マイナンバー制度導入によって手続きはどう変わる? | MONEYIZM
 

マイナンバー制度導入によって手続きはどう変わる?

マイナンバーは平成27年から順次通知されてきましたが、いまだにどのように利用すればよいのかわからない人も多いかと思います。今回は、マイナンバー制度導入に伴って確定申告や年末調整にどのような変化が起こるのかを解説します。

なぜマイナンバー制度が必要か?

マイナンバーは、住民票を有する全ての人に1人1つの番号をつけ、社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されるものです。例えば、マイナンバーをもとに国民全員の収入を正しく把握し、正しく税金を徴収したり、社会保険の手続きを行ったりします。
マイナンバー制度が導入されることによってもたらされるメリットは主に3点あります。

第一に、国民の利便性が向上します。添付書類の削減など、行政手続が簡素化され、国民の負担が軽減されます。また、行政機関が持っている自分の情報を確認したり、行政機関から様々なサービスのお知らせを受け取ったりできるようになります。

次に、公平・公正な社会の実現が見込まれます。所得やほかの行政サービスの受給状況を把握しやすくなるため、負担を不当に免れることや給付を不正に受けるのを防止することができます。また、これにより本当に困っている人が政府側からわかるようになるので、そのような人たちに対してきめ細かな支援を行うことができます。

最後に、行政の効率化を図ることができます。行政機関や地方公共団体などで、さまざまな情報の照合、転記、入力などに要している時間や労力が大幅に削減されます。複数の業務の間での連携が進み、作業の重複などの無駄が削減されます。

☆ヒント
マイナンバー導入によって国民の行政手続の負担が軽減されるなどの効果が期待されているものの、新しい制度なので逆に煩わしいと感じる人も多いでしょう。
詳しいことについては実務に携わる税理士や役所に問い合わせてみると良いでしょう。

マイナンバーと確定申告

個人事業主や副業をされている方などは自分で確定申告をする必要がありますが、マイナンバー制度導入に伴い、今までの確定申告と少々勝手が変わってきます。

マイナンバー制度によって、様々な書類にマイナンバーを記載する欄が追加されることになりますが、所得税の確定申告書についても同様です。まず、納税者本人のマイナンバーを記載する必要があります。そして、納税者の控除対象配偶者や扶養親族、事業専従者についてもマイナンバーを記載しなければなりません。したがって、確定申告をする際には、自分のマイナンバーだけでなく、上記に該当する人のマイナンバーも把握しておく必要があるわけです。

また、確定申告書を税務署に提出する際には、番号法に基づく本人確認が必要となります。本人確認に必要な書類は、以下のいずれかになります。
①納税者のマイナンバーカードの写し
②納税者の通知カードの写し及び、写真付き身分証明書の写し(運転免許証、パスポートなど)
③マイナンバーを記載した住民票の写し及び、写真付き身分証明書の写し
いずれかの書類を申告書とともに添付して提出する必要があります。なお、控除対象配偶者や扶養親族、事業専従者についてはこれらの書類は不要です。

一方で、e-Taxによる電子申告で確定申告を行う際には、マイナンバーの電子証明書をe-Taxに登録する必要がありますが、それ以外の手続きはこれまでとほとんど変わりません。

☆ヒント
個人事業主の方からすれば、ただでさえ面倒くさい確定申告がさらに面倒くさくなると考えることでしょう。そのような場合には、税理士に相談して確定申告を代理でやってもらうことをお勧めします。税理士にお願いする場合にも書面提出の際には、マイナンバー確認書類(原則として個人番号カード又は通知カードの写し)の提出が必要となります。以前の確定申告より手間はかかりますが、必要書類をあらかじめそろえておくとよいでしょう。

マイナンバーと年末調整

平成28年12月現在、年末調整において、マイナンバーの記載が必要なものは扶養控除等申告書のみとなっています。

平成28年1月以後に提出を受けるものについて、従業員本人、控除対象配偶者、控除対象扶養親族等のマイナンバーを記載してもらう必要があります。しかし、平成29年1月1日以後の給与にかかる扶養控除等申告書については、事業主側が従業員のマイナンバー等を記載した帳簿を備えている場合には、記載の必要がなくなります

マイナンバーの記載された扶養控除等申告書を従業員から提出された場合には、本人確認の必要があります。対面での本人確認の場合には、マイナンバーカードや通知カード+写真表示のある書類(運転免許証等)などの書類の提示が必要になります。

一方で、マイナンバーの提供を依頼する書類などによる本人確認も可能になっています。この場合、依頼書類に、提供者が通知カード等の写しを貼付して返送することで、通知カード等の写しで番号確認を行うとともに、依頼書類に印字した個人識別事項と貼付されている通知カード等の写しの個人識別事項が同一であることを確認することにより身元(実在)確認を行います。

そのほかにも、番号法に基づいた本人確認方法はたくさんあります。詳しくは、国税庁の発表資料(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/pdf/kakunin.pdf)を参考にしてください。

マイナンバーと社会保障

社会保障関連の書類には、マイナンバーや法人番号を記載する必要があります。これらの書類は事業主が提出するものとなっているので、個人事業主や中小企業の事業主の方々は注意が必要です。主な届出書等は以下のようになっています。

分野 主な届出書
雇用保険 マイナンバーの記載:
・雇用保険被保険者資格取得届 等
法人番号の記載:
・雇用保険適用事業所設置届 等
労災保険 マイナンバーの記載:
・障害(補償)給付支給請求書
・傷病の状態に関する届 等
労働保険 マイナンバーの記載:
・労働保険関係成立届
・労働保険料等申告書
健康保険・厚生年金保険 マイナンバーの記載:
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
・健康保険被扶養者(異動)届 等
法人番号の記載:
・新規適用届 等

 

届出書の様式変更のあったものは、厚生労働省の発表資料(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000117030.pdf)で確認できるので、参考にしてください。

☆ヒント
社会保障関連は素人には複雑な仕組みが多く、事業主の方からしても深入りしたくない分野かもしれません。しかし、従業員を守っていくためにも社会保障のための手続きを怠ってはいけません。
手間のかかる確定申告や年末調整ですが、経理業務に時間を割いて本業がおろそかになっては元も子もありません。ですので、本業に集中したい、という経営者や個人事業主の方は税理士に会計業務を一任することも一つの手段です。

まとめ

マイナンバーの通知は何か月も前から始まっていましたが、マイナンバー制度について正しく理解していない事業主の方もたくさんいるでしょう。本記事をきっかけにマイナンバー制度に必要な手続きについて、税理士などのプロに相談してはいかがでしょうか。

清水瑛介
東京大学卒。現、同大学院所属。
不動産投資に長らく関わっており、不動産に関する税制や相続が得意分野。
税理士事務所でアルバイトとして従事。
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