断れる?それとも応じる?中小事業主がすべき
給料の前借り申込みの対応方法

断れる?それとも応じる?中小事業主がすべき  給料の前借り申込みの対応方法
公開日:
2019/10/29
 
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従業員から給料前借りの希望があった場合応じるべきか断ることができるのか気になります。また返済方法やトラブルなどの悩みもあります。近年、給料日前に現金が必要になった従業員に給料を先払いしてくれる、給与前払いサービスという新サービスも人気です。給料前借りへの対応の仕方、給与前払いサービスについてご説明します。

従業員から給料の前借り申し込まれたら?

労働基準法の非常時払いに当たるかどうかの理由を確認!

従業員からの給料の前借りを申し込まれたら、事業主は理由を聞き、労働基準法の「非常時払(ひじょうじばらい)」に当たるかどうかを確認して対応を決める必要があります。労働基準法には、結婚などの非常時払いに該当する理由による給料の前借りには応じなければならない旨が定められているからです。

 

非常時払は労働基準法第25条「使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。」の規定に基づいて行われる、給料の前払いです。疾病には業務外での病気やケガも含まれ、災害には台風や大雨などの自然災害も含まれます。

 

給料前借りが非常時払とならない理由によるもの、たとえば遊ぶためやギャンブル目的での給料前借り申込みの場合、事業主は断ることができます。厚生労働省のサイトにはQ&Aで次の記載があります。

 

”Q:従業員が給料を前借りしたいと申し出てきました。前借りの前例がないので、どのようにすればいいか教えてください。

A:労働基準法第25条には非常時(出産、結婚、病気、災害等)について、給料日前でも給料を払うように定めています。

しかし、この条文で定めているのは、すでに行った労働に対して給料日前でも支払うように定めているのであって、これから行う予定の労働に対して給料を払うように求めているものではありません。従って、前借りに応じる義務はありません。”

福利厚生充実を目指すなら給与前払いサービス検討を!

従業員からの給料前借り申込みは断っても問題ありませんが、外部サービスを利用して対応する方法もあります。給料支払日より前に事業主に代わって従業員に対して給料の前払いを行う、給与前払いサービスというサービスです。

 

外国人労働者が増えたり働き方の多様化が進んだりしていることにより、給料の受取方法もこれまでのように月払いではなく、週払いや日払いを希望する人が多くなってきています。このようなニーズへの対応を目的にしたサービスで、福利厚生充実の一環として導入する会社が増えています。

従業員への給料の前払いの問題点

労働基準法違反になる可能性がある

従業員からの給料前借り申込みに応じて前払いをすると、労働基準法違反となる恐れがあります。労働基準法第5条では「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。」と、強制労働を禁止しています。給料の前払いは債権を武器に従業員に強制労働をさせる恐れがあるとして認められていません。

返済方法でトラブルになる可能性がある

給料前借り申込みへ対応するときは、返済方法にも十分に注意して慎重に行わなければなりません。勝手に天引きするとトラブルに発展して、スムーズに返済が受けられなくなります。

 

また給料前借りの天引きでの返済は、労働基準法違反となる恐れがあります。労働基準法では賃金について第17条で「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。」、第24条第1項で「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と規定しています。事業主による勝手な給料天引きは、これらの前借金相殺の禁止、賃金全額払いの原則に抵触します。給料前借りの返済であっても、安易に行うべきではありません。

従業員からの給料前借り申込みへの前向きな対応方法

法律違反やトラブルにならない給料の前払いとは?

従業員に対する給料の前払いをする際は金額に注意したり、返済方法についてはきちんと書面を交わしておくことで、労働基準法違反になったりトラブルへ発展したりする恐れが回避できます。

 

前払いする金額は、すでに働いている分のみにすると労働基準法違反となる恐れがなくなります。強制労働の原因になるとして禁止されているのは、まだ働いていない分の給料の前払いです。すでに働いている分の給料については支給日より前に払っても、労働基準法違反にはなりません。

 

返済方法については合意書の作成によって、給料天引きが可能になります。従業員の自由な意思に基づく天引きは労働基準法違反にならないので、その旨を明らかにし、書面にしておくことで返済分を天引きできるようになります。しかし手取り額の4分の3は民事法上で差し押さえが禁止されているので、天引きは4分の1までの範囲に留めておかなければなりません。

従業員の生活安定のための社内融資制度

従業員からの給料前借りの申込みに対して、社内融資制度で対応する方法もあります。社内融資制度は資金を必要としている従業員に対して会社が現金を貸し付ける制度です。福利厚生の一環として採用される制度で、大企業をはじめとして中小企業でも導入を進めるところが多くなっています。すでに働いた分の給料を限度額とする給料の前払いよりも多くの金額が貸付可能で、また給料からの天引きを返済方法にすることができます。

 

従業員としても他の金融機関を利用するよりも低金利で、安心して融資が受けられるメリットがあります。

給与前払いサービスの導入という対応策

給与前払いサービスとは?

給与前払いサービスは第三者であるサービス提供会社が、会社に代わって従業員に対して給料を前払いするサービスです。従業員の勤務状況に応じて、すでに働いた分についての給料の前払いを行います。従業員は専用カードやスマホアプリを利用して、申請や受け取りを行います。サービスの利用料金は会社や、実際に前払いを受ける従業員が手数料として支払います。

 

2005年に東京都民銀行(現在はきらぼし銀行)が開始したサービス「前給」をもとに、現在は多くのサービス提供会社が参入して、さまざまなサービス提供を行っています。

給与前払いサービスのメリットは?

給与前払いサービスを利用すると、事業主は従業員からの給料前借り申込みに対してどう対応するかという悩みや、資金準備の問題を解消することができます。従業員にとっては気兼ねなく働いた分の給料の先払いが受けられることで、働きやすさやモチベーション・やる気のアップにつながります。福利厚生の一環として近年、注目度や人気が上昇しています。

まとめ

従業員からの給料の前借りについて、基本的に事業主に応じる義務はありません。しかし給料日前の支払いニーズは高く、給与前払いサービスが人気です。従業員からの給料前借りの申込みに対する事業主の後ろ向きな態度は信頼をなくさせ、やる気やモチベーション減退につながります。社内融資制度や給与前払いサービスによって、福利厚生充実を図りましょう。

矢萩あき
複数の企業で給与計算などの業務を担当したことから社会保険や所得税などの仕組みに興味を持ち、結婚後に社会保険労務士資格とファイナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。現在はライターとして専門知識を活かした記事をはじめ、幅広い分野でさまざまな文章作成を行う。
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