「経営事項審査」の評点アップのために 決算ですべきことを解説 – マネーイズム
 

「経営事項審査」の評点アップのために
決算ですべきことを解説

    公開日:
    2020/12/07
     
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    公共工事の入札に参加した経験のある建設業者の方であれば「経営事項審査」という制度をご存じかと思います。他業種にはない建設業独自の企業評価制度である「経営事項審査」とはどのような制度かを解説し、評価を上げるための決算スキームを併せて紹介します。

    公共工事受注の生命線「経営事項審査」とは何か

    「経営事項審査」の概要

    「経営事項審査」とは建設業者の事業規模や経営力、技術力などを数値化し評価する審査です。分かり易く例えるなら会社の「通知表」であるとイメージすればよいでしょう。

     

    国や地方公共団体が発注する公共工事には、特に高い正確性・安全性が求められます。万が一にも瑕疵による損害を出してはならないからです。また予算も多額の税金を投入するわけですから、施工業者が途中で倒産し税金が無駄になってしまうようなことがあってはなりません。

     

    したがって公共工事を受注する建設業者にはそれなりの「事業規模」「財務健全性」「技術力」などが求められるのです。国や地方公共団体が求める基準をクリアしているかを客観的に評価するために、建設業法第四条の2では「経営事項審査」の受審が定められています。公共工事に入札参加する建設業者はまず「経営事項審査」を受審し、客観的な評価を受けなければなりません。

    建設業者の格付けとは

    「経営事項審査」を受けた後は、公共工事に入札参加したい国や地方公共団体が実施する「入札参加資格審査」を受審します。「入札参加資格審査」でA~Dランクの「格付け」をされて初めて公共工事が受注できます。

     

    公共工事には工事毎に「Aランク以上」「Bランク以上」といった「格付け」条件が付されており、「格付け」条件に満たない建設業者は当該工事に入札できません。条件を満たした建設業者だけが参加し入札を行い、最も条件がよい施行金額を提示した建設業者が公共工事を落札し受注できます。

    「格付け」と「経営事項審査」の関係

    工事毎に「格付け」条件が付されているため、建設業者が大規模な公共工事を受注するためにはまず「格付け」でより高いランクを得る必要があります。

     

    「格付け」を決定する要素には

     

    • ①国や地方公共団体が独自に定める「主観的評価」
    • ②「経営事項審査の総合評定値」による「客観的評価」

     

    の2種類があります。

     

    ①②を合算した点数を「●●点以上はAランク」「●●点以上●●点未満はBランク」といった国や地方公共団体独自のテーブルに当てはめ「格付け」を決定していく流れになります。

     

    「主観的評価」と「客観的評価」を比較した場合、格付け点数に占める割合は「客観的評価」が大きいのが一般的です。したがって「格付け」で高いランクを得るためには「経営事項審査」で高い評定点を得る必要があるのです。

    評点アップは決算から!「経営事項審査」と決算の関係

    「経営事項審査」評点の構成要素

    「経営事項審査」では、建設業者を様々な角度から分析評価し、結果を数値化していきます。数値化された点数のことを「総合評定値=P点」と呼びます。P点を構成する要素として次の5つの評価があります。

     

    • X1 … 完成工事高による事業規模の判定
    • X2 … 自己資本と平均利益額による事業規模の判定
    • Y … 経営状況による財務健全性の判定
    • Z … 元請完成工事高と技術職員数による技術力の判定
    • W … 社会保険加入状況や保有重機数など、その他要因による判定

     

    さらに5つの要素を評価ウエイトに応じてP点に反映することで総合評価していきます。

     

     P点 = 0.25X1 + 0.15X2 + 0.2Y + 0.25Z + 0.15W

    決算の内容が大きく影響する「X2評点」「Y評点」

    5つの要素のうち、決算内容が大きく影響してくるのが「X2評点」と「Y評点」です。例えば「自己資本額」は企業の安定性、すなわち「倒産しにくい会社」を示す指標の1つであり、一般的に大きければ大きいほど金融機関や投資家からの評価が高くなります。経営事項審査においても、X2評点の評価項目の1つに「自己資本額」が設けられており、自己資本額が大きい会社ほど高い評点がつくようになっています。

     

    また「支払利息」の少ない企業についても、有利子負債(借入金など)が少なく自己資金で経営している健全企業であるとして高く評価されるのが一般的です。Y評点の評価項目の1つである「純支払利息比率」は「(支払利息-受取利息)/売上高」の計算式で表され、支払利息の少ない会社ほど高い点数がつくようになっています。

