個人事業主が法人成り?
役員報酬の活用で税金を下げる方法
個人事業主が法人成り?  役員報酬の活用で税金を下げる方法
最終更新日:
2018/12/11
 
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個人事業主が法人成りをし、税金を下げるためには役員報酬の活用が欠かせません。しかし、法人成りをする前に役員報酬にまつわる税金の基礎知識を知らないと二重課税を招くリスクが潜んでいます。そこで、役員報酬を活用した税金対策について徹底解説します。

役員報酬で税金を下げる方法

個人事業主が法人成りをし、役員報酬の活用で税金を下げるポイントと注意点について説明します。

所得分散で適用税率を下げる

個人事業主は事業所得などの所得金額に比例して所得税率(5%~45%までの7段階)が高くなります。そのため、もうかるほど税金の負担率が高くなってしまいます。

 

しかし、法人成りをすることで、所得金額を個人事業主の事業所得などに相当する会社の分と代表者個人に支給する役員報酬とに分散し、法人と個人の所得金額と適用税率をコントロールすることが可能です。

 

たとえば、所得金額が1,500万円とします。個人事業主の場合、1,500万円に対する所得税率33%が適用されます。一方法人成りをして、所得金額を法人に800万円、代表者個人に役員報酬700万円を支給すれば、適用税率は次のようになります。

  • 会社:法人税率23.2%(中小企業は軽減税率19%)
  • 代表者個人:所得税率20%(役員報酬から給与所得控除額190万円を差し引いた所得金額590万円に対する税率)

社会保険料の負担を加味する

法人成りをすれば、たとえ事業主(代表者)1人でも社会保険は強制加入です。個人事業主のように従業員の人数が常時5人以上や特定の業種に加入条件が限定されるわけではありません。

社会保険に加入すれば代表者はもちろん、従業員の社会保険料も法人負担になります。社会保険料率約30%であり、法人負担額は半分の約15%です。

役員報酬の損金算入が税金を下げる条件

役員報酬の金額は代表者が自由にコントロールできるため、損金算入(個人事業主の必要経費)に制限が設けられています。後述する損金算入の要件をクリアしないと損金不算入となり、余分な税金を負担することになってしまいます。

役員報酬が損金不算入となった場合のリスク

役員報酬が損金不算入となった場合は役員賞与として、法人に対する法人税と代表者個人に対する所得税が二重課税されます。仮に中小企業の代表者個人の年収700万円のうち、役員賞与として100万円が損金不算入の場合、次のように課税されます。

  • 法人税:100万円×19%=19万円
  • 所得税:100万円×20%=20万円

役員報酬を損金算入する3つの方法

法人税法上、損金算入できる役員報酬は3種類存在し、それぞれに該当する支給方法を採用することがポイントになります。

定期同額給与で月額給与を損金算入

代表者個人に対する月額給与を損金算入するためには、定期同額給与に該当することが必要不可欠です。定期同額給与とは、次の全ての要件を満たす役員報酬のことをいいます。

  • 支給時期が1ヵ月以内のスパンの定期給与
  • 支給額または手取り金額が同額
  • 支給額などの改定(変更)は後述する臨時改定事由または業績悪化改定事由の要件を満たす
  • 代表者個人の保険料など経費を法人が負担する経済的利益が毎月おおむね一定額

事前確定届出給与で役員賞与を損金算入

役員賞与を現金支給し、事前確定届出給与として損金算入するメリットは、利益調整がしやすい点です。たとえば、法人が今期の利益を1,000万円と予測し、事前確定届出給与を200万円に設定したとします。仮に法人の利益が1,200万円など予測より上回った場合には役員賞与を支給し、利益が500万円など予測より下回った場合には全く支給しないことも可能です。

