住民税納付は“コンビニから自宅”に QRコードを使った納税が、2022年にもスタートか | MONEYIZM
 

住民税納付は“コンビニから自宅”に
QRコードを使った納税が、2022年にもスタートか

住民税や、不動産にかかる固定資産税、自動車税などの地方税は、自治体から届く納付書を持ってコンビニや銀行窓口に行き、現金で支払うというのが一般的です。しかし、将来的には、スマートフォンでQRコードを読み取ることで、自宅や職場などに居ながらキャッシュレスで完了できるようになりそうです。どんな未来が待っているのか、一方で問題は起こらないのか? 現状を解説します。

官民挙げた「地方税納付の電子化」に向けた動きが本格スタート

2020年9月1日付「日本経済新聞」電子版に、「QRコードで納税 決済アプリ対応、22年にも」という見出しの記事が掲載されました。

要点を挙げると、

 

  • 全国銀行協会(全銀協)が、すべての自治体の地方税納付書に印刷するQRコードの規格について、スマホ決済各社のサービスで利用できるようにするための検討を始めた。
  • 地方自治体の扱う住民税や固定資産税・都市計画税、自動車税が対象で、決済アプリを立ち上げ、QRコードを読み込むことで、納付額の把握と納税ができるようになる見通し。
  • 早ければ2022年に全国への導入を目指す方針で、全銀協と総務省が本格的な協議に入った。
  • 納税のために銀行やコンビニエンスストアに行く必要がなくなる。納税者の入金データは、自治体のシステムにすぐに反映され、紙による管理や確認作業は不要に。銀行や自治体の事務量は大幅に減る。

 

ということになります。

 

以上で明らかなように、この仕組みづくりを主導しているのは、納付に伴う事務量の多さに悩まされている金融機関です。同じ記事には、「(従来)全国の自動車税の約80%、固定資産税・都市計画税の約55%が店頭で納められていた。それぞれの約4割が銀行経由だ。銀行の場合、支店でまとめた納付書を事務センターに一括して集めたうえで、入金した額と納付書の内容を確認し、自治体ごとに集計して輸送するといった膨大な手間がかかっていた。」とあります。

 

ともあれ、家に居ながらにして納付できるのは、納税者にとっても朗報。全銀協の試算によれば、交通費や窓口での待ち時間などを金額に換算すると、納付書による税金や公共料金の支払いで、納税者の側には年間2,000億円以上のコストがかかっているそう。新型コロナウイルスの感染防止という観点からも、デジタル化には大きな意味があります。できるだけ早い実現を望みたいところです。

ポイントはQRコードの利用

ところで、このシステムのポイントは、決済にQRコードを使うことにあります。QRコードは、すでに一部のスマホ納税で使われているバーコードに比べ、「格納」できる情報量の多いのが特徴。そのため、1つの規格で多様な税金や高額の納税に対応することができるのです。

 

日経の記事によれば、まず銀行業界が現在普及を目指しているスマホ決済「Bank Pay」を使って21年度にも一部自治体で先行してサービスを開始し、順次「PayPay」、「LINE Pay」など他の決済事業者でも使えるようにする計画のようです。

 

ちなみに「Bank Pay」は、日本でのキャッシュレス化の推進を目的に設立された日本電子決済推進機構が、2019年10月31日に開始したサービスです。日本電子決済推進機構は、それに先立って「J-Debit」というキャッシュレスサービスをスタートさせていました。これは、銀行のキャッシュカードを使って、自分の口座から即時引き落としで支払いができる、いわゆる「デビットカード」決済ですが、「Bank Pay」には、その基盤が活用されます。カードをスマホのアプリに置き換えて、対応する口座から即時引き落としが可能になる、というイメージです。

進む納税のデジタル化

実は、19年10月1日から「地方税共通納税システム」が稼働し、法人住民税、個人住民税(特別徴収分)など一部の地方税については、電子納付が可能になりました。従来は、納付書の形式や納付の指定金融機関が自治体ごとに異なり、複数の窓口に出かけなくてはならないなどの煩わしさがありましたが、このシステムを導入すれば、複数の自治体に一括で納付することができるようになったのです。

 

ただし、地方税全体からみると、同システムの対象となっているのは、課税件数の1割以下にとどまります。本当の意味での利便性を実現するためには、やはりすべての税目のデジタル化が必須になるでしょう。

 

なお、全銀協をはじめとする金融業界団体は、19年8月に総務大臣あてに提出した「地方税の電子納付の推進等について」という要望書の中で、「個人による納付の効率化の観点から」次のような施策を提言しています。

 

  • 全国すべての地方公共団体に対し、マイナポータルの公金決済サービス上で、あらゆる税・公金の納付が可能となるよう、各地方公共団体等に対する幅広い支援をお願いしたい。
  • 電子納付へのシフトを促すため、電子納付を選択した納付者へのインセンティブの付与(例:税額控除、軽減税率の適用)について検討をお願いしたい。
  • 紙ベースの処理を減らす観点からは、窓口納付時における紙ベースの領収書を不要とできるよう、eLTAXやマイナポータルにおいて納税証明書を出力できることとする取組みをお願いしたい。

 

「マイナポータル」とは、マイナンバーカードの専用サイト、「eLTAX」は、さきほどの地方税共通納税システムのことです。特に税額控除などのインセンティブが導入されれば、電子納付が一気に進むかもしれません。

「預金不正引き出し問題」の影響は?

ところが、一方でこうした動きに水を差す事件も起こっています。「ドコモ口座」に端を発する、預金の不正引き出し問題です。

主な舞台となったゆうちょ銀行は、「ドコモ口座」や「PayPay」、「LINE Pay」など7社の電子決済サービスを通じた貯金の不正な引き出しが、9月22日時点で約380件、6,000万円に上っていることを明らかにしました。

 

この問題は、さきほど「地方税のQRコード決済を先行させる」と説明した「Bank Pay」にも波及しています。日本電子決済推進機構は9月14日、同サービスの新規口座登録受付の一時停止と一部金融機関の登録済み口座での決済サービスの停止を発表しました。

 

ただ、「Bank Pay」には、現状では送金機能や現金引き出し機能は付与されておらず、不正取引も認知されていない、としています。今回の措置は、今後、送金機能の追加などを進めていくに当たり、セキュリティレベルの一層の向上を図るためのものだそう。他の決済サービスも含め、そうした対応に遅れが生じれば、述べてきたようなデジタル化も「先送り」となる可能性は否定できないでしょう。

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まとめ

銀行業界と総務省が、地方税の電子納付の実現に向けた検討を開始しています。納税の利便性が高まることは、大歓迎。ただし、セキュリティに対する不安を一掃することが、本格的な普及に向けた課題になると思われます。

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