文化勲章や紫綬褒章、文化功労者は 年金を受け取れる?税金は非課税? | MONEYIZM
 

文化勲章や紫綬褒章、文化功労者は
年金を受け取れる?税金は非課税?

文化や芸術、スポーツ、科学技術などの分野ですぐれた功績のあった人に対し、国は文化勲章や紫綬褒章、文化功労者といったかたちで表彰します。しかし、それぞれの違いについてわからない人も多いのではないでしょうか。今回は、3つの表彰の違いや文化功労者が受け取る年金についてご紹介します。

文化勲章や紫綬褒章、文化功労者の違い

日本には、さまざまな分野で国や社会などに貢献したり、すぐれた業績を挙げたりした人に対して国が表彰する「栄典制度」があります。

 

文化・芸術・スポーツ・科学技術で功績を挙げた人に対しては、文化勲章や紫綬褒章の授与や文化功労者としての表彰が行われます。著名人の文化勲章受章のニュースを見聞きしたことがある人は多いでしょう。

 

ところで、文化勲章・紫綬褒章・文化功労者の違いはどこにあるのでしょうか。

文化勲章と文化功労者の違い

国は毎年11月3日に、文化・芸術・スポーツ・科学技術などの分野で目覚ましい功績を挙げた人に対して文化勲章を授与したり文化功労者として表彰したりします。この2つの違いは「表彰を決定する過程」「表彰される人数」「年金の有無」の違いにあります。

 

文化勲章 文化功労者
対象者を決定する過程 文化功労者の中から選ばれる。閣議で決定 文部科学大臣が決定
表彰される人数 おおむね5人 20人(令和2年度)
年金の有無 なし 年額350万円

 

文化勲章は1937(昭和12)年から実施されているもので、かつては勲章を授与された人には終身年金が支給されていましたが、財政難を原因に1941(昭和16)年に廃止されました。戦後、日本国憲法第14条3項で「栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない」とされたため、文化勲章には賞金や年金はありません。つまり、授与されるのは「名誉」のみです。

 

しかし、1951(昭和26)年に文化功労者顕彰制度が設けられ、文化の向上や発展に功績があった人に年金を支給されることになりました。文化功労者は文化庁の文化功労者選考分科会が選定した候補者の中から、文部科学大臣が決定しています。同年に文化功労者年金法が制定され、文化功労者には年額350万円の終身年金が受給されています。

 

文化功労者制度の制定以来、文化勲章受章者は原則として、前年度までの文化功労者の中から選ばれています。文化功労者の中から文部科学大臣が内閣総理大臣に推薦し、閣議で文化勲章の受章者を決定します。文化勲章の受章者は11月3日に皇居で親授式に臨み、天皇陛下から直接、勲章を授与されます。

紫綬褒章とはどんなもの

日本の栄典制度には、勲章のほかに褒章があります。勲章・褒章ともに、政治家や三権の長から経営者、篤志家、公務員、ボランティア活動など、国や社会に貢献したさまざまな人を表彰する制度です。

 

勲章は先ほど説明した文化勲章のほかに、大勲位菊花章や桐花大綬章など5つの種類があります。授与される勲章は種類ごとに異なるデザインが施され、「綬(じゅ)」とよばれるリボンがセットになっています。

 

一方、褒章には紅綬・緑綬・黄綬・紫綬・藍綬・紺綬の6種類があり、人命救助に尽力した人は紅綬褒章、ボランティア活動に長年従事した人は緑綬褒章など、種類によって対象となる人が決まっています。文化・芸術・スポーツ・科学技術の分野ですぐれた業績を挙げた人に授与されるのが、紫綬褒章です。

 

褒章は「褒章」と刻印されたメダルと、褒章ごとに異なる色の綬がセットになっていて、紫綬褒章には紫色の綬がついています。

 

紺綬褒章を除く5種類の褒章は、4月29日と11月3日に授与されます。褒章の受章者は自治体や各種団体が省庁に候補者を推薦し、さらに省庁の大臣が内閣総理大臣にその中から候補者を推薦して、閣議で決定されます。褒章も勲章と同様、年金などはありません。2020(令和2)年には、春と秋合わせて36人が紫綬褒章を受章しています。

