非常用食料品は損金算入できる?
税額計算時の取り扱いについて解説

非常用食料品は損金算入できる?  税額計算時の取り扱いについて解説
公開日:
2021/02/22
 
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地震や台風、豪雨といった災害に備えて、非常用食料品や防災用品を社内に用意している企業も多いでしょう。通常、食料品をはじめとした消耗品の購入にかかった費用は損金に算入できますが、数年間、場合によっては数十年間も保管できる非常用食料品の購入費用は損金に含められるのでしょうか?この記事では、非常用食料品を購入した時の税務上の取り扱いや注意点について、文房具や切手など他の消耗品との違いにも触れながら解説します。

利益から差し引くことができる費用

法人税や消費税の課税対象となる金額を計算するにあたり、収益と費用を正しく算出する必要があります。特に費用の算出を正確に行うことは、税務署からの指摘を回避するだけでなく、課税対象から適切な金額を控除し節税するためにも重要です。

法人税の課税対象から差し引くことができる費用

法人税の場合、課税所得は益金(収益)から損金(個人事業主の場合は必要経費)を除くことで算出されます。法人税法上の言葉である「損金」は、会計上でいう「費用」とほぼ同じ意味を持ちますが、何が損金になり、何が損金にならないかの判断には複雑な部分があるので確認しておきましょう。

 

損金として利益から差し引くことができるのは、事業に関連する、つまり収益のもととなっている費用です。具体的には、売上原価や販売費、一般管理費、完成工事原価、災害などによる損失額などが該当します。ただし一部の費用は損金に算入できません。損金に算入できない費用として、例えば以下のものが挙げられます。

 

  • 交際費の一部
    交際費は、基本的にはすべて損金には算入しないという決まりになっています。ただし、社員のためではなく事業のために行った接待などの飲食にかかる交際費のうち、1人当たりの金額が5,000円以下であるものなど、損金に算入できるものも一部あります。
  • 減価償却費のうち、償却限度額を超過する金額
    ただし、この超過額はその後の事業年度において償却不足額があるときは、その不足額の範囲内で損金に算入することができます。
    なお、事業のために使用する消耗品や備品を購入した場合でも、取得価額が10万円未満であれば減価償却資産には該当せず、購入にかかった費用をそのまま損金に算入できます。
  • 役員給与のうち、定期同額給与や事前確定届出給与、または業績連動給与(上場企業の場合のみ)のいずれにも当てはまらないもの
    なお、定期同額給与などに該当するとしても、役員給与が極端に高額になる場合、高額と考えられる部分の金額は損金として認められません。

消費税の課税売上から差し引くことができる課税仕入高

消費税の場合、課税売上げから課税仕入れを除いた金額が課税対象となります。課税仕入れに含まれるのは、棚卸資産や原材料、事務用品の購入、機械などの事業用資産の購入や賃借、事業にかかわる役務に対する対価の支払いなど、事業を行うためにかかった費用です。

未使用の消耗品などの取り扱い

ここまで法人税における損金や消費税における課税仕入れについての基本的な考え方を紹介しましたが、判断に迷いがちなのが、未使用の消耗品などの取り扱いです。

 

損金の計算において、消耗品などの購入にかかる費用は、実際に使用した年度に損金算入します。そのため、購入したもののすぐには使用せず次の年度に持ち越す消耗品などがあった場合、期末に貯蔵品として資産に計上し、費用からは除かなければなりません。ところが「消耗品」のなかでも文房具のように定期的な購入がされているようなものについては、たとえ未使用の分があっても貯蔵品の計上はしなくても良いとされています。

 

ここで注意しなければいけないのは切手や金券などです。切手や金券も「消耗品」にあたりますが、切手や金券が損金算入できるのは使用した会計年度と覚えておきましょう。同じように消費税の課税仕入れ時期は使用したときになります。

非常用食料品などの取り扱い

税務上の費用の扱いについて、特に未使用の消耗品などに注目して説明してきました。それでは今回のテーマである非常用食料品は、どのような扱いになるのでしょうか。既に説明したとおり、課税仕入れの計算においては取得した年度に課税仕入れに計上できますが、ここでは損金の計算における非常用食料品などの取り扱いに注目して説明します。

非常用食料品は購入時に損金算入できる

非常用食料品にはかなり長期間保存できるものもあり、備蓄品や減価償却資産として扱わなければいけないと考える人もいるでしょう。しかし、結論からお伝えすると、非常用食料品は購入した事業年度に損金算入できます。損金の計算において、消耗品などは使用した年度に損金算入するというのが基本ですが、非常用食料品の場合も、購入し備蓄することで使用(事業供用)したとみなされるためです。また、食料品である以上は減価償却資産や繰延資産にはならないとされています。同様に備蓄目的で購入し取り替える消火器の中身も購入・備蓄した年度に損金算入できます。

防災用品も購入時に損金算入できる

防災用品も非常用食料品と同様に、備蓄することで事業供用したと考えることができるので消耗品費として損金算入できます。しかし、取得価額が10万円以上の場合は購入した年度に全額を損金算入することはできないこともあるため注意が必要です。そのような場合は減価償却資産として当該年度分の減価償却費のみを損金に算入します。

非常用食料品などの購入時の注意点

非常用食料品や防災用品の税務上の取り扱いを解説してきました。ここで、非常用食料品や防災用品を購入する際に気を付けておきたいことを、税額計算に関することも含め確認しましょう。

10万円以上の防災用品を購入する場合

既にお伝えしたとおり、防災用品の取得価額が10万円以上となる場合、減価償却資産として扱い減価償却費のみを損金とします。ヘルメットや懐中電灯などの防災用品の取得価額が10万円以上となることは少ないかもしれませんが、防災用品で大きなものや高価なものを購入する際は意識しておくべきポイントだといえるでしょう。なお取得価額が10万円以上であっても、使用可能期間が1年に満たない場合は、消耗品と同様に購入した事業年度に全額を損金算入できます。また、以下のような特例を利用できる可能性もあるので確認すると良いでしょう。

 

  • 一定の条件を満たす中小企業が30万円未満の資産を購入した場合、全額を損金算入できる(1事業年度あたり合計額300万円が上限)
  • 20万円の資産を購入した場合、一括償却資産に計上し、合計額を3年間に分割して償却費用として損金に算入する方法を選択できる

非常用食料品を社員に配布する場合

非常用食料品の場合、消費期限が近づいてきたものを社員に配布することがあるかもしれません。その際、一部の社員にのみ配布する等一定の条件下では現物給与だとみなされる可能性があります。現物給与となる場合、給与所得として損金に算入することはできますが社員にとっては所得税の課税対象となります。また社会保険料の金額に影響するため、非常用食料品を社員に配布したいと考える場合は、このことも考慮に入れたうえで判断しましょう。

 

☆ヒント
今回説明した非常用食料品のように、損金として算入できるかできないか、判断に迷うものは多いものです。損金にできないのに損金にしてしまうと、税務調査で厳しい指摘を受けることになるでしょう。一方で上手く計算することで節税にもつながります。損金の計算に不安がある場合は、顧問税理士の指導を受けられると安心できるでしょう。

まとめ

今回は非常用食料品の取り扱いについて、法人税の課税所得計算時の損金に算入できるかどうかを中心に解説してきました。さまざまな災害リスクが叫ばれる昨今、損金や課税仕入れの正しい計算方法を理解したうえで、非常時の備えを万全にしたいものです。

坂下慶太
東京大学卒。米国大学院に進学予定。 東証一部上場企業にて経理業務を担当。 経理業務で体得したスキルや知識を中心に解説していきます。
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