6月に変わる「ふるさと納税」
「駆け込み納税」に潜むリスクとは?
6月に変わる「ふるさと納税」  「駆け込み納税」に潜むリスクとは?
最終更新日:
2019/4/26
 
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自治体を選んで寄付する「ふるさと納税」。寄付した金額が、所得税、地方税から控除(差し引き)できるうえ、魅力的な返礼品がゲットできることから、人気を博しています。一方で、高額返礼品で莫大な寄付を集める自治体が現れ、問題に。ついに、国が返礼品の規制に乗り出すことになりました。制度はどう変わるのでしょう? 利用する上で、今後注意すべき点は?

返礼品規制の背景にある自治体間競争の激化

ふるさと納税制度の創設に関わった官僚の方から、「まさか専門サイトのような関連産業が立ち上がってくるほどのフィーバーになるとは、思わなかった」という「率直な感想」を聞いたことがあります。地方創生の一助にと、この仕組みを考え実現させた当人たちにとっても想定外の盛況ぶりを演出したのが、返礼品。当初は単純な寄付だったのですが、「寄付してくれたら、お返しを差し上げます」という自治体が出現し、他も次々にそれに倣ったことから、金額も制度の利用者も、右肩上がりに伸びました。

ふるさと納税の受入額及び受入件数(全国計)

※出展:総務省ホームページ

 
制度を作った国にとっては、さぞかし「嬉しい誤算」かと思いきや、あまりのブームに、これも想定外の問題が認識されるようになりました。地方にお金が流れるのはいいのですが、そのぶん、地方税の控除によって寄付者の住む自治体の税収は減ります。特に東京23区や横浜市などの大都市部からは、数十億円規模で税が「流出」する結果となりました。また、ふるさと納税で住民税を控除される人もそうでない人も、居住地で同じ住民サービスが受けられるのは「税の公平性」に反する、あるいは高額の寄付ができる高所得者優遇の制度だ、といった批判もあります。
 
とはいえ、人口減少や産業の衰退で財政状況が厳しい地方にとって、ふるさと納税による寄付金は、工夫すれば自らを潤すことのできる新たな「財源」。競って魅力的な返礼品を用意するようになり、中でも高額商品をそろえた一部の自治体が、突出して寄付を集める事態が生まれたわけです。
 
そうした行動は制度の趣旨に反するとして、総務省は数度にわたって、過度な返礼品は控えるように、各自治体に通知を出しました。しかし、それでも大阪・泉佐野市のように「我が道を行く」ところが存在したことから、ついに強硬手段に打って出ることになりました。今年の6月1日から、返礼品を法で規制することになったのです。

上限まで、「寄付金額-2000円」が控除になる仕組み

どんな規制が実行されるかの前に、ふるさと納税の仕組みについて説明しておきましょう。ここまでの話でおわかりのように、「納税」と銘打ちながら、法的には「寄付金」。総務省のホームページには、以下のように書かれています。
 
ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄付(ふるさと納税)を行った場合に、寄付額のうち2,000円を超える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です(一定の上限はあります。)。
 
例えば、年収700万円の給与所得者の人で扶養家族が配偶者のみの場合、30,000円のふるさと納税を行うと、2000円を超える部分である28,000円(30,000円-2000円)が所得税と住民税から控除されます。
 
イメージとしては、2000円の手数料を支払って好きな自治体に寄付をすれば、その総額を減税してもらえる、ということになるでしょう。寄付する自治体は、いくつでも可。返礼品の価値が2000円を超えたら、そのぶん得をするというわけです。
 
もちろん、際限なく寄付できるわけではありません。控除の対象となるふるさと納税額の上限は、「総所得金額等の40%」。自分の「限度額」がどれくらいなのかは、専門サイトなどでシミュレートすることができます。ちなみに、2015年度からふるさと納税額が大きく伸びたのは、この上限がそれまでの倍近くにまで引き上げられ、それを機に「返礼品競走」が激化したためでした。

返礼品は「寄付額の3割以下の地場産品」に限定される

では、返礼品の規制の中身は、具体的にどのようなものなのでしょう? 3月末に成立した改正地方税法では、返礼品は「調達費が寄付額の30%以下の地場産品」に限定することが明記されました。総務省は、5月中旬に、このルールを順守すると見込まれる自治体のみを、ふるさと納税制度の対象に指定します。裏を返せば、「指定外」の自治体が出るかもしれないということ。もしそうなった場合、6月1日以降、その自治体に寄付をしても、税の全額控除という優遇は受けられません。
 
総務省は、自治体を制度の対象とするかどうかの詳しい基準を近く公表し、制度の対象となる自治体の選定作業を進める方針だと報じられています。その際、今後の返礼品などの計画に加え、法成立前の昨年11月以降の状況も考慮するそう(総務省の通達を「無視」した自治体はアウト?)。指定後にさきほどのルールに違反すると、それは取り消され、2年間は再指定を受けられないことも決まりましたから、各自治体の裁量に任されてきた現状からすると、かなりシビアな方針転換と言えるでしょう。
 
万が一、ふるさと納税制度の指定外にされたら、寄付は望むべくもありません。全国の自治体は、国の定めたルールをクリアしようとするはず。結果的に、「アマゾンの高額ギフト券をもらって、賢く節税」というような行動は、今年6月以降、できなくなるものと思われます。

「今のうちに限度額を使い切れ」は正しいか?

そうした状況を踏まえて、ネットには「寄付の限度額は5月中に使い切るべき」という内容の記事が多くみられます。同じ額のふるさと納税をするのなら、メリットも大きいうちに、というわけです。確かに自治体や専門サイトの中には、「特別セール」を実施しているところもあるようです。
 
ただし、そういう発想でこの時期にせっせとふるさと納税することには、ある程度のリスクも伴うことは頭に入れておく必要があります。さきほども説明したように、税が控除される寄付額には上限があります。これを超えて寄付した分は、「戻って」来ません。
 
当然のことながら、控除の対象となる所得税も住民税も、今年1年の所得をベースに計算されます。仮に年後半に、仕事上で予想外のことが起こったりして所得が落ち込んだら、支払う税金の額は減ります。ふるさと納税による控除の限度額も下がり、気づいたら寄付額がそれを超えていた、といった状況になる可能性もあるのです。収入がダウンした上に、「ただの寄付」をする結果になったら、目も当てられません。例えば会社の業績が急落して給料が減ってしまった、個人事業で思わぬ経費が発生した……。今の時期に限度額を使い切ろうというのは、そんな事態が6月からの半年で100%起こらない確信のある人だけにしたほうがよさそうです。

まとめ

高額返礼品が消えるからと言って、ふるさと納税の魅力がなくなるわけではありません。返礼品の価値が2000円を超えれば得をする、という仕組みそのものに変わりはないのです。これからは、地場産品をじっくり選んで寄付を楽しむというスタンスもアリなのではないでしょうか。

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