消費税軽減税率対策補助金の申請期間が延長に! 概要をおさらい | MONEYIZM
 

消費税軽減税率対策補助金の申請期間が延長に!
概要をおさらい

2019年10月1日、消費税増税と消費税軽減税率制度の実施が始まります。そんな中、消費税軽減税率の対策補助金の申請期限が2019年12月16日まで延長されたことをご存知でしょうか?今回は、消費税軽減税率制度とこれに伴う対策補助金の概要をおさらいします。

消費税軽減税率制度とは?

概要

2016年11月の税制改革により、消費税率の10%への引上げが2018年4月から2019年10月に延期されました。この引き上げに合わせて、低所得者への配慮から一部の商品については消費税率を8%に据置く「消費税軽減税率制度」の実施が予定されています。

軽減税率制度下では2種類の税率が併存するために、請求書の方式、商品の値付け、税額控除等について、事業者側の負担となる様々な変更が生じます。そのため中小企業庁は、対応レジの導入や新システムの調整を行う事業者を対象に、その経費の一部を補助する「中小企業・小規模事業者等消費税軽減税率対策補助金」(以下では補助金と呼びます)の申請を受け付けています。

対象品目

消費税率8%に据え置きされるものは、お酒や外食サービスを除いた飲食料品と、週2回以上発行される新聞の定期購読料です。なお、持帰りを前提とする食料品と有料老人ホーム等で提供される出張料理は外食サービスには該当せず、軽減税率の対象となります。また、対象商品と対象外商品が一体となった食料品については、1万円以下かつ3分の2以上が対象商品で占められた場合に、その商品は対象品目とみなされます。

対応が必要な事業者

軽減税率制度の影響は、飲食事業者等のみならず全事業者へ及びます。軽減税率の対象となる商品を扱わない事業者であっても、経理を軽減税率と標準(10%)税率に区別して行わなければなりません。その他にも、贈答品や接客に用いる食料品には軽減税率が適用されますし、取引先などから新方式に則った請求書を要求される可能性もあります。したがって、あらゆる事業者が多かれ少なかれ新制度への対応を余儀なくされることとなります。

そして食料品や新聞を扱う事業者は、これらに加えて複数の税率に対応したレジの導入や、新制度に適応できるシステム、領収書等の準備も必須となります。

必要となる対応策

全事業者に当てはまることとして、軽減税率制度についての情報収集、新たに発生する仕事の確認、システム等の調整、従業員への認知を始めとする社内体制の見直し等が挙げられます。軽減税率の対象商品を販売する事業者の場合は更に、特軽減税率制度下はでいくつかのステップが増えることになります。こちらについて以下、値付け、販売、支払い・申告の順序で確認していきます。

値付け

適用税率や原価を考慮した値段に設定します。そのため仕入れ時には、品目の税率が正しいか確認する必要があります。仕入れた商品の適用税率が不明な場合は、仕入れ先に問合せて軽減税率の対象商品と判明した品目について、請求書や納品書に自分で印をつけることが認められます。そして納品書に基づき、標準税率と軽減税率を区別して帳簿に記帳します。

販売

適用税率を把握して正しく表示する必要があります。この時、請求書や領収書には、軽減税率の対象商品には印をつけるなどして明確に区別し、税率の種類毎に合計した額を記載します。帳簿にも標準税率と軽減税率を区別して記帳を行います。

支払・申告など

請求書や納品書に各品目の適用税率について誤りが無いか確認します。申告の際も、帳簿に則り適用税率毎に区分して税額を計算することになります。

仕入税額控除について

上記に補足して、免税事業者からの仕入税額控除については、2019年10月から2023年9月末日までに限り現行と同様の適用がなされます。税額計算の方式は、2023年10月以降に「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が導入されます。なお、2019年10月より2023年10月までは区分記載請求書等保存方式と呼称されますが、基本的には現行通りの手続きとなっています。

補助金制度の内容

制度の変更に伴う負担を軽減するための補助金として、軽減税率対応のレジの導入を補助するA型と、受発注システムの改修を補助するB型の2種類が用意されています。

A型(複数税率対応レジの導入等支援)

A型の補助金は、複数の税率に対応できるレジを新しく導入するか、既存のレジを複数の税率に対応できるように改修した場合に申請することができます。A型の補助金は、新しいレジを導入するのか既存のレジの改修か、またネットワークに接続してデータを一元管理するPOS機能の有無に応じて、以下の4つに区分されます。

 

・A-1型(POS機能の無いレジの導入)

・A-2型(POS機能の無いレジの改修)

・A-3型(モバイルPOSレジシステムの導入)

