お酒の価格に影響か? 2020年10月から「酒税」が改定されます | MONEYIZM
 

お酒の価格に影響か?
2020年10月から「酒税」が改定されます

2018年に行われた酒税法改正により、今年10月から、ビールなどに課税される「酒税」の税率が変わるのをご存知でしょうか? ひとことで言えば、「ビール」と「日本酒」は減税に、一方で「第3のビール」、「ワイン」は増税になります。酒税の改定は、2026年まで段階的に行われ、今回はその第1弾。今後の流れも含めて、解説します。

ビール類、日本酒、ワインなどが対象に

「酒税」は、その名の通り、嗜好品である「酒類」にかけられる税金です。酒類の税法上の定義は、「アルコール分が1%以上含まれる飲料」。昨年10月の消費税率引き上げのとき、「みりんは酒税法上の酒類であるため軽減税率の対象にはならないが、アルコール分1%未満のみりん風調味料には、それが適用される」という話がされたのを、ご記憶の方もいらっしゃるはず。また、あくまでも「飲料」にかかる税金ですから、アルコール分1%以上であっても、除菌用の製品などには課税されません。
その酒税の課税数量と課税額の推移を示したのが、次のグラフです(財務省「酒税に関する資料」より)。

 

出典:財務省

 

税収は、平成6年(1994年)の2兆1,200万円をピークに、四半世紀にわたって右肩下がりなのが、一目瞭然です。人口減と酒類の消費低迷の「相乗効果」に加え、消費者がより税率の低い=価格が安い飲料、例えば第3のビールなどに流れたことも一因と言えるでしょう。今回の酒税法改正は、そうした中でいかに税収を確保するか、という当局の思惑が反映したものだと考えられます。

 

今回の税率改定は、2020年10月、23年10月、そして26年10月と、3段階で実行に移されます。また、増税になる飲料もあれば、減税になるものもあるのもポイントです。では、具体的にみていくことにしましょう。

 

酒税法は、酒類を次の4つに分類しています。

 

  • ①発泡性酒類・・・ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類
  • ②醸造酒類・・・・清酒(日本酒)、果実酒(ワインなど)、その他の醸造酒
  • ③蒸留酒類・・・・連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツ
  • ④混成酒類・・・・合成清酒、みりん、甘味果実酒、リキュール、粉末酒、雑酒

 

今回の酒税法改正で税率改定の対象になるのは、上の①発泡性酒類と②醸造酒類です。つまり焼酎やウイスキーなどに課税される税金は、従来と変わりません。また、発泡性酒類のうち、麦芽比率25%未満の「発泡酒」と「チューハイ」、「サワー」などの「非ビール系飲料」については、2026年10月まで、現在の税率が据え置かれます。

ビールは「減税」、新ジャンル(第3のビール)は「増税」

まず、①の発泡性酒類について。ここに含まれる飲料の定義は、おおむね次の通りです。

 

  • ビール・・・麦芽の使用量が50%以上のもの。ちなみに2018年3月以前は、麦芽比率2/3(67%)以上とされていました。
  • 発泡酒・・・麦芽比率が50%未満のものや、50%以上であってもビールに使える原料以外のものを使ったもの。
  • その他の発泡性酒類・・・新ジャンル(第3のビール)は、麦芽比率50%未満の発泡酒にスピリッツなどを加えたもの、または、糖類、ホップ、水及び麦芽以外のものを原料として発酵させたものなど。チューハイやサワーも、ここに分類されます。

 

2020年9月以前の段階で、それぞれに課税される酒税(350ml当たり)は、ビールが77円、発泡酒が46.99円、新ジャンルやチューハイなどは28円。この差が、商品価格にも大きく影響しています。

 

これがどう変わるのか? 2020年9月以前→20年10月→23年10月→26年10月の順にみていきます。

 

  • ビール:77円→70円→63.35円→54.25円
  • 発泡酒(麦芽比率25%未満):46.99円→46.99円→46.99円→54.25円
  • 新ジャンル:28円→37.8円→46.99円→54.25円

 

出典:財務省

 

ビールは段階的に減税。発泡酒は26年に増税。新ジャンルについては段階的に増税し、23年には発泡酒と「合流」。最終的(26年10月から)には、ビール系飲料のすべての税率が一本化される――ということになります。

 

また、チューハイやサワー、低アルコールのリキュール類などは、26年に増税となります。

 

  • チューハイなど:28円→28円→28円→35円

 

出典:財務省

 

日本酒は「減税」、ワインは「増税」

次に②の醸造酒類です。こちらは、1kl当たりで、次のようになります。

 

  • 日本酒:12万円→11万円→10万円→10万円
  • ワイン:8万円→9万円→10万円→10万円

 

出典:財務省

 

日本酒は段階的に減税、逆にワインは増税となり、23年10月に一本化されます。ちなみに、1kl当たり10万円というのは、350mlに換算すると35円になります。日本酒、ワインの酒税は、最終的にはビール類のおよそ65%、チューハイなどと同レベルに設定されるわけです。

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まとめ

2020年10月から26年まで、3年ごとに酒税が改められます。価格が高めだったり需要の減退が目立ったりするもの(ビール、日本酒)の税率が下がり、逆に比較的消費が堅調な飲料(新ジャンルのビール系飲料や、チューハイ、ワインなど)は増税に。結果的に、酒類ごとに細分化されていた税率が、スリム化されることになります。

 

いずれにしても、税率の見直しが商品価格に反映するのは、避けられないでしょう。低価格を売りにしていたアルコール飲料が、どの程度その優位性を保てるのか、注目されるところです。

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