日本の法人で3月決算が多い理由とは? 決算期を決めるために必要なこと | MONEYIZM
 

日本の法人で3月決算が多い理由とは?
決算期を決めるために必要なこと

「日本の法人は3月決算が多い」というイメージが多くの人にあることから、会社を設立するときにはなんとなく「決算月は3月にしよう」と考えていないでしょうか。そこで、この記事では決算月を3月としている法人がどれぐらいあるのかご紹介します。また、決算期を決めるポイントについてもあわせて解説します。

日本の法人は何月決算が多い?その実態とは

法人は1年の中で決算期を自由に決めることができます。国税庁が発表している「第144回国税庁統計年報平成30年度版」によると、税務署に申告している法人の中で決算期がもっとも多いのは3月です。年1回決算を行っている法人の決算月ごとの割合は、次のとおりです。

 

  • 1位:3月(18.8%)
  • 2位:9月(10.8%)
  • 3位:12月(10.3%)
  • 4位:6月(9.7%)
  • 5位:8月(8.7%)
  • 6位:5月(8.3%)
  • 7位:7月(7.6%)
  • 8位:4月(7.1%)
  • 9位:2月(6.7%)
  • 10位:10月(4.8%)
  • 11位:11月(3.6%)
  • 12位:1月(3.6%)

 

一般的に決算期を3月に置いている企業が多い印象がありますが、数字を見ると突出して多いわけではありません。3月が2割近くを占め、そのあとは9・12月が1割となっています。
しかし、資本金1億円以上の会社に限って決算期を見ると、3月決算の企業が5割以上を占めていることがわかります。

 

  • 1位:3月(53.6%)
  • 2位:12月(16.8%)
  • 3位:9月(6.2%)

 

12月が2位に入っているのは、1年の区切りであることに加え、国際会計基準との兼ね合いがあると考えられます。国際会計基準では原則、親会社と子会社の決算期を統一する必要がありますが、欧米や中国の企業は12月決算が多いため、海外に子会社を持つ企業は12月に合わせる傾向があります。もとは3月決算だったものの、12月に決算期を変更する企業もあります。

 

それでは、多くの企業、特に資本金が多い企業において、3月決算が多いのはなぜでしょうか。

日本の法人で3月決算が多い理由とは

日本の法人で3月決算が多い理由として、以下の3点が考えられます。

(1)国・地方自治体の会計年度に合わせるため

公的機関の会計年度(会計上の1年)は4月から翌年3月までと決まっています。国や自治体は会計年度にあわせて予算の計上・消化を進め、さまざまな事業を民間企業に発注します。受注する民間企業、さらには受注した企業から仕事を請け負う企業にとって、公的機関の会計年度末に決算期を設定したほうが経営面で合理的です。

 

公的機関から事業を受注する企業は事業規模の大きなところであり、そのような企業と取引する企業も決算月を合わせていることが多いです。

(2)税制改正のタイミングに合わせるため

(1)と関連しますが、税制の改正は4月1日から適用されることが多く、企業側は作業が煩雑になることを避けるために決算期を3月にしていると考えられます。税制改正が行われると、決算期が3月以外である企業は期の途中で会計処理の方法を変えなければならず、業務が煩雑になります。

(3)教育機関の年度に合わせるため

日本の学校制度では、4月から翌年3月までが1つの年度とされています。企業の多くも学校の年度にあわせて新卒者の入社や年度の初めを4月とし、社内の人事評価や異動を年度末である3月に行っています。また、人事評価は業績に基づいて行われるため、決算期を3月にすることで企業の経営全体をスムーズに進められるメリットもあります。

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自社の決算期は何月にしたら良い?決算期の決め方

多くの企業が決算期を3月にしているのは、社内外のさまざまな活動を円滑に進めるための合理的な理由があります。
もっとも、決算期は自社の事情に合わせて自由に決めることができます。それでは、どのように決算期を決めればよいのでしょうか。決算期を決めるポイントはいくつかあり、どれを重視するかによって決算期は変わってきます。各ポイントを見ていきましょう。

(1)社内の各部門の業務量を考慮する

決算月を迎えると商品の棚卸や決算書の作成を行い、決算月から原則として2か月後以内には法人税・消費税の申告書提出と納税、3か月後以内には株主総会を開催することになります。この時期、生産・販売・財務など、決算業務に関わる部門は普段以上の業務量をこなす必要があります。
決算業務が本業の重荷にならないよう、本業の繁忙期と決算期をずらすのが決算月を決める際の大きなポイントになります。たとえば、小売業では2月を決算期に設定する傾向にあります。これは、年末年始商戦を過ぎ、2月は消費が落ち込む時期に当たることが背景にあります。

 

決算業務にかかわる棚卸などは小売業にとって大きな負担になるため、閑散期に行ったほうがよいと判断される傾向があります。

(2)大きな売上が上がる時期と決算期の関係を考える

年間の売上が大きく変動することが予想される場合、大きな売上が計上できる時期を基準に決算期を考える方法があります。
大きな売上の計上期の直前に決算期を置くと、次の期首に大きな売上を計上することになるので、決算期までの予測が立てやすくなります。期首に思うような売上が計上できなかったとしても、期末までに時間があるので業績改善を図ることができます。
一方、大きな売上の計上期の直後に決算期を置くと、業績の伸長を投資家や金融機関にアピールすることができます。

(3)資金繰りを考慮する

法人税・消費税の申告書提出と納税の期限は、決算期から2か月後です。この時期に賞与などの大きな支出が重なると、納税ができなくなってしまう危険性があります。資金に余裕があるときに納税月を持ってくることが望ましいでしょう。年間の資金繰りを考えて、決算期を決めるのもひとつの方法です。

(4)税理士の繁忙期を避ける

法人の多くは決算書作成差の際、税理士や公認会計士の手を借りています。日本の法人の多くが3月決算となっていることから、4~5月は税理士・公認会計士の繁忙期に当たります。決算業務のことで税理士などに相談したいと考えている場合、3~5月を決算期から外す判断をするのもひとつの考え方でしょう。

 

3月を決算期から外している企業が多い背景には、このような背景も考えられます。

(5)消費税の納税義務免除期間を考慮する

設立時の資本金が1,000万円未満の法人は、設立して1期・2期目は消費税の納税義務が免除されます。「2年」ではなく「2期」であるため、設立日と決算月の設定によって、1期目が極端に短くなる場合があります。そこで、納税義務免除の期間をできるだけ長くしたいなら、設立日と決算月を離すことがよいといえます。

 

ただし、資本金が1,000万円未満であっても、1期目上半期の売上によっては納税義務が発生することがあります。消費税の課税・免税にはさまざまな要件や特例があるため、納税義務免除期間を基準として決算日を決めるのは簡単なことではありません。税理士などにご相談ください。

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まとめ

日本の法人の多くは決算期を3月としています。公的機関や学校の動きに合わせ、合理的な企業経営を行うには3月決算が最適であることが理由と考えられます。

 

ただし、公的機関や学校の動きよりも優先すべき事項がある場合は、必ずしも3月決算でなければならないわけではありません。売上や社内の業務量、業界の慣習などを加味し、円滑に事業を推進できる時期に決算期を設定するとよいでしょう。また、資金繰りや節税の観点から決算期を決めたい場合は、税理士などへのご相談をおすすめします。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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