補助金・助成金は課税対象になる? 留意点を解説 | MONEYIZM
 

補助金・助成金は課税対象になる? 留意点を解説

補助金・助成金が会計上どのように扱われるか知っていますか? ここでは、補助金や助成金が課税対象になるかという基本的なポイントから、会計処理の方法や留意点まで解説します。

補助金・助成金とは

補助金助成金は、返済義務がないという点では同じで、言葉の元々の意味から言えば特段の違いはありません。しかしながら、実際の用法では使われている場面が異なるために多少の違いがあります。ただし、その違いは曖昧で、国と自治体では異なるというケースもあります。補助金と助成金の違いは名目上のものであることが多く、会計上この両者の違いはさほど気にする必要はありません。

補助金とは

補助金の名称は、経済産業省の政策に関わるものに多く使われています。経済産業省の補助金は条件を満たしていても受けられるとは限らず、一般的に高倍率の難しいものが多いでしょう。経済産業省の補助金は厚生労働省の助成金に比べて大きな金額が支給されることが一般的です。

助成金とは

一方の助成金は、厚生労働省の政策に関わるもので多く使われています。厚生労働省の助成金は雇用の増加や雇用の安定、社員の能力開発などを対象にしたものが多く、経済産業省の補助金に比べればより間口が広いと言えるでしょう。金額も小さい傾向にありますが、その分条件さえ満たせば助成金の支給を受けることができるケースが多いです。

課税対象になる?

補助金・助成金が課税対象となる税とならない税

補助金や助成金は、すべての税において課税対象になるわけではありません。補助金や助成金は法人税の計算の上では収入として扱われるため、法人税においては課税対象となります。したがって、補助金や助成金も含めた収益から費用を引き、その差額について通常通り課税が行われます。
しかしながら、消費税については、補助金・助成金は課税の対象となりません。それは、消費税の課税対象が「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等及び外国貨物の引取り」と定められているからです。補助金・助成金は事業者が事業に対しての対価として得るものではないので、消費税が課されません

課税対象とならない補助金・助成金のケース

例えば1,000万円の助成金をある企業が受け取ったとしましょう。この企業の収益が助成金とは別に5,000万円、費用が2,000万円ある場合、この5,000万円が対価に応じた収益であれば全て消費税の課税対象です。しかし、1,000万円の助成金については、先述の通り消費税は課税されません。法人税については、5,000万円から消費税を差し引いたもの(およそ4,630万円)と1,000万円を足し合わせた額から2,000万円を差し引いたものについて法人税が課税されます。

会計処理をするときの注意点

会計上の処理の方法

補助金や助成金は、貸方の勘定科目においては「雑収入」を選ぶのが一般的です。借方は普通預金・当座預金などを勘定科目とすると良いでしょう。

補助金・助成金独自の特徴による注意点

計上のタイミング

補助金や助成金の仕訳はいつすればいいのでしょうか。一般的に、補助金や助成金を支給する組織から支給決定通知書が事業者に到着したタイミングで行います。給付決定通知と入金が短い期間に行われる場合、先述のように貸方の勘定科目は「雑収入」とし、借方は普通預金・当座預金などを勘定科目と処理すれば問題なく、特に難しい点はないでしょう。

決算期をまたぐ場合

政府や自治体によって支給される助成金・補助金の多くは、申請を行ってから採択決定・支給決定まで時間がかかります。そこから実際に入金されるまでにも、さらに時間がかかることがあるでしょう。このように長い時間がかかる助成金・補助金はしばしば会計年度をまたぐため、それに応じて適切な会計処理を行わなければなりません。
会計年度をまたいでしまう場合は、借方を未収入金の勘定科目として仕訳を行いましょう。この時、貸方は上記と同様に雑収入とします。補助金・助成金が実際に入金されたら借方は普通預金などの勘定科目とし、貸方は未収入金の勘定科目を用いて仕訳を行いましょう。

固定資産を取得した場合

補助金や助成金によっては固定資産を購入できることがあります。例を挙げれば、多様な人が働けるような環境を整えるためのオフィスにおけるバリアフリー設備に関するものなどが考えられます。このような補助金は「施設補助金」として分類され、会計処理において圧縮記帳を選択できます。
圧縮記帳とは、補助金や保険金など臨時に発生する収入にかかる税金を繰り延べ処理することです。補助金や保険金を、受け取った年度内だけの一度で課税せずに、次年度以降に税金の支払いを遅らせることができます。圧縮記帳を利用しなければその年度内だけで税金を支払わなければならず、補助金をせっかく受け取ったメリットが低減してしまうので、それを防ぐために税金を数年に分けて支払うことが認められているのです。ただし、これはその年に多く払わなくても良くなったというだけの話で、翌年以降払わなければならないことに留意しましょう。
なお、圧縮記帳が常に最も有利な方法とは限りません。その後予測される収益や費用を考慮しながら、特別償却・税額控除など他の制度の適用も検討し、最も良い方法を選ぶのが望ましいでしょう。

会計処理を誤った場合のペナルティ

補助金や助成金についても通常の会計処理と同様、計上漏れとなった場合にはペナルティがあります。期限内に提出された申告書に記載された納税額が本来より少なければ、過少申告加算税が課せられます。過少申告加算税は修正の結果新たに納めることになった税金の10%相当額とされ、本来収めるはずだった税金とともに納めなければなりません。これとは別に、納税が遅くなった分だけその利息に当たるものとして延滞税が課されることがありますので気をつけましょう。

☆ヒント
補助金や助成金は、支給された時点で終わるものではなく、その後の会計処理も適切に行わなければなりません。計上漏れとなった場合には過少申告加算税や延滞税などのペナルティがあり、思わぬ損失を生んでしまいます。特に、固定資産を取得するための施設補助金を利用する場合はより注意が必要です。このような場合、単年度だけで考えて一見圧縮記帳が有利そうに見えても、実際は特別償却・税額控除など他の制度を利用した方がいいケースもあります。これらを判断するには経験と知識が欠かせないので、プロフェッショナルである税理士への相談も検討してみましょう。ビスカスでは各種税制に精通した優秀な税理士を紹介しておりますので、この機会に是非ご利用をご検討ください。

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まとめ

補助金や助成金には、その申請だけではなく会計処理においても注意すべき点が多くあります。会計担当者は仕訳の方法やタイミングを十分に理解しておきましょう。

山田隆裕
慶應大学卒。現、同大学院所属。
大学4年時に公認会計士試験に突破。
自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。
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