忘年会でも税金に注意しないといけない? 忘年会の開催や出席と税金の関係 | MONEYIZM
 

忘年会でも税金に注意しないといけない?
忘年会の開催や出席と税金の関係

年末になると、いよいよ忘年会シーズンの到来です。自社で開催する忘年会や得意先の忘年会など、多くの忘年会に出席する人も多いでしょう。しかし、事業をしている人にとって、忘年会は税金に注意しなければならない催しのひとつでもあります。ここでは、忘年会の開催や出席と税金の関係について詳しく解説します。

会社で忘年会を開催する場合に注意しなければならない税金とは

ひとくちに忘年会といっても、自社で開催する忘年会もあれば、招待を受けた他社の忘年会もあります。また、それぞれで税金面の注意点が異なります。ここではまず、自社で忘年会を開催する場合に注意しなければならない税金について見ていきましょう。

会社が開催する忘年会の費用は、経費で落ちる?

多くの会社では、自社が開催する忘年会の費用は会社が負担しています。では、会社が負担する忘年会費用は、経費になるのでしょうか。

 

会社の忘年会には、その会社の役員・従業員のみで行うものと、得意先も招いて行うものがあります。原則、得意先のいる・いないにかかわらず、忘年会は従業員の慰安のために行うため、忘年会の費用は経費になります

 

ただし、会社の役員・従業員のみで行うものと、得意先も招いて行うものでは、会計処理する科目が異なります。会社の役員・従業員のみで行うものは「福利厚生費」で、得意先も招いて行うものは「(接待)交際費」で処理します

会社が忘年会を開催する場合の税金の注意点

会社が忘年会を開催する場合は、原則、経費になります。しかし、注意点もいくつかあります。代表的な注意点について見ていきましょう。

①会社の役員のみで忘年会を開いた場合

自社が開催する忘年会では、従業員が出席せず、役員のみが出席するものもあります。この場合の会計処理はどうなるのでしょうか。

 

まず、会社の役員のみで忘年会を開いた場合は「社内飲食費」として経費になります。社内飲食費とは、一部の役員や従業員のみで飲食した場合に会社が支出した費用のことです。対して、福利厚生費は、従業員等におおむね一律に供与される通常の飲食に対する科目です。社内飲食費は福利厚生費に該当せず、「(接待)交際費」で処理します。

 

ただし、役員のみが出席する忘年会費用は役員の給料(報酬)とみなされる可能性があります。

②忘年会で、従業員に景品を渡した場合

忘年会について、会計処理以外で問題となるのが、従業員に景品を渡した場合の課税関係です。つまり、忘年会で従業員に景品を渡した場合、その景品は給料とみなされ、従業員に所得税がかかるのかということです。

 

実は、従業員が会社から支給された景品が、給料として課税されるかどうかは、景品の金額や内容、受け取る人の選出方法などで決まります。景品が安価なものであれば、基本的に景品を受け取った従業員が課税されることはありません。しかし、例えば、高額のものや一部の人のみが景品を受け取る場合は、給料扱いになる場合もあります

 

いくら以上だと高額になるのかといった明確な規定はなく、様々な状況により判断が異なる可能性があります。高額になりそうな景品を渡す場合には、事前に税理士などの専門家と相談したほうが良いでしょう。ただし、現金や商品券など金銭に該当するものを渡した場合は、上記の景品には含まれず、従業員の給料となり、税金がかかってしまうので注意が必要です。

他社が開催する忘年会に出席した場合に
注意しなければならない税金とは

ここまでは、自社が開催する忘年会について見てきました。ここからは、他社が開催する忘年会に出席した場合に注意しなければならない税金について見ていきましょう。

他社が開催する忘年会に出席した場合は、経費で落ちる?

