学校法人の税制上の優遇措置とは? 学校に寄附したときの法人税の取り扱い方法を紹介 | MONEYIZM
 

学校法人の税制上の優遇措置とは?
学校に寄附したときの法人税の取り扱い方法を紹介

学校が会社と違う組織であることは誰もが知っていますが、「学校法人」がどのような法人なのかを正確に理解している人は少ないかもしれません。この記事ではまず「学校法人」が受ける税制優遇措置について解説したうえで、中小企業などが学校に寄附したときの法人税の損金算入について解説します。

学校法人の税制上の優遇措置

学校法人とは私立学校の運営母体のことです。学校の公共性・公益性の観点から、学校法人にはさまざまな税制上の優遇措置があります。

学校法人とは

学校はすべて学校法人だと思ってしまいがちですが、実はそうではありません。「学校法人」を規定する法律は「私立学校法」であり、「学校法人」は「私立」学校の設置運営主体のための法人格にあたります。私立学校を設立するときには目的・名称・種類などの事項を定め、認可を受ける必要があります。私立学校は自主性が重んじられているため、国公立の学校よりも自由に運営することが可能です。

 

一方、国公立大学の法人格は「国立大学法人」です。国立大学法人は、税法上「公共法人」の枠組みに入るため、法人税を納める義務がありません。県立高校などは、地方自治体である県が設立しているので法人税は非課税です。

学校法人に対する法人税の優遇

私立学校を設立・運営する学校法人は、法律が定める範囲で「収益事業」を営むことができます。学校法人に対する法人税は、収益事業以外は非課税で、収益事業に課される税率は19%です。 これは普通法人に課される税率の23.2% よりも4.2%優遇 されています。つまり、学校法人の法人税は収益事業のみに課されることと税率が少ないことの二重に優遇されているのです。なお、企業などからテーマを受けて研究する「受託研究」で得た収入も法人税が非課税となります。

学校法人に対するその他の税制優遇

学校法人は法人税に加え、国税における所得税と登録免許税も非課税です。地方税では住民税・事業税・収益事業以外の事業所税・不動産取得税・固定資産税・特別土地保有税・目的外不動産を除く都市計画税が非課税となります。

学校に寄附したときの法人税の取り扱い

企業による学校への寄附は損金に算入することができます。私立学校に対する寄附には上限枠がありますが、国立・公立大学などに対する寄付は別枠で上限もありません。ここではそれぞれの寄附の損金算入について、制度も含めて解説します。

私立学校の場合

私立学校に対する寄附は、特定公益増進法人への寄附として一定の範囲内で損金に算入できます。

 

  • 特定公益増進法人制度
    特定公益増進法人制度は教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献など公益の増進に著しく寄与する法人に対して定められた制度です。特定公益財団法人には一定の基準を満たす独立行政法人などさまざまな種類があり、学校法人のうち一定の基準を満たすものは特定公益法人となります。なお、基準を満たす学校法人が自動的に特定公益増進法人になるわけではなく、文部科学大臣や都道府県知事に申請して証明を受ける必要があります。
  • 私立学校に対する寄附の損金算入
    特定公益増進法人として証明された私立学校に対して個人や企業が寄附した場合、所得税の控除を受けたり、法人税を算出するときに損金として算入したりすることができます。
    法人が特定公益増進法人に寄附したときの損金算入には限度額があり、通常の法人が寄附した場合の限度額は以下の式で算出されます。
    (資本金 × 0.375% + 所得 × 6.25% ) × 1/2

国立・公立大学などの場合

国立大学・公立大学・県立学校など、公的な教育機関に対する寄附は別の制度により全額が損金に算入できます。

 

  • 指定寄附金制度
    指定寄附金は、国宝の修復・オリンピックの開催・赤い羽根募金など、公益を目的とする事業を行う法人などに対する寄附金です。中小企業などの法人が指定寄附金を出した場合、全額を損金に算入できます。国立大学への寄附は指定寄附金に該当します。
  • 国立大学や・公立高校などに対する寄附の全額損金算入
    国立大学、つまり国立大学法人が行う教育研究などに対する寄附金は指定寄附金扱いとなり、全額を損金算入することができます。私立学校に対する寄附金であっても、教育研究に対する寄附金であれば指定寄附金なので全額損金算入可能です。公立高校は地方公共団体に対する寄附金なので、同様に全額を損金に算入できます。

