法人が養老保険に加入したら税金はどうなる?
生命保険と法人税の関係

法人が養老保険に加入したら税金はどうなる?  生命保険と法人税の関係
公開日:
2019/11/22
 
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア

従業員の福利厚生のためであったり、節税のためであったりと、法人は様々な理由で養老保険などの保険に加入することがあります。その際に問題になるのが、生命保険に加入した場合の経理処理や税金がどうなるかということです。ここでは、法人が生命保険などに加入した場合の処理方法について解説します。

法人が支払う生命保険の種類

まず、法人が加入できる生命保険にどのような種類があるか、代表的なものを見ていきましょう。

①定期保険

定期保険とは、被保険者が死亡した場合に死亡保険金を受け取ることができる生命保険です。契約時に一定期間の保険期間を定めています。満期返戻金がなく、いわゆる「掛け捨て」といわれる保険です。

※定期保険には、これとは別に、保険期間が長期のものでその期間に支払う保険料が均等である「長期平準定期保険」や、加入している期間に応じ、死亡保険金の額が増えていく「逓増定期保険」があります。

②終身保険

終身保険とは、契約期間がない終身の保険で、一生涯にわたって保障される保険のことです。必ず死亡保険金を受け取ることができる保険として、加入者にメリットがあります。

③養老保険

養老保険とは一定の保険期間がある生命保険で、死亡時には死亡保険金が、契約満了時には満期(生存)保険金が受け取れるという保険です。また、死亡保険金と満期(生存)保険金で受取人を変えることができるので、法人として様々な使い方ができます。

④定期付養老保険

定期付養老保険とは、定期保険と養老保険をプラスした保険のことです。つまり、保険料の払込期間はあるが、保証は一生涯続きます。この保険も、死亡保険金と満期(生存)保険金で受取人を変えることができます。

令和元年7月8日以後に取り扱いが変わる 生命保険の税制改正とは

ここまでは、法人が加入できる生命保険の種類について確認しました。この生命保険の処理については税制改正があり、令和元年7月8日以後に契約する生命保険については、取り扱いが変わります。そこでここでは、生命保険の税制改正の内容について見ていきましょう。

税制改正後は最高解約返戻率によって処理が変わる

生命保険の税制改正で最も大きいのが、最高解約返戻率によって処理方法が変わるということです。対象となる保険は、保険期間3年以上の定期保険・第三分野保険で、かつ支払保険料が給与とならないものです。では、どのような会計処理になるのかを見ていきましょう。

①最高解約返戻率が50%以下の保険

原則、支払保険料の全額が経費になります。

②最高解約返戻率が50%超70%以下の場合
  • 保険期間開始~4割経過期間
    支払保険料×40%:資産計上
    支払保険料×60%:経費
  • 4割経過期間~7.5割経過期間
    支払保険料の全額が経費
  • 7.5割経過期間以降
    支払保険料の全額が経費+今までの資産計上分を均等に取り崩して経費計上
③最高解約返戻率が70%超85%以下の保険
  • 保険期間開始~4割経過期間
    支払保険料×60%:資産計上
    支払保険料×40%:経費
  • 4割経過期間~7.5割経過期間
    支払保険料の全額が経費
  • 7.5割経過期間以降
    支払保険料の全額が経費+今までの資産計上分を均等に取り崩して経費計上
④最高解約返戻率が85%超の保険
  • 保険期間開始~10年経過日まで
    支払保険料×最高解約返戻率×90%:資産計上
    支払保険料×最高解約返戻率×10%:経費
  • 10年経過日以降
    支払保険料×最高解約返戻率×70%:資産計上
    支払保険料×最高解約返戻率×30%:経費
  • 最高解約返戻率になった日以降
    支払保険料の全額が経費+今までの資産計上分を均等に取り崩して経費計上

 

ただし、資産計上期間は、保険期間開始日より

 

  • (1)最高解約返戻率になった日
  • (2) ≦70% になった日

 

のいずれか遅い方が期限になります。

生命保険の30万円ルールとは

生命保険の税制改正で、もう1つ注目したいのが、30万円ルールです。これは、一被保険者あたりの年間保険料が30万円以内となる場合は、支払保険料の全額を経費にすることができるというものです(医療保険については、10月8日以降に加入したものに限る)。ただし、次の要件に該当するものに限られます。

 

  • 解約返戻金のない定期保険等
  • 最高解約返戻率が70%以下、かつ年換算保険料相当額が30万円以下の定期保険等
  • 保険期間が3年未満の定期保険等

 

つまり、全額経費にできる保険料を30万円までと上限を設けている規定となっています。

令和元年7月7日以前に契約した生命保険の取り扱い

令和元年7月8日以後に契約した生命保険の取り扱いを見てきました。では、7月7日以前に契約した生命保険はどうなるのでしょうか。ここでは、令和元年7月7日以前に契約した生命保険の取り扱いを確認します。

令和元年7月8日以後は2つの処理方法が併用される

令和元年7月8日以後に契約した保険については、経理処理の方法が変わることを説明しました。ここで、不安になるのが「7月7日以前に契約したものも遡及されて、改正後の経理処理が適用されるのではないか」ということでしょう

 

実際は、7月7日以前に契約したものについては、今まで通りの方法で処理することができます。つまり、令和元年7月8日以後においては、改正前の処理と改正後の処理それぞれ2つの処理方法を併用することになります

令和元年7月7日以前に契約した生命保険の処理方法

令和元年7月8日以後においては、改正前の処理と改正後の処理の2つの処理方法を併用することになります。ここでは、7月7日以前に契約した生命保険の処理方法について見ていきましょう。

①定期保険

定期保険は、支払い時に全額経費にできます。ただし、長期平準定期保険や逓増定期保険では、処理が複雑になります。この場合は、税理士などの専門家に処理方法をご相談ください。

②終身保険
  • 法人が受取人の場合:資産計上
  • 役員や従業員の遺族が受取人の場合:支払い時に従業員の給料として処理
③養老保険

死亡保険金と満期(生存)保険金で受取人を変えることができるため、受取人がどうなっているかで経理処理が異なります。

 

保険受取人 経理処理
死亡保険金 満期(生存)保険金
法人 資産計上
役員・従業員の遺族 役員・従業員 給与
役員・従業員の遺族 法人 1/2資産計上・1/2経費計上
④定期付養老保険

定期付養老保険も、死亡保険金と満期(生存)保険金で受取人を変えることができます。
 
そのため、受取人がどうなっているかで経理処理が異なります。また、養老保険部分と定期保険部分でも経理処理が異なります。

 

保険受取人 経理処理
死亡保険金 満期(生存)保険金 養老保険部分 定期保険部分
法人 資産計上 経費計上
役員・従業員の遺族 役員・従業員 給与 経費計上
役員・従業員の遺族 法人 1/2資産計上
1/2経費計上
経費計上

まとめ

今回は、法人が加入する生命保険の処理方法について確認しました。生命保険には様々な種類のものがあり、それぞれで処理方法が異なります。そのため、これまでも複雑な処理方法になっていました。そこに税制改正が加わり、さらに複雑なものとなっています。

 

今回ご紹介した、令和元年7月8日以後の税制改正については、まだ基本通達の改正があったばかりで、実務上にどう影響がでてくるかの検証は十分に行われていません。そのため、今後さらに改正などが入る可能性もあります。

 

今回の改正で、生命保険を使った節税はしにくくなりました。もしも、これから生命保険に加入する場合は、必ず税理士などの専門家に処理方法やその節税効果について相談するようにしてください。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア
全国の税理士をご紹介しています
税理士紹介ビスカス