借入金は経費になる?個人事業主の 借入金の処理方法について徹底解説 | MONEYIZM
 

借入金は経費になる?個人事業主の
借入金の処理方法について徹底解説

個人事業を行っていると、事業資金などの融資を受ける場面もあります。借入金は、返済が終わるまで毎月、返済しなければなりません。では、この借入金の返済は事業の経費になるのでしょうか。また、返済をした場合の会計処理はどうしたら良いのでしょうか。ここでは、個人事業主の借入金の処理方法について徹底解説します。

借入金は経費になる?個人事業主の経費とは

毎月発生する借入金の返済を1年間合計すると、大きな金額になります。そのため、借入金が経費になるかどうかを間違えて処理すると、税金に大きな影響を与えます。ここでは、そもそもどのようなものが個人事業主の経費になるのかを確認しながら、借入金について見ていきましょう。

個人事業主で経費になるもの

個人事業主で経費になるものは、原則、売上を生み出すためにかかった費用に限られます。売上を生み出すための費用には、売上に直結する費用と間接的な費用があります。売上に直結する費用を「売上原価」、間接的な費用を「販売費及び一般管理費」といいます。

売上原価は、その年に売れた商品の仕入れ高です。販売商品の運賃など仕入に直接かかった費用も含まれます。販売費及び一般管理費は、商品を販売するために必要な費用や、事務所やお店の管理などに必要な費用です。例えば、事務所やお店の家賃や消耗品費、水道代やガス代などが該当します。

個人事業主で経費にならないもの

個人事業主で経費にならないものは、売上を生み出さない支出です。例えば、所得税や住民税、生命保険料や自宅の地震保険料などです。所得税や住民税は、その年の利益(所得)に課されるもののため、売上を生み出しません。生命保険料や自宅の地震保険料は、個人が安心して生活していくために必要な費用のため、それ自体は、売上を生み出しません。そのため、経費になりません。

では、借入金の返済は経費になるのでしょうか。結論からいうと、借入金の返済は経費になりません。借入金の返済では、金融機関から借りたお金をそのまま返済します。売上を生み出したとは言えないため、経費にはなりません。

しかし、事業資金を借りたおかげで、設備投資や費用の支出ができて売上を生み出しているのではないかと思う人もいるでしょう。その通りですが、借入金の返済ではなく、借入金を用いて支出した設備投資や費用が経費になります。

ただし、返済時に支払う利息については、借りたお金ではないため、経費にできます。つまり、借入金の返済=経費ではない、支払利息=経費となります。
 

このような区別がなされているのは、借入金は負債を減らすもので、支払利息は負債を減らすものではなく、利益を減らすものです。そのため利息を払うことで節税効果につながるというわけです。
 

個人事業主の経費一覧については、「個人事業主にとっても経理業務は大切!知っておくべき個人事業主の経理業務一覧」をご覧ください。

個人事業主の借入金の処理方法

個人事業主の借入金は経費にはなりませんが、返済時に支払った利息は経費になります。では、借入金についてどのような経理処理をすれば良いのでしょうか。ここでは、借入金の流れに沿って、経理処理を見ていきましょう。

借入金に使う勘定科目

借入金に使う勘定科目には次のものがあります。まず借入時には「預金」「借入金」「租税公課」「支払手数料」があります。
 

借入金は銀行口座に振り込まれるので、貸方に「借入金」とその金額がはいり、借方の「普通預金」に入金された額を記載します。印紙代がかかった場合は「租税公課」で処理します。
 

「支払手数料」は銀行手数料が引かれた場合に記載が必要です。保証協会など、その他の保証料を引かれる場合は「前払費用」で処理します。
 

一方返済時は借方に返済した「借入金」と「支払利息」を仕訳します。貸方は「普通預金」となり、返済した合計額を記載しましょう。

借り入れ時の処理方法

具体的に、借り入れ時の処理方法について見ていきましょう。

例)事業資金が必要となり、銀行から500万円の融資を受けた。印紙代1万円、銀行への手数料2万円が差し引かれ、差額の497万円が事業用の通帳に振り込まれた

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
普通預金 497万円 借入金 500万円 事業資金借り入れ
租税公課 1万円     印紙代
支払手数料 2万円     銀行手数料

 

印紙代は「租税公課」、銀行手数料は「支払手数料」科目で処理します。保証協会などから融資を受けるときは、その他に保証料を差し引かれる場合があります。その場合は「前払費用」科目で処理します。

