個人事業主の支払う車の経費、どこまで認められる? | MONEYIZM
 

個人事業主の支払う車の経費、どこまで認められる?

個人事業主が車を利用する場合、業務専用車であれば車に係る費用についてあまり思い悩むこともありませんが、私用でも利用する場合は、留意すべき点があります。
事業で使用する車について、いろいろな費用がありますが、いつでも必要経費として認められるとは限りません。基本となる考え方をまとめてみました。

個人事業主が支払う車の経費の取り扱い

車の経費は多くの勘定科目に分かれる

個人事業主においては、ネット上での取引が格段に増えたとはいえ、やはり多くの場合、車の利用が考えられます。実際、自家用車を保有するための費用として計上されるものには次のようなものがあり、会計上の勘定科目も多岐にわたります。

 

  • 租税公課:自動車税・軽自動車税、自動車取得税、自動車重量税
  • 保険料:自賠責、任意保険、車両保険
  • 車両費:ガソリン代、洗車、点検費用(法定費用+整備費)、車検費
  • 減価償却費:(購入の場合)
  • 旅費交通費:高速道路代やETC料金、一時的な駐車料金
  • 賃借料:駐車場代
  • 消耗品費:タイヤ、オイルその他
  • 支払利息:ローン金利(ローン購入の場合)

 

この中の費用には、車種、走行距離、年式、消耗具合などで大きく変わる要素もあり、経年劣化により費用増加となるものもあります。初期投資額と年間維持費は導入初期においては反比例するといえるでしょう。
 
そして損益計算書上、支払利息を除いては「販売費及び一般管理費」に分類されるものがほとんどですが、業務用に車を所有し、100%事業用であることが客観的に判断できるものであれば、費用として計上することに特段の問題はありません。

車の購入、中古車取得は得か?

事業用の車を購入する場合、中古車取得が有利となるケースがあります。
 

それは耐用年数が短いとそれだけ早期に償却できるためです。耐用年数表によりますと、一般的な軽自動車で4年、それ以外の一般車で6年がそれぞれの耐用年数となっています。
 

例えば、耐用年数6年の新車を300万円で購入した場合、減価償却費は、年間50万円となります。これに対し、4年落ちの普通車を100万円で購入した場合、中古のため耐用年数は2年となりますので、年間50万円の減価償却費を経費とすることができるのです。
 

また、カーリースを利用する場合は保険料等の多くの維持費がリース料に含まれることになり、経費として認められても、結果的には割高になるケースがあるため要注意です。
 

しかし、これらの費用については、100%事業用として車を所有し、事業のみに利用できることが客観的に判断できるものでない場合には、注意が必要となります。

車両費として認められる経費とは

認められる経費

一方、個人事業主の家族が保有する車をその事業で使用するときの車両費は所得税法上認められるケースがあります。
 

所得税基本通達56-1は、「親族の資産を無償で事業の用に供している場合」として、個人事業主が、同一生計の親族が持つ資産を無償で事業に使っているときは、その親族が払う費用を個人事業主の事業の経費にすることができるとしています。
 

例えば、妻名義の車を事業で使用していた事業主は、その車の費用を必要経費にできるというイメージです。

認められなかった経費

ここで、個人事業主が車の経費について所得税法上認められなかったケースを紹介します。
 

医療業を営む個人事業主は、週の大半は事業を営むビルで過ごし、休日等には内部事務を手伝う妻に必要書類を運ぶためや家族に会うために自宅に車で戻っていました。そして、その際にかかったガソリン代やETC料金を経費に算入しましたが認められませんでした。これらガソリン代等の費用については家事関連費になるとされましたが、事業に必要である部分が明らかに区分されていなかったからです。
 

裁決では、事業上必要であった部分を明らかにする記録等がなく、他に証拠がないことから必要経費ではないとされました。

車の経費が認められるために必要なこと

一般に、費用が事業と直結し、かつ、事業をする上に必要な費用は税務上経費と認められます。しかし家事関連費については、裁決の例を見るとおり、記録等などで明らかに区分できる、少なくとも客観視できることが重要となります。
 

必要経費になるかどうかの判断は、事業主の主観的な判断によるのではなく、業務の内容や費用の性格や目的など、さまざまな事情を含めて考え、そして、常識的な考え方で客観的に行うことです。
 

車の費用で考えると、走行距離や行先の履歴、ガソリン代の管理等をこまめにするだけではなく、第3者に説明できるように、ETC料金利用の理由等を付したり、運転日誌を付けたりと「費用内訳の明確化」を心掛けることに尽きます。

事業でも私用でも利用する車の経費はどうなる?

家事関連費の考え方とは?

