財産を譲ること自体は可能ですが、その場合には、相続税がネックになる可能性があることに、注意が必要です。

例えば、住んでいた自宅を譲り受けるとき、子どもなどの親族であれば、「被相続人と暮らしていた」といった要件を満たせば、その不動産評価額を8割減額できる「小規模宅地等の特例」が利用できます。しかし、同性カップルには、この特例は使えません。

多くの相続では、自宅の土地の価格が遺産に占める割合は高くなるもの。この特例を使ってそれを大幅に引き下げることで、相続税が非課税になったり、かかっても少額に押さえられたりすることが、珍しくないのです。適用できないことで遺産総額が膨らみ、その結果、高額の相続税の支払いが発生するかもしれません。

また、被相続人が掛けていた生命保険金を受け取る際にも、不利になります。親族であれば、保険金額から「500万円×法定相続人の数」が控除される(遺残総額から差し引かれる)のですが、それも適用されないのです。

このほか、もらい受けた不動産について、

  • 登記(名義変更)の際に、固定資産評価額の20/1000の登録免許税がかかる(法定相続人の場合は、4/1000)
  • 3%の不動産取得税がかかる(法定相続人はかからない)

などの経済的な負担が生じることも、知っておきましょう。

養子縁組によって「親子」になっていれば、相続の際には基本的に法定相続人ですから、お話ししたような不利益は生じないわけです。

事前の準備が大事になる

「スムーズな相続のためには、生前の準備が大事だ」と言われますが、同性カップルの場合は、さらにその重みが増します。

仮に養子縁組をしていた「親」が亡くなった場合、被相続人に他に子どもがいなければ、遺産の全額をパートナーが手にできます。しかし、もし親族が養子縁組の事実を知らなかったとしたら、彼らはどのような感情を抱くでしょうか? プライベートな事柄ではありますが、できれば周囲にきちんと話をし、理解を得ておくべきでしょう。

遺贈で財産を渡す場合には、ちゃんと要件を満たした遺言書を作成するのはもちろん、説明したような「お金」の問題を見越して、必要な現金を用意しておくことも必要になります。

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LGBTの方が相続をする方法があります【法定相続人】遺言書|3分でわかる税金

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まとめ

今の日本では、同性カップルには法的な婚姻関係は認められませんが、遺贈、養子縁組という方法で、遺産を渡すことができます。不明な点は、相続に詳しい税理士に相談してみることをお勧めします。実績のある税理士紹介会社を使えば、状況に合った税理士を選べるはずです。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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