知らないと損してるかも!? 一時所得とは – マネーイズム
 

知らないと損してるかも!? 一時所得とは

「一時所得」というと、会計上あまり馴染みのないものかもしれません。しかし確定申告を行う方々は勿論のこと、法人から個人への贈与等にもこれに該当するものがあるため、経営者の皆様にとっても決して他人事ではありません。一時所得についての正しい知識を持っておけば効率的な節税が可能となりますので、この機会に学んでおきましょう。

一時所得とは

概要

国税庁によれば、一時所得とは「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得」のことを指します。わかりやすく言えば、利益獲得のための行為を経ずに得られた臨時的・偶発的な所得のことです。

該当項目

一時所得に該当するものとして、以下の5つが挙げられます。

1.懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除く)
2.競馬や競輪の払戻金
3.生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除く)や損害保険の満期返戻金等
4.法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものは除く)
5.遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等

このなかでも多くの方に関わると思われるのが4. の「法人から贈与された金品」ですが、この項目については少々の補足を要します。法人から個人への贈与は、二者間の雇用関係の有無に応じて性格が異なります。すなわち、受贈者である個人が従業員ないし役員であれば、その所得は「給与所得」となり、雇用関係がなければ「一時所得」となります。この2つの違いはしっかりと認識をしておきましょう。

税額の計算方法

一時所得の金額は、次のように算出されます。

総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)

この算式における「収入を得るために支出した金額」については注意が必要です。ここではわかりやすい例として競馬を用いたいと思います。
Aさんが競馬で同じレースに5点、それぞれ5万円ずつ賭け、その内1点が的中して100万円払い戻されたと仮定します。この時Aさんが支払った金額は25万円ですから、「収入を得るために支出した金額」を25万円としたくなりますが、これは誤りです。100万円の払い戻しがあったのは5点のうち1点であり、その1点に支払ったのは5万円なので、「収入を得るために支出した金額」として計上されるのは5万円となります。
この競馬の例を用いて一時所得の金額を計算してみましょう。
Aさんの総収入金額は100万円です。収入を得るために支出した金額は上で述べたように5万円となります。そして特別控除額として50万円が引かれます。以上からAさんの一時所得の金額は、

100万円−5万円−50万円=45万円

となります。
ここで特別控除額についても補足しておきましょう。上記の競馬の例では「総収入金額−収入を得るために支出した金額」が95万円であったために特別控除額は最高の50万円となりました。しかし、減じる前の金額が50万円未満であった場合には、特別控除額はその金額と同額になります。つまり、一時所得が0円になるということです。
納める税額については、以上の方法によって算出された一時所得の金額の1/2を、給与所得などほかの所得の金額と合計して総所得金額を求めた後に計算します。ただし、懸賞金付き預貯金等の懸賞金や、一時払養老保険、一時払損害保険(保険期間が5年以内である、もしくは契約日から5年以内に解約したもの)等の差益については、20.315%の税率による源泉分離課税が適用されるので、確定申告をする必要はありません。

節税のポイント

一時所得は計算式からもわかるように、最高50万円の特別控除が認められる上に、最終的に1/2が所得として加算されるため、節税対策として利用することができます。今回は節税対策として利用できる2つの方法について紹介しようと思います。

1.法人からの贈与を活用する方法
法人から個人への贈与については、一時所得として加算されます。よってこの贈与をうまく繰り込むことができれば節税対策となります。しかし上述のように、二者間に雇用関係がある場合は一時所得ではなく給与所得として扱われます。また、贈与する法人側では、贈与分の支出は寄付金として処理されます。法人による一般の寄付金の損金算入には限度があるので、全体として節税へつなげるためには会社の財務状況等も含めた様々な観点からの考慮が必要です。

2. 生命保険等を活用する方法
生命保険等の満期ないし解約によって受け取る保険金は源泉徴収をされないため、受け取る方法によっては、節税対策としても有効です。保険金の受け取り方には、一時金と年金の2通りがあります。一時金として受け取る場合、保険金は一時所得として扱われ、年金として受け取る場合には雑収入となりますが、節税の観点から言えば、大多数のケースでは前者の一時金の方が有利になります。ただし、一時払養老保険等でこの方法を利用するためには、保険期間が5年以上である必要があり、契約途中の解約の場合であっても、その時点で5年以上が経過していなければなりません。すでに述べたように、5年以内の契約または解約により得られる保険金の差益には源泉分離課税が適用されるからです。また、保険料の負担者と保険料の受取人が異なると、その保険金には所得税ではなく、より税率の高い贈与税が課されます。以上2つの注意点は、十分に認識しておきましょう。

☆ヒント
このように、一時所得は他の所得と比較して税制上かなり有利なものであり、うまく活用することができれば大きな節税対策につながります。しかし条件や例外も多く、活用には複雑な制度を理解することが不可欠となります。ビスカスでは、こういった臨時の収入の取り扱いに関する知識を豊富に持った税理士を数多く紹介しています。ぜひこの機会にご検討ください。

まとめ

保険金の受け取りや法人からの贈与など、思わぬ臨時の収入に対しても当然納税はしなければなりません。しかしこの一時所得は税金の効率が良く、うまく活用すれば節税対策にはもってこいなのです。今回の記事を読んで正確な理解をすれば、この制度の恩恵を最大限享受することができるでしょう。

岡田桃子
東京大学卒。
卒業後は中央官庁に勤め、退官後ベンチャー企業に転職し、経理・法務などに携わる。
経理業務で得た知見や、中央官庁時代に得た法律や制度に関するナレッジを分かりやすく解説します。
「税務/会計」カテゴリの最新記事