個人事業主は、お金の積立が必要 意識しておくべき積立とは? | MONEYIZM
 

個人事業主は、お金の積立が必要
意識しておくべき積立とは?

個人事業主にとって、事業資金の確保は重要です。資金がなければ、事業の継続が危うくなるからです。しかし、個人事業主にはそれ以外にも様々なお金のリスクがあります。リスクに備えるためにも、お金の積立が必要といえるでしょう。そこで、ここでは個人事業主が意識しておくべきお金の積立について解説します。

個人事業主が、お金で抱える2つのリスク

個人事業主が抱えるリスクは様々ですが、お金に関するリスクには大きく分けて「資金繰りのリスク」と「老後資金のリスク」があります。ここでは、それぞれのリスクについて見ていきましょう。

個人事業主が抱える資金繰りのリスクとは

個人事業を行う上で生ずるお金のリスクの多くは、資金繰りに関するリスクです。資金繰りとは、将来のお金の流れを把握することです。例えば、「来月10日に得意先から100万円の入金があるので、来月20日の50万円の支払いができる」ということを事前に把握しておくことです。

 

資金が足りなくなくなると、仕入先などに支払いが出来なかったり、従業員がいる場合は、給料の未払いが発生したりします。資金不足は得意先や従業員の信頼を失うだけでなく、最悪の場合倒産に至ることもあります。そのため、常に資金繰りが悪化しないように注意しておく必要があります。

 

資金が足りなくなるのは、何も赤字の場合だけではありません。黒字の場合も資金が足りなくなることがあります。掛売上など、売上の計上と売上代金の受け取りの時期が異なる場合には、帳簿上は利益が出ていても、入金はまだのため、お金が足りないということが起こります。

 

また、普段の資金繰りは問題なくても、納税など一度に多くのお金の支出がある場合に資金繰りが悪化するリスクがあります。

個人事業主が抱える老後資金のリスクとは

個人事業主が抱えるもう1つのお金のリスクが、老後資金のリスクです。老後資金のリスクとは、老後に資金が足りないため、生活ができなくなるリスクのことです。

 

個人事業主は、企業に雇用されているわけではありません。そのため、仕事を辞めたときに退職金が出ることもなく、老後の資金が足りなくなる場合があります。また、個人事業主が加入する国民年金と会社員が加入する厚生年金とでは、個人事業主が加入する国民年金の方が毎月の受取額が少ないという実態があります。これらの理由で、個人事業主は、老後資金のリスクに直面しやすくなります。

資金繰りのリスクに備えたお金の積立方法

個人事業主には、「資金繰りのリスク」と「老後資金のリスク」の2つがあります。リスクを回避するためには、普段から対策を講じておく必要があります。普段からできるリスク回避の対策が、お金の積立です。ここではまず、資金繰りのリスクに備えたお金の積立方法を見ていきましょう。

納税のためなら、納税準備預金を利用する

納税の際に資金が足りなくなりがちの個人事業主も少なくないでしょう。その場合には、普段から納税のための積立をしておく必要があります。そこで便利なのが、納税準備預金です。

 

納税準備預金とは、納税を目的とし、毎月一定額を積立する預金のことです。

納税を目的としているため、原則は納税のためにしか引き出しできません。引き出し時には納付書など、納税のためと証明できる書類が必要となります。納税準備預金は、納税以外の目的で利用できないため、納税資金が足りなくなるリスクへの有効な対策になります。

 

銀行など一般的な金融機関では、通常、どこでも納税準備預金を作ることができます。

預金利息に税金がかからないことや、金融機関によっては、若干金利が優遇されているケースがあるなどのメリットもあります。

得意先の倒産に備えて中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)に加入する

いくら資金繰りに気をつけていても、仕入先への支払いなど、日々の事業資金が突然足りなくなることがあります。それは、売掛金の入金があるはずの得意先が倒産し、入金がなかった時です。

 

得意先の倒産に備えることができるのが、中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)です。中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、公的な機関である独立行政法人 中小企業基盤整備機構の共済制度です。

 

毎月、一定の掛金を支払うことで、得意先が倒産した場合に無担保・無保証人で、掛金の10倍までの金額を借入れできます。得意先の倒産に備えることができるので、資金繰りの悪化の防止策として有効です。しかも、掛金は、40か月以上納めていれば、解約時にその全額が戻ってくるので、いわば積立金のようなものです。

 

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)が、他の積立と違う点に、毎月の掛金が個人事業の経費になるということです。資金繰りの悪化の防止ができつつ節税もできる、有利な制度です。

個人事業主がかかえる老後資金のリスクに備えたお金の積立方法

次に、老後資金のリスクに備えたお金の積立方法を見ていきましょう。

廃業時に備えて小規模企業共済に加入する

個人事業主には、老後資金が足りなくなるリスクがありますが、その原因の1つが、退職金がないことです。事業を廃業したり、後継者に引き継いだりすることで、仕事を辞めたとしても退職金がなく、別の仕事に就くか、退職までの貯蓄を切り崩して、生活せざるを得なくなります。

 

そこで活用したいのが、小規模企業共済です。小規模企業共済も、中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)と同様に、公的な機関である独立行政法人 中小企業基盤整備機構の共済制度です。毎月、一定の掛金を支払うことで、退職・廃業時に退職金を受け取ることができる、いわば退職金の積立制度です。退職金があるため、老後の生活も安心できます。

 

小規模企業共済に加入すると、掛金の範囲内で、低金利の事業資金の貸付を受けることができます。また、小規模企業共済の掛金は、毎年、所得税の所得控除として使えるため、節税効果もあります。

その他のお金の積立方法

小規模企業共済以外にも、様々な老後資金のリスクに備えたお金の積立方法があります。代表的なものには、次のものがあります。

①国民年金基金

会社員が加入する厚生年金と個人事業主が加入する国民年金では、国民年金の方が、受取額が少ないです。そこで厚生年金と国民年金の差を埋めるために考え出されたのが、国民年金基金です。

 

毎月、一定金額を支払うことで、老後に国民年金に加えて国民年金基金を受け取ることができるため、老後資金のリスクに備えることができます。

②iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoとは、国民年金などにプラスして受け取りができる、私的な年金制度です。国民年金と大きく違う点は、自分で運用ができることです。加入は、iDeCoを取り扱っている金融機関で行うことができます。自分で毎月の掛金や運用する商品などを選び、運用することで、老後の資金を準備します。

 

また、掛金は、毎年所得税の所得控除の対象となるため、節税効果があります。ただし、iDeCoは、自分で運用をするので、大きな資金を得ることができる反面、期待した成果がでないこともあるので注意が必要です。

まとめ

個人事業主は、企業に所属していないために、様々な資金のリスクがあります。そのリスクを回避するためにも、お金の積立が必要です。

 

一言でお金の積立といっても、今回ご紹介したものを含め、様々なものがあります。大事なのは、自分に合ったお金の積立をすることです。お金の積立の目的は何か。利用する制度はその目的に合ったものかをしっかりと考え、自分に合ったお金の積立を行いましょう。

 

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
「税務/会計」カテゴリの最新記事