完璧な遺言書を作成し、中身を実行してもらう
「遺言信託」は、誰に頼めばいいのか

完璧な遺言書を作成し、中身を実行してもらう  「遺言信託」は、誰に頼めばいいのか
公開日:
2021/04/06
 
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア

自分の望む遺産分割を実行し、残された親族間の争いを防ぐことも期待できる遺言書。その作成から遺言内容の実行までをサポートする「遺言信託」をご存知でしょうか? 記載ミスでせっかく書いた遺言書が無効になってしまった、といったリスクをカバーしてくれる便利な仕組みですが、注意すべき点もあるようです。実際に起こったトラブルも交えて、解説します。

そもそも「遺言信託」とは?

2020年7月からは、自分で書いた遺言書(自筆証書遺言書)を法務局で保管してくれる制度が始まり、作成のハードルも下がりました。ただし、肝心の記載内容にミスがあったために無効になったり、何らかの事情で遺言書通りの分割が行われなかったり、といったトラブルの起こらない保証はありません。

 

そうした問題を未然に防ぐのに有効なのが、「遺言信託」です。ひとことで言えば、遺言書の作成、その保管とともに、亡くなった後の遺言内容の実行(遺言執行)までを第3者の専門家に委託できるサービスで、信託銀行、銀行、信用金庫などの金融機関のほか、法律事務所などが窓口になって請け負います。

 

遺言を残す人にとってありがたいサービスではありますが、デメリットもあることに注意が必要です。あえて「失敗事例」から見ておきましょう。

 

【トラブル1】
賃貸アパートを保有していたAさん。再開発で賃貸アパートが立ち退き、ディベロッパーとのやり取りは高齢なAさんに代わり同居してる長女が対応していました。税理士に相談して遺言書は作成していました。資産の一部は幼いころから子供たちと兄弟の様な関係だった甥に遺贈する内容で、長女も責任をもって遺産を分ける様に言われていました。ただAさんは証券などの金融知識があまりない長女に不安を感じていたところ、終活セミナーで遺言信託というサービスがあることを知り、確実に遺言執行してもらおうと、信託銀行に依頼しました。その後、数年して亡くなり、相続に。

 

相続人である奥さんと2人の子どもが遺言書を確認すると、遺言信託の時点で、遺言執行者(※1)が当初の長男から、その信託銀行に書き換えられていることがわかりました(※2)。Aさんが信託銀行に勧められて、そうしたのでした。遺産分割のやり方自体は、最初の遺言書と変わっていませんでした。

 

ところが、相続人たちは、その「コスト」に驚かされることになります。Aさんには2億円ほどの預金があったのですが、それを引き出したりする遺言執行料だけで、信託銀行からなんと300万円を請求されたのです。簡単に言うと、遺言執行者を書き換えたために、相続人がこれだけの負担を強いられることになりました。

 

さらに、信託銀行に紹介された税理士に相続税の申告を依頼すると、報酬は360万円。さすがに「高い」と感じた相続人が、元の税理士に相談したところ、申告は半額以下の150万円ですみました。

 

※1遺言執行者
被相続人の残した遺言書の内容を実現するために、必要な手続きなどを行う人。相続財産を調査し財産目録を作成する、金融機関に対する預貯金の解約手続きを行う、といった幅広い権限を持つ。

 

※2 遺言書は何度でも書き換えることができ、日付の新しいものが有効になる。

 

【トラブル2】
妻を亡くしたBさんには、アメリカで家庭を持って仕事をしている長男と、都内に暮らす次男、自宅で同居する未婚の長女の3人の子どもがいました。時々体調を崩したりするBさんの面倒は、主に長女がみてくれていました。一方、次男は、子どもの頃から長女ばかり可愛がられていたという感情を持っていて、子ども同士の仲はよくありません。

 

Bさんには、自宅のほか、賃貸不動産、現預金、有価証券を合わせて2億円ほどの資産がありました。このまま自分が死んだら、相続でトラブルになるのは必至。海外にいる長男はあてにできないため、弁護士に相談して、遺言信託を行うことにしました。

 

資産の分割については、税理士と相談し、面倒をみてくれる長女に自宅を生前贈与したうえで、賃貸物件と預金、有価証券は長男、次男に、死亡保険金を次男と長女に渡す、という遺言内容にしました。これで、いつ死んでも相続については安心、のはずでした。

 