文化功労者の年金は非課税になる

文化勲章・文化功労者・紫綬褒章の中で、文化功労者には年額350万円の終身年金が支給されます。厚生年金や国民年金などの公的年金は、年間支給額から一定額を差し引いた金額(所得金額)は「雑所得」に分類され、所得税が課せられていますが、文化功労者の年金は非課税です。

 

本来、個人が1年間に得た所得(収入から経費などを差し引いたもの)には所得税が課せられます。所得は、それを得た方法に応じて以下の10種類に分類されます。

 

  • 利子所得
  • 配当所得
  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 給与所得
  • 退職所得
  • 山林所得
  • 譲渡所得
  • 一時所得
  • 雑所得

 

「個人が得たすべての所得には所得税を課す」というのが原則であり、公的年金は雑所得に分類されています。本来なら、文化功労者の年金も雑所得に該当しますが、所得税法第9条で非課税所得とされています。これは文化や芸術などをバックアップしようとする国の政策的な背景があり、同様の理由で非課税所得とされているものに以下のようなものがあります。

 

  • 恩賜賞(日本学士院・日本芸術院)、日本学士院賞、日本芸術院賞として交付される金品
  • ノーベル賞として交付される金品
  • 学術・芸術面での貢献を表彰したり、研究を奨励したりするための金品で、国・地方自治体や財務大臣が指定する団体・基金から交付されるものの中で、財務大臣が指定するもの など

 

「日本学士院」は学術的に顕著な業績を挙げた科学者を優遇するため、文部科学省に設置された機関であり、「日本芸術院」は芸術的に功績がある芸術家を優遇するための機関です。これらのほかに、学術的な賞や研究を奨励するための金品として非課税所得とされているものとして、下記のようなものがあります。

 

  • 野口英世アフリカ賞
  • 独立行政法人日本学術振興会からの科学研究費補助金
  • 京都賞
  • 毎日学術奨励金
  • 国際数学連合フィールズ賞など

その他の非課税所得とは

各所得ごとに非課税所得になるものを説明する。そもそも非課税のもの、給与や譲渡所得などで非課税となっているものなど。

 

非課税所得となるものは、文化や芸術の振興を目的としたものだけではありません。上述した各種所得に当てはまるものうち、社会政策的見地、あるいは課税するための法律がないなどの理由で非課税所得とするものがあります。非課税所得は原則、申告などは不要ですが、一部手続きが必要なものもあります。

 

(1)利子・配当所得に関するもの

  • NISA口座、ジュニアNISA口座の少額上場株式にかかる配当など
  • 納税準備預金の利子

 

(2)給与所得に関するもの
給与所得者に支給される出張旅費や通勤手当のうち、通常必要と認められるもの(通勤手当は月額15万円以下の部分に限る)

 

(3)譲渡所得または山林所得に関するもの

  • 家具や衣服、電化製品など生活動産の譲渡による所得
  • NISA口座、ジュニアNISA口座の少額上場株式にかかる譲渡所得
  • 国や地方公共団体などに財産を寄附したことによる譲渡所得

 

(4)その他

  • オリンピック、パラリンピックの優秀成績者に財団法人日本オリンピック委員会などから交付される金品
  • 学資金および扶養義務を履行するために給付される金品
  • 心身の損害または資産の損害をこうむったことによって受ける保険金、損害賠償金、慰謝料
  • 相続、遺贈または個人からの贈与によって得たもの(所得税は課税されないが、相続税や贈与税は課税される)

まとめ

国や社会の発展のために尽くした、さまざまな人を表彰する栄典制度。文化や芸術、スポーツ、科学技術などの分野ですぐれて業績を挙げた人は、文化勲章や紫綬褒章が授与されたり、文化功労者として表彰されたりします。

 

文化勲章や紫綬褒章は名誉のみで金品の授与はありませんが、文化功労者には終身年金が支給されます。文化功労者の表彰は文化・スポーツ・科学技術振興を国が後押しする意味合いが強く、年金は非課税となっています。

 

また、文化功労者の年金と同様の趣旨で支給されるノーベル賞の賞金や、オリンピック・パラリンピックの入賞者に対する報奨金も、国の政策上非課税とされています。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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