会社を設立する前に知っておきたい、 役員報酬を用いた節税方法 – マネーイズム
 

会社を設立する前に知っておきたい、
役員報酬を用いた節税方法

    公開日:
    2018/02/26
    最終更新日:
    2019/03/25
     
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    会社を設立して役員に就任すれば自分の役員報酬を自由に設定できるため、節税方法に用いるのに有効です。しかし、その反面、会社の経費で落とすということは難しいようです。節税方法について正しい知識を身に着けることは必要不可欠です。今回は役員報酬について詳しく解説します。

    役員報酬を会社の経費で落とすのは難しい

    会社は役員や従業員に給料を支払います。しかし、従業員に対する給料は会社の経費で落とせるのに対して、役員の場合はそのハードルが高くなります。この役員に対する給料のことを役員報酬といいます。会社の経費で落とせる役員報酬の種類を中心に解説します。

    会社の経費で落とせる役員報酬は3種類だけ

    税法上、会社の経費で落とせる役員報酬は3種類だけに限られています。そのアウトラインを説明します。

    (1)定期同額給与

    一般的には役員に支給する月給のことを指します。定期同額給与の条件は次の通りです。

    ①支給期間が1カ月以内であること

    月給や半月に一度などの支給期間が1カ月以内である必要があります。たとえば、2〜3カ月に一度にまとめて支給する役員報酬は定期同額給与に当てはまりません。

    ②給料の額面金額または手取り金額が同額であること

    1回に支払われる「給料から天引きされる前の額面金額」または「天引きされた後の金額」が支給時期に同額であることが定期同額給与の条件です。そのため、役員報酬を会社の経費で落とすためには、額面金額や手取り金額を今月は30万円、来月は40万円など自由に変更することは認められません。

    ③給料の変更は期首から3カ月以内の一度だけ

    基本的に定期同額給与は毎年度の期首から3カ月以内に一度だけの変更が認められます。たとえば、上半期の終了時点で会社の利益が予測よりも大きいから役員の給料を自由に増額するなどということは認められません。

    ただし、例外として、取締役から代表取締役に昇格したり、客観的に業績悪化が明らかだったりする場合は役員の給料を変更することが認められます。

    (2)事前確定届出給与

    一般的には役員賞与のことを指します。次の条件を満たす事前確定届出給与に限り、会社の経費として認められます。

    ①次の内容を記載した届出書を税務署へ提出すること

    ・役員賞与を支給する役員の氏名
    ・役員賞与の金額
    ・役員賞与の支給日

    ②提出期限

    「既存の会社」または「これから設立する会社」によって提出期限が異なります。

    ・既存の会社
    決算日を過ぎて、定時株主総会の決議をした日から1カ月以内
    ※中小企業の場合、定時株主総会の決議をした日と確定申告書の作成日と同じ日になるケースが多いようです。

    ・これから設立する会社
    設立する日から2カ月以内

    ③届出書の記載通りに役員賞与を支給すること

    役員へ賞与を支給するとき、届出書に記載した金額や支給日と異なる場合は、役員賞与は会社の経費で落とせません。

    (3)業績連動給与

    有価証券報告書など客観的な業績をベースに計算する役員賞与のことを指します。その業績の計算方法は複雑であり、中小企業の節税対策には不向きといえます

    経費で落とせない役員報酬は役員と会社に二重課税される

    役員に給料や役員賞与を支給すれば所得税・住民税・社会保険料が課税されます。その支給した分が経費で落とせないと、会社の利益にプラスされて、法人税・住民税・事業税の課税対象となります。つまり、経費で落とせない役員報酬は役員と会社に二重課税されます。そのような事態を避けるために、役員報酬を確実に会社の経費で落とす必要があります。

    役員報酬の設定額で税率を下げる節税方法

    法人の税率は約30%ですが、役員個人に課税される所得税は所得に応じて税率が高くなる累進課税制度を採用しています。そのため、会社の利益と役員報酬の設定額によって、個人と会社の税率が大きく左右されます。

    まずは個人と会社の税率を知ろう

    役員個人に課税される所得税・住民税と法人に課税される法人税・住民税・事業税を把握することが役員報酬の設定額で税率を下げる第一歩です。それぞれの税率を見ていきましょう。

    (1)    役員個人に対する税率

    役員の年収と所得は比例するため、役員報酬の設定額によって個人の税率は決まります。まずは所得に対する税率を把握しましょう。ちなみに所得の計算式は次の通りです。

    ・役員報酬の設定額-給与所得控除額-所得控除=所得

     

    所得 所得税と住民税の合計税率
    195万円以下 15%
    195万円超~330万円以下 20%
    330万円超~695万円以下 30%
    695万円超~900万円以下 33%
    900万円超~1,800万円以下 43%
    1,800万円超~4,000万円以下 50%
    4,000万円 55%

     

    所得控除の金額は配偶者を扶養に入れているなど条件によって、同じ役員の年収でも所得や税率が違ってきます。そのため、上記の所得を参考に役員報酬の設定額については税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

     

