経営成績が悪くても倒産しない会社 ~赤字なのに倒産しない理由とは~ | MONEYIZM
 

経営成績が悪くても倒産しない会社
~赤字なのに倒産しない理由とは~

業績が悪い会社は、いずれ倒産する可能性が高いと考える人も多いでしょう。実際に、倒産する会社の多くは業績が悪い会社ですが、実は、赤字でも倒産していない会社は多くあります。

 

それは、赤字の原因や赤字の会社自体に、さまざまな種類があるからです。ここでは、会社が赤字なのに倒産しない理由について解説します。

会社が倒産する理由とは

会社が倒産する理由には、さまざまなものがあります。会社の倒産する理由を理解することで、なぜ赤字なのに倒産しない会社があるのかが見えてきます。

 

ここではまず、わが国の倒産の現況と会社が倒産する理由について見ていきましょう。

会社の倒産状況を見てみよう

中小企業庁では、中小企業の倒産状況をホームページで公開しています。それによると、中小企業の倒産件数は、2013年は1万855件、2014年は9,731件、2019年は8,383件と、減少傾向にあります。

 

ただし、ここ数年でみると、2017年は8,405件、2018年は8,235件、2019年は8,383件と8,000件程度で推移しており、大きくは減少しておらず、中小企業における現況は、依然として厳しいことがわかります。

会社が倒産する理由とは

次に、会社が倒産する理由について見ていきましょう。会社が倒産する理由には、倒産件数が多い順に、「販売不振」「既往のしわよせ」「放漫経営」「連鎖倒産」「その他」などがあります。販売不振は、売上高が減少し、倒産することです。既往のしわよせとは、長期的に業績が悪化しているにも関わらず、その対策をしていないために倒産してしまうこと、放漫経営とは、ずさんな管理体制や会社の私物化などによる倒産のことです。連鎖倒産は、取引先の倒産に巻き込まれて倒産することをいいます。中小企業では、これらの理由で会社が赤字に陥り、倒産することが多いです。

赤字にもさまざまな種類がある

中小企業では、販売不振などさまざまな理由で、会社が赤字に陥り、会社が倒産します。しかし、赤字であっても倒産しない会社も多くあります。それは、赤字にもさまざまな種類があるためです。

 

そこで、ここでは赤字の種類について見ていきましょう。

①営業損益が赤字

営業損益とは、本業のもうけを示す数値です。
売上高から売上原価を差し引いた利益を売上総利益(粗利益)といいます。営業損益は、売上総利益(粗利益)から、消耗品費や地代家賃、水道光熱費などの販売費や一般管理費を差し引いたものになります。営業損益が赤字ということは、本業自体が赤字ということです。そのため、すぐにでも経営改善を行わないと、倒産に陥る可能性があります。

②経常損益が赤字

経常損益とは、本業の経営成績を示す営業損益から、本業以外の収益や費用を差し引いた損益のことです。
例えば、本業以外の事業から出る雑多な収入や費用などが、営業外収入や営業外費用に該当します。そのほか、受取利息や支払利息も、営業外収入や営業外費用になります。

 

経常損益が赤字の場合には、本業が黒字だが本業以外の損失が大きかったり、本業も赤字でさらに本業以外の損失があったりする場合など、さまざまなケースがあります。

 

このうち、本業が黒字だが本業以外の損失が大きい場合は、本業以外の部分を切り捨てることなどで、来期以降、黒字化が可能です。一方、本業も本業以外の部分も赤字の場合は、会社を黒字化するのは相当難しく、倒産に至る可能性も大きくなります。

③当期純損益が赤字

経常損益から、その年だけに発生する特別な利益や損失を加減算したものが、(税引前)当期純損益です。
例えば、固定資産を売却した場合の売却益や売却損、災害による損失、前年以前の修正益や修正損などが、特別利益や特別損失に該当します。

 

当期純損益が赤字の場合も、経常利益は黒字だが特別な損失が大きかったり、経常利益も赤字でさらに特別の損失があったりする場合など、さまざまなケースがあります。

 

このうち、経常利益が黒字だが特別な損失が大きい場合は、特別な損失が今年だけのものであるならば、来期以降、黒字化が可能です。一方、経常損益も赤字の場合は、会社を黒字化するのは難しいケースもあり、倒産に至る可能性もあります。

会社が倒産しない理由とは

次に、会社が倒産しない理由について見ていきましょう。赤字であっても会社が倒産しない理由の主なものには、次のような理由があります。

赤字が一時的なものである

上述した通り、赤字にはさまざまな種類があります。本業が黒字であっても営業外費用や特別損失が大きいために、最終的な損益が赤字になっている会社も多いです。この場合では、一時的に損益が赤字になっているだけで、来期以降は黒字になる可能性が高いです。

 

このようなケースでは、赤字会社であっても倒産する可能性は低くなります。その会社を評価する場合は、最終的な損益だけでなく、営業損益や経常損益なども確認する必要があります。

会社が多くの現金や預金を所有している

本業である営業損益が赤字の会社でも、倒産せずに存続する会社も多くあります。それは、会社が多くの現金や預金を所有しているためです。会社が多くの現金や預金を所有しているため、多少の赤字が出ても持ちこたえられます。

 

では、赤字なのに、なぜ多くの現金や預金を所有しているのでしょうか。それは、次のような理由があります。

 

  • 金融機関から融資を受けたため
  • 今まで黒字が続いていたため
  • 経費と現金の支出がイコールではないため

 

例えば、赤字であっても金融機関から融資を受けたばかりの場合は、現金や預金が手元に多くあります。ただし、借入金は返済をしないといけないため、経営が改善しなければ、いずれ倒産する可能性もあります。

 

また、以前は黒字が出ていた場合も、その間に貯蓄した現金や預金が手元に残っている場合があります。この場合も、経営が改善しないと、いつかは資金が不足し倒産する可能性があります。

 

一方、経費と現金の支出がイコールではないため、現金や預金が手元に残っている場合は、前者とは少し意味合いが異なります。

 

例えば、前期以前に固定資産を購入していた場合です。固定資産は購入年度に、一度に経費にすることができません。購入年度から数年間にわたって、減価償却費として少しずつ経費にしていきます。つまり、購入年度より後の年度では、現金の支出のない経費となります。減価償却費や前払金のように、支払いを先に済ませて、後の事業年度で経費計上するものは、多くあります。

 

このように、現金の支出がない経費が多くて赤字になっている場合は、実際は社内に多くの現金や預金があり、健全に経営できていることもあるので、注意が必要です。

給付金などを受け取るために存在している

実は、会社の中には、事業することを目的としていない会社も少なからず存在します。例えば、登記上、設立はされているが、事業活動の実態がない会社であるペーパーカンパニーや給付金や補助金をもらうためにのみ存在している会社などです。これらの会社では、事業でもうけることを目的にはしていないため、赤字であろうとも会社を閉めることはしません。

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まとめ

黒字の会社よりも赤字の会社のほうが、倒産しやすいというのは事実です。しかし、黒字であっても後継者がいないため倒産する会社もあれば、赤字であっても、財務諸表をよく見れば、将来性のある会社であることも多いです。

 

投資やM&Aの対象として会社を評価する場合には、最終的な利益だけでなく、その会社のおかれた状況もしっかりと確認して、判断する必要があるでしょう。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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