中小企業強靭化法案とは? 改正内容を徹底解説

中小企業強靭化法案とは? 改正内容を徹底解説
公開日:
2019/08/01
 
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中小企業強靭化法案をご存知でしょうか? 自然災害の頻発化や高齢化により中小企業の経営が危ぶまれていることから、中小企業の基盤強化を進めることを目的とした法案です。本記事では、その改正内容について解説します。

中小企業強靭化法案とは?

中小企業強靭化法案とは、中小企業の競争力や体力の向上を目指した法案です。法案設立の背景として、予期せぬ自然災害等の発生頻度が増えて事業が継続できなくなってしまうケースや、経営者が高齢化する一方で後継者がいないために店をたたまざるを得ないというケースが、現実問題として顕在化したことがあげられます。今回の改正では、中小企業が今後もより安定的に事業を継続できるように自然災害等への対応力を高めさせること、そして、円滑な事業承継を促進させることが狙いとなっています。

具体的な内容として、次の3つの観点から上記の問題への対応策が考案されています。
 

  • 中小企業・小規模事業者の事業継続力の強化
  • 中小企業の経営の承継の円滑化
  • その他(関係者の関与による基盤強化等)

 
以下では、これらについてより詳しく見ていきましょう。

事業継続力の強化

まずは事業継続力の強化に関する改正事項についてですが、今回の改正ではこの部分の改正が特に多くなっています。ひとつずつ丁寧に見ていきましょう。

事業継続力の強化に関する「基本方針」の策定

現行の中小企業等経営強化法に基づく基本方針に追加するという形で、事業継続力強化に関する事項が策定されます。この基本方針とは、経済産業大臣等が個別の制度の方向性や内容を定めるもので、中小企業が事業計画を策定する際などに参照されます。今回の改正案では、具体的に次の2つの軸が定めるべき事項として追加されています。
 

  • 事業継続力強化のために中小企業が事前に講じておくべき対応
  • 中小企業の事業継続力強化の関係者に期待される協力の内容

 
前者については、中小企業が単独で行うものと、複数の中小企業が連携して行うものとに大きく分けられます。単独で行う事業継続力強化の内容としては、自然災害等発生時に取るべき対応の手順や、事業継続力強化に資すると認められる設備の種類、資金の調達手段、実効性を確保するための取組みなどが決められます。連携事業の継続力強化については、これに加えて連携の態様などが詳しく設定されます。
 

これらの新たな規定が示すものを踏まえると、いわゆるBCP(事業継続計画)と想定すべきことは似ていると言えるでしょう。BCPとは、自然災害やテロといった異常事態が発生した場合に、被害を最小限にとどめ、かつ、事業の継続や早期復旧を可能とするために、企業が平時から講じておくべき措置や緊急時の対応策をシミュレーションした計画書です。
 

また、もう一方の軸である後者における「関係者」とは、サプライチェーンの親事業者や、政府関係金融機関、連携事業の継続力を強化する際の地方公共団体や商工会議所などが想定されています。

中小企業の事業継続力の強化に関する計画を認定、支援措置の遂行

中小企業は、上記の基本方針の内容に沿うように事業継続力の強化に関する計画を作成して経済産業省に提出し、その計画が適切であると経済産業大臣の認可を得られれば、法律上の特例措置や、中小機構による協力を受けることができます。ここでの事業継続力の強化に関する計画とは、ある中小企業が単独で行っている事業に関するものと、複数の中小企業が連携して行っている事業に関するものとがあり、前者を「事業継続力強化計画」、後者を「連携事業継続力強化計画」と呼びます。具体的な記入事項としては、事業継続力強化のために行う施策、その施行にかかる資金額やその調達方法、想定されうる協力者などが考えられるでしょう。いずれにせよ、客観的に見ても適切だと判断される事業継続力強化計画を作成することが重要となります。

