「取消し」と「取りやめ」は同じ? 法人税の用語をやさしく解説! | MONEYIZM
 

「取消し」と「取りやめ」は同じ?
法人税の用語をやさしく解説!

法人税の申告書を提出した直後、その間違いに気づき直すときは、訂正でしょうか?それとも修正でしょうか?このような、ちょっと似かよった用語について、ピンポイントで知っておくと役に立つものがあります。法人税法だけでなく、手続きをまとめた共通の法律である国税通則法などについてもあわせて紹介します。

法人税の手続きにおけるさまざまな用語とは?

青色申告承認申請の「取消し」と「取りやめ」はどう違う?

青色申告の承認を受けようとする法人等は、一般に事業年度開始の日の前日までに「青色申告の承認申請書」を提出しますが、申請後において「取消し」と「取りやめ」があります。

 

「取消し」とは、一旦、青色申告などについて承認された者が、なんらかの理由で「税務署のほうから」その申請の「承認取消し」を受けることを言います。税務署側が、真に青色申告書を提出するにふさわしくないと判断した場合に「承認取消し」となり、青色申告の特典を受けられなくなります。また、電子帳簿保存の「承認の取消し」が行われると、連鎖的に青色申告の「承認の取消し」となる流れもあります。

 

一方、「取りやめ」とは青色申告の承認を受けている法人が、法人税の確定申告書、中間申告書等を青色申告により提出することをやめる手続きのことです。「納税者のほうから」行うのが「取りやめ」というわけです。
このように、法人税の手続きの中にもぱっと聞いただけで、イメージが浮かびづらいものについてあといくつか紹介していきましょう。

「訂正申告」「修正申告」「更正の請求」はどう違う?

「訂正申告」、「修正申告」、「更正の請求」。これら3つは、法人税の申告書を提出した後に納税者が行う手続きです。

申告内容を間違えて提出してしまった場合、それが申告期限内で納税前であれば、税額の多い少ないに限らず申告書を再提出するのは、「訂正申告」となります。後から出した確定申告書が正とされますので、申告期限内であれば間違いの是正は2回以上あっても問題ありません。確定申告書と同じ書式で提出します。

 

次に、申告内容を間違えて提出してしまった場合、それが申告期限後で、かつ、先に提出した申告書の税額が実際より少なかった場合には、「修正申告」をします。また、過少な所得を申告してしまい還付税額が多すぎる場合も同じです。この場合は、気づいた時点で早めに修正申告をします。なぜなら、税務署側が間違いに気づいて指摘する「更正(こうせい)」があった場合、新たに納めることになった税額のほかに、その税額の10%(または15%)の過少申告加算税や35%(または40%)の重加算税がかかるからです。

 

そして、申告内容を間違えて提出してしまった場合、それが申告期限後で、かつ、先に提出した申告書の税額が実際より多かった場合には、「更正の請求」で支払過ぎた税金を取り戻します。また、税金の還付請求が少な過ぎた場合や翌期へ繰り越す欠損金が少なすぎた場合も同様です。更正の請求は、原則として申告期限から5年以内に、請求の理由となる事実の証明書を添付した場合のみ有効となります。

税務署からの「決定」とは?「更正」との違いは?

税務署長は、納税が正しく履行されていない場合には、国税通則法の定めるところにより、「更正」又は「決定」をすることができるとされています。「決定」と「更正」は、税務署側の手続きです。

 

期限内に税務申告されたものに対し、申告書に記載された課税標準や税額が正しく計算されていないときや、税務調査した結果と異なるときには、課税標準や税額を確定する処分を行い、この処分を「更正」といいます。納付すべき税額を増加する更正を「増額更正」といい、減少する更正を「減額更正」といいます。これに対して、「決定」は申告がなされていない場合などに対し、調査によって課税標準や税額等を税務署側が決める処分のことです。納税者は、これら「決定」や「更正」の処分に不服があるときは、処分の取消しや変更を求める不服申立て(ふふくもうしたて)を行うことができます。

課税や納付についての手続きをまとめた法律とは?

手続きの共通ルールをまとめた国税徴収法と国税通則法

国税において、法人税だけでなく、他の税法にも当てはまる申告・納税の手続きが規定されているのは国税通則法と国税徴収法です。

 

法人税法には、納税義務者、課税標準、税率など、法人課税に関する規定がありますが、各税に共通する期限後申告、修正申告、更正・決定、更正の請求、賦課、納付及び還付の手続、附帯税、税務争訟などに関する事項は、統一的に国税通則法に規定されています。法人税法やその他の各税法が、各税固有の規定を持つのに対し、国税通則法は、各税法に通ずる一般法ということができ、いわば規定の配分が行われています。国税通則法に「この法律に規定する事項で他の国税に関する法律に別段の定めがあるものは、その定めるところによる(第4条)」と規定するように、各税法の規定を「別段の定め」と位置付けているのです。

 

さらに国税通則法には、税金に関し不服がある者の救済はどのようにするのか、あるいは犯則の取締りはどのようにするのかなども規定されています。例えば国税通則法には、確定申告書を税務署に郵送する場合は、それが到達した時に効力を生ずるなどと、共通的な細かい規定が多くあるのも特徴です。

 

さらに、滞納処分に関しては国税徴収法があります。期限内に納付のない税金に関して行う強制徴収手続きを規定しているのが国税徴収法です。国税徴収法には、国税を確保することは国家活動の基礎にあるため、国税が納期限までに完納されない場合の徴収に関する執行手続が規定されています。また、国税徴収法は、単に国税の徴収についてだけでなく、広く地方税の徴収や、社会保険料などの公課の徴収についても準用され、租税公課の徴収に関する基本法として、差押えや入札や競り売りによる換価などの手順が規定されています。

 

法人税、国税通則法、国税徴収法の手続きの関係は次のようになっています。法人税は、法人税法に定める課税要件を満たすと納税義務が成立し、原則として納税申告などの確定手続きにより税額が決定します。確定した法人税(国税)は、国税通則法に定められた納期限までに納付しなければならず、納付しない場合には、国税通則法により督促されます。督促でも納付がなければ国税徴収法により差押え手続きに入ります。

法人税法の特則ルールとしての「更正」、「決定」とは?

共通的なルールである国税通則法とは異なり、法人税法独自に規定される「更正」や「決定」の特則もあります。

 

法人の中には、粉飾決算により過大な申告を行うケースもあります。この場合、例え税務調査で過大申告であることが判明したとしても、法人がその後の決算で粉飾事項について修正経理をし、その決算に基づく確定申告書を提出するまでは、税務署側からの「減額の更正」はしないのが法人税法の特則です。法人の犯した過ちについて自ら間違いを正すまでは、税金は返さないというわけです。

 

また、白色申告法人などの中には帳簿保存に不備があり、調査によっても所得金額を計算できないケースもあります。そのような場合には、税務署はその法人の現況など客観的事実に基づき、その法人に適した方法により、所得金額を推計して更正又は決定することができます。つまり、会計帳簿が正しく保存されていない場合には、推計による税額の決定がなされるわけです。 いずれも適正な会計により、正しく会計帳簿を作成することを前提とした、法人税ならではの特則と言えます。

まとめ

新型コロナウイルス感染症の影響により、期限内に申告・納付することが困難な法人については、申告・納付ができない理由がやんだ⽇から2か月以内の⽇を指定して申告・納付期限が延⻑されました。個別に申告期限が延長された場合の「修正申告」や「更正の請求」については、期限の捉え方について、申告書を提出した税務署に照会し、確認しておきましょう。

岡和恵
大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。 システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。 2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。
「税金情報」カテゴリの最新記事