学校に寄附したときの損金算入の確定申告手続き

制度自体は少々込み入った部分もありますが、学校に寄附したときに損金算入を受けるための手続きは簡単です。

 

  • 確認
    寄附をする前に、学校のホームページを見たり問い合わせたりして寄附の損金算入について確認します。寄附を損金として算入できない学校もあるので注意しましょう。
  • 寄附
    学校が定めたフォーマットに従って寄附します。
  • 領収書と証明書の受け取り
    寄附したときに発行される領収書と、損金算入するための特定公益増進法人の証明書などを受け取ります。
  • 確定申告
    確定申告書に領収書と証明書を添付して損金として計上します。

 

☆ヒント
企業が学校に寄附した場合の損金算入制度は、国公立大学や都道府県立高校など公的な教育機関に寄附した場合と、私立の大学や高校などの私立学校に寄附した場合とで別の仕組みが適用されるため複雑にみえるかもしれません。しかし、実際に寄附するときの手続きはどちらでも変わらず、重要なのは損金の扱いについて学校に問い合わせて確認することです。繰り返しになりますが、損金に算入できない学校もあるので注意しましょう。
学校への寄附は、損金算入だけでなく、企業の知名度を上げたり信頼度を増したりできるといったメリットもあります。企業が寄附を活用するときには経営戦略の一環として行う視点が重要です。寄附税制には他にも多くの種類があるので、経営戦略としての寄附の活用について、一度税理士などの専門家に相談してはいかがでしょうか。

受配者指定寄付金制度を使うと私立学校に対する寄付でも全額を損金算入できる

受配者指定寄付金制度とは

受配者指定寄附金制度とは、日本私立学校振興・共済事業団が運営する学校法人への寄附制度です。日本私立学校振興・共済事業団は私立学校の教育の充実や経営の安定などを目的として、補助金の交付・資金の貸付・寄附金事業などを営む機関です。

 

私立学校に直接寄付した場合、損金算入できる金額には上限があります。企業は受配者指定寄附金制度を使って寄附することで、寄附金の全額を損金として算入することが認められています。

受配者指定寄付金制度を使った寄附と損金算入の手続き

受配者指定寄附金制度を使った寄附と損金算入の手続きは、制度を使わずに寄附した場合の損金算入の手続きと大きくは変わりません。ポイントは以下の3つです。

 

  • 受配者指定寄附金制度を使って寄附するときも学校とやり取りする
  • 寄附する前に学校に受配者指定寄附金制度が使えるのか確認する
  • 寄附を終えたら日本私立学校振興・共済事業団が発行する寄附金受領書をもらう

 

寄附や受領書をもらう手続きは学校に対して行います。学校に指定の様式の書類を提出して寄附すると、学校が事業団との手続きを済ませて受領書を送付します。確定申告するときに日本私立学校振興・共済事業団が発行する寄附金受領書を添付すれば、全額を損金に算入できます。受配者指定寄附金制度が使えるのか、どのように使うのかについて、私立学校に確認してから寄附しましょう。

まとめ

この記事では学校法人の税制優遇措置と、法人が学校に寄附したときの損金算入制度について解説しました。学校法人は公益性が高い事業を行っているので、収益事業以外の事業は法人税が非課税となり、収益事業の税率も低く設定されています。また、法人が学校に寄附した金額は損金に算入することが認められています。私立学校に対する寄附の損金算入には限度額がありますが、受配者指定寄附金制度を使えば全額を損金算入可能です。企業イメージや知名度をアップさせるべく、学校への寄附を検討してみてはいかがでしょうか。

坂下慶太
東京大学卒。米国大学院に進学予定。 東証一部上場企業にて経理業務を担当。 経理業務で体得したスキルや知識を中心に解説していきます。
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