借入金の返済時の処理方法

次に、毎月行われる、借入金の返済時の処理方法について見ていきましょう。

例)事業用の通帳から毎月、借入金の返済として11,000円が引き落とされている。11,000円の内訳は、借入金の返済分10,000円、利息の支払分1,000円だった。

 

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
借入金 10,000円 普通預金 11,000円 借入金返済
支払利息 1,000円     利息の支払い

 

利息の支払いは、必要経費の「支払利息」科目で処理します。このように処理することで、利息の支払い部分のみが経費になります。

勘定科目は、あくまで一般例です。支払利息を利子割引料で処理するなど、他の勘定科目で処理しても問題ありません。普段使っている科目に合わせて処理してください。

個人事業主のローン返済についても経費にできるのか

借入金と別に住宅ローンなどの返済は経費にできるのでしょうか。住宅ローンも借入金と同じで、利息分のみしか経費として計上できません。また自宅兼事務所である場合は、経費として認められる利息分も家事按分案分する必要があります。
 

このように住宅ローンの場合、利息のみが経費の対象になりますが、住宅ローン控除の対象になる場合があるので、住宅ローン控除の対象なのかどうか、ローンを組む前に確認しておきましょう。
 

また、ローン返済時に用いる勘定科目は未払金と支払利息です。「未払金」はローンを組んで、残高が残っている場合に使われる勘定科目です。また利息については借入金と同様、「支払利息」となります。

個人事業主が借り入れをするためには

ここまでは、借入金の処理方法について見てきました。では、事業用資金が必要となり、実際に借り入れをしたい場合は、どのようにすれば良いのでしょうか。ここからは、個人事業主が借り入れをする方法について見ていきましょう。

金融機関などから融資を受ける

個人事業主が融資を考える際に、まず頭に浮かぶのが、銀行などの金融機関でしょう。実は、銀行からの融資には、大きく分けて銀行が直接に融資する場合と、銀行が窓口になっているものの2種類があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

 ①銀行が直接に融資する場合

銀行や信用金庫・信用組合から直接に融資を受ける方法です。普段から付き合いのある金融機関だと融資を受けやすい場合もありますが、一般的には審査は厳しいです。また、支払う利息も比較的高くなります。決算書や確定申告書、事業計画書など多くの書類も必要となるため、融資を受ける前に、あらかじめ金融機関の担当者や税理士などの専門家と相談しましょう。

 ②銀行が窓口になっているもの

銀行が窓口になっていますが、他の機関から融資を受ける方法です。中小企業や個人事業主への資金支援を目的とした、財務省所管の「日本政策金融公庫」などが有名です。また、中小企業や個人事業主と金融機関との間に入り、融資が受けやすくなるように動く「信用保証協会」もあります。

日本政策金融公庫や信用保証協会を利用すると、申込などの手続きは煩雑な反面、銀行などでは融資が受けられない場合でも、融資を受けられる可能性が高くなります。初めて融資を受ける場合などは、日本政策金融公庫や信用保証協会を利用した方が良いでしょう。個人事業主の融資については、次のページでも詳しく解説しています。

助成金や補助金を受けることも考えよう

個人事業主が事業資金を得るためには融資だけでなく、助成金や補助金を利用する方法もあります。

 

助成金とは、雇用や研究開発などの一定の目的に対して交付される金銭のことです。また、補助金とは、一定の条件に該当する事業をしている場合に交付される金銭のことです。助成金や補助金の良い点は、どちらも返済の必要がないことです。返済の必要がないため、毎月の資金繰りは楽になります。

 

ただし、助成金や補助金は、申込などに期限があります。そのため、自分が受けられる助成金や補助金があるかどうか、常に注意しておく必要があるでしょう。補助金や助成金の情報は、次のホームページで確認できます。ぜひ、ご活用ください。

 

参考サイト:「ミラサポ」補助金・助成金のページ
https://www.mirasapo.jp/subsidy/index.html
参考サイト:「J-Net21」支援情報ヘッドライン
https://j-net21.smrj.go.jp/snavi/support

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まとめ

事業用資金の融資を受けると、毎月、借入金の返済をしなければなりませんが、借入金の返済は経費になりません。支払利息の部分のみ経費になります。間違って、借入金の返済を経費にしてしまうと、納める税金の金額が大きく異なってしまうので、注意が必要です。

融資や補助金・助成金を受けるなど、さまざまな方法で事業用資金を得られます。しかし、そのためには、煩雑な手続きや、必要書類の作成などが必要となります。融資を受ける際には、あらかじめ、税理士などの専門家に相談したほうが良いでしょう。
 

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