新型コロナの打撃を和らげる「持続化給付金」 「申請の不備」で支給を遅らせないために | MONEYIZM
 

新型コロナの打撃を和らげる「持続化給付金」
「申請の不備」で支給を遅らせないために

新型コロナウイルス感染症対策として打ち出された、国の「持続化給付金」の支給が5月1日に開始されてから、3ヵ月余りがたちました。経済産業省によれば、8月3日までに約289万件の中小企業・個人事業主に、総額約3兆8,000億円が支給されています。およそ60%は申請から14日以内に支給されているということですが、中には受給要件を満たしながらも、申請書類などのミスで「待たされる」例が少なくないようです。支給側が注意を呼び掛ける「よくある不備」をまとめました。

今年12月までの「月間収入」が要件となる

「持続化給付金」は、新型コロナの「感染拡大による営業自粛等により特に大きな影響を受ける事業者に対して、事業の継続を支え、再起の糧としていただくため、事業全般に広く使える給付金」(経済産業省)です。

 

給付額は、中小企業が200万円、個人事業主は100万円が限度で、次の計算式で算出します。

 

S:給付額

A:企業=対象月(後述)の属する事業年度の直前の事業年度の年間売上(例えば3月決算の会社が2020年2月を対象月とした場合には、前の事業年度は18年4月~19年3月となる)
個人=2019年の年間売上

B:対象月の月間売上→「対象月」は、20年1月から12月までの間で、前年同月比で売上が50%以下となった月で、申請者が任意に選択できる

 

S=A-B×12

 

簡略化して言えば、まず、売上が前年と比べて50%以下になった月があったら、その売上を12倍します。その金額と前年度の年間売り上げとを比較して、マイナス分を限度額の範囲で給付してもらえる、という制度です。

6割には14日以内に支給されているが……

現在の給付実績は、次の通りです。

 

出典:経済産業省

 

また、納付済みの案件の「申請から給付までにかかった日数」(7月6日時点)は、14日以内が61%、約75万件となっているそうです。経産省は、ホームページで「申請に不備や疑惑がなければ、概ね2週間で振り込みを行います。」とアナウンスしています(※)。ということは、残りの39%の少なくない部分で、何らかの不備による遅れが生じている、と読めないこともありません。

 

持続化給付金申請の流れ、不備の現状について、同省は概要、次のように述べています。

 

  • 申請に必要な記載や提出資料の添付、さらに不備のあった場合の修正作業など、申請にかかる手続きは、すべて持続化給付金ホームページ上のマイページで行う。
  • 申請に不備があった場合や事務局側で審査・補正作業に時間を要した場合には、2週間程度経過した時点で、「入金までにしばらくお待ちいただきたい」旨をメール及びマイページで連絡。
  • メールでの対応では不備解消が困難と判断した場合には、サポート会場での個別対応により、サポートする。
  • 給付金を振り込んだ場合には、マイページ上での案内はなく、登録住所へ給付通知ハガキを送付

 

不備の内容については、

 

  • 昨年や対象月の売上額について、申請内容と証拠書類の記載内容が異なる
  • 申請された口座番号や口座名義に誤りがあり、送金ができない

 

などを挙げています。

 

※「主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者向け」の申請を利用した場合は、通常の事業収入での申請に比べ、入金までに時間がかかる。

さらに具体的に、「よくある不備」とは?

同省公表資料を基に「よくある不備」について、さらにみてみましょう。

◆添付書類全般についての不備

  • 添付ファイルにパスワードが設定されている
  • 画像がぼやけて情報が判読できない
  • 撮影時の角度により、必要な情報が撮影範囲から見切れている
  • 申請している法人とは別の法人等の書類が添付されている

◆確定申告書類などの不備

  • 確定申告書の第一表ではなく、消費税の確定申告書が添付されている
  • 該当する年度のものではない古い確定申告書が添付されている
  • 申請画面で入力した売上と、確定申告書に記載されている売上が異なる
  • 法人概況説明書1枚目に売上の記載がない
  • 法人概況説明書の2枚目に月別の売上の記載がない
  • 収受日付印がない
  • e-taxの受信通知がない

→なお、4~7については代替措置が設けられているので、申請要領(申請のガイダンス)確認のこと

◆売上台帳についての不備

  • 売上台帳の売上と、対象月の売上が一致しない
  • 売上台帳の月と、対象月が一致しない
  • 売上台帳ではなく、勤務日報、通帳の入金記録、請求書等を添付している
  • 今年の対象月の台帳ではなく、昨年の売上台帳を添付している
  • 添付された売上台帳の月が対象期間外(今年ではない、申請日よりも未来の月など)

◆銀行口座についての不備

  • 通帳の表紙、1-2ページ目以外のページが添付されている
  • 普通・当座以外の口座が登録されている
    (貯蓄預金、通知預金、定期預金、融資返済専用口座:カードローン通帳の口座は受け付けられない)
  • 通帳の金融機関コードと登録された金融機関コードが一致しない
    (金融機関コードは銀行コードと表示されている場合もある)
  • 通帳の支店コードと登録された支店コードが一致しない
    (支店コードは店舗コードと表示されている場合もある)
  • 通帳の口座番号と登録された口座番号が一致しない
    (口座番号は7桁の半角数値。7桁に満たない場合は、先頭に「0」を入力する)
  • 通帳の口座名義と、登録された口座名義が異なる。例えば、法人格を省略、屋号を追加する、使用不可能な文字が利用されている

など

「不備」を指摘されたら、慌てずに対処を

いかがでしょう? 誤った申告書の添付といった「致命的ミス」もあれば、うっかりミス、あるいは「そのくらいなら通してほしい」と思われるものもあるかもしれません。ただ、この給付金は、国のお金、すなわち国民の税金で賄われていることも、忘れてはならないでしょう。厳しい環境だからといって、「とにかく申請すればもらえる」というものではないのです。

 

冒頭で説明したように、この給付金は、今年12月までの単月の売上高の大幅な減少が、支給要件となっています。不幸にも、今後秋から年末にかけて業績が急速に悪化して、支給対象となるケースがあるかもしれません。そんな場合にも、ミスなくいち早く受給できるよう、述べてきたことを参考にしてほしいと思います。

 

不覚にも、申請の不備を指摘されてしまったら? その際も、慌てずに修正するようにしましょう。「却下」ではないのですから、半歩以上の前進と捉えるべきです。

 

不備があると、登録メールアドレスに、「修正依頼」のメールが届きます。「持続化給付金 申請マイページ」へアクセスしたのち、ログインし、その指示に従って作業を進めてください。

 

その際、注意点が1つ。「2020年5月13日以前」に最初の申請を行った人が、この修正申請を行う場合には、あらためて銀行口座の設定を行う必要があるのです。システム改修が行われたためなのですが、これを忘れると、「二度手間」になって、さらに支給が遅れる可能性大です。

 

まとめ

通常ならば、2週間で支給される持続化給付金も、申請にミスがあれば入金は遅れます。記事も参考にしながら、チェックを怠りなく。不明な点があったら、税理士などの専門家にアドバイスを頼みましょう。

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