新型コロナに伴う「納税の猶予の特例」が終了
それでも納税が困難なときは?

新型コロナに伴う「納税の猶予の特例」が終了  それでも納税が困難なときは?
公開日:
2021/05/07
 
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新型コロナウイルス感染症の影響で納税が困難になった納税者を対象に実施されていた「納税の猶予制度の特例」(「特例猶予」)が、原則2021年2月1日納期限分で終了になりました。総額で1兆5,000億円の税がこの適用を受けましたが、3度目の緊急事態宣言が出されるなど、納税者にとっては厳しい環境が今も続いています。もし、税金の支払いが危うくなったら? あらためて、既存の納税猶予制度についてQ&Aも交えて解説します。

新型コロナの「特例猶予」とは

新型コロナの感染拡大に伴う納税の「特例猶予」は、2020年2月1日納期限分から実施され(施行は同年4月30日)、適用を受ければ、「無担保かつ延滞税なしで1年間」納税を延期することが認められていました。

 

国税庁の集計によると、この特例猶予の適用は、合わせて約32万件、総額1兆5,176億円余りとなりました。税目別には、「適用件数」が所得税32.0%、法人税6.3%、消費税及び地方消費税56.0%、「適用税額」では所得税8.0%、法人税28.7%、消費税及び地方消費税59.7%などとなっています。

既存の納税猶予制度はどうなっているのか

国税の納付が滞ると、通常は年8.8%の延滞税がかかってきます。特例は、それを免除して1年間納税を待ってもらえるという大変有難い制度だったのですが、今後はどうなるのでしょうか?

 

税金には、もともと次に説明するような納税猶予の仕組みがあります。国税庁も、引き続き「新型コロナウイルス感染症の影響により、納税が困難な納税者の方に対し、納税の猶予等の納税緩和措置を適切に適用していく」というスタンスですから、困ったらこうした制度の利用も検討すべきでしょう。

 

国税の猶予制度は、税務署に申請することで、原則として最大1年間、納税が猶予されるもので、「換価の猶予」と「納税の猶予」があります。

 

●換価の猶予
〈要件〉

  • ①国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること
  • ②納税について誠実な意思を有すると認められること
  • ③猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと
  • ④納付すべき国税の納期限から6ヵ月以内に申請書が提出されていること

以上、すべてに該当

 

認められれば、原則として1年間納税が猶予され(状況に応じて、さらに1年間猶予される)、猶予期間中の延滞税が軽減(通常年8.8%→軽減後年1.0%=2021年中の割合)されます。この間、財産の差押えや換価(売却)は行われません。

 

●納税の猶予
また、次のような個別の事情がある場合は、納税の猶予が認められることがあります。

 

〈個別の事情の具体例〉

  • ①新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことにより、備品や棚卸資産を廃棄した場合
  • ②納税者本人または生計を同じにする家族が病気にかかった場合、国税を一時に納付できない額のうち医療費や治療などに付随する費用
  • ③納税者が営む事業について、やむを得ず休廃業をした場合、国税を一時に納付できない額のうち、休廃業に関して生じた損失や費用に相当する金額
  • ④納税者が営む事業について、利益の減少などにより著しい損失を受けた場合、国税を一時に納付できない額のうち、受けた損失額に相当する金額

 

こうした場合には、やはり原則として1年間納税が猶予されるほか、猶予期間中の延滞税は、軽減または免除されます。やはり、差押えや換価は行われません。

税の滞納があったら、「納税の猶予」は受けられない?

以上が、国税の猶予制度の概要ですが、同じ「納税が厳しい」でも、置かれた状況などはさまざま。例えば、「他に税の滞納があったら、猶予は受けられないのか?」といった疑問についての国税庁の対応をまとめました。

 

Q)とりあえずの納税資金はあるが、将来減収になる不安がある。このような場合に、猶予は受けられるのか。

 

猶予の要件の判定に当たっては、納税者の実情を考慮することとしている。したがって、資金がある人でも、当面の事業の継続・生活維持のためにその資金の支出が決まっている場合などは、猶予を受けられることがある。

 

Q)猶予額の計算に当たって、当面の資金繰りに必要な額はどの程度認められるのか。
一般的には、事業継続のため1ヵ月以内に支出が予定されている金額は、運転資金として納税資金から除外する。1ヵ月以内に支出が予定されている金額でなくても、その資金の支出が当面の事業の継続のため決まっている場合などは、運転資金として加算できる。

 

Q)どのような税目について猶予が受けられるのか。
印紙で納付する印紙税のほか、外国貨物を保税地域から引き取る場合の消費税や出国する際に直接税関長に納付する方式の国際観光旅客税などを除き、ほとんどすべての税目が対象となる。また、地方消費税など、いったん国に納める税も対象となる。

 

Q)猶予を受けると、税金の納付が免除されたり、納めた税金が還付されたりするのか。
国税の猶予制度は、期限後に(必要に応じて分割して)納税ができるようになる制度であり、税金の納付そのものが免除されたり、納めた税金が還付されたりすることはない。

 

Q)猶予を受けた後は、どのように税金を払っていくのか。
通知書に記載された分割納付金額をそれぞれの分割納付の日までに納付する。分割納付の日までに納税が難しい場合は、所轄の税務署(徴収担当)に相談を。

 

Q)どの程度の期間猶予を受けられるのか。
猶予の適用期間については、通常、納税者個々の実情に応じた最短の期間としているが、新型コロナウイルス感染症の影響により資金繰りが困難な人については、迅速かつ柔軟に対応するため、納税者から特段の申出がない限り、1年間猶予している。

 

Q)現在滞納している税金がある場合には猶予を受けられないのか。
「換価の猶予」については、他に滞納(猶予中のものを除く)となっている国税がある場合は、猶予が認められないことがある。他方、「納税の猶予」については、猶予を受けようとする国税以外に滞納している国税があっても、猶予を受けることができる。

 

Q)猶予を受けるためには担保の提供は必要か。
猶予を受けるためには、担保の提供が必要となる場合があるが、新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な人については、明らかに担保を提供できる状況でない限り、不要としている。

 

Q)「特例猶予」の猶予期間が終了するが、期間内に納付できない場合はどうすればよいか。
特例猶予を受けている国税について、猶予期間の終了日までに納付できない場合には、「換価の猶予」または「納税の猶予」を受けられることがある。換価の猶予などを受けると延滞税が軽減される(猶予を受けなければ、通常の延滞税がかかる)ため、早めに所轄の税務署(徴収担当)に相談を。

まとめ

コロナ禍で経済的に厳しい場合には、国税の猶予制度を利用するのも1つの選択です。適用要件など詳しいことは、税務署の担当窓口のほか、税理士に相談を。

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