新型コロナでローンの返済が難しい人に 自己破産せずにすむ債務整理の「特例」ができました – マネーイズム
 

新型コロナでローンの返済が難しい人に
自己破産せずにすむ債務整理の「特例」ができました

公開日:
2021/01/22
 
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新型コロナの感染拡大による解雇や雇い止めは、全国で8万人に達し、1月8日からの1都3県に対する緊急事態宣言の再発令により、雇用環境はさらに厳しさを増すものとみられています。降って湧いたようなコロナ禍で厳しさを増しているのが、こうした事態を想定せずに組んだ住宅ローンや、金融機関からの借金などの返済です。通常であれば、自己破産などの法的整理の対象ともなるわけですが、金融庁は、そうした個人や個人事業主の債務整理、生活や事業の再建を支援するために「債務整理ガイドライン」の特則を設け、昨年12月1日から適用を始めています。どのような制度なのか、わかりやすく解説します。

住宅ローン以外の債務の減免を申し出ることが可能

特則が設けられたのは、国の「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」です。その名の通り、自然災害によって債務の返済が困難になった人を支援する制度なのですが、コロナ禍で失業したりして苦境に陥った人たちも、特例的にその適用範囲とすることになりました。

この特例は、後述する簡易裁判所の「特定調停手続」を利用します。住宅ローンに加え、カードローンなどのその他の債務を抱える個人・個人事業主が対象で、適用されれば、住宅を手放すことなく、住宅ローン以外の債務の免除・減額を申し出ることができます。

 

例えば、

 

  • 新型コロナウイルス感染症の影響で、失業や収入の減少に見舞われ、ローンが返済できない
  • 資産より負債が多く、将来の収入の見通しが立たず、返済できない
  • 事業を廃業して再スタートしたいが、抱えている債務を返済できない

 

といったケースが当てはまる、と説明されています。

 

あくまでも、新型コロナウイルス感染症を理由とした債務整理に適用されるものですから、それ以外の理由でこの制度を使うことはできません。また、債務の免除には、債務者の財産やコロナの影響前後の収入状況、債務総額、家計の状況といった一定の要件があり、ローンの借入先の同意も必要です。

対象となる債務は、

 

  • 2020年2月1日以前に負担していた既往債務
  • 2020年2月2日以降、この特則の制定日である10月30日までに、コロナの影響による収入や売上などの減少に対応することを主な目的とした「政府系金融機関の新型コロナ感染症特別貸付」「民間金融機関における実質無利子・無担保融資」「民間金融機関における個人向け貸付」

 

とされています。

3つのメリットがある

この特例を利用すれば、自己破産などをすることなく債務の整理が行えることに加えて、次の3つのメリットがあります。

 

  • (1)手続きの支援を無料で受けられる
    弁護士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士などの「登録支援専門家」による支援を無料で受けられます。ただし、裁判所の特定調停手続に関する費用は、債務者の負担となります。
  • (2)財産の一部を手元に残せる
    債務者の生活状況などの個別事情によって対応は異なりますが、財産の一部を手元に残すことができます。自己破産のように、所有物件が差し押さえられ、競売にかけられるのを免れることができます。
  • (3)個人信用情報として登録されない
    債務整理したことが信用情報として登録されないため、新たな借り入れに影響が及びません。

「特定調停手続」の流れを説明

説明したように、この債務整理は、裁判所の「特定調停手続」によって実行されます。これは、個人や法人が債務整理のために裁判所をする利用する手続の1つで(他は「再生手続」と「破産手続」)、「調停委員会の仲介で債務者(借金等を負っている方)と債権者(借金等の返済先)が借金等の減免や返済方法などについて話し合い、将来の返済計画を決める手続であり、当事者同士の話合いによる債務整理手続であることから、簡易、迅速かつ柔軟な解決を図ることが可能」(法務省ホームページより)な仕組みです。

手続の大まかな流れは、以下の通りです。

 

  • ①手続着手の申出
    最も多額のローンを借りている金融機関等へ、ガイドラインの手続着手を希望すると申し出る。
  • ②専門家による手続支援を要請
    上記①の金融機関等から手続着手について同意が得られた後、地元弁護士会などを通じて「東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関」に対し、「登録支援専門家」による手続支援を依頼する。
  • ③債務整理(開始)の申出
    金融機関等に債務整理を申し出て、申立書のほか財産目録などの必要書類を提出する(書類作成には、「登録支援専門家」の支援が受けられる)。債務整理の申出後は、原則として債務の返済や督促は一時停止となる。
  • ④「調停条項案」の作成
    「登録支援専門家」の支援を受けながら、金融機関等との協議を通じて、債務整理の内容を盛り込んだ書類(「調停条項案」)を作成する。
  • ⑤「調停条項案」の提出・説明
    「登録支援専門家」を経由して、金融機関等へガイドラインに適合する「調停条項案」を提出・説明する(金融機関等は1ヵ月以内に同意するか否か回答)。
  • ⑥特定調停の申立
    債務整理の対象にしようとするすべての借入先から同意が得られた場合、簡易裁判所へ特定調停を申し立てる。「登録支援専門家」は、書類作成などの支援はできるが、原則として特定調停の場に出頭することができないため、債務者本人が出頭する必要がある。
  • ⑦調停条項の確定
    特定調停手続により調停条項が確定すれば、債務整理が成立する。

まとめ

新型コロナウイルス感染症の影響で、住宅ローンなどの返済に困った場合、自己破産や差し押さえなどの法的倒産手続によらずに債務整理が可能な公的な制度ができました。状況がさらに悪化する前に、利用を考えてみてはいかがでしょうか。

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