【外注費・給与】個人事業主への発注で
税務調査のリスクが増大する?
【外注費・給与】個人事業主への発注で  税務調査のリスクが増大する?
最終更新日:
2019/7/4
 
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最近はアルバイトなどを雇う代わり、外注先へ発注するケースが増えています。しかし、偽装請負という言葉が示す通り、「本当に外注なのか」については税務調査でよく問題になり、税額が多額になるケースもあります。そこで、発注者が個人事業主に発注しても否認されないポイントについて説明します。

外注費と給与の違いとは

Web制作などのサービス提供に対して支払う金額でも、外注費給与とでは税金の計算方法が異なります。

外注費および給与の用語解説

外注費と給与は支払先と交わす契約の種類で次のように区分されます。

  • 外注費:業務委託契約などの請負契約
  • 給与:正社員やアルバイトなどの雇用契約

税金の計算方法

外注費または給与によって、「消費税の納税額から差し引ける仕入税額控除」と「支払時に天引きし、納付する源泉所得税」の取り扱いが違います。

  • 外注費:仕入税額控除が認められる、源泉所得税は課税されない
  • 給与:仕入税額控除が認められない、源泉所得税が課税される

具体的な会計処理

サービス提供に対する支払金額を月108万円と仮定して、外注費と給与の違いを比較しましょう。

・外注費

①支払時

日付 借方 金額 貸方 金額 備考
6月×日 外注費 100万円 現金預金 108万円  
仮払消費税 8万円

 

②決算日:納税額から仕入税額控除を差し引く会計処理

日付 借方 金額 貸方 金額 備考
9月30日 仮受消費税 〇〇円 仮払消費税 □□万円 仕入税額控除
未払消費税 △△万円 納税額(仮受消費税-仮払消費税)
・給与

①支払時

日付 借方 金額 貸方 金額 備考
6月×日 給与 108万円 現金預金 90万円  
預り金 18万円 源泉所得税

 

②源泉所得税の納付時

日付 借方 金額 貸方 金額 備考
7月10日 源泉所得税 18万円 現金預金 18万円  

なお便宜上、社会保険料の取り扱いは省略しました。

外注費または給与が税務調査の争点

発注者側にとって、個人事業主などに対する支払いを外注費として処理したほうが消費税や源泉所得税の面で有利になります。そのため、相手への支払金額について本当は給与であるのに外注費として処理するケースがあり、税務調査では「外注費→給与」になるかどうかが争点になります。

税務調査で否認された場合のリスク

税務調査で外注費が給与と指摘された場合のリスクについて説明します。

数年分の消費税と源泉所得税が課税される

そもそも税務調査は過去5年間(悪質な場合は7年間)までさかのぼって決算書を調べる権限があります。そのため、外注費が否認された場合、仕入税額控除分の消費税と源泉所得税が数年分まとめて課税されるケースが圧倒的です。

例)前述の支払金額を月108万円を外注費に処理していたのに対して、過去5年間にさかのぼって否認された場合
 

  • 消費税:8万円×12ヵ月×5年間=480万円
  • 源泉所得税:18万円×12ヵ月×5年間=1,080万円
  • 合計:消費税480万円+源泉所得税1,080万円=1,560万円

 
上記の本税のほかにも延滞税などのペナルティーも追徴(追加)課税されます。

重加算税でリスクはさらに増加する

追徴課税の項目の重加算税は、最も重いペナルティーであり、意図的に外注費と偽装した場合などの隠ぺい工作をした場合に課されます。管内にある重加算税の履歴から「今後の税金をごまかすのでは」と税務署の心証を悪くし、調査の対象に選ばれやすくなります。調査官の人員に限りがあり、申告内容が間違っている確率の高い会社に絞って調査先を選定しているためです。

外注費の条件

次の4項目を総合的に見て、発注先が外注費になるかどうかを判断します。そのため、1項目が当てはまらないといって、給与にされてしまうことはありません。そこで、データ処理業務を例に説明します。

相手と個別に契約している

外注先と個別に契約をしていれば、その個人に依頼したデータの処理分は基本的に別の人に変更することはできません。しかし、社内でデータ処理業務をする場合、その社員の担当分を別の社員に担当替えすることは自由です。

仕事の裁量を認めている

請負契約の場合、データ処理業務を実施する時間帯や具体的なデータの入力方法については依頼先が自由に決められます。しかし、雇用契約の場合、作業時間や休憩時間はもちろん、細かい作業手順まで社内で決める権限があります。

仕事が未完了なら代金を支払う必要がない

出来高制の請負契約でデータの入力件数が0件なら外注先に代金を支払う義務はありません。しかし、雇用契約のアルバイトなどの場合、入力件数に関係なく最低賃金以上の給与を支給する必要があります。

材料・仕事用具を支給していない

請負契約の場合、データ入力に必要なパソコンやスマートフォンは外注先が自分のものを使用します。しかし、データ処理業務を外注に出さない場合、入力に必要な道具は会社が用意するのが一般的です。

 

ただし、シール貼り業務のように、貼ってもらう作業を依頼している場合には、シールなどの材料を依頼先に支給しても、「材料・仕事用具を支給していない」の条件から外れることはありません。あくまでもサービスの対価に対する支払いのためです。

税務調査の争点になるポイント

「何をもって外注費の処理が給与になるのか」について、税務調査で争点になるポイントを説明します。

仕事道具を支給していたケース

建設業事例です。受注した物件の建築を各個人事業主に下請けに出し、金づちなどの仕事道具を発注者が用意していました。

 

お互いに請負契約と認識していたため、発注者は支払金額を外注費と処理します。消費税の仕入税額控除を適用し、源泉所得税を天引きしませんでした。

 

後日、税務調査で仕事用具を支給していたことが決め手となり、発注先の外注費は給与として認定されて、消費税と源泉所得税の本税と追徴課税を合わせて数百万単位になりました。

出勤簿で管理していたケース

宅配業者の事例です。完全出来高制の業務委託で契約し、勤務日や配達ルートなどは各ドライバーの裁量で決められます。ただ、支払金額が出勤日数から算出できるため、発注者は出勤簿を管理していました。

 

出勤簿を見た調査官が業務上の裁量度合いなどを確認し、外注費は否認されませんでした。しかし、発注者が請負契約のドライバーを出勤簿で管理するのは一般的でないとして、調査官から指導を受けます。

 

税務調査後、発注者は事情を説明して、支払金額の計算についてドライバーから請求書を発行する方法に改めました。

受注者の確定申告が争点になったケース

業種に関係なく、外注先が「事業所得」または「給与所得」で確定申告をしたかどうかは税務調査の争点になります。たとえば、出来高制の請負契約を結んでいても、受注者は受取代金を給与と認識している場合、確定申告の無料相談会で「受取代金は給料」と告げれば、相談員は給与所得とアドバイスをし、本人は言われた通りに申告するでしょう。

 

そもそも税務署は全国の申告情報をどこでも閲覧できる権限があるため、「どこの誰が何所得で確定申告をしたのか」は一目瞭然です。

 

要するに受取代金について、受注者側の認識も税務調査の争点になり得ます。

 

※個人情報保護のため、事例と異なる業種にし、内容だけを変えないようにしています。

まとめ

発注者が税務調査で否認されないためには、外注費の条件をいかに満たすかどうかがポイントになり、調査官もその視点で相手への支払金額をチェックしています。そのため、個人事業主への発注の仕方や請求書のやり取りなど事前準備が大切になってきます。

阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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