”法人の相続”とは
経営者の相続と法人の関係について徹底解説
”法人の相続”とは  経営者の相続と法人の関係について徹底解説

2019/1/11

 
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会社の経営者にとって、日々の経営とともに気になるのが、経営者の相続や、会社を後継者に引き継ぐことです。それらは、普段から対策をする必要がありますが、そもそも相続や会社の引き継ぎとはどのようなものか、わからないという人も少なくないでしょう。ここでは、経営者の相続と法人の関係について徹底解説します。

相続税と法人の関係とは

相続税の基本的な考え方

相続と法人の関係について見ていく前に、まずは、相続の基本的な考え方を見ていきましょう。相続とは簡単にいうと、財産を所有している個人が亡くなったときに、その財産を親族等に引き継ぐことをいいます。

 

民法では、本来、相続人になれる人はどのような人で、その中で誰がどの順番で財産を引き継ぐことができるのかが規定されています。例えば、民法で規定されている相続人になれる人(法定相続人)は、基本、親族です。具体的には配偶者や子は父母・祖父母、兄弟姉妹などになります。

 

しかし、実は第三者でも財産を引き継ぐことができます。相続は被相続人(亡くなった人)の意志が尊重され、遺言書でどの財産をどの人(第三者を含む)に引き継ぐかの記載があれば、民法の規定にかかわらず、第三者でも遺産を引き継ぐことができます。

 

会社の経営者の場合で考えてみると、経営者が亡くなった場合、所有している財産を後継者や親族に引き継ぐことが「相続」です。

”会社の相続”の基本的な考え方

では、経営者が亡くなった場合、経営している会社はどう相続されるのでしょうか。中小企業では、株主と経営者が同じ場合も多くあります。そのため、会社の持っている資産などの財産は、経営者が所有していると考えがちですが、そうではありません。会社の財産はあくまで会社が所有しています。そのため、経営者が亡くなったからといって、親族に会社の財産が引き継がれることはありません。

 

経営者が所有しているのは、あくまで会社の株式です。そのため、相続では会社の株式を後継者に引き継ぐことになります。ここで注意したいのが、会社と経営者の個人的なやりとりがあった場合です。具体的には、個人から会社への貸付や、逆に会社からの借入金などがあったケースを指します。個人から会社への貸付は相続財産になりますし、会社からの借入金があった場合は負債になります。

会社の株の相続税評価方法

経営者が亡くなった場合は、会社の株式を後継者に引き継ぎます。そこで重要なのが、引き継ぐ株式がどれだけの価値になるのかということです。株の評価方法には、上場会社とそれ以外の会社で評価の方法がことなります。それぞれの評価方法を見ていきましょう。

上場株式等の評価方法

株式には取引市場があり、公にその価値が分かるものがあります。金融商品取引所に上場されている株式を「上場株式」、日本証券業協会の登録銘柄や店頭管理銘柄、公開途上にある株式のことを「気配相場等のある株式」といいます。上場株式も気配相場等のある株式も、評価方法はほとんど同じです。証券取引所などで実際に取引が行われているため、その金額を用いて評価し、原則、その株式が上場している金融商品取引所が公表する価格を使います。使う価格は、被相続人の死亡の日の最終価格です。

 

ただし、被相続人の死亡の日の属する月、前月、前々月それぞれの月で、毎日の終値の平均値を計算した結果、被相続人の死亡の日の最終価格より低い価格になる場合は、その低い価格が評価額となります。

 

例えば、被相続人の死亡の日の最終価格が1,200円、被相続人の死亡の日の属する月の毎日の終値の平均値が1,000円、前月の平均値が1,100円、前々月の平均値が1,300円の場合、最も低い1,000円が評価額となります。

