2015年からの法人の税制改正により、
会社に及ぼす影響とは

2015年からの法人の税制改正により、  会社に及ぼす影響とは
公開日:
2020/01/14
 
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経済政策の一環として、2015年度から法人の税金の仕組みを段階的に変えています。そのため、たとえ同じ業績でも納税額が改正前よりも増えたり減ったりすることが考えられます。そこで、2015年からの改正の目的や内容、会社に及ぼす影響について説明します。

2015年度からの法人課税の改正とは

2015年度からの法人課税の改正の目的とアウトラインについて説明します。

稼ぐ企業の税負担を軽くするのが目的

デフレ脱却と経済再生のために稼ぐ力のある企業の税負担を軽くして、法人課税を成長志向型の構造に変えるのが目的です。そのため、所得に対する法人課税の改正に着手しています。

法人課税の改正の2本柱

「実効税率を下げる」と「課税ベースの拡大」が法人課税の改正の2本柱になります。

(1)実効税率

実効税率とは、法人税や法人事業税など法人所得に対するトータルの税率のことを指します。2015年度から段階的に税率を下げてきました。

(2)課税ベースの拡大

課税ベースとは、次の図の「課税所得」の範囲のことを指します。

 

2015年度から図の「増税要因」の範囲を拡大し、「減税要因」の範囲を縮小することで課税ベースの拡大を図ってきました。

小規模事業者への影響は?

法人課税の改正により、実効税率が下がり、課税ベースが拡大することで、小規模事業者にとって増税・減税になるのかはケースバイケースです。会社の規模や業績の推移などにより、A企業は増税になってもB企業は減税になり得るためです。そのため、自社の状況に応じて税金対策のやり方が違ってきます。

法人課税の改正内容

法人課税の具体的な改正内容について見ていきましょう。

実効税率の推移

実効税率は、欧米諸国と同じように20%台にするため段階的に引き下げられてきました。

 

2014年度 2015年度 2016年度 2018年度
(改革前) (2017年度改正) (2016年度改正)
法人税率 25.5% 23.9% 23.4% 23.2%
国・地方の法人実効税率 34.62% 32.11% 29.97% 29.74%

 

課税ベースの拡大その1~欠損金繰越控除~

青色申告で確定申告をしている法人に適用される「欠損金繰越控除制度」が見直されました。2015年改正前は累積赤字に相当する青色欠損金の全額が当期の所得から控除できましたが、資本金1億円超の法人や大企業のグループ法人は控除できる割合が次のように制限されました。

 

  • 2012年4月1日~2015年3月31日までに開始する事業年度:80%
  • 2015年4月1日~2016年3月31日までに開始する事業年度:65%
  • 2016年4月1日~2017年3月31日までに開始する事業年度:60%
  • 2017年4月1日~2018年3月31日までに開始する事業年度:55%
  • 2018年4月1日から開始する事業年度:50%

 

たとえば、青色欠損金が1,000万円とします。当期の所得が900万円の場合、2015年度の改正前なら「当期の所得900万円-青色欠損金900万円(1,000万円のうち900万円を利用する)=課税所得0円」となりました。しかし、控除できる割合50%に制限されて欠損金の全額が利用できない場合、「当期の所得900万円-青色欠損金500万円(1,000万円×50%)=課税所得500万円」と法人税などが課税されてしまいます。

 

ただし、小規模事業者は改正前と同じように青色欠損金の全額が利用できます。

 

また、2018年4月1日から開始する事業年度の青色欠損金は繰越期間(欠損金が利用できる期間)が「9年間→10年間」に拡大されました。

課税ベースの拡大その2~減価償却~

2016年度の税制改正で固定資産を税法上の使用可能期間に相当する耐用年数にわたって費用化する減価償却制度が見直されました。2016年4月1日以後に取得する「建物附属設備」と「構築物」が建物と同じように償却方法が定額法のみになりました。

 

改正前なら前倒しで経費に計上できた定率法が利用できなくなるため、購入年度の節税効果が薄くなります。

課税ベースの拡大その3~その他の改正~

その他の改正として小規模事業者と関連性の薄い項目を紹介します。

(1)受取配当等益金不算入制度の見直し

法人税が非課税である受取配当等益金不算入制度が見直されました。上場株式など持株比率の低い株式配当金の非課税割合が縮小されました。たとえば、持株比率が5%の株式なら非課税割合が「50%→20%」と減少しています。