自社で開催した忘年会は、経費になりました。では、他社が開催する忘年会に出席した場合は、経費で落ちるのでしょうか。結論からいうと、経費で落ちます

 

ここで問題になるのが、何の科目の経費になるのかということです。他社が開催する忘年会への出席は、つきあいの意味合いが強いため、原則「(接待)交際費」になります。ただし、自社が法人の場合、1人当たり5,000円以下の飲食費で、飲食した日や参加者の氏名・人数などを領収書に記載しているなどの一定の要件を満たしている場合は、交際費にしなくて良いことになっています。このケースに該当する場合は「福利厚生費」で処理します。

忘年会費用と交際費の関係とは

上述した通り、法人は忘年会費用でも一定のものは、交際費にせずに福利厚生費にすることができます。では、なぜ忘年会費用を交際費と福利厚生費に分ける必要があるのでしょうか。それは、忘年会費用をどのように処理するかで納める税金の金額が違ってくるからです。

 

個人事業主の場合は、交際費は支払った全額を経費にすることができます。そのため、忘年会費用を交際費で処理しても、福利厚生費で処理しても、納める税金の金額は同じです。

 

一方、法人の場合は、交際費は支払った全額を経費にすることができません。会社の規模により、交際費の一部もしくは全部が、税金の計算時に経費から省かれてしまいます(これを「損金不算入」といいます)。そのため、できるだけ交際費ではなく、福利厚生費などの他の科目で処理したほうが、税金の金額が低くなります。

 

ただし、交際費にするべきものを他の科目で処理しても、否認されます。節税のためには、法律で交際費にしなくて良いと決まっているものを理解し、正しく処理する必要があります。

忘年会費用は消費税の計算に影響を与える?
忘年会費用と消費税の関係とは

会社が納める税金で、法人税と所得税と同じく重要なのが、消費税です。では、忘年会費用は消費税の計算にどう影響を与えるのでしょうか。ここでは、忘年会費用と消費税の関係について見ていきましょう。

忘年会費用が消費税の経費になる場合とは

納める税金の計算は、簡単にいうと、売上で預かった消費税から、仕入や経費で支払った消費税を差し引いて計算します。帳簿に付けている取引から、消費税の課されているものを抜き出し、消費税の納付額の計算に使います。

 

そこで、重要となるのが、忘年会費用が消費税を課されているものかどうか判断をすることです。原則、自社で開催した忘年会費用も、他社で開催した忘年会費用も飲食代の支払いです。飲食代の支払いには、消費税が課されているため、消費税の経費になります

忘年会費用が消費税の経費にならない場合とは

原則、忘年会費用は消費税の経費になります。ただし、例外的に消費税の経費にならない場合があります。代表的なケースは、次のとおりです。

①従業員に金銭を渡した場合

従業員に忘年会費用として金銭を渡す場合があります。この場合、金銭を渡す行為自体には、消費税がかかりません。そのため、消費税の経費にはなりません。ただし、領収書と交換に金銭を渡した場合や、事前に金銭を渡した後に領収書とおつりが戻ってきた場合は、領収書に記載されている金額について消費税の経費になります。

②忘年会の参加費用を従業員から徴収して支払う場合

この場合、会社はお金を預かっているだけで、実際に忘年会の費用を支払ったのは従業員です。そのため、消費税の経費にはなりません。

③役員のみで忘年会を開催していた場合

役員のみで忘年会を開催していた場合は、役員の給料(報酬)とみなされる場合があります。この場合は給料扱いとなるため、消費税の経費になりません。

まとめ

自社で開催したり、得意先が開催したものに出席したりと、忘年会シーズンには多くの忘年会に参加することがあります。実は、忘年会費用は法人税や所得税、消費税と多くの税金に関係します。正しい処理をしないと、すべての税金の金額が違ってくることにもなるでしょう。

 

交際費や給料になるかどうかの判定など、判断の難しいものもあります。少しでも不明点があったら、間違いを防ぐために税理士などの専門家に相談しましょう。

 

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
「税務/会計」カテゴリの最新記事