商工会・商工会議所による小規模事業者の事業継続力強化の支援

商工会・商工会議所は中小企業の事業継続にあたって必要な情報を提供するだけでなく、自ら中小企業の事業継続の強化を支援することができるようになる見込みです。
 
これは、事業継続力強化支援計画の提出と認定によって可能となります。商工会・商工会議所は、所在の地区を管轄する市町村と共同して、中小企業の事業継続力強化を支援する事業についての計画を作成したのち、都道府県知事に提出し、その計画が適切との認可が下りれば、法律上の特例措置や中小機構による協力を受けることが出来るというものです。
 

この改正は、商工会や商工会議所の存在意義でもある中小企業の活力強化につながるものですので、中小企業の支援体制として適当な改正であると言えるでしょう。

中小企業の経営の承継の円滑化

冒頭でも述べたように中小企業のなかには、経営者の高齢化が進む一方で事業の代替わりが困難なために、存続が危ぶまれる企業が少なくありません。今回の改正では、そういった企業の事業の承継を円滑にして救済することを目的として、個人版事業承継税制が創設されました。以下で詳しく見ていきましょう。

個人版事業承継税制の創設

個人版事業承継税制とは、2019年度税制改正大綱に盛り込まれた新制度で、個人事業者が所有していた事業用資産について、事業承継の際に相続税や贈与税が全額納税猶予されるようになる制度です。事業用資産とは、土地、建物、機械等の青色申告書に添付される貸借対照表に減価償却資産として計上されているものを指します。この際の減価償却資産は固定資産税などの課税対象となっているものに限られ、不動産貸付事業にかかるものは対象外となりますので注意しましょう。また、これらの納税猶予を受けるためには担保の提供が必須となりますのであわせて注意しましょう。
 

納税猶予を受けるには、2019年4月から5年以内に承継計画を都道府県に提出し、その後も3年ごとに継続届出書を税務署に提出しなければなりません。また、経営承継円滑化法の認定を受ける必要もあります。

現行制度との比較

これまでの企業向けの事業承継支援では、株式の譲渡を通じた贈与税の納税猶予が行われていましたが、この改正により、個人事業主でも贈与税や相続税の納税猶予を受けられるようになりました。
 

注意点としては、以下の4つが挙げられます。
 

  • 定期的に税務署に継続届出書を提出しなくてはならない
  • 認定された相続人や受贈者が事業用資産に関係する事業を廃止してしまった場合、猶予税額を全額納付しなくてはならない
  • 小規模宅地の特例との併用ができない
  • 納税猶予の全額免除の対象となる事業用資産の他に、一部免除の対象となる事業用資産も存在する

その他(関係者の関与による基盤強化等)

社外高度人材活用新事業分野開拓計画

これは中小企業が、プログラマーや会計士といったいわゆる社外高度人材を活用し、新規事業分野を開拓する際の計画を策定するものです。この計画をその新事業分野を担当する主務省に提出し、その主務大臣からの認可が下りれば金融支援や税制支援を受けられます。ただし、主務大臣から認可を受けた後、計画の実施状況について報告を求められる場合があることは注意しましょう。

経営発達支援計画

これは事業継続力強化支援計画とよく似ていますが、こちらも商工会や商工会議所が該当市町村と共同し、小規模事業者の経営発達に関して支援する計画を作成したのち、経済産業省に提出し、その計画が適切との経済産業大臣の認可を受けることで中小企業の事業継続力強化に関する活動を支援できるというものです。経済産業大臣が認可を下す際には都道府県知事の意見を聴くように書かれています。

 

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まとめ

中小企業強靭化法案の改正内容について細かく見てきましたが、今回の改正は中小企業に対し、潜在的なリスクへの対応や準備についてこれまで以上に考えていくことを要求しているものと言えます。実際にいざという時になって、そういった事前行動の有無が事業の継続の可否に大きく影響するということもありますので、ぜひこの機会に真剣に考えてみてはいかがでしょうか。

山田隆裕
慶應大学卒。現、同大学院所属。
大学4年時に公認会計士試験に突破。
自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。
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