通帳もATMも、もうすぐなくなる!? 「デジタル銀行」時代に考えるべきこととは? | MONEYIZM
 

通帳もATMも、もうすぐなくなる!?
「デジタル銀行」時代に考えるべきこととは?

みずほ銀行が、来年から預金通帳の発行・繰越を「有料化」する、と発表して話題になりました。同行は、同時に紙ではなくネットで管理する「電子口座」、「デジタル通帳」の提供をスタートさせます。こうした取り組みは、他の金融機関でも始まっており、近い将来、「通帳のない銀行口座が当たり前」の時代がやってくるかもしれません。ところで、こうした金融機関のデジタル化推進の背景には、何があるのでしょうか? 消費者にメリットはあるの? 気をつけたい点と合わせて、解説します。

ついに銀行も「紙からデジタル」へ

みずほ銀行の「新方針」は、2021年1月18日(月)から適用されます。この日以降に新規開設した口座(普通預金、定期預金のほか、当座預金、外貨預金なども対象)については、通帳の発行・繰越ごとに税込1,100円の手数料を取られることになります。ただし、その前日以前に開設した口座や、通帳の発行・繰越時に70歳以上の人については、従来通り無料で通帳がもらえます。

 

みずほは、同時に通帳を発行しない『みずほe-口座』を新設し、同口座では、紙の通帳の代わりに最大10年間分の取引明細をオンラインで確認できる『みずほダイレクト通帳』が利用できる、としています。

 

それにしても、タダだったものがいきなり1,100円になり、しかも繰越のたびにそれを負担せよというのは、かなり「乱暴」な振る舞いにも映るのではないでしょうか。実質的には、「70歳未満の人は、通帳を諦めてください」という宣言に聞こえます。

 

しかし、こうした動きは、なにもみずほに限ったことではありません。他の大手銀行でも、例えばデジタル通帳に移行すれば現金がもらえる、といったインセンティブでそれを誘導するなど、「通帳レス」を加速させているのです。

通帳の維持は、銀行の大きな負担に

背景にあるのは、ズバリ金融機関のコスト削減です。タダと言いましたが、通帳には1口座当たり年間200円の印紙税という税金がかかっていて、これを銀行が負担しているのをご存知でしょうか(信用金庫など中小金融機関の発行する通帳は、非課税)。

 

預金を集めれば、貸出や運用で大きな利益を上げられる時代には、そうした「サービス」にも意味があったのですが、今は違います。いくらお金を集めても使い道がないばかりではなく、銀行の負担にさえなっている、という現実があります。例えば、万が一金融機関が破綻しても、私たちが預けた預金は、1,000万円+利息分が保護されます(ペイオフ)。国などが出資する預金保険機構から保険金のかたちで補償されるのですが、金融機関には、預金額に応じて保険機構に保険料を支払う義務があるのです。

 

銀行の側からすれば、「お金を預けられても困る」状況の下で、通帳の製作コストや税金まで負担するのは勘弁してほしい、ということになるわけです。今のような経済環境(例えば「ゼロ金利」)がいつまで続くのかはわかりませんが、「通帳レス化」の流れはもはや止まらない、とみるべきでしょう。

ATMも重荷に

実は、「リストラ」の対象は、通帳だけではありませんでした。街中で普通に見かける銀行のATM(現金自動預け払い機)や支店自体が、徐々にではあるものの撤去・集約される方向にあるのです。理由は通帳と同じで、維持・管理に要する膨大なコストの削減です。

 

「いつでも現金がおろせる」ATMが削減されていくのは不安ですが、説明したような状況に置かれている銀行にとって、重荷を背負い続ける余力がなくなりつつあるのも事実。こちらも、やがては「珍しい」存在になる可能性が高いものとみられます。

 

そうした社会をカバーするのは、そもそも現金を使わない決済=キャッシュレス化の進展ということになるでしょう。ATMの削減がキャッシュレス化を加速させる、という側面も見逃せません。

「通帳レス」は消費者にとってもメリットあり。ただし注意点も

通帳に話を戻すと、紙のものがなくなりデジタル化されることには、私たちにもメリットがあります。

 

電子口座であれば、給料日や年金支給日に、銀行窓口やATMの前に行列する必要はありません。自宅のパソコンやスマホで残高照会や振り込み、ネット通販での買い物などもできるのです。また、通帳を盗まれたり紛失したり、といったリスクもなくなるでしょう。

 

半面、注意すべきこともあります。

 

1つは、ネット利用特有のセキュリティに気をつける必要があることです。最近も、「ドコモ口座」などの電子決済サービスを悪用した、預金の不正引出事件が起こりましたが、個人情報やパスワードなどが他人の手に渡れば、通帳と銀行印を盗まれたのと同じことになってしまいます。例えば、金融機関のサイトを開くパスワードに関して、氏名や生年月日などから類推されやすい並びを避ける、他にも使っているものは使用しない、といった防御策は、考えておくべきでしょう。

 

もう1つは、今のセキュリティの話の裏返しでもあるのですが、「預金の中身を知りたい人が、それを探せないリスク」に、対策を講じておく必要性です。具体的には、相続になったときに、家族が困らないようにしておかなくてはなりません。

 

被相続人(亡くなった人)が紙の通帳を残していれば、残高を調べたうえで、分け方を話し合うことができます。でも、銀行口座の情報が、すべて故人のパソコンやスマホの中だったらどうでしょう? パスワードで「安全に」ロックされていたら、親族であってもそれを解除するのは、容易なことではないのです。

 

そうした事態を避けるために、相続になったら、親族が速やかに電子口座を確認できるようにしておきましょう。生前、親族に預金の状況やパスワードを伝えておく、それをエンディングノートなどに書き記しておく、というのもいいのですが、最も確実なのは、遺言書に残しておくことです。公正証書遺言書であれば、公証役場で保管してくれますし、自筆の遺言書も法務局で預かってもらえる制度がスタートしましたから、安心です。

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まとめ

銀行の通帳がなくなる日が、すぐそこまで来ています。デジタル通帳の意味を理解し、便利に使いこなすようにしましょう。「相続対策」も忘れずに!

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