芸能人・ YouTuberが事務所から独立する
メリット・デメリット

芸能人・ YouTuberが事務所から独立する  メリット・デメリット
公開日:
2021/04/07
 
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現代のネット社会で急成長を遂げているのがYouTuberと呼ばれる動画発信者たちです。有名 YouTuberは、いわゆる芸能事務所に所属して活動を行っていたものの、その後独立する場合も少なくありません。YouTuberを含め、芸能人が事務所から「独立」するメリット・デメリットを以下で考察します。

芸能人やYouTuberが「独立する」とはどういう意味か

芸能人・YouTuberの運営方法は?

芸能人になる方法はスカウトやオーディション、あるいは他業種で有名になってからの転身など様々な方法がありますが、自らの個性や才能を商品とし、公衆に広く認知されるYouTuberになるには、「YouTubeパートナープログラム」への参加条件をみたす必要があります。パートナーになると、自らの動画に動画広告が付帯され、その収益配当が受けられるようになります。中には億単位の収入を誇る YouTuberも散見され、今や芸能人と同様憧れの職業の一つとなっています。
YouTuberや芸能人がその活動を仕事として運営する方法は、以下の3つに大きく分けられます。
(なお、 以下YouTuberと芸能人に共通の事項については、「 YouTuberなど」と記します。)

・個人で運営(フリー)

YouTuberであれば、コンテンツ制作、動画アップロード、メディアとの交渉など、すべての活動および必要事務を自らが行う形態です。芸能人の場合、営業なども自分で行います。

・マネジメント契約(固定報酬制)

いわゆる芸能事務所と契約し、事務的なことをすべて事務所が引き受ける形態です。
固定報酬制は一般企業の会社員と同じように与えられた仕事をこなし、その対価として給与を受け取る形です。どれほど忙しくとも、既定の残業代程度のプラスしかなく、仕事を選ぶ自由もあまりありませんが、一方で仕事が少なくても一定収入が保証されます。未成年の芸能人などはすべて事務所が面倒をみてくれる固定報酬制のメリットはそれなりにあるかもしれませんが、 元々セルフプロデュースを行うYouTuberがこの契約形態を採るメリットはほとんどないでしょう。

・マネジメント契約(歩合制)

同じマネジメント契約でも、こちらは芸能人が事務所と業務委託契約を結び、スケジュール管理や仕事先との様々な交渉、著作権の管理などを請負ってもらいます。仕事先から事務所に支払われる報酬のうち一定割合を事務所が受取り、残りが芸能人の収入となります。

 

YouTuberの場合、動画アップロードだけでなく、テレビなど他メディアに進出するようになると、忙しくなるだけでなく契約形態や交渉、収支が複雑になってくるので、マネジメント契約を結ぶケースが出てきますが、この歩合制の形を採るのが一般的です。あらゆる活動を包括的に委託するか、あるいは本業である動画アップロード以外の活動のみを部分委託するかなどは個々の契約内容によります。

独立とはマネジメント契約の解除である

「独立」とは YouTuberなどが、元々結んでいた事務所とのマネジメント契約を解除し、その後フリー、もしくは個人事務所を設立して活動を続けることです。解除後別の事務所に移ることは「移籍」と呼びます。

 

先ほどマネジメント契約は業務委託契約だと述べましたが、法律的には準委任契約(民法第656条)にあたり、契約解除はいつでも、どちら側からでもすることが可能です。事情によっては解除時に損害賠償(違約金ともいう)を請求される場合がありますが、解除自体が認められない場合はありません。

事務所から独立すると何が変わるのか

YouTuberなどが独立を考えるのは、マネジメントを任せられる安心感よりフリーになる魅力が勝るからといえます。具体的にどのようなメリット、デメリットがあるか見ていきましょう。

独立のメリットー収入と自由

①手取りが増える

YouTuberなどが独立すれば、言葉は悪いですが中間搾取がなくなるので、ギャラ(報酬)はすべて自分のものになります。仕事先から支払われる報酬のうち、事務所の取り分がいくらになるかは予め契約内容に盛り込まれていますが、大手事務所だとだいたい40~60%程度が事務所の取り分となっているようなので、結構な額だといえます。単純計算で、独立すれば、手取りが2倍前後となるのですから、メリットとしては十分です。