    (2)    会社に対する税率

    基本的に約30%ですが、中小企業の場合は利益額によって法人の税率は多少違ってきます。税率の目安となる利益額を紹介します。

    会社の利益 備考
    400万円以下 最低税率が用いられる
    400万円超800万円以下 事業税率が上がる
    800万円超2,500万円以下 法人税率と事業税率が上がる
    2,500万円超 事業税が超過税率になって、最高税率が用いられる

     

    以上を踏まえて、会社の利益をコントロールすることが役員報酬の設定額により税率を下げる節税方法のポイントです。

    会社の利益を正確に予測することが税率を下げる節税方法のポイント

    役員へ支給する月給など定期同額給与は期首から3カ月以内に設定するのがルールです。そのため、事前に会社の利益を正確に予測する必要があります。たとえば、1,200万円の利益が出ると予測したとします。会社の利益を800万円以内にするためには、役員報酬を400万円に設定する必要があります。ところが、実際の利益は1,600万円と予測が外れた場合、会社の利益は1,200万円となり、節税に失敗します。

    事前確定届出給与を上手に活用しよう

    実際に会社の利益を正確に予測するのは難しいことです。そこで、会社の利益をコントロールできる事前確定届出給与を上手に活用する方法を解説します。

    たとえば、1,200万円の利益を見積もっても、実際の利益は800万円だったり1,600万円だったりというように見積りからは外れるとします。そのとき、役員への給料400万円を全額、定期同額給与にすると役員報酬の設定額は固定されます。しかし、400万円のうち300万円は定期同額給与、100万円は事前確定届出給与にすることで、会社の利益はコントロールしやすくなります。

     

    実際に利益を多く計上したときは100万円を支給し、反対のときは全く支給しないことができます。仮に事前確定届出給与を全く支給しなくても、会社の利益にプラスされる金額がないため、課税対象の金額と税金は0円です。

    役員報酬の設定方法で社会保険料を削減する方法

    役員報酬に課税される社会保険料率は約30%であり、個人と会社が15%ずつ折半で負担します。たとえば、年収400万円なら社会保険料は「400万円×30%=120万円」です。そのため、社会保険料を削減する工夫が大切となります。具体例を2つ紹介しましょう。

    社会保険料の負担率を下げる方法

    基本的に役員報酬の全額が社会保険料の課税対象ですが、税金と違って頭打ちの金額が存在します。その金額を超える役員報酬を設定することで、社会保険料の負担率は下げらます。そこで、定期同額給与と事前確定届出給与に分けて解説します。

    役員報酬の種類 頭打ちの金額 備考
    定期同額給与 ・健康保険は月額63万5,000円以上

    ・厚生年金は月額135万5,000円以上

    月給扱い
    事前確定届出給与
    (年3回以内の支給)
    ・健康保険は年間支給額573万円以上

    ・厚生年金は一カ月の支給額150万円以上

    賞与扱い

    年収が同額でも社会保険料を削減する方法

    事前確定届出給与は社会保険料率を掛けて計算するのに対し、定期同額給与は標準月額から算出します。そのため、定期同額給与に対する社会保険料の計算は厳密に行われるわけではありません。

    たとえば、定期同額給与が月額43万円とします。社会保険料は実際の支給額45万円に料率を掛けるのではなく、標準月額44万円をベースに計算します。

    ところが、定期同額給与を月額43万円から42万円に下げると、標準月額は41万円とワンランク下がります。社会保険料は標準月額41万円に料率を掛けて計算することになります。

    標準月額をワンランク下げて、その分を役員賞与に上乗せする方法を用いることが削減するポイントです。そこで、東京都の協会けんぽを例に年収360万円の場合における社会保険料の金額を比較しましょう。

     

    ①定期同額給与として毎月均等に30万円ずつ支給した場合(定期同額給与30万円に対する標準月額は30万円です)
    社会保険料の種類 月額 年額
    厚生年金 5万4,900円

    (30万円×18.3%)

    65万8,800円
    健康保険(介護保険を含む) 3万4,680円

    (30万円×11.56%)

    41万6,160円
    合計額 107万4,960円

     

    ②定期同額給与として毎月28万9,000円、事前確定届出給与として13万2,000円支給した場合(標準月額は28万円です)
    役員報酬の種類 社会保険料の種類 月額 年額
    定期同額給与 厚生年金 5万1,240円

    (28万円×18.3%)

    61万4,880円
    健康保険
    (介護保険を含む)
    3万2,368円

    (28万円×11.56%)

    38万8,416円
    事前確定届出給与 厚生年金 2万4,156円

    (13万2,000円×18.3%)

    健康保険(介護保険を含む) 1万5,180円

    (13万2,000円×11.56%)

    合計額 104万2,632円

     

    定期同額給与を月額1万1,000円(年間13万2,000円)減らして、同額(13万2,000円)を事前確定届出給与として支給することで、会社の個人の社会保険料は「107万4,960円-104万2,632円=3万2,328円」削減できます。

    まとめ

    役員報酬を用いた節税方法は個人の給料と会社の利益の適正なバランスを図ることが分かります。そのため、役員報酬をいくらに設定するのかが大切となってきます。また、会社が社会保険に加入する以上、社会保険料の負担額を無視するわけにはいきません。自分の会社の実情に合った役員報酬の適正額を設定しましょう。

    阿部正仁
    TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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