環境に優しくすると節税になる! 省エネ再エネ高度化投資促進税制とは | MONEYIZM
 

環境に優しくすると節税になる!
省エネ再エネ高度化投資促進税制とは

2018年度の税制改正にて、省エネ再エネ高度化投資促進税制が創設されました。この制度は省エネや再エネに貢献する投資を行うことによって税制優遇を受けられる制度ですが、複数の制度が関連していることもあり、非常に複雑になっています。そこで今回は、省エネ再エネ高度化投資促進税制を分かりやすく解説していきます。

省エネ再エネ高度化投資促進税制の概要

省エネ再エネ高度化投資促進税制の全体像

2018年4月1日に税制が改正され、省エネ再エネ高度化投資促進税制が創設されました。その名の通り、省エネルギーおよび新エネルギー(再生可能エネルギー)に関連する制度ですが、より詳細な区分として、「省エネ促進税制」「連携省エネ税制」「再生可能エネルギー部分」の大きく3つの税制措置によって構成されています。各税制措置については次項以降で詳しく解説しますが、それぞれの概要は以下のようになっています。
 

  • 省エネ促進税制
    省エネ促進税制は、特定の評価を受けている事業者等が対象となる省エネ設備等を新たに取得した際に、特別償却等の税制優遇を受けられるというものです。この税制の管轄は各地域の経済産業局エネルギー対策課や資源エネルギー庁省エネルギー課となっています。
  • 連携省エネ税制
    連携省エネ税制とは、連携省エネルギー計画に記載された設備等への投資について、一定の要件を満たすものは特別償却等の税制優遇を受けられるというものです。この税制の管轄も同様に各地の経済産業局エネルギー対策課や資源エネルギー庁省エネルギー課です。
  • 再生可能エネルギー部分
    再生可能エネルギー部分は、固定価格買取制度からの自立や長期安定発電の促進に資する再生可能エネルギー設備等を取得した際に、特別償却20%の税制優遇を受けられるというものです。この税制措置については、資源エネルギー庁新エネルギー課の管轄となっています。

趣旨や目的、背景

省エネ再エネ高度化投資促進税制が設立された背景には、エネルギーミックスという考え方があります。エネルギーミックスとは、個々の電源が全電力に占める割合を示したものです。2030年度の政府案では、省エネによる削減が17%程度、再生可能エネルギーは22~24%となっており、その実現に向けてエネルギー消費効率の改善や再生可能エネルギーの導入拡大が必要となっています。そのため、
 

  • 省エネ法の規制対象事業者等を対象とした、大規模または複数事業者の連携による高度な省エネ投資
  • 再エネの自立化・長期安定化に資する投資を促進する税制

 

を通してエネルギー利用の最適化や自給率向上を図るという目的のもと、同制度が設立されました。

省エネ促進税制について

省エネ促進税制は、事業者単体により中長期的な計画に基づく省エネ投資が行われた場合に、対象設備に関して取得価額の30%の特別償却等の税制優遇を受けられるという制度です。対象設備の例としては、産業用ヒートポンプ、コージェネレーションシステム、高性能ボイラーなどがあります。
 

優遇を受けるために必要な条件

税制優遇を受けるためには、以下のような条件を満たす必要があります。
 

  • 青色申告書を提出する個人・法人
  • 「事業者クラス分け評価制度」にて、直近2年度で連続してSクラス評価であった特定事業者または特定連鎖化事業者等
  • 対象期間内に対象設備等を新たに取得して事業の用に供した場合

手続きの方法

申請者の手続きは以下のような流れで進めます。
 

  • 中長期計画書の提出
  • 確認申請書の提出
  • 確認書の受領
  • 設備等の取得
  • 税務申告/エネルギー使用量計測
  • 実施状況報告書の提出

他の2つの制度との関連

他の税制措置との併用という点では、同一の減価償却資産について2つ以上の特別償却や税額控除などの適用を受けることはできませんが、固定資産税等に対する税制措置については重複適用ができると定められています。

連携省エネ税制について

連携省エネ税制とは、連携省エネルギー計画の認定制度において認定を受けた工場等連携関連高度省エネルギー増進設備に関して、取得価額の30%の特別償却等を行えるというものです。中小企業者等は取得価額の7%の税額控除を選択することも可能です。連携省エネ税制の対象となる工場等連携関連高度省エネルギー増進設備には、機械及び装置、器具及び備品、建物附属設備、構築物並びにソフトウェアなどが含まれます。

なお、上記の連携省エネルギー計画とは、複数の事業者が連携して省エネに関する取組みを行う場合に、省エネ法の定期報告書において連携による省エネ量を事業者間で分配して報告することができる制度です。

優遇を受けるために必要な条件

税制優遇を受けるためには、以下のような条件を満たす必要があります。
 

  • 認定を受けた連携省エネルギー計画に記載された工場等連携関連高度省エネルギー増進設備等であり、国内にある対象事業者の事業の用に供したもの
  • 計画書の認定日から2020年3月31日までに取得した設備

手続きの方法

手続きに際しては、連携省エネルギー計画の認定書または認定書の写し(経済産業大臣または経済産業局長から交付されたもの)を保存しておくことが必要となります。

再生可能エネルギー部分について

再生可能エネルギー部分は、再生可能エネルギー設備や付帯的設備の導入を通して発電量の増加に資する先進的な設備投資等に対して、対象設備に関して20%の特別償却を認めるという制度です。対象設備の例としては、中小水力発電設備、木質バイオマス発電設備、地熱発電設備等が挙げられ、各設備にはそれぞれ要件が設けられています。

優遇を受けるために必要な条件

税制優遇を受けるためには、以下のような条件が必要となります。
 

  • 青色申告書を提出する個人および法人
  • 対象期間内に対象設備を取得等して事業の用に供した場合

手続きの方法

法人の場合、法人税の確定申告書に「特別償却の付表」(特定設備等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表)と摘要額明細書を添付し、必要事項を記入して税務署に提出します。

個人事業主の場合は、青色申告決算書の「減価償却の計算」の「㋬割増(特別)償却費」の欄に特別償却の額を、「摘要」の欄に特例名(措法11)を記入して税務署に提出します。

他の2つの制度との関連

他の租税特別措置との併用という点では、法人税や所得税等の国税に対する他の優遇措置を受けた場合には、この税制措置を適用することはできません。

☆ヒント
税制の優遇措置を受けられれば支払う税金も大きく変わってくるため、利用可能な制度に申請することは非常に重要な経営上の戦略です。その一方で、どのような税制措置があるのかを調べ、自社の状況に合わせて適切なものを選択することはなかなか難しいというケースも多いのではないでしょうか。これらの分野に詳しい税理士であれば、個々の企業の特徴に合わせ、適切なアドバイスで経営をサポートすることができます。

まとめ

今回は省エネ再エネ高度化投資促進税制について、それぞれの税制措置ごとに解説してきました。もし優遇措置を受けられるケースがあれば、申請を検討してみてはいかがでしょうか。

山田隆裕
慶應大学卒。現、同大学院所属。
大学4年時に公認会計士試験に突破。
自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。
「税務/会計」カテゴリの最新記事