2020年度税制改正大綱決定
「暮らし」「経営」にかかわる改正のポイントは?

2020年度税制改正大綱決定  「暮らし」「経営」にかかわる改正のポイントは?
公開日:
2020/01/07
 
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「税制改正大綱」とは、翌年度以降の増減税や新税導入の中身などをまとめた文書のことで、毎年、与党が各方面の要望などに基づいて議論を行い、12月に決定します。政府は、その内容を反映した税制改正法案を翌年の通常国会に提出、可決されれば順次実行に移されることになります。その2020年度版が、このほど決まりました。その中から、私たちの暮らしや中小企業経営に関係の深いものをピックアップしてみます。

安定的な資産形成を促す。「未婚のひとり親」の負担軽減も

◆確定拠出年金の「拡充」に対応

厚生労働省は、公的年金に上乗せして、老後の資産形成を図る「確定拠出年金」について、制度の見直しを進めています。具体的には、
 

  • 原則として60歳未満となっている加入期間の上限を、勤務先の会社が掛け金を拠出する「企業型」は70歳未満に、個人が任意加入する「個人型=iDeCo」は65歳未満まで、それぞれ延長する
  • 「企業型」に加入している会社員は、本人が希望すれば、労使の合意がなくても「iDeCo」に加入できるようにする
  • 企業年金のない中小企業で「iDeCo」に加入している従業員に、企業が掛け金を上乗せすることができる「iDeCo+」の対象を、従業員100人以下の企業から、300人以下の企業に拡充する

 

というものです。

 

改正により、これらの制度見直しで新たにカバーされる加入者についても、掛け金の全額が課税所得(※1)から差し引かれる措置や、年金や一時金として受け取る際の税制上の優遇措置が受けられるようになります。

◆「NISA」(少額投資非課税制度)の見直し

現在、年120万円の投資まで非課税(5年で計600万円まで非課税)の「一般NISA」は、「2階建て」に改められることになりました。1階部分は、年20万円までの「積み立て枠」で、投資信託などの比較的リスクの少ない商品に、対象が限定されます。従来と同じように株式などにも投資できる「投資枠」は、年102万円までとなり、合わせて5年間で610万円までが非課税となります。

 

改正後は、原則として「積み立て枠」を満たしたうえで「投資枠」が使える、という仕組みになります(※2)。リスクの低い金融商品への投資を優先させて、老後に向けた安定的な資産形成を促す狙いがあります。

 

一方、年間40万円までの投資が非課税となる、長期資産運用向けの優遇税制である「つみたてNISA」は、2037年までの期限が42年まで、5年延長されます。

◆「未婚のひとり親」が寡婦控除の対象に

配偶者と死別ないし離婚した「ひとり親」に対して、所得税や個人住民税を軽減するのが、寡婦(寡夫)控除です。この対象に、「結婚しないで子どもを持った親」を含めるかどうかは、今回の税制改正の注目点でもありました。結局、「含めると『未婚の親』を助長しかねない」という反対論を押し切って、制度自体が見直されることになりました。

 

新たな寡婦控除では、所得が500万円以下の「ひとり親」については、死別・離別、未婚に関係なく、一律で所得税35万円、住民税30万円が課税所得から差し引かれます。現在の制度には、男性にのみ所得制限が設定されていますが、女性も「500万円以下」に統一されます。また、女性よりも低く設定されていた男性の控除額は、女性と同一に引き上げられることになります。要するに、「ひとり親でいる理由」や、「性別」にかかわりなく、税の優遇は平等になるわけです。

 

なお、この寡婦控除の見直しに伴い、「未婚のひとり親」に児童扶養手当を年1万7500円上乗せしている措置は、とりやめになります。

 

※1課税所得
売上から、売上のための経費などを差し引いた金額。これに税率を掛けて所得税額が決まる。

 

※2ただし、株式投資の経験がある人などには、「積み立て枠」に投資しなくても「投資枠」の使える例外措置が設けられている。その場合は、非課税の総額は510万円となる。

企業の投資意欲を刺激

◆ベンチャーへの出資に税の優遇

設立後10年未満で非上場、など一定の要件を満たす国内のベンチャー企業に対して、国内の大企業が、2020年4月1日から22年3月31日までの2年間に、1億円以上を出資した場合、その出資額の25%を課税所得から差し引くことができます。日本の大企業が投資や賃金、配当などに回さずに貯め込んだ「内部留保」は、18年度には463兆円に上りました。こうした資金を、産業のイノベーションに振り向けさせようという狙いがあります。

 

この税の優遇を受けられるのは、大企業ばかりではありません。中小企業の場合は、1000万円以上の出資で、同様の会計処理をすることができるのです。有望なベンチャーに投資することで、事業の拡大が図れるかもしれません。一方、ベンチャー企業にとっては、出資による資金確保の道が広がることになります。

◆「エンジェル税制」拡充で、スタートアップ支援も促進

スタートアップ企業に投資した個人が、税の優遇を受けられる「エンジェル税制」が拡充されます。設立後3年未満としていた対象企業が5年未満になり、設立直後の会社が個人から資金調達しやすい環境が広がるでしょう。

 

17年からサービスが始まった株式投資型クラウドファンディングは、1人50万円以下の小口投資をオンラインで募集しますが、クラウドファンディング事業者が煩雑な手続きを必要とすることが、運用のネックになっていました。改正により、都道府県への申請手続きがなど簡素化され、利用の拡大が期待されています。

◆企業の税務申告の負担を軽減

税務申告に必要な請求書や領収書などについては、データの書き換えができないシステムに保存すれば、紙で保存する必要がなくなります。

 

また、企業には、事業年度が終わって2ヵ月以内の税務申告が義務付けられていますが、株主総会の開催がそれ以降で、決算が確定できない場合などには、1ヵ月申告を延長できる特例が設けられました。法人税の特例を受ける場合は、消費税の申告についても、1ヵ月延長することができます。

まとめ

2020年度税制改正大綱には、老後を見据えた資産形成などにかかわる施策が盛り込まれています。改正の実際のメリット(デメリット)、影響の大きさに関しては、今後、専門家による詳しい分析も進むはず。「乗り遅れない」ように、情報のキャッチに努めましょう。

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