     

    このように「経営事項審査」ではX2評点、Y評点のいずれも、財務内容・決算内容が良いほど点数が高くなるように設定されています。

    評点をアップさせるための決算スキーム

    「X2評点」アップのためにすべきこと

    X2評点では企業が経常的に利益を計上し自己資本額を増加させているか、すなわち「企業の安定性」を評価します。具体的な評価項目は「自己資本額(又は平均自己資本額)」と「平均利益額」の2つです。

     

    • ①「自己資本額」は本来、毎期経常的に利益を積み重ね増加させていく項目ですが、点数アップの方法の1つに「増資」という選択肢があります。法人税等が増加する可能性があるなどのデメリットがありますが、短期間で自己資本額を充実させることができます。
    • ②「平均利益額」は営業利益に減価償却費を加えた「EBITDA(イービットディーエー)」という数値を当期と前期で平均したものです。「平均利益額」の評点アップのポイントは営業利益を増加させる、そのために「建設業法の範囲内で費用を営業外損益や特別損益に落す」ことです。
      例えば「販売費及び一般管理費」に含まれる退職金を、臨時的な費用として特別費用に振り替えるだけで営業利益をアップさせることが可能です。

    「Y評点」アップのためにすべきこと

    Y評点では企業の経営状況、すなわち「経営の健全性」を評価します。具体的な評価項目は全部で8項目と多岐に渡りますので、評点アップのポイントだけを列挙していきます。(計算式についてはリンクを参照してください)

     

    • ①有利子負債は早期に返済する
      支払利息は評点を大きく下げる要因となります。資金的な余裕があれば借入金は可能な限り早期に返済すべきです。当期中に返済する場合は決算間際より期首のできるだけ早い段階で返済し、支払利息を抑えるようにします。
    • ②売掛金の入金は早く
      建設業の場合、請負金額が大きいため完成工事未収入金や受取手形の残高が一時的に増加することがありますが、これは「営業キャッシュフロー」の評点を下げる要因となります。売掛債権は可能な限り早く回収するようにしましょう。
    • ③工事代金の前払いは積極的に受け入れる
      請負工事で工事代金の一部を前払いで受けられるケースがあります。未成工事受入金の増加は「営業キャッシュフロー」の評点を上げる要因となりますので、積極的に受け入れるようにしましょう。
    • ④費用は可能な限り「下で落とす」
      これは前述の「平均利益額」のアップでも解説しましたが、費用については建設業法の許す範囲内で営業外損益、特別損益で計上するようにします。特に、工事原価の勘定科目を特別損益まで落とすことができれば「売上総利益」「経常利益」の2つの指標を同時に増加させることができますので点数アップ効果が高まります。

    「X2評点」「Y評点」アップが「P評点」に及ぼす影響

    経営事項審査の総合評定値は次の算式で求められます。

    総合評定値(P点) = 0.25X1 + 0.15X2 + 0.2Y + 0.25Z + 0.15W

     

    例えばX2評点を20点、Y評点を40点アップさせた場合

     0.15 × 20点 + 0.2 × 40点 = 8点
      (x^2評点)      (Y評点)

     

    総合評定値(P点)は8点増加することになります。このように経営事項審査の総合評定値のアップは自身で予想計算することが可能です。目標とする「格付け」をクリアするためのステップを紹介します。

     

    • ①目標とする「格付け」の必要点数を調べる。
    • ②「主観的評価」の点数を計算する。(入札参加前に計算することが可能です)
    • ③①と②の差が「経営事項審査」で必要となる総合評定値です。
    • ④「経営事項審査」の点数計算をしてみる。
    • ⑤③と④の差が評定値アップ対策の目標値です。

    まとめ

    公共工事の受注が大きなウエイトを占めている建設業者にとって、目標の格付けが取れないことは会社の存続にもかかわる死活問題です。決算が終わってからでは点数アップ対策はとれませんので、目標値をクリアできるよう早い段階での点数予想をお勧めします。

    奥谷佳子
    Webライター/ライター フリーランスとして様々な記事を執筆する傍ら、経理代行業なども行う。 自身のリアルな経験を活かし、税務ライターとして活動の場を広げ、実務で役立つ生きた税法の解説に努めている。 取材を通じて経営者や個人事業主と関わることも多く、経理や税務ほか、SNSを使った情報発信の悩みにも応えている。
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