このように利益調整がしやすいこともあり、現金支給の役員賞与を損金算入するためには次のすべての要件を満たす必要があります。

  • 設立年度は事前確定届出給与に関する届出を設立日から2ヵ月以内に提出する
  • 2期目以降は事前確定届出給与に関する届出を株主総会の決議の日(通常の決算日の翌日から2ヵ月以内)から1ヵ月以内に税務署へ提出する
  • 事前確定届出給与対象者に対し、実際の役員賞与の支給状況が届出書に記載されている支給時期(年月日)および支給額と一致している
  • 役員賞与の支給額など事前確定届出給与に関する定めを変更する場合は臨時改定事由または業績悪化改定事由の要件を満たした日から1ヵ月以内に届出書を提出する

ただし、オーナー企業などに該当しない非同族会社の場合、定期給与を支給しない役員に対する現金支給の役員賞与について、事前確定届出給与に関する届出の提出は必要ありません。

業績連動給与で役員へのインセンティブ付与を損金算入

業績連動給与は上場企業およびその子会社の業務執行役員に対するインセンティブを付与した場合、損金算入が認められる制度です。損金算入限度額は有価証券報告書や株式の市場価格の指標をベースに算定します。

役員報酬の決め方について解説

法人税法上、役員報酬の決め方も損金算入の要件になります。そこで、さまざまな規定について解説します。

月額給与の変更は年1回が原則

法人の事業年度が12ヵ月(決算日が年1回)の場合、期首から3ヵ月以内に年1回のみ定期同額給与を改定できるのが原則です。そのため、期首から3ヵ月経過後に月額給与の増額や減額をした場合、変更前の金額との差額分は損金不算入です。

例1)期首から6ヵ月経過後に月額給与を50万円から70万円に増額した場合
  • 損金不算入額:月額給与の増額分20万円×残り6ヵ月=120万円
例2)定時株主総会後に支給した月から5ヵ月経過後に月額給与を50万円から40万円に減額した場合
  • 損金不算入額:月額給与の減額分10万円×減額前の事業年度の月数5ヵ月=50万円

役員報酬が期の途中で変更できる特例を解説

役員報酬は前述した臨時改定事由または業績悪化改定事由に該当する場合、次の特例が認められています。

  • 定期同額給与:期首から3ヵ月経過後の改定ができる
  • 事前確定届出給与:届出書の提出後に役員賞与の支給額などの変更ができる

そこで、臨時改定事由と業績悪化改定事由の要件について解説します。

(1) 臨時改定事由

次に該当する場合、役員報酬の増額や減額の特例が認められています。

  • 役員の職制上の地位変更:取締役から代表取締役に昇格した場合など
  • 役員の職務内容の重大な変更:社長が任期途中で退任したことに伴い副社長が社長に就任する場合など

 

(2) 業績悪化改定事由

次に該当する場合、業績悪化の要件を満たして、役員報酬の減額の特例が認められています。

  • 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員報酬を減額せざるを得ない場合
  • 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュール(返済猶予)の協議において、役員報酬を減額せざるを得ない場合
  • 業績や財務状況または資金繰りが悪化したため、取引先など利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営改善の計画書に役員報酬の減額が盛り込まれた場合

 

減額、増額に分けて変更できる特例について説明します。

役員報酬は適正額の範囲内で設定する

役員報酬の支給額が適正額を超える場合、たとえ定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与に該当しても、不相当に高額な金額の部分として損金不算入になります。

適正額の算定方法は実質基準と形式基準の2つがあり、損金算入のためには両方の要件を満たす必要があります。

(1)実質基準

次の項目を加味し、適正額を算定する方法です。

  • 役員の職責内容
  • 使用人(従業員)に対する支給状況との比較
  • 事業規模が同等の同業他社の役員との比較

 

(2)形式基準

定款や株主総会議事録に記載されている役員報酬の支給限度額を適正額とするのが形式基準です。

まとめ

個人事業主が法人成りをし、節税するためには役員報酬を確実に損金算入することが必須です。しかし、役員報酬の支給方法や設定額を間違えると、損金不算入となってしまいます。そのため、法人成りを検討する場合には、法人税法の役員報酬についての基礎知識を身に付けることをおすすめします。

阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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