取引相場のない株式の評価方法

取引相場のない株式とは、金融商品取引所などに上場していない株式のことです。中小企業の経営者が所有している自社の株式は、取引相場のない株式に該当します。取引相場がないため、業種や持株の状況、規模や純資産価値などから株式を評価する必要があります。取引相場のない株式は、会社の総資産価額や従業員数、取引金額などで原則、下記の3つに区分して評価します。

①大会社

大会社は、類似業種比準価額で評価します。類似業種比準価額とは、自社と同程度の規模の会社や、同類の業種を営んでいる会社の株価をもとに、自社の1株当たりの配当金額や税引前当期純利益、純資産合計を使って、株式評価額(純資産価額を上限)を計算する方法です。

 

簡単にいうと「自社と似ている会社の株式の評価額はこの金額なので、それと比較するとあなたの会社の株式の評価額はいくらです」という計算の仕方です。

②小会社

小会社は、原則、純資産価額方式で評価します。純資産価額とは、会社が持っている現預金や不動産など資産や借入金などの負債を相続評価し、相続評価した総資産から総負債、法人税等の金額を差し引いて評価する方法です。※実際には少し複雑な計算をします。

③中会社

中会社とは、簡単にいうと大会社と小会社の間の規模の会社のことです、そこで、類似業種比準価額と純資産価額を併用して、株式の評価をします。

 

自社が大会社・中会社・小会社のどれに該当するのかの判定は複雑です。不明な場合は、税理士など専門家に相談したほうがよいでしょう。

 

その他にも、特定の評価会社などに該当した場合は、上記3つの区分とは別の基準で評価する場合があります。

相続税を節税するためにしておくこと

純資産価額方式のケースの対策方法

自社の株を評価すると、思ったより高い金額になることがあります。評価が高くなると、それだけ相続税の金額が高くなります。そこで、自社の株の評価を低くするための対策を講じておく必要があります。自社の株式の評価方法が純資産価額方式の場合は、純資産の価格を下げるための対策を行います。具体的には、以下のようなものがあります。

①土地や建物を購入する

土地や建物を購入することで、会社の純資産の価格を下げる方法です。実は、土地や建物の評価額は、取引価格(購入価格)より低くなるように設定されています。

 

例えば、現預金を1億円持っていると評価は1億円のままですが、その1億円を使って土地や建物を購入すると、評価額の計算上では、8,000万円の評価額となるといったことが起こります。その土地や建物を他社に貸し付けると、さらに評価額が下がります。

※ただし、相続開始前3年以内に購入した土地や建物は、購入価格で評価するので注意しましょう。

②役員退職金を支給する

役員に退職金を支給し、純資産そのものを減少させる方法です。会社の現預金が減るので、その分純資産が減少します。

類似業種比準価額方式のケースの対策方法

次に、類似業種比準価額方式の場合の対策です。類似業種比準価額方式は、自社の1株当たりの配当金額や税引前当期純利益、純資産合計を使って、株式を評価します。そこで、配当金額や税引前当期純利益、純資産を少なくすることで、株式評価額を低くします。純資産を少なくする方法は、純資産価額方式のケースの対策と同じです。

 

配当金額や税引前当期純利益を小さくするためには、会社のもうけを少なくする必要があります。通常、会社は利益を上げるために事業を営んでいるので、相続がいつ発生するかわからない中で、対策を立てるのは現実的ではありません。例えば、収益が上がっている会社を分社化するなどの方法もありますが、費用がかかります。配当金額や税引前当期純利益を小さくする方法は、景気が悪い場合など主として外的な要因に対して行う方法です。類似業種比準価額方式の場合の対策も、純資産を少なくする方法が主になります。

まとめ

経営者が亡くなり、後継者が会社を相続するということは、会社の代表取締役という地位と会社の株式を引き継ぐことを意味します。会社の株式は、相続財産になります。会社の株式は、場合によっては大きな金額となり、相続税の金額を大きくします。そこで、普段からの対策が必要です。相続のことが気になっている場合は、今すぐにでも、対策を始めるようにしましょう。

 

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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