・A-4型(POS機能のあるレジの導入、改修)

 

日頃からレジを使用する中小企業・小規模事業者を対象に、導入、改修、設置、設定その他にかかった費用の原則3分2を(ただしタブレット等の汎用端末は2分の1まで)を、レジ1台あたり20万円の上限額まで補填します。なお設置方法や台数により補助の内容も変わります。

B型(受発注システムの改修等支援)

B型の補助金は、電子的受発注システム(EDI、EOS等)を利用している事業者が、複数の税率に対応するための調整、機能変更、入替を行う場合に申請することができます。既に電子的受発注システムを利用している事業者のみを対象として、次の2つの区分があります。

 

・B-1型(システム改修、入替の外部発注)

・B-2型(事業者自らのシステム改修、入替)

 

原則として費用の3分の2が補填されますが、使用しているシステムの種類により補助の上限額が異なる点に注意が必要です。

補助金の申請期限と手続きの流れ

「所得税法等の一部を改正する法律」の成立日2016年3月29日から2019年9月30日までの間に行った導入・改修に要した、すでに支払の完了した諸費用であることを前提条件として、補助金申請の受付期間は2016年4月から2019年12月16日(消印有効)となっています。申請書類と証明となる書類を、軽減税率対策補助金事務局まで郵送で提出します。ただし、以下のように型毎にも気をつけるべき点が存在します。

A型

A型については、2019年9月末日までに新制度への対応が終了して支払いを完了した上で、受付期間内に申請します。この際、販売店、メーカー、ベンダー等の代理人による申請が認められており、特にA-4型の場合は代理人による申請が必須となります。

B型

対してB型については、B-1型ならば契約や作業に着手する前に2019年6月28日までに申請し、2019年9月末日までに完了してから、受付期間内に完了報告を行います。本制度において、このB-1型のみ事前申請が必要となりますので注意が必要です。B-2型は上記のA型と同じく、2019年9月末日までに対応を終了させた後、受付期間内に申請します。

B-1型では、専門知識が無い事業者に代わりシステムベンダー等が補助金を申請することが認められています。この場合、申請書を両者が共同で作成した後、申請と完了報告をシステムベンダー等代理人が行うことになります。

グレーゾーンの具体例

補助の対象であるか否かの判断は時として付きにくくなります。以下は代表的な具体例ですが、その他の不明点が生じた際は、補助金事務局に直接問合わせるか税理士等に尋ねてみるとよいでしょう。

 

●個人事業主や組合は対象になるか

個人事業主も補助の対象となります。組合の場合は、特別法に基づき設立されたもので、組合員の3分の2以上が中小企業であれば対象となります。ただし法人格を持たない組合であっても、事業として継続的に食品を販売しており、組合員の3分の2以上が中小企業であれば対象となりえます。

●新規に開業する場合は対象になるか

開業後に、レジ等を使用し軽減税率の対象商品を販売し、かつ、将来的にこれが継続されるために新制度への対応が必要となる事業者である場合、補助の対象となります。

●現在は扱わないが、将来的に軽減税率の対象商品を扱う場合は対象になるか

予定や計画のみで事実確認が取れない場合は対象外となります。

他の税制措置や融資制度

軽減税率制度の実施に際して中小事業者が活用できる制度として、補助金の他にも以下のものが挙げられます。各制度の詳細は中小企業庁Webサイトをご覧ください。

 

・少額減価償却資産の損金算入の特例

・商業・サービス業・農林水産業活性化税制

・中小企業投資促進税制

・中小企業経営強化税制

・固定資産税の特例

 

☆ヒント
消費税が8%と10%が混在することによって管理が煩雑になってしまいます。まずは専門家に相談してみてはいかがでしょうか。その際に税理士は、税務上の様々な悩みを聞いてくれる良きパートナーとなってくれます。ビスカスでは経験豊富な税理士を多数紹介しておりますので、是非この機会にご利用をご検討ください。

まとめ

2019年10月の消費税率引き上げに伴う軽減税率制度の実施によって、2つの税率が同時に運用されるため、すべての事業者は様々な対応を取る必要に迫られます。今回ご紹介した消費税軽減税率対策補助金の制度は、特に影響を被ることになる中小企業と個人事業主を対象に一部費用を補助してくれますので、対象となる事業者の方は積極的に活用していくとよいでしょう。

岡田桃子
東京大学卒。
卒業後は中央官庁に勤め、退官後ベンチャー企業に転職し、経理・法務などに携わる。
経理業務で得た知見や、中央官庁時代に得た法律や制度に関するナレッジを分かりやすく解説します。
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