個人事業主の場合、取得した車を私用と事業用の両方に利用するケースが考えられます。

 

個人事業主の各種の支払いのうち、一般に支払の中に「事業用」と「私用」の支出が混在しているものを家事関連費と言います。例えば、車を私用と事業用の両方に利用するときのガソリン代は家事関連費となります。
 

これに対し、家事費とは事業に関係のない自分や家族の生活費や個人的支出を指します。これには食費、医療費、娯楽費などがあります。

 

所得税法上の経費についての記載は少し複雑になっていますが、そのポイント部分を紹介します。
 

まず、所得税法37条において、必要経費となるものは「事業を生ずべき業務について生じた費用」と規定されています。そして同法45条において、「家事費」と「家事関連費のうち“一定のもの”以外」は必要経費に算入しないとしています。
 

さらに、この“一定のもの”については、所得税法施行令96条において、家事関連費の主たる部分が所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合に必要経費とすることができるとされています。
 

3つの規定をまとめますと、必要経費は認めるが、そのうちの家事費は認めない。しかし、家事関連費のうち、「業務に必要かつ明らかに区分できるものは」必要経費として認めるということです。
 

例えば、事業所得は、「収入 - 必要経費」で計算されます。私用における支出である家事費は「自分の意思で使えるお金」と考えられるため必要経費には算入されませんが、収入を得るために運搬に利用した車のガソリン代は回収されなければ事業は成り立ちません。
 

このように、個人の消費や収入に関係しない費用として家事費は所得計算外となりますが、明らかに事業用利用する車のガソリン代は所得計算に組み込まれ、必要経費となります。

家事関連費の考え方は消費税にも影響する?

家事関連費である車の費用は、業務遂行上必要であり、かつ、明らかに区分できれば必要経費と認められます。
 

すると、認められた費用については消費税において課税仕入れとしても認められることとなります。家事関連費については、必要経費と家事費を合理的に配分することを「家事按分(かじあんぶん)」と言いますが、車両本体購入時においても家事按分で消費税の計算が可能です。
 

つまり、200万円の車両の消費税が16万円だとすると、事業費:家事費=8:2であることが明らかであった場合、消費税の仕入れ税額控除として16万円×80%=12万8千円が認められるわけです。

車両費として認められる経費とは

認められる経費

ここで、個人事業主の家族が保有する車をその事業で使用するときの車両費は所得税法上認められるケースがあります。
 

所得税基本通達56-1は、「親族の資産を無償で事業の用に供している場合」として、個人事業主が、同一生計の親族が持つ資産を無償で事業に使っているときは、その親族が払う費用を個人事業主の事業の経費にすることができるとしています。
 

例えば、妻名義の車を事業で使用していた事業主は、その車の費用を必要経費にできるというイメージです。

認められなかった経費

一方で、個人事業主が車の経費について所得税法上認められなかったケースを紹介します。
 

医療業を営む個人事業主は、週の大半は事業を営むビルで過ごし、休日等には内部事務を手伝う妻に必要書類を運ぶためや家族に会うために自宅に車で戻っていました。そして、その際にかかったガソリン代やETC料金を経費に算入しましたが認められませんでした。これらガソリン代等の費用については家事関連費になるとされましたが、事業に必要である部分が明らかに区分されていなかったからです。
 

裁決では、事業上必要であった部分を明らかにする記録等がなく、他に証拠がないことから必要経費ではないとされました。

車の経費が認められるために必要なこと

一般に、費用が事業と直結し、かつ、事業をする上に必要な費用は税務上経費と認められます。しかし家事関連費については、裁決の例を見るとおり、記録等などで明らかに区分できる、少なくとも客観視できることが重要となります。
 

必要経費になるかどうかの判断は、事業主の主観的な判断によるのではなく、業務の内容や費用の性格や目的など、さまざまな事情を含めて考え、そして、常識的な考え方で客観的に行うことです。
 

車の費用で考えると、走行距離や行先の履歴、ガソリン代の管理等をこまめにするだけではなく、第3者に説明できるように、ETC料金利用の理由等を付したり、運転日誌を付けたりと「費用内訳の明確化」を心掛けることに尽きます。

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まとめ

最近は、カーシェアリングの話もよく話題になります。車を利用するだけでなく、個人事業主がカーシェアリングの貸手となることも可能です。個人間でのカーシェアリングをマッチングするアプリまで出回っていることから、今後はレンタル料としての費用計上でなく、収益計上も増えてくるかもしれません。車に係る費用だけではありませんが、今後はますます「費用内訳の明確化」が求められるようになるでしょう。

▼参考URL

岡和恵
大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。 システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。 2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。
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