(2) 外形標準課税の拡大(法人事業税)

資本金1億円超の法人を対象に所得以外の項目に課税する外形標準課税の割合が拡大されました。

(3)租税特別措置の見直し

研究開発税制が共同研究・委託研究などの「特別試験研究費」に重点を置くようになったり、生産性向上設備投資促進税制が縮小・廃止したりと課税ベースの拡大につながっています。

他にもある「デフレ脱却・経済再生」のための税制改正

法人課税だけでなく、個人事業主にも関係ある税制改正について説明します。

賃上げ・生産性向上のための税制

賃上げ・生産性向上のための税制とは、雇用や設備投資などの生産性向上を促進する制度です。具体的には、給与支給額が前年度よりも多く、国内への設備投資や教育訓練費に投資した個人事業主および法人に対して税額控除します。小規模事業者の場合、2013年度の所得拡大促進税制からスタートしました。その後拡充を経て、2018年度に賃上げ・生産性向上のための税制に改組され、税額控除の割合が大きくなりました。

NISA(ニーサ)の拡大

NISAとは、個人投資家のための株式・投資信託の少額投資に対する配当と売却益の非課税制度です。2016年からNISAの年間投資額の非課税枠が「100万円→120万円」に拡大されたり、「2016年にジュニアNISA(子供用のNISA)」と「2018年に積立NISA(投資初心者の向け)」が創設されたりしました。

教育資金贈与の非課税措置の拡大

親や祖父母の財産を子や孫への贈与を促進する目的で、教育資金贈与の非課税枠が最大1,500万円まで拡大されました。2016年から非課税対象に通学定期券代や留学渡航費が追加され、2019年から受贈者に次のような制限が加えられました。

 

  • 2019年7月1日以降、学習塾やスポーツ教室などへの支払いの非課税対象は教育訓練給付金の支給対象となる受講費用に限定される
  • 2019年4月1日以降、前年合計所得が1,000万円を超える受贈者に対する教育資金贈与は非課税対象から外れる

合わせて知っておきたい財政健全化に伴う増税

財政健全化に伴う増税のうち、小規模事業者に影響がある項目を取り上げます。

消費税率引き上げと軽減税率導入

2019年10月1日からの消費税率引き上げは「預かる消費税=納税額」が増えるため、より資金繰りの管理が重要になるでしょう。また、軽減税率の導入で改正前よりも10%と8%の区分をするなど事務処理が複雑になるかもしれません。

給与所得控除の見直し

2020年から役員報酬などの給与所得に対する経費に相当する給与所得控除が次のように減額されます。

 

  • 年収850万円以下:10万円
  • 年収850万円超:10万円~25万円

 

そのため、基礎控除の見直しによる「改正後48万円-改正前38万円=10万円」の増額よりも減額される金額が大きい場合や改正前よりも所得控除できる金額が少なくなる場合、増税対象になります。

配偶者控除と配偶者特別控除の見直し

配偶者控除と配偶者特別控除の見直しでは、適用対象者について次のような改正がされました。

 

  • 配偶者の合計所得金額の適用範囲を拡大する
  • 本人の合計所得金額が900万円超の場合、縮小または適用対象者から外す

所得税の最高税率の引き上げ

2015年から課税所得4,000万円超の部分について、最高税率が「40%→45%」に引き上げられました。

相続税の見直し

相続税の見直しにより、2017年から次のように改正されました。

(1)増税

  • 基礎控除の引き下げ:「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」→「3,000万円+600万円×法定相続人の数」
  • 税率の引き上げ:例)最高税率50%→55%

(2)減税

  • 未成年控除と障害者控除の引き上げ
  • 小規模宅地等の特例の拡大

まとめ

2015年度からの法人課税の改正により、小規模事業者への影響は少ないと考えられます。改正前と同じように青色欠損金が全額控除できるためです。むしろ、消費税率の引き上げなどの財政健全化に伴う増税項目に注視すべきでしょう。

阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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