ところが、実際に相続が発生すると、予想外の事態に直面します。Bさんの相続以前に、遺言執行者である弁護士が亡くなっていることがわかったのです。こうした場合は、利害関係人が、家庭裁判所に新たな遺言執行者の選任を請求する必要があります。誰を選任するのかなどをめぐり、仲の悪い子どもたちの間で諍いになるかもしれません。

「費用対効果」を考える必要がある

遺言信託の最大のデメリットは、特に信託銀行などの金融機関に頼んだ場合、「高いコストがかかる」ところにあります。ちなみに、

 

  • 遺言信託の契約料:20万~100万円
  • 遺言書の内容変更:5万~10万円
  • 遺言書保管料:年間5,000~6,000円
  • 遺言執行料(最低料金):30万~150万円→資産額が大きいほど高額に

 

というのが、大まかな相場です。

また、金融機関自身が税務申告したり、法的な相続トラブルに対応することはできませんから、そうした業務に際しては、弁護士や税理士などへの外注費が別途発生することも、織り込んでおかなくてはなりません。

 

遺言信託をしておけば、遺言執行まで安心して任せることができます。ただし、その「安心料」に実際の費用が見合うものなのかは、しっかり検討する必要があるでしょう。考えておく必要があるのは、こうした費用は、残された相続人が負担を求められること。あまり高額になれば、その支払いをめぐって争いになることも、ないとは言い切れないのです。

「“終活”をして人生を楽しむ、が基本」~一般社団法人シニア総合サポートセンター~

同じ信託銀行でも、費用やサービス内容は同じではありませんから、遺言信託を利用する場合には、比較検討することも大事です。そして、銀行以外にも、このサービスを提供しているところがあります。

 

今回は、一般社団法人シニア総合サポートセンター(東京都港区)を紹介しましょう。法律事務所を母体とした身元保証会社(病院への入院時や、介護施設などへの入居時に求められる「身元保証人」を、親族や友人に代わり引き受ける)で、遺言信託、財産管理・任意後見(※3)のサポートも行っています。

 

■谷川賢史事務局長に、話をうかがいました
当法人のサービスをご利用される方は、まずは身元保証サービスを契約される方が圧倒的に多く、その後、先々のことを考えて任意後見や遺言信託も依頼したい、という形で契約を追加されていくのが典型的なご利用方法となっています。利用者の方は、50代から90代まで幅広く、すでに亡くなった方も含めて1,000名近くに上ります。

 

遺言信託に関しては、信託銀行など他所で作成された遺言書があるのならば、わざわざ書き換えたりせずにそのままご活用いただくことが可能です。当法人の身元保証サービスをご契約いただいていれば、当法人は、利用者の方がお亡くなりになられたときに信託銀行などに速やかにその旨を伝えることができますので、遺言の執行をスムーズに進めることが可能となります。

 

当法人でも遺言信託を扱っていますが、ご利用者はおひとりさまや子どものいないご夫婦が多いため、内容もシンプルなものが多くなっています。遺産は全部配偶者や、特定の人に渡したいとか、慈善団体に寄付したいとか。一昔前なら、兄弟姉妹がたくさんいましたから、自分に子どもがいなくても相続人がいないということはほとんどなかったのですが、最近は本当に「相続人不在」の方が増えました。ユニセフや日本財団、あしなが育英会といった団体や地方公共団体への遺贈も、本当に多くなったと実感します。

 

様々な高齢者の方々の“終活”に接する中で私自身感じているのは、葬儀の準備や相続対策などというと、どうしても後ろ向きに捉えられがちなのですが、実はそうではないということです。遺言書を作り、遺言信託を依頼し、いざという時のために任意後見を備え、相続税対策までしておけば、後は残りの人生を楽しむことだけ。自分自身もすっきりしますし、後になって親族も、大いに助かります。“終活”には多くの人を幸せにする力があります。1人でも多くの高齢者の方に人生を豊かに過ごしていただくために、これからも全力で皆さまの“終活”をサポートしていきたいと考えています。

 

※3成年後見制度
精神上の障害により、判断能力の十分でない人が不利益を被らないよう、家庭裁判所が選任する成年後見人が、財産管理や身上監護を行う制度。家庭裁判所が後見人を選任する「法定後見制度」と、本人との契約により後見人が選ばれる「任意後見制度」の2種類がある。

まとめ

遺言書の作成、保管、遺言執行までをサポートしてくれる遺言信託。安心・安全のサービスですが、相続人にはそれなりのコスト負担が発生することをお忘れなく。サービス内容や費用の比較検討を行うことも大事です。

  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア
全国の税理士をご紹介しています
税理士紹介ビスカス