②自由に仕事選びや企画が立てられる

芸能人だと独立後は自分の納得のいく仕事だけを選べるようになります。思いきって既成のイメージから脱却を図ったり、自らが企画してイベントを開催したりなど、活動が制限なくできるので、セルフプロデュースに自信のある芸能人には腕の見せ所です。

 

YouTuberであっても、契約形態によっては、所属事務所がメディアでの活動のみならず本業の動画制作に対しても、意見したり制約をかけてきたりする場合があるかもしれません。特に元々芸能活動をしておらず、一から動画コンテンツのみで勝負して名を馳せた YouTuberの場合には、自分のしたいことだけをしたいという思いから、一旦結んだマネジメント契約を解除し、フリーに戻る場合もあるでしょう。

独立のデメリットーすべての責任が自分にかかる

一方で独立すると、すべてを自分で行わなければならないのは大きなデメリットです。営業や仕事先との報酬の交渉、スケジュール管理、移動手段の確保、金銭の管理などあらゆる事務作業を、仕事や活動の合間にしっかりこなす手腕が必要です。さらに、トラブルが発生し、万一訴訟問題に発展しても、受け皿になってくれる事務所がないのですから、自分で対応や対策をしなければなりません。

 

また芸能人の場合、大手事務所であればいわゆるバーターで得られていた仕事がなくなる場合があります。

独立後に必要な注意点

前述の通り、独立後の YouTuberなどは「活動」だけでなく、それに付随する様々な事務も行う必要があります。注意点は多々ありますが、特に専門的知識が必要な事項を2つあげておきます。

著作権の取扱いは慎重に

YouTuberは動画コンテンツを主体とした活動をするため、特に著作権に関する知識が必須です。
著作権とは「思想又は感情を創作的に表現した」”著作物”の作者が有する権利で、(著作権法2条)特許や商標などと違い登録をしなくとも他人に自分の権利を主張できます。動画は著作権法第10条第1項第7号の「映画の著作物」にあたるので、自分の動画作品がなんの相談もなく他のメディアで流されたり、自作品と同じ内容の動画を誰かが作って発信したりすれば、 YouTuberは自己の著作権の侵害にあたると主張し、それらの行為をやめさせ、場合によっては損害賠償を請求できるのです。

 

一方で自身の動画に既成の楽曲を無断で使用するなどの行為により、自らが第三者の著作権の侵害者となるケースもあり得ます。さらには事務所所属時の自身の動画作品についても、事務所に著作権を譲渡するという契約内容であった場合、自由に使えなくなる場合があります。

税金に関わるさまざまな知識が必要

YouTuberなどは事務所に所属していてもいなくても、給与制でない限り個人事業主として納税を行います。事務所に所属していれば顧問税理士がお金の管理もしてくれたかもしれませんが、独立するとそれらを行うのは自分です。

 

一般的に 芸能活動は源泉徴収制度の対象となり、報酬として支払われた額の10.21%(1回の支払額が100万円を超えると20.42%)の税金がかかってきます。ところがこの源泉徴収は個人事業主のみが対象なので、例えば独立した芸能人が個人事務所を法人として設立すれば納める必要がなくなります。このため、芸能人の多くは完全なフリーではなく法人格を持った個人事務所を作るのです。
一方 YouTuberがYouTubeで得る広告収入は源泉徴収の対象ではありません。しかし、芸能活動も行う場合であれば、やはり節税のために個人事務所の設立を考える価値はあるでしょう。

各方面における信頼できる専門家を見つけておく

このように、 YouTuberなどが独立して活動を続ける場合には(個人事務所を法人化すればなおさら)経営者としての資質が求められます。著作権問題でトラブルになったり、申告をいい加減にして税務調査で申告漏れが明らかになったりすると、大幅なイメージダウンは免れません。そうならないために、少なくとも税理士と、知的財産に詳しい法務関係者は顧問として必要です。

まとめ

芸能事務所から独立すると、大幅な収入増や自由が得られると共に、全責任が自分一人の肩にかかってきます。周りがみんな独立してうまくやっているから、と軽い気持ちで行うのではなく、入念な準備と専門家のサポートのもとに行うべきでしょう。

橋本玲子
行政書士事務所経営。宅地建物取引士、知的財産管理技能士2級取得。遺言執行や成年後見などを行う一般社団法